チャーンレートとは?SaaSの解約率計算方法と改善施策を解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/16

解約率を改善したいけれど、どこから手をつければいいか分からない...

B2B SaaS企業のカスタマーサクセス・経営企画担当者の多くが、チャーンレート(解約率)の改善に課題を抱えています。「計算方法が複数あってどれを使えばいいか分からない」「業界平均と比べて自社の数値は良いのか悪いのか」「具体的にどんな施策を打てばいいのか」といった疑問は尽きません。

この記事では、チャーンレートの定義と種類、計算方法、業界ベンチマーク、具体的な改善施策まで、実務に役立つ情報を解説します。

この記事のポイント:

  • チャーンレートとは一定期間内に解約した顧客の割合を示す指標(解約率)
  • 顧客数ベース(カスタマーチャーン)と収益ベース(レベニューチャーン)の2種類がある
  • SaaSでは3.5%以下が目標、ただし企業規模により異なる(中小向け3-7%、大企業向け0.5-1%)
  • リテンションは新規獲得より5-25倍コスト効率的、5%の改善で利益が最大95%増加
  • オンボーディング強化と解約予兆の早期検知が改善の鍵

SaaSビジネスでチャーンレートが重要な理由

SaaSビジネスはサブスクリプションモデルを採用しており、顧客が継続利用してくれることで収益が積み上がります。チャーンレートが高いと、いくら新規顧客を獲得しても「穴の空いたバケツ」状態になり、成長が頭打ちになります。

チャーンレートが重要な理由:

1. 収益の安定性に直結: 解約が増えるとMRR(月次経常収益)が減少し、事業計画が立てにくくなります。安定した収益基盤を築くには、チャーンレートの管理が不可欠です。

2. 新規獲得より既存維持がコスト効率的: 一般的に、既存顧客の維持は新規顧客の獲得より5〜25倍コスト効率が良いと言われています。チャーンレートを5%改善すると、利益が最大95%増加するという調査もあります。

3. LTV(顧客生涯価値)への影響: チャーンレートが下がれば、1人の顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益(LTV)が増加します。LTVが上がればCAC(顧客獲得コスト)の許容範囲も広がり、マーケティング投資を増やせます。

4. 投資家からの評価: SaaS企業の評価において、チャーンレートは重要な指標です。低いチャーンレートは「顧客に価値を提供できている証拠」として、投資家からの評価が高まります。

チャーンレートの基礎知識

(1) カスタマーチャーンレート:顧客数ベースの解約率

カスタマーチャーンレートは、一定期間内に解約した顧客数の割合を示す指標です。最もシンプルで分かりやすいチャーンレートの定義です。

計算式:

カスタマーチャーンレート = 期間内の解約顧客数 ÷ 期首の顧客数 × 100

例:

  • 期首の顧客数: 1,000社
  • 期間内の解約顧客数: 30社
  • カスタマーチャーンレート: 30 ÷ 1,000 × 100 = 3.0%

特徴:

  • すべての顧客を「1件」として等しくカウント
  • 小規模顧客も大規模顧客も同じ重みで計算
  • 顧客数の動向を把握するのに適している

(2) レベニューチャーンレート:収益ベースの解約率

レベニューチャーンレートは、一定期間内に失った収益の割合を示す指標です。収益への影響を直接把握できるため、経営判断に有用です。

グロスレベニューチャーンレート: 解約やダウングレードによる損失額のみを計算します。

グロスレベニューチャーンレート = (解約MRR + ダウングレードMRR) ÷ 期首MRR × 100

ネットレベニューチャーンレート: 損失額だけでなく、既存顧客からのアップセル・クロスセルによる増収も含めて計算します。

ネットレベニューチャーンレート = (解約MRR + ダウングレードMRR - アップグレードMRR) ÷ 期首MRR × 100

ネガティブチャーン: ネットレベニューチャーンがマイナス(= 既存顧客からの増収が解約による損失を上回る)になる状態を「ネガティブチャーン」と呼びます。これはSaaSビジネスにとって理想的な状態です。

カスタマーチャーンとレベニューチャーンの使い分け:

