SI営業とは:IT業界で求められる営業職の全体像
SI営業で成果を出すための答えは明確で、SI営業は技術者との連携が不可欠な職種だが、技術者に依存しすぎた属人的体制では組織としてスケールできない。営業プロセスの可視化と標準化を進めることで、持続的に成果を出せる体制を構築できます。
SI営業とは、システムインテグレーター(SIer)の営業職であり、顧客の業務課題をヒアリングしITソリューションを提案・受注する役割を担います。国内SIer市場規模は約5.5兆円(2024年度比+3.2%)と推計されており、安定した成長を続けている業界です。
この記事で分かること
- SI営業の具体的な業務内容と業務フロー
- SI営業とSaaS営業の違い(比較表付き)
- SI営業に必要なスキルと知識
- 属人化を防ぐプロセス標準化の方法(チェックリスト付き)
この記事では、IT業界への転職を検討している営業経験者、またはSI営業組織の効率化を考えている営業マネージャーを対象に、SI営業の基本から組織としての成功に必要なプロセス設計まで解説します。
SI営業の具体的な業務内容と業務フロー
SI営業の業務は、顧客課題のヒアリングからITソリューションの提案、プロジェクト管理、継続的な関係構築まで多岐にわたります。特にアカウント営業では、1件あたり数億円規模の大型プロジェクトが主流で、受注サイクルは6-12ヶ月と長いのが特徴です。
SI営業には主に2つの形態があります。
アカウント営業とは、特定の大口顧客を専任で担当するSI営業の形態です。1件あたり数億円規模の案件を長期的に管理し、顧客との深い関係構築が求められます。
ソリューション営業とは、特定のソリューション(ERP、CRM等)に特化して複数顧客に提案するSI営業の形態です。製品・サービスの専門知識を活かして横断的に営業活動を行います。
顧客課題のヒアリングからプロジェクト管理まで
SI営業の業務フローは以下の流れで進むのが一般的です。
- 顧客課題のヒアリング: 顧客の業務課題や現行システムの問題点を把握
- ITソリューション提案: 技術者と連携し、課題解決に最適なソリューションを提案
- プロジェクト管理: 受注後は開発チームとの橋渡し役として進捗管理に関与
- 継続関係構築: 納品後も顧客との関係を維持し、追加案件や紹介につなげる
技術的負債とは、レガシーシステムに蓄積された技術的な問題のことです。SI営業が顧客課題をヒアリングする際、この概念を理解しておくことで、顧客の真の課題を把握しやすくなります。
SI営業とSaaS営業の違い
SI営業とSaaS営業は、同じIT業界の営業職でも、ビジネスモデルや業務スタイルが大きく異なります。キャリア選択の参考として、両者の違いを整理しておきましょう。
「SaaS営業のほうが稼げる」という認識がありますが、これは必ずしも正確ではありません。SIer営業担当者の平均年収は600万円(30代前半、SIer専業平均)とされており、SaaS業界営業職の平均年収478万円と比較すると高い傾向にあります。ただし、企業規模や担当案件により大きく変動するため、あくまで目安として捉えてください。
ザモデル型(The Model) とは、SaaS企業で採用される分業型営業スタイルです。インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスに分業し、それぞれの役割に特化して効率化を図ります。
【比較表】SI営業とSaaS営業の違い比較表
| 比較項目 | SI営業 | SaaS営業 |
|---|---|---|
| ビジネスモデル | 受託開発・請負型 | サブスクリプション型 |
| 案件規模 | 大型(数億円規模) | 小〜中型(月額課金) |
| 受注サイクル | 長期(6-12ヶ月) | 短〜中期 |
| 営業スタイル | 顧客専任型(アカウント営業) | 分業型(ザモデル型) |
| 技術者連携 | 密接(提案段階から関与) | 限定的(製品説明が中心) |
| 顧客関係 | 長期深耕型 | 継続的なサポート型 |
| 参考年収(目安) | 600万円(30代前半平均) | 478万円(業界平均) |
| 必要スキル | 技術理解・プロジェクト管理 | 製品知識・効率的なクロージング |
※年収は調査データに基づく目安であり、企業規模・経験・担当案件により大きく変動します。
