ツール開発で成果を出す企業と出せない企業の違い
既存ツールでは自社業務に合わず、カスタマイズや独自ツール開発を検討しているものの、どう進めれば成功するかわからないと悩む企業は多いのではないでしょうか。実はツール開発を成功させるには、業務プロセスの見直し(BPR)と実装を一貫して行える専門家に依頼することで、要件の齟齬や手戻りを防ぎ、本当に使われるツールを構築できます。
日本企業の生成AI導入率は42.1%(2025年、前年比3.2倍)に達していますが、ROI(投資対効果) を測定できている企業は23.7%にとどまっています(日本企業800社調査、調査対象は限定的)。ROIとは、投資に対してどれだけの利益を得られたかを示す指標で、利益÷投資額×100で算出します。ツールを導入しても、その効果を測定できなければ成功と言えません。
また、生成AIの業務利用率は46.8%(総務省調査、2025年)であり、導入済み企業は27.0%、検討中が46.2%という状況です。ツール導入と成果の間には大きな乖離があり、この差を埋めるのがBPRと実装の一貫性です。
この記事で分かること
- ノーコード/ローコード/フルスクラッチの違いと選定基準
- 業務効率化やMA/SFA連携ツールの成功事例
- ツール開発を成功させるためのポイントとチェックリスト
- BPRと実装を一貫して行う重要性
ツール開発の手法と選定基準
ツール開発には、ノーコード、ローコード、フルスクラッチという3つの手法があり、それぞれに適した業務や要件が異なります。
BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング) とは、業務プロセスを根本から見直し、抜本的に再設計する経営手法です。アジャイル開発は、短いサイクルで開発・テスト・改善を繰り返す開発手法で、変更に柔軟に対応できます。
【比較表】開発手法比較表
| 開発手法 | 特徴 | 適している業務 | 開発期間 | コスト | カスタマイズ性 |
|---|---|---|---|---|---|
| ノーコード | プログラミング不要で直感的に構築 | 定型業務、シンプルなワークフロー | 短い | 低い | 低い |
| ローコード | 最小限のコーディングで開発 | 中程度の複雑さの業務 | 中程度 | 中程度 | 中程度 |
| フルスクラッチ | ゼロから独自開発 | 独自プロセス、高度な連携要件 | 長い | 高い | 高い |
よくある失敗パターンとして、汎用ノーコードツールで自社業務を無理やり当てはめようとしたり、要件定義だけ外注して実装は別会社に依頼したりすることがあります。このようなアプローチでは、業務とツールが乖離し、結局使われないツールができてしまうケースが多いです。
ノーコード/ローコードの適用範囲と限界
ノーコード/ローコードは、定型的な業務や汎用的なワークフローには適しています。しかし、業務複雑度が高い場合や独自の業務プロセスがある場合には限界があります。
汎用ツールの機能範囲で対応できる業務であれば、ノーコード/ローコードで迅速に開発できます。一方で、既存システムとの複雑な連携や、業界固有のルールに基づく処理が必要な場合は、ツールの制約に縛られて本来の業務効率化が実現できないことがあります。
フルスクラッチ開発が必要なケース
フルスクラッチ開発は、以下のようなケースで有効です。
- MA/SFA連携など、複数システム間の高度な連携が必要
- 自社独自の業務プロセスやルールが存在する
- 既存ツールでは実現できない機能要件がある
- 将来的な拡張性や柔軟性を重視する
開発コストは高くなりますが、業務に最適化されたツールを構築でき、長期的な運用コストの削減につながる場合があります。
ツール開発成功事例:業務効率化とDX推進
具体的な成功事例から、ツール開発の成功パターンを見ていきましょう。なお、これらの事例は企業発表データが中心であり、成功バイアスがある点にご留意ください。数値効果は企業規模や業種により再現性が異なります。
業務効率化ツールの成功事例
ミネベアミツミのmeviy(特注部品調達ツール)は、調達時間を9割削減し、5年で17万ユーザーを獲得しています(企業発表データ、独立検証なし)。特注部品の調達という業務特性に最適化されたツール開発により、大幅な効率化を実現した事例です。
KDDIのKDDI AI-Chat(生成AI)では、ルータースクリプト作成時間が7.5時間から2時間に短縮(73%削減)されました。定型的だが専門知識を要する業務にAIを活用することで、大きな効率化を達成しています。
製造業でのAI活用成功事例
製造業企業のAI予知保全・品質検査ツールにより、不良品率78%削減、年間3.2億円コスト削減を達成した事例があります。AIによる予知保全と品質検査の自動化は、製造業でのDX推進において成果を出しやすい領域の一つです。