  • カスタマーチャーン: 顧客数の動向を把握、プロダクトの改善優先度判断
  • レベニューチャーン: 収益への影響を把握、LTVの高い顧客への注力判断

両方をモニタリングすることで、より正確な状況把握が可能です。

チャーンレートの計算方法

(1) グロスレベニューチャーンとネットレベニューチャーンの違い

グロスレベニューチャーンの例:

  • 期首MRR: 1,000万円
  • 解約MRR: 50万円
  • ダウングレードMRR: 20万円
  • グロスレベニューチャーン: (50 + 20) ÷ 1,000 × 100 = 7.0%

ネットレベニューチャーンの例:

  • 期首MRR: 1,000万円
  • 解約MRR: 50万円
  • ダウングレードMRR: 20万円
  • アップグレードMRR: 40万円
  • ネットレベニューチャーン: (50 + 20 - 40) ÷ 1,000 × 100 = 3.0%

どちらを重視すべきか:

  • グロスレベニューチャーン: 解約・ダウングレードの問題を正確に把握
  • ネットレベニューチャーン: 収益全体の健全性を把握、ネガティブチャーンを目指す

両方を把握することで、「解約は多いがアップセルでカバーできている」「解約は少ないがアップセルも少ない」といった状況を正確に理解できます。

(2) 月次・年次での計算と注意点

月次チャーンレート: 毎月のチャーンレートを計算し、トレンドを把握します。季節変動やキャンペーンの影響を確認できます。

年次チャーンレート: 年間の累積チャーンレートを計算します。月次チャーンレートを単純に12倍すると不正確になるため、複利計算を用います。

年次チャーンレート = 1 - (1 - 月次チャーンレート)^12

例:

  • 月次チャーンレート: 3%
  • 年次チャーンレート: 1 - (1 - 0.03)^12 = 約30.6%(単純12倍の36%より低い)

計算時の注意点:

  • 期首・期末の定義を明確にする(月初か月末か)
  • 新規獲得顧客をいつから母数に含めるか統一する
  • 契約更新のタイミングを考慮する(年間契約の場合は更新月に集中)

業界ベンチマークと目標設定

(1) 業界・企業規模別の平均値

業界別の月次チャーンレート目安:

  • SaaS全体: 約4.8%
  • BtoB SaaS: 約5%
  • BtoC SaaS: 約7%
  • 動画配信サービス: 約10%

企業規模別の目標チャーンレート:

  • 中小企業向けSaaS: 3〜7%(顧客の入れ替わりが速い傾向)
  • 大企業向けSaaS(エンタープライズ): 0.5〜1%(契約期間が長く、スイッチングコストが高い)

良いチャーンレートの目安: 一般的にSaaSでは月次3.5%以下が目標とされますが、業種・ビジネスモデル・顧客層によって大きく異なります。

(2) 自社に合った目標設定のポイント

ベンチマークとの比較だけに頼らない: 業界平均はあくまで参考値です。自社の顧客層、契約形態、プロダクトの特性を考慮した目標設定が必要です。

目標設定のステップ:

  1. 現状のチャーンレートを正確に把握
  2. 解約理由を分析し、改善可能な割合を推定
  3. 改善施策とリソースを勘案した現実的な目標を設定
  4. 段階的な目標(3ヶ月、6ヶ月、1年)を設定

解約理由の分析:

  • 製品・サービスへの不満(機能不足、使いにくさ)
  • 価格への不満(コストパフォーマンス)
  • 顧客側の事情(予算縮小、事業撤退)
  • 競合への乗り換え
  • サポートへの不満

表面的な理由だけでなく、その背景にある真の原因を把握することが重要です。

※業界平均や目標値は調査時点のものであり、市場環境により変動します。自社の状況に合わせた判断が必要です。

チャーンレートを改善する具体的施策

(1) オンボーディング強化と顧客フィードバック収集

オンボーディングの強化: 導入初期の1ヶ月に集中してサポートすることで、早期解約を防ぎます。調査によると、68%の顧客がオンボーディング体験を重視しています。

具体的な施策:

  • 初期設定のサポート(チュートリアル、ガイドツアー)
  • 活用事例の提供(同業種・同規模の成功事例)
  • 定期的なチェックイン(導入1週間後、1ヶ月後など)
  • 目標設定と進捗確認(顧客の成功指標を定義)

顧客フィードバックの収集: 70%の顧客が「企業が自分を気にかけていない」と感じているという調査があります。定期的なフィードバック収集で、不満を先回りで対処します。