SI営業に必要なスキルと知識
SI営業で成果を出すためには、営業スキルに加えて技術的な基礎知識が必須化しています。「SI営業は技術に詳しくなくてもできる」という認識は、現在のIT業界では通用しません。
次世代のSI営業に求められるスキルとして、以下が挙げられます。
- システム構造理解: 顧客の現行システムや技術的負債を理解する力
- データ分析力: 顧客の業務データから課題を抽出する力
- 可視化技術活用力: 提案内容を分かりやすく伝えるためのスキル
これらのスキルは、一朝一夕で身につくものではありませんが、技術者との連携を通じて段階的に習得していくことが可能です。
技術者との連携を円滑にするコミュニケーション力
SI営業において、技術者との連携は成功の鍵です。しかし、技術者に依存しすぎると属人化の原因になります。
技術者との連携を円滑にしつつ、営業として自立するためには「顧客視点での技術説明」ができるようになることが重要です。ある企業では、顧客視点での技術説明研修を実施し、営業担当者が技術者の説明を顧客に分かりやすく伝えるスキルを強化しています。
ポイントは、技術者に「丸投げ」するのではなく、営業自身が顧客と技術の橋渡し役として機能することです。
SI営業の属人化を防ぐプロセス標準化
SI営業組織が直面する最大の課題のひとつが「属人化」です。「技術的なことは技術者に任せればいい」と考え、営業プロセスの標準化や顧客情報の共有を怠ると、特定の技術者の異動・退職で案件継続が困難になり、組織として知見が蓄積されません。これは典型的な失敗パターンです。
属人化を防ぎ、組織として持続的に成果を出すためには、営業プロセスの可視化と標準化が不可欠です。以下のチェックリストを活用して、自組織の標準化状況を確認してみてください。
【チェックリスト】SI営業プロセス標準化チェックリスト
- 顧客情報が個人の手帳やメールではなく、共有システムに記録されている
- 案件の進捗状況がリアルタイムで可視化されている
- 提案書のテンプレートが整備され、品質が均一化されている
- 過去の提案事例・成功事例がデータベース化されている
- 顧客との商談内容が記録され、引き継ぎ可能な状態になっている
- 技術者との連携プロセスが標準化されている
- 受注確度の判定基準が明確に定義されている
- 定期的な案件レビューミーティングが実施されている
- 新人営業向けのオンボーディングプロセスが整備されている
- 顧客別の関係者マップが作成・更新されている
- 競合情報が収集・共有されている
- 失注分析が定期的に行われ、改善に活かされている
- 営業活動のKPIが設定され、定期的にモニタリングされている
- 担当者が不在でも案件対応が可能な体制になっている
- ナレッジ共有の仕組み(勉強会、事例共有等)がある
顧客情報と案件進捗の可視化
標準化の第一歩は、顧客情報と案件進捗の可視化です。営業支援ツール(SFA/CRM)を活用することで、個人に依存しない情報管理が可能になります。
可視化すべき情報の例:
- 顧客の組織図・関係者情報
- 過去の提案内容・商談履歴
- 現在進行中の案件とフェーズ
- 技術者とのコミュニケーション記録
- 競合の動向・提案状況
ツールの導入だけでなく、入力ルールの徹底と定着化が成功のポイントです。
まとめ:SI営業で成果を出すために
本記事では、SI営業の基本から、属人化を防ぐプロセス標準化まで解説しました。
本記事のポイント:
- SI営業は顧客課題のヒアリングからプロジェクト管理まで幅広い業務を担う
- SaaS営業とは案件規模・受注サイクル・営業スタイルが大きく異なる
- 「技術に詳しくなくてもできる」は過去の認識。システム構造理解は必須化している
- 属人化を防ぐには、営業プロセスの可視化と標準化が不可欠
国内SIer市場規模は約5.5兆円(2024年度比+3.2%)と推計されており、SI営業は安定したキャリアを築ける職種です。
SI営業は技術者との連携が不可欠な職種ですが、技術者に依存しすぎた属人的体制では組織としてスケールできません。営業プロセスの可視化と標準化を進めることで、持続的に成果を出せる体制を構築できます。
転職を検討している方は、本記事で紹介したスキルセットを参考にキャリア形成を進めてください。営業マネージャーの方は、チェックリストを活用して組織の標準化状況を確認し、改善に着手してみてください。
