カスタマーサクセスの10原則とは?SaaS企業が実践すべき基本フレームワーク

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/13

カスタマーサクセスの10原則とは

「カスタマーサクセスを始めたいけど、どこから手をつければいいかわからない...」「既存の取り組みがうまくいかず、体系的なフレームワークを知りたい...」

B2B SaaS企業のCS担当者・マネージャーの多くが、カスタマーサクセス組織の立ち上げや改善に悩んでいます。サブスクリプション型ビジネスが主流になる中で、顧客の成功を実現するための体系的なアプローチが求められています。

この記事では、Gainsightが提唱した「カスタマーサクセスの10原則」を解説し、各原則の実践方法を具体的に紹介します。

この記事のポイント:

  • カスタマーサクセスの10原則は、Gainsightが2013年に提唱し2021年にアップデートされた体系的フレームワーク
  • 正しい顧客への販売、顧客指標の理解、ハードデータ活用、全社的取り組みなど10の指針を含む
  • 2024年調査で61.0%が効果を実感(過去3年間で最高)
  • 最重要は原則5「トップダウンかつ全社レベルで取り組む」。経営陣のコミットメントが成功の鍵
  • タッチモデル構築、カスタマーヘルス監視、全社的取り組みが実践のポイント

10原則の背景と重要性

カスタマーサクセスの10原則が生まれた背景と、なぜ重要なのかを確認しましょう。

(1) Gainsightが2013年に提唱

カスタマーサクセスの10原則は、カスタマーサクセスプラットフォームを提供する米国企業Gainsightが2013年に提唱しました。

Gainsight: カスタマーサクセスプラットフォームを提供する米国企業です。10原則の提唱者であり、カスタマーサクセス分野のリーダー的存在です。

サブスクリプション型ビジネスが急成長する中で、顧客の成功を体系的に実現するためのフレームワークとして広く普及しました。

(2) 2021年にアップデート(SaaStr Annual 2021)

2021年9月のSaaStr Annual 2021で、Gainsight CEOニック・メータが新バージョンを発表しました。

アップデートの背景:

  • サブスクリプション市場の成熟
  • テクノロジーの進化(AI、データ分析の高度化)
  • 顧客の期待値の変化

時代の変化に合わせて10原則もアップデートされており、今後も変化する可能性があります。

(3) なぜサブスクリプション時代に不可欠なのか

サブスクリプション型ビジネスでは、顧客の継続利用が収益の源泉です。

サブスクリプション(Subscription): 定期購読型のビジネスモデルです。月額・年額で継続的に課金します。

カスタマーサクセスが不可欠な理由:

  • チャーン(解約)の影響が大きい: 顧客が解約すると、長期的な収益が失われる
  • LTV(顧客生涯価値)の最大化: 顧客の成功が継続利用とアップセルにつながる
  • 新規獲得コストの高さ: 既存顧客維持の方が効率的(1:5の法則)

カスタマーサクセスは、顧客が製品・サービスを通じて期待する成果を達成できるよう、能動的に支援する活動です。

カスタマーサクセスの10原則【前半5つ】

10原則の前半5つを解説します。

(1) 原則1:正しい顧客に販売する

正しい顧客に販売することで、長期的な関係構築とチャーンレート低減を実現できます。

正しい顧客とは:

  • 自社の製品・サービスで成功できる顧客
  • 製品の想定ユースケースに合致する顧客
  • 予算・組織体制が整っている顧客

実践方法:

  • 理想顧客プロファイル(ICP)を明確に定義
  • 営業部門と連携し、ミスマッチな顧客への販売を防ぐ
  • 導入前の期待値調整を徹底する

誤った顧客に販売すると、期待とのギャップからチャーンにつながります。

(2) 原則2:顧客とベンダーの間に不自然な力関係は生じない

サブスクリプション時代では、顧客とベンダーは対等なパートナーシップを築きます。

従来型ビジネス(買い切り型)との違い:

  • 従来型: 販売後はベンダーの優位性が強い
  • サブスクリプション型: 顧客は常に解約の選択肢を持つため、対等な関係が必要

実践方法:

  • 顧客の声を真摯に聞き、製品改善に反映
  • 押し付けではなく、顧客の成功を第一に考える
  • 継続的な価値提供で信頼関係を構築

(3) 原則3:顧客指標を深く理解する

顧客の指標(KPI・ROI)を深く理解し、顧客のビジネス成果にコミットします。

理解すべき顧客指標:

  • 顧客のビジネスKPI(売上、コスト削減、効率化等)
  • 投資対効果(ROI)の期待値
  • 成功の定義(どの状態になれば成功か)