これらの成功事例に共通するのは、単にツールを導入しただけでなく、業務プロセスの見直しとツールの最適化を一体で行っている点です。
BtoB企業のMA/SFA連携ツール成功事例
BtoB企業において、MA(マーケティングオートメーション) とSFA(営業支援システム) の連携は、リード獲得から商談化までの効率化において重要な役割を果たします。
MAとは、マーケティング活動を自動化するツールで、リード獲得・育成・スコアリングを効率化します。SFAは営業活動を支援・管理するシステムで、商談管理・顧客情報管理・売上予測を行います。
2023年5月時点の調査では、国内BtoB企業のMAツール導入率は全体で1.5%(9,444社)、上場企業では14.6%(562社)となっています(626,003社対象)。導入率はまだ低い水準であり、MAツール導入率のデータは2023年調査のため最新状況と乖離の可能性がある点にご留意ください。
成功事例として、MA/SFA連携施策によりCPA60%削減、リード数3倍、案件化数5倍を達成した例があります(支援企業による自己申告データのため、成果過大の可能性あり)。また、BtoBデジタルマーケティングでPV約5年で8倍、CV10倍を達成した事例も報告されています。
ただし、これらは成功事例であり、効果は企業規模や業種、既存の運用状況により大きく異なります。自社の課題を明確にした上で検討することが重要です。
ツール開発を成功させるためのポイント
ツール開発を成功させるためには、BPRと実装の一貫性、ROI測定の早期設計、現場適合性の3点が重要です。
前述のとおり、日本企業の生成AI導入率は42.1%に達していますが、ROI測定が可能な企業は23.7%にとどまっています(日本企業800社調査、調査対象は限定的)。多くの企業がツールを導入しても、その効果を測定・検証できていない状況です。
【チェックリスト】ツール開発成功のためのチェックリスト
- 現状の業務プロセスを可視化・分析している
- ツール導入で解決したい課題が明確に定義されている
- ROI測定の方法と指標を事前に設計している
- 業務プロセスの見直し(BPR)を検討している
- ノーコード/ローコード/フルスクラッチの選定基準を理解している
- 自社の業務複雑度を評価している
- 既存システムとの連携要件を整理している
- 開発と運用の担当者をアサインしている
- 現場の声を要件定義に反映する仕組みがある
- 段階的な導入・改善計画を立てている
- 要件定義から実装までを一貫して行えるパートナーを選定している
- 導入後のサポート・保守体制を確認している
BPRと実装を一貫して行う重要性
BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング) と実装を一貫して行うことで、要件定義の段階で想定していた業務改善が、実際のツールに正確に反映されます。
要件定義と実装が分断されると、以下のような問題が発生しやすくなります。
- 要件の伝達過程で情報が欠落・変質する
- 実装段階で「想定と違う」という手戻りが発生する
- 業務実態とツールの仕様が乖離する
- 結局、現場で使われないツールができてしまう
一貫して対応できるパートナーに依頼することで、これらのリスクを軽減できます。
外注先選びのポイント
外注先を選定する際は、以下の点を確認することが重要です。
- BPR(業務プロセス見直し)から実装まで一貫して対応できるか
- 自社の業界・業務への理解があるか
- 過去の類似案件の実績があるか
- 導入後のサポート・保守体制が整っているか
- コミュニケーションが円滑に取れるか
要件定義だけ行って実装は別会社に引き継ぐパターンでは、情報の伝達ロスや認識齟齬が発生しやすくなります。
まとめ:BPRと実装の一貫で成功するツール開発
本記事では、ツール開発の成功パターンと失敗パターン、具体的な成功事例、そして成功させるためのポイントを解説しました。
記事の要点
- ノーコード/ローコード/フルスクラッチは業務複雑度に応じて選定する
- 汎用ツールへの無理な適用や、要件定義と実装の分断は失敗につながりやすい
- 成功事例では業務プロセスの見直しとツール最適化を一体で実施している
- ROI測定を早期に設計し、効果を検証できる体制を整える
- BPRから実装まで一貫して対応できるパートナー選定が重要
ツール開発を成功させるには、業務プロセスの見直し(BPR)と実装を一貫して行える専門家に依頼することで、要件の齟齬や手戻りを防ぎ、本当に使われるツールを構築できます。本記事のチェックリストを活用して、自社のツール開発プロジェクトを検討してみてください。