具体的な施策:

  • NPS(Net Promoter Score)調査の定期実施
  • 利用状況に応じたアンケート(活用度の低い顧客へのヒアリング)
  • カスタマーサクセスによる定期面談
  • 解約時のエグジットインタビュー

(2) AIと予測分析による解約予兆の早期検知

予測分析の活用: 利用パターンや行動データから、解約リスクの高い顧客を早期発見します。2024年現在、AIと予測分析を活用した解約予測・早期警告が可能になっています。

解約予兆のシグナル:

  • ログイン頻度の低下
  • 主要機能の利用率低下
  • サポート問い合わせの急増
  • NPS・満足度スコアの低下
  • 契約更新前のアクセス減少

早期検知後のアクション:

  • カスタマーサクセスによる能動的なアウトリーチ
  • 活用促進のためのコンテンツ提供
  • 個別の課題解決サポート
  • 必要に応じた料金プランの見直し提案

その他の改善施策:

  • パーソナライゼーション(顧客ごとにカスタマイズされた体験)
  • コミュニティ構築(ユーザー同士のつながりでスイッチングコストを上げる)
  • ロイヤルティプログラム(長期契約インセンティブ、紹介報酬)
  • 1回の悪い体験で26%の顧客が離脱するため、顧客体験(CX)の質を向上

まとめ:継続的なモニタリングと改善の重要性

チャーンレートはSaaSビジネスの健全性を示す最重要指標の一つです。カスタマーチャーン(顧客数ベース)とレベニューチャーン(収益ベース)の両方をモニタリングし、解約理由を分析した上で改善施策を実行することが重要です。

新規顧客獲得よりも既存顧客維持の方がコスト効率が良いため、オンボーディング強化、顧客フィードバック収集、解約予兆の早期検知といった施策に投資することで、持続的な成長が可能になります。

次のアクション:

  • 自社のチャーンレート(カスタマー・レベニュー両方)を正確に計算する
  • 解約顧客へのエグジットインタビューで解約理由を把握する
  • オンボーディングプログラムを見直し、導入初期のサポートを強化する
  • 解約予兆を検知するシグナルを定義し、モニタリング体制を構築する

よくある質問:

Q: SaaSの良いチャーンレートの目安はどのくらいですか? A: 一般的にSaaSでは月次3.5%以下が目標とされます。ただし企業規模により異なり、中小企業向けは3〜7%、大企業向け(エンタープライズ)は0.5〜1%が目安です。業種やビジネスモデルによっても変わるため、自社の状況に合った目標設定が必要です。

Q: 新規獲得とリテンション、どちらを優先すべきですか? A: リテンションが5〜25倍コスト効率的とされています。チャーンレートを5%改善すると利益が最大95%増加するという調査もあり、既存顧客維持を優先すべきです。ただし、成長フェーズによっては新規獲得とのバランスも重要です。

Q: カスタマーチャーンとレベニューチャーンのどちらを見るべきですか? A: 両方を見ることが重要です。カスタマーチャーンは顧客数の動向を把握するのに適しており、レベニューチャーンは収益への影響を直接把握できます。LTVの高い顧客に注力するにはレベニューチャーンのモニタリングが不可欠です。

よくある質問

Q1SaaSの良いチャーンレートの目安はどのくらいですか?

A1一般的にSaaSでは月次3.5%以下が目標とされます。ただし企業規模により異なり、中小企業向けは3〜7%、大企業向け(エンタープライズ)は0.5〜1%が目安です。業種やビジネスモデルによっても変わるため、自社の状況に合った目標設定が必要です。

Q2新規獲得とリテンション、どちらを優先すべきですか?

A2リテンションが5〜25倍コスト効率的とされています。チャーンレートを5%改善すると利益が最大95%増加するという調査もあり、既存顧客維持を優先すべきです。ただし、成長フェーズによっては新規獲得とのバランスも重要です。

Q3カスタマーチャーンとレベニューチャーンのどちらを見るべきですか?

A3両方を見ることが重要です。カスタマーチャーンは顧客数の動向を把握するのに適しており、レベニューチャーンは収益への影響を直接把握できます。LTVの高い顧客に注力するにはレベニューチャーンのモニタリングが不可欠です。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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