実践方法:

  • オンボーディング時に顧客の成功指標をヒアリング
  • 定期的なレビューで進捗を確認
  • 顧客のビジネス成果を数値で測定・報告

顧客の成功指標を理解せずに活動すると、顧客が求める価値を提供できずチャーンにつながります。

(4) 原則4:ハードデータに基づいてカスタマーサクセスを推進

ハードデータに基づいてカスタマーサクセスを推進し、感覚ではなく数値で成果を測定・改善します。

ハードデータの例:

  • 製品利用頻度、ログイン率
  • 機能利用状況(どの機能が使われているか)
  • サポート問い合わせ回数
  • NPS(Net Promoter Score)、顧客満足度

実践方法:

  • CRMやカスタマーサクセスプラットフォームで利用データを可視化
  • データに基づいた顧客セグメント分類
  • 改善施策の効果をデータで検証

(5) 原則5:トップダウンかつ全社レベルで取り組む

原則5「トップダウンかつ全社レベルで取り組む」が最も重要です。経営陣のコミットメントがなければ、他の原則も効果を発揮しません。

全社的な取り組みが必要な理由:

  • カスタマーサクセスはCS部門だけでは完結しない
  • 製品開発、営業、マーケティング、サポート全てが関与
  • 組織横断的な連携が不可欠

実践方法:

  • 経営陣がカスタマーサクセスの重要性を明確に発信
  • カスタマーサクセスをKPIに組み込み、全社で評価
  • 定期的な経営レビューで進捗を確認

カスタマーサクセスは全社的な取り組みが必要で、一部門だけで実施しても効果が限定的になります。

カスタマーサクセスの10原則【後半5つ】

10原則の後半5つを解説します。

(1) 原則6:プロダクトこそがカスタマーサクセスを推進する

優れた製品体験が、カスタマーサクセスの基盤となります。

プロダクト主導のカスタマーサクセス:

  • 直感的で使いやすいUI/UX
  • オンボーディングの自動化(チュートリアル、ガイド機能)
  • セルフサービスでの問題解決(FAQ、ヘルプセンター)

実践方法:

  • 顧客フィードバックを製品開発に反映
  • 利用データを分析し、つまずきポイントを改善
  • プロダクトマーケットフィット(PMF)を継続的に検証

(2) 原則7:タイムトゥバリューの実現に執念を持つ

タイムトゥバリュー(顧客が価値を実感するまでの時間)を短縮することで、早期の成功体験を提供し離脱を防ぎます。

タイムトゥバリュー(Time to Value): 顧客が製品・サービスを導入してから価値を実感するまでの時間です。

実践方法:

  • オンボーディングプロセスの最適化
  • クイックウィン(早期の小さな成功)を設計
  • 導入後30日以内に具体的な成果を提示

早期に価値を実感できない顧客は、チャーンリスクが高まります。

(3) 原則8:カスタマーヘルスを常にモニタリング

カスタマーヘルス(顧客の健康状態)を継続的にモニタリングし、問題が発生する前に対応します。

カスタマーヘルス(Customer Health): 顧客の利用状況や満足度を数値化した指標です。チャーンリスクの予測に活用します。

カスタマーヘルスの指標例:

  • 製品利用頻度(週次ログイン率等)
  • 機能利用の広さ(コア機能を使っているか)
  • サポート問い合わせの頻度・内容
  • NPS、顧客満足度スコア

実践方法:

  • カスタマーヘルススコアを定義
  • 定期的にスコアを算出し、リスク顧客を特定
  • リスク顧客に対して能動的にアプローチ

(4) 原則9:アップセル・クロスセルを積極的に行う

アップセル・クロスセルを積極的に行い、顧客のビジネス成長と自社収益拡大を両立します。

アップセル(Upsell): 既存顧客に対して上位プランや追加機能を提案し、契約単価を向上させることです。

クロスセル(Cross-sell): 既存顧客に対して関連する別の製品・サービスを提案することです。

実践方法:

  • 顧客の成功を実現した後に提案(成功体験が前提)
  • 利用データに基づき、適切なタイミングで提案
  • 顧客のビジネス成長に貢献する提案を行う

(5) 原則10:スケールを見据えた体制を構築

顧客数の増加に対応できる、スケーラブルな体制を構築します。

スケーラブルな体制とは:

  • タッチモデル(顧客セグメント別アプローチ設計)の構築
  • テクノロジー活用による自動化・効率化
  • ハイタッチ(個別対応)とロータッチ(自動化)の使い分け

