ビジネスにおけるエンゲージメントとは?顧客・従業員との関係強化手法

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/16

顧客や従業員との関係性を強化したいけれど、何から始めればいいか分からない...

B2B SaaS企業のマーケティング・CS・人事担当者の多くが、エンゲージメント向上に課題を抱えています。「エンゲージメントとは具体的に何を指すのか」「従業員と顧客、どちらを優先すべきか」「どのように測定し、改善すればいいのか」といった疑問は尽きません。

この記事では、ビジネスにおけるエンゲージメントの定義から、従業員エンゲージメント・顧客エンゲージメントの向上施策、測定方法まで、実務に役立つ情報を解説します。

この記事のポイント:

  • エンゲージメントとは「深いつながりを持った関係性」を示し、ビジネスでは従業員・顧客の2種類がある
  • 日本の従業員エンゲージメントは低水準(熱意を持って働く従業員5%、米国34%)
  • 従業員エンゲージメントは「評価制度の見直し」「1on1面談」「柔軟な働き方」で向上
  • 顧客エンゲージメントは「パーソナライゼーション」「スピーディーな対応」で強化
  • 短期的な効果を期待せず、中長期的な取り組みとして継続することが重要

ビジネスにおけるエンゲージメントが注目される背景

「エンゲージメント(Engagement)」は、英語で「婚約」「誓約」「約束」「契約」などを意味する言葉です。ビジネスでは「深いつながりを持った関係性」を示し、従業員エンゲージメントと顧客エンゲージメントの2種類があります。

エンゲージメントが注目される理由:

人材確保の難しさ: 労働人口の減少により、優秀な人材の獲得・定着が困難になっています。従業員エンゲージメントが高い企業は離職率が低く、採用コストを抑えられることが調査で明らかになっています。

顧客獲得コストの上昇: 新規顧客獲得のコストが上昇する中、既存顧客との関係性を深め、リテンション(継続利用)やアップセル・クロスセルを促進することがビジネス成長に不可欠です。

調査データの蓄積: Gallup社の2024年度「State of the Global Workplace」調査をはじめ、エンゲージメントと組織パフォーマンス(定着率、ウェルビーイング、生産性)の関係を示すデータが蓄積されています。

日本の課題: Gallup調査によると、熱意を持って働く従業員の割合はアメリカ34%に対し、日本は5%と非常に低い水準です。日本では特に「公正な人事評価」と「キャリア形成」の不足がエンゲージメントを抑制していると指摘されています。

エンゲージメントの基礎知識

(1) 従業員エンゲージメントとは:理解度・帰属意識・行動意欲の3要素

従業員エンゲージメントとは、従業員が会社や組織、仕事に対して抱く感情的なつながりや献身度のことです。一般的に、以下の3つの要素で構成されると言われています。

1. 理解度: 会社のビジョン・戦略・目標を理解し、自分の仕事との関連性を認識している状態。

2. 帰属意識: 組織の一員であることに誇りを持ち、会社に貢献したいという思いを持っている状態。

3. 行動意欲: 自発的に行動し、期待以上の成果を出そうとする意欲がある状態。

従業員満足度との違い: 従業員満足度は「今の環境に満足しているか」を測る受動的な指標であるのに対し、従業員エンゲージメントは「会社のために主体的に貢献したいか」を測る能動的な指標です。

高いエンゲージメントのメリット:

  • 離職率の低下(定着率向上)
  • 生産性の向上
  • 顧客満足度の向上(従業員の対応品質向上)
  • イノベーションの促進(自発的な提案・改善)

(2) 顧客エンゲージメントとは:企業と顧客の信頼関係

顧客エンゲージメント(カスタマーエンゲージメント)とは、企業と顧客の間に築かれた深い信頼関係、親密さのことです。単なる取引関係を超えた、継続的で有意義なつながりを指します。

顧客エンゲージメントの特徴:

  • カスタマージャーニー(顧客の行動プロセス)全体を通じて構築
  • 一方的な情報発信ではなく、双方向のインタラクション
  • 製品・サービスだけでなく、体験全体で差別化

