創業期の営業が「最初の受注」だけでは不十分な理由
創業期の営業活動は、最初の顧客獲得と拡大期を見据えた仕組み化を同時に設計することで、成長フェーズでも営業が回る組織を作ることができます。
この記事で分かること
- 創業期特有の営業課題と背景
- 最初の顧客を獲得する営業戦略
- 拡大期を見据えた営業の仕組み化の方法
- 創業期営業の仕組み化チェックリスト
2025年の調査によると、新規事業の目標達成率は41.2%にとどまり、多くの創業期企業が営業目標の達成に苦戦しています。この背景には、「まず売上を立てること」に集中するあまり、営業活動の仕組み化を後回しにしてしまう傾向があります。
創業期は確かにリソースが限られ、受注獲得が最優先課題です。しかし、受注を獲得するための活動と、その活動を再現可能にする仕組みづくりを分けて考えるのではなく、両立させることが重要です。
創業期特有の営業課題と背景
創業期の営業が難しい理由は、人手不足・ノウハウ不足・属人化リスクの3つに集約されます。
2025年の営業課題調査によると、「人手不足・体制不備」を挙げた企業は34.3%で最多、次いで「予算不足」が26.1%となっています。また、「営業スキル・ノウハウ不足」は36.3%の企業が課題として認識しています。
属人化とは、特定の個人に業務や知識が集中し、その人がいなければ業務が回らなくなる状態を指します。調査では、38.5%の企業が「営業プロセスの属人化」を課題として挙げています。
KPI(重要業績評価指標) とは、目標達成に向けた進捗を測定するための指標です。営業活動においては、架電数・アポ率・商談化率・受注率などが該当します。
人手不足と予算不足の中での優先順位
リソース制約が厳しい創業期では、すべてを自社で完結させようとせず、役割分担を明確にすることが現実的です。
調査では、営業予算が「十分に確保されている」と回答した企業はわずか18.8%にとどまります。限られた予算の中で成果を出すには、初期アプローチ(リスト作成、テレアポ)と商談・クロージングを分け、どこに自社リソースを集中させるかを決める必要があります。
属人化が拡大期に招くリスク
「まず売上を立てることが先決」という考えで営業プロセスの設計を後回しにすると、拡大期に大きな問題が発生します。この失敗パターンに陥った企業の多くが、以下のような状況に直面しています。
- 創業者や特定の営業担当者がいないと商談が進まない
- 営業ノウハウが言語化されておらず、採用しても育成ができない
- 商談履歴や顧客情報が散在し、引き継ぎに時間がかかる
- 成功パターンが不明確で、施策の再現性がない
38.5%の企業が属人化を課題と認識しているにもかかわらず、多くが「まず売上」という優先順位のまま仕組み化を後回しにしています。
最初の顧客を獲得する営業戦略
創業期で最初の受注を獲得するには、ターゲット顧客の明確化と、紹介以外のチャネル構築が重要です。
調査によると、創業期企業の主要な受注経路として「既存顧客・知人からの紹介」が60.7%で最多です。紹介は創業期において有効な手法であり、成果を出している企業も多くあります。しかし、紹介のみに依存した営業ではスケールに限界があります。
また、成果を出している企業の36.6%が「ターゲット顧客の見直し」を行っており、市場選定の重要性がうかがえます。
STP分析とは、市場をSegmentation(細分化)、Targeting(ターゲット選定)、Positioning(自社の位置づけ)の3つの視点で分析するフレームワークです。
テレアポ代行とは、電話による営業活動(テレアポ)を外部の専門企業に委託するサービスで、初期アプローチの効率化に活用されます。
ターゲット顧客の明確化(STP分析)
リソースが限られる創業期では、「誰にでも売る」アプローチは非効率です。STP分析を活用し、自社の強みを活かせる顧客層を明確にすることが最初のステップとなります。
具体的には以下の流れで進めます。
- Segmentation: 市場を業種・規模・課題・地域などで細分化
- Targeting: 細分化した市場の中から、自社が価値を提供できるセグメントを選定
- Positioning: 選定したセグメントに対して、競合との違いを明確化
紹介依存から脱却するアプローチ
紹介は創業期で有効な手法ですが、紹介のみに依存すると成長に限界があります。調査では、紹介を主力とする企業の61.5%が手動営業(個別対応)に頼っており、効率的な営業プロセスが構築されていない傾向が見られます。
紹介を活用しつつも、並行して以下の取り組みを進めることが推奨されます。