タッチモデル(Touch Model): 顧客をセグメント別に分類し、それぞれに最適なアプローチ方法を設計したモデルです。

実践方法:

  • 顧客を契約規模・業種・利用状況でセグメント化
  • セグメントごとにリソース配分を最適化
  • 自動化できる業務はツールで効率化

10原則を実践するための3つのポイント

10原則を実践するための重要なポイントを解説します。

(1) タッチモデル構築(顧客セグメント別アプローチ設計)

タッチモデル構築(顧客セグメント別のアプローチ設計)がカスタマーサクセスの効果を最大化し、売上・顧客満足向上に直結します。

タッチモデルの例:

  • ハイタッチ(個別対応): 大企業、高額契約、戦略的重要顧客
  • ロータッチ(半自動): 中堅企業、標準契約、定期的なグループウェビナー
  • テックタッチ(自動化): 小規模企業、低額契約、メール・アプリ内通知のみ

効果:

  • リソースの最適配分
  • 顧客満足度の向上
  • スケーラブルな運用

(2) カスタマーヘルスのリアルタイム監視

カスタマーヘルスをリアルタイムで監視し、チャーンリスクを早期に発見・対応します。

リアルタイム監視の方法:

  • カスタマーサクセスプラットフォーム(Gainsight等)の導入
  • ダッシュボードでヘルススコアを可視化
  • アラート機能でリスク顧客を自動検知

効果:

  • チャーンの未然防止
  • 能動的なサポート提供
  • データに基づいた意思決定

(3) 全社的な取り組みと経営陣のコミットメント

経営陣のコミットメントと全社的な取り組みが、カスタマーサクセスの成功を左右します。

経営陣のコミットメント:

  • カスタマーサクセスを経営戦略の中核に位置づける
  • 全社KPIにカスタマーサクセス指標を組み込む
  • 十分なリソース(人員、予算、ツール)を投資

全社的な取り組み:

  • 営業、マーケ、開発、サポート全部門が連携
  • 顧客の声を全社で共有する仕組み
  • カスタマーサクセス文化の醸成

短期的なコスト増加を懸念して投資を控えると、長期的な顧客維持率低下と収益減少につながる可能性があります。

2024年の調査で、カスタマーサクセスに取り組む企業の61.0%が効果を実感しており、過去3年間で最高の数値となっています。

まとめ:10原則でカスタマーサクセスを実現する

カスタマーサクセスの10原則は、正しい顧客への販売、顧客指標の理解、ハードデータ活用、全社的取り組み、タイムトゥバリュー実現、カスタマーヘルス監視など、サブスクリプション時代に不可欠な指針を含みます。

2013年にGainsightが提唱し、2021年にアップデートされたこのフレームワークは、時代の変化に合わせて進化し続けています。最も重要なのは原則5「トップダウンかつ全社レベルで取り組む」であり、経営陣のコミットメントが成功の鍵です。

実践のポイントは、タッチモデル構築、カスタマーヘルスのリアルタイム監視、全社的な取り組みです。2024年調査で61%が効果を実感しており、適切に実践すれば大きな成果が期待できます。

次のアクション:

  • 自社の現状を10原則に照らして評価する
  • 経営陣にカスタマーサクセスの重要性をプレゼンし、コミットメントを得る
  • タッチモデルを設計し、顧客セグメント別のアプローチを明確化する
  • カスタマーヘルススコアを定義し、リアルタイム監視を開始する
  • 全社的な連携体制を構築し、カスタマーサクセス文化を醸成する

カスタマーサクセスの10原則を実践し、顧客の成功と自社の成長を実現しましょう。

※Sansan等の成功事例の数値は企業規模や業種により異なる可能性があり、参考値として提示しています。カスタマーサクセスの効果は業種・企業規模・導入状況により大きく異なるため、自社に適した形で実践してください。

よくある質問

Q1カスタマーサクセスの10原則とは?

A1Gainsightが2013年に提唱した、サブスクリプション時代に顧客の成功を実現するための10の指針です。正しい顧客への販売、顧客指標の理解、ハードデータ活用、全社的取り組み、タイムトゥバリュー実現、カスタマーヘルス監視等を含みます。

Q210原則はいつ更新された?

A22013年に初版が提唱され、2021年9月のSaaStr Annual 2021でGainsight CEOニック・メータが新バージョンを発表しました。時代の変化に合わせてアップデートされています。

Q3最も重要な原則は?

A3原則5「トップダウンかつ全社レベルで取り組む」が最重要です。経営陣のコミットメントがなければ、他の原則も効果を発揮しません。2024年調査で61%が効果を実感しており、全社的な取り組みが成功の鍵です。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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