B2B SaaSにおける顧客エンゲージメント: サブスクリプションモデルでは、顧客エンゲージメントがLTV(顧客生涯価値)に直結します。エンゲージメントが高い顧客は解約率が低く、アップセル・クロスセルの機会も増加します。

高いエンゲージメントのメリット:

  • リテンション率の向上(解約率低下)
  • LTV(顧客生涯価値)の最大化
  • 口コミ・紹介による新規顧客獲得
  • フィードバックによる製品改善

従業員エンゲージメントの向上施策

(1) 評価制度の見直しと1on1面談の導入

評価制度の見直し: 成果だけでなく、業務への貢献度や挑戦する姿勢も評価する制度に改善することで、従業員の納得感を高めます。

具体的なアプローチ:

  • 評価基準の透明化(何が評価されるか明確に)
  • 多面評価(360度評価)の導入
  • 定期的なフィードバック(年1回ではなく四半期ごと等)
  • 成果だけでなくプロセスも評価

1on1面談の導入: 社員と管理職との定期面談(1on1)を実施し、対話の機会を増やすことで、問題の早期発見と離職防止につなげます。

1on1のポイント:

  • 頻度:週1回〜隔週程度(短時間でも定期的に)
  • 内容:業務進捗だけでなく、キャリア・悩み・成長も話題に
  • 姿勢:評価ではなく支援・対話のスタンス
  • 記録:話した内容を記録し、次回に活かす

(2) 柔軟な働き方とワークライフバランスの実現

フレックスタイムやテレワークなどの柔軟な働き方制度を導入し、ワークライフバランスを重視する環境を整えることで、従業員エンゲージメントが向上します。

導入可能な制度:

  • フレックスタイム制(コアタイムの有無も検討)
  • テレワーク・リモートワーク
  • 時短勤務・時間単位有給休暇
  • 副業・兼業の許可

導入時の注意点:

  • 制度があっても利用しにくい雰囲気では効果が薄い
  • 管理職自らが制度を活用し、ロールモデルになる
  • 成果で評価する文化への移行が必要

その他の施策:

  • 経営ビジョンの浸透(全社会議、社内報など)
  • 社内コミュニケーション活性化(チャットツール、社内イベント)
  • 成長機会の提供(研修、資格取得支援、ジョブローテーション)
  • 称賛文化の醸成(ピアボーナス、表彰制度)

顧客エンゲージメントの向上施策

(1) パーソナライゼーションによる個別最適化

顧客の購買履歴や閲覧履歴を分析し、個々の興味関心に合わせた提案(パーソナライゼーション)を行うことで、顧客エンゲージメントが向上します。

具体的なアプローチ:

  • 行動データに基づくレコメンデーション
  • セグメント別のメールマーケティング
  • 顧客ステージに応じたコンテンツ提供
  • 利用状況に応じたオンボーディング

B2B SaaSでの実践:

  • 製品内での利用状況に応じたヒント表示
  • 活用度の低い機能への誘導
  • 更新時期に合わせた提案
  • 業界・規模に応じた活用事例の提供

(2) マルチチャネル対応とスピーディーな顧客対応

チャットやSNSを用いてスピーディーな顧客対応を実現し、クレームや不満の声にいち早く対応することで、顧客との信頼関係を構築します。

マルチチャネル対応:

  • メール、電話、チャット、SNSなど複数の接点を用意
  • 顧客が好むチャネルで対応
  • チャネル間で情報を共有し、一貫した対応

スピーディーな対応:

  • 初回応答時間(First Response Time)の短縮
  • チャットボットによる24時間対応
  • FAQやナレッジベースの充実

その他の施策:

  • カスタマーサクセス体制の構築
  • コミュニティの運営(ユーザー会、Slack/Discordグループ)
  • 定期的なビジネスレビュー(QBR)
  • NPS(Net Promoter Score)調査とフォローアップ

エンゲージメントの測定方法とKPI

(1) エンゲージメントサーベイの活用

エンゲージメントサーベイは、従業員エンゲージメントを測定するためのアンケート調査です。組織の課題を可視化し、改善施策に活用します。

サーベイの種類:

  • パルスサーベイ(短い質問を高頻度で実施)
  • 年次サーベイ(詳細な質問を年1回実施)
  • 360度評価(複数の評価者からフィードバック)