- ターゲットリストの作成と計画的なアプローチ
- 営業プロセスの記録と可視化
- KPIの設定とモニタリング
拡大期を見据えた営業の仕組み化
創業期から始めるべきなのは、営業プロセスの設計と記録です。紹介主力の企業でも、59%がKPIを設定しておらず、成果が低迷しているという調査結果があります。
以下の比較表で、創業期・成長期・拡大期それぞれのフェーズにおける営業課題と対策を整理します。
【比較表】創業期・成長期・拡大期の営業課題と対策比較
| フェーズ | 主な営業課題 | 優先すべき対策 |
|---|---|---|
| 創業期 | 人手不足、ノウハウ不足、予算制約 | ターゲット明確化、KPI設定、外部リソース活用 |
| 成長期 | 属人化、プロセス未整備、育成体制 | 営業プロセス標準化、ナレッジ共有、採用強化 |
| 拡大期 | 組織拡大に伴う品質低下、管理負荷 | マネジメント体制構築、システム導入、権限委譲 |
創業期の段階でKPI設定とプロセス記録を始めておくことで、成長期・拡大期への移行がスムーズになります。
KPI設定と営業プロセスの可視化
創業期から設定すべき基本的なKPIは以下の通りです。
- 架電数: 1日・1週間あたりのアプローチ数
- アポ率: 架電数に対するアポイント獲得率
- 商談化率: アポイントから商談に進んだ割合
- 受注率: 商談から受注に至った割合
- 平均単価: 1件あたりの受注金額
これらのKPIを記録し、どの活動が成果につながっているかを可視化することで、営業プロセスの改善ポイントが明確になります。
リードナーチャリングとは、見込み顧客に対して継続的に情報提供や接触を行い、購買意欲を高めていく活動です。創業期では即時の受注獲得が優先されますが、中長期的な受注につなげるための仕組みも並行して構築することが理想的です。
外部リソースの活用で初期アプローチを効率化
人手不足を解消する方法として、外部リソースの活用があります。初期アプローチ(リスト作成、テレアポ)は外部に委託し、商談・クロージングという成果に直結する活動に自社リソースを集中させる役割分担が有効です。
テレアポ代行を活用する際のポイントは以下の通りです。
- ターゲット顧客の定義を明確にした上で依頼する
- スクリプト(トーク内容)は自社で準備・監修する
- 商談に進んだ際の引き継ぎルールを事前に決めておく
- 成果指標(アポイント数、商談化率など)を設定し振り返りを行う
創業期営業の仕組み化チェックリスト
受注獲得と基盤構築を両立するために、以下のチェックリストで自社の状況を診断してください。
【チェックリスト】創業期営業の仕組み化チェックリスト(受注獲得×基盤構築)
- ターゲット顧客(業種・規模・課題)を明確に定義している
- ターゲットリストを作成し、計画的にアプローチしている
- 営業活動のKPI(架電数・アポ率・商談化率・受注率)を設定している
- KPIを定期的に記録・モニタリングしている
- 商談履歴を記録し、一元管理している
- 営業プロセス(アプローチ→商談→クロージング)が言語化されている
- 成功した商談のパターンを分析・共有している
- 外部リソース(テレアポ代行等)の活用を検討・実施している
- 自社リソースを商談・クロージングに集中させる役割分担ができている
- 紹介以外の新規開拓チャネルを持っている
- 営業ノウハウを言語化し、引き継ぎ可能な状態にしている
- 拡大期に向けた採用・育成の計画がある
該当項目が9個以上:仕組み化の基盤が整っています 該当項目が5〜8個:部分的な改善で成長期に備えられます 該当項目が4個以下:受注獲得と並行して仕組み化を進めることを推奨します
まとめ:創業期の営業は「受注獲得」と「仕組み化」の両輪で進める
創業期の営業活動は、最初の顧客獲得と拡大期を見据えた仕組み化を同時に設計することで、成長フェーズでも営業が回る組織を作ることができます。
「まず売上を立てること」を優先し、営業プロセスの設計を後回しにすると、拡大期に属人化の問題が顕在化します。創業期の段階からKPI設定と営業プロセスの記録を始めることで、成長期への移行をスムーズにできます。
本記事のポイント
- 創業期の営業課題は人手不足・ノウハウ不足・属人化リスクの3つ
- 紹介は有効だが、紹介のみへの依存はスケールの限界につながる
- KPI設定とプロセス記録を創業期から始めることが拡大期への備えになる
次のアクションとして、まず本記事のチェックリストで自社の状況を診断してください。該当項目が少ない場合は、ターゲット明確化とKPI設定から着手することを推奨します。