実施のポイント:

  • 匿名性を担保し、率直な回答を促す
  • 結果を分析し、具体的なアクションプランにつなげる
  • 調査だけで終わらず、改善活動を可視化して共有
  • 定期的に実施し、変化をトラッキング

注意点: 調査を実施しても結果を活かしたアクションプランがなければ、かえって従業員の不満が高まります。調査と改善はセットで実施することが重要です。

(2) 定量指標と継続的な改善サイクル

従業員エンゲージメントのKPI:

  • eNPS(従業員NPS):会社を他人に勧めたいか
  • 離職率・定着率
  • 欠勤率・遅刻率
  • 社内異動・昇進希望率

顧客エンゲージメントのKPI:

  • NPS(Net Promoter Score):製品・サービスを他人に勧めたいか
  • 継続率・解約率(Churn Rate)
  • DAU/MAU(日次・月次アクティブユーザー)
  • 機能利用率
  • カスタマーヘルススコア

継続的な改善サイクル:

  1. 測定(サーベイ、KPIトラッキング)
  2. 分析(課題の特定、要因分析)
  3. 施策立案(優先順位付け、アクションプラン)
  4. 実行(施策の実施)
  5. 振り返り(効果検証、次の施策へ)

※エンゲージメント向上の効果は企業規模・業種・組織文化・施策内容により結果が異なります。短期的な効果を期待せず、中長期的な取り組みとして継続することが重要です。

まとめ:エンゲージメント向上による組織強化

ビジネスにおけるエンゲージメントは、従業員と顧客の両面で重要です。従業員エンゲージメントが高い組織は生産性・定着率が向上し、顧客対応の質も高まります。結果として顧客エンゲージメントも向上し、リテンション率やLTVの改善につながります。

日本の従業員エンゲージメントは国際的に見て低い水準にありますが、「評価制度の見直し」「1on1面談」「柔軟な働き方」などの施策で改善が可能です。顧客エンゲージメントは「パーソナライゼーション」「スピーディーな対応」「カスタマーサクセス体制」で強化できます。

次のアクション:

  • 自社の従業員エンゲージメントの現状を把握する(サーベイ実施)
  • 顧客エンゲージメントのKPIを設定し、定期的にモニタリングする
  • 1on1面談を導入し、従業員との対話機会を増やす
  • カスタマーサクセス体制の強化を検討する

よくある質問:

Q: 日本の従業員エンゲージメントは低いのですか? A: Gallup調査によると、熱意を持って働く従業員の割合はアメリカ34%に対し日本は5%と低水準です。日本では特に「公正な人事評価」と「キャリア形成」の不足がエンゲージメントを抑制していると指摘されています。

Q: エンゲージメント向上の効果はどのくらいで出ますか? A: 短期的な効果を期待せず、中長期的な取り組みとして継続することが重要です。定期的なサーベイでモニタリングしながら改善を進め、半年〜1年程度で変化を確認するのが一般的です。

Q: 従業員エンゲージメントと顧客エンゲージメントは関係がありますか? A: 相互に影響し合う関係にあります。従業員エンゲージメントが高いと顧客対応の質が向上し、顧客エンゲージメントも高まる傾向があります。双方への取り組みを並行して進めることが効果的です。

よくある質問

Q1日本の従業員エンゲージメントは低いのですか?

A1Gallup調査によると、熱意を持って働く従業員の割合はアメリカ34%に対し日本は5%と低水準です。日本では特に「公正な人事評価」と「キャリア形成」の不足がエンゲージメントを抑制していると指摘されています。

Q2エンゲージメント向上の効果はどのくらいで出ますか?

A2短期的な効果を期待せず、中長期的な取り組みとして継続することが重要です。定期的なサーベイでモニタリングしながら改善を進め、半年〜1年程度で変化を確認するのが一般的です。

Q3従業員エンゲージメントと顧客エンゲージメントは関係がありますか?

A3相互に影響し合う関係にあります。従業員エンゲージメントが高いと顧客対応の質が向上し、顧客エンゲージメントも高まる傾向があります。双方への取り組みを並行して進めることが効果的です。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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