シリーズCマーケティング戦略|IPO/M&Aを見据えた組織設計

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2026/1/1210分で読めます

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シリーズC調達後にマーケティング戦略を見直すべき理由

IPO/M&Aに向けてマーケティング組織をスケールさせたいが、属人的な運用から脱却できていないという課題を解決したいなら、シリーズC段階のマーケティングはIPO/M&Aを見据えた「再現性」と「ROI可視化」が鍵であり、MA/SFA連携を軸にした組織・プロセス設計を整備することで、属人的な運用から脱却し持続的な成長基盤を構築できます。

2025年上半期の国内スタートアップ資金調達金額は3,810億円で、前年から大きな回復が見られていない横ばい状態です(国内スタートアップ投資動向2025上半期)。この環境下では、調達した資金をいかに効率的に活用し、投資対効果を示せるかがより重要になっています。

この記事で分かること

  • シリーズC段階でマーケティングKPIをどのように設計すべきか
  • 属人的運用から脱却するための組織設計とMA/SFA活用方法
  • 施策別のKPI設計と投資対効果の可視化方法
  • マーケティング組織設計のセルフチェックリスト

シリーズCの定義と他ラウンドとのマーケティング課題の違い

シリーズCとは、PMF達成・事業モデル実証後に、IPO/M&Aを視野に入れた大規模な事業拡大のための資金調達ラウンドを指します。ただし、日本の公的機関による「シリーズC」の厳密な定義は存在せず、VC・PE業界の実務慣行による区分である点に注意が必要です。

シリーズA/B/Cでは、マーケティングの役割が段階的に変化します。シリーズAではPMF検証のためのリード獲得、シリーズBでは成長加速のためのスケーリングが中心ですが、シリーズCではIPO/M&Aを見据えた「売上成長モデル全体の設計」へと役割が拡大します。

パイプラインとは、商談中案件の総額を指し、シリーズC以降はKGIとしてパイプライン金額を重視する企業が増えています。経営層や投資家への説明責任を果たすためには、マーケティングKPIと経営KPIを接続させる設計が不可欠になります。

シリーズA/Bとの違い:量から質へのシフト

シリーズC段階では、リード数よりも受注率・LTVを重視する方向へシフトすることが求められます。BtoBマーケ部門が現在重視しているKPIは「新規リード獲得数」が32.1%で1位、受注率11.1%、ウェブサイト訪問件数7.9%、コンバージョン率7.9%と続いています(BtoBマーケティングKPI調査2024)。

この調査結果が示すように、多くの企業はまだリード数重視の段階にありますが、シリーズCでは違うアプローチが必要です。LTV/CACとは、顧客生涯価値(LTV)を顧客獲得コスト(CAC)で割った比率で、SaaSでは3倍以上が健全ラインとされています(ただし、これは海外SaaSのベンチマークであり、日本ローカルの統計は限定的である点に注意してください)。

イグジットを意識するなら、単なるリード数ではなく、受注率やLTVまでつないだKPI設計が必要になります。

シリーズC段階で設計すべきマーケティングKPIとROI管理

シリーズC段階では、CPA(顧客獲得単価)の最適化とROI可視化の仕組み構築が重要です。CPA(Cost Per Acquisition) とは、顧客獲得単価のことで、リード1件あたりの獲得コストを指す場合はCPL(Cost Per Lead)とも呼ばれます。

よくある失敗パターン:広告費拡大だけでは成果が出ない

シリーズC調達後に「とにかく広告費を増やす」「マーケ人員を大量採用する」という量的拡大だけを行い、KPI設計やMA/SFA連携によるプロセス整備を後回しにして、投資対効果が見えないまま資金を消耗してしまう企業が少なくありません。この考え方は誤りです。投資家・経営層への説明責任を果たすためには、再現性のあるプロセスとROI可視化の仕組みが不可欠です。

BtoBマーケティング担当者のCPA目標は5,000〜10,000円未満が21.8%、10,000〜15,000円未満が15.3%と、5,000〜15,000円帯が現実的な目標帯として使われています(BtoBマーケティングCPA調査2025)。自社のCPA目標を設定する際の目安として参考になりますが、業種や商材により適正値は大きく異なります。

BtoB広告で最も重視されているKPIはCVR(コンバージョン率)で28.7%と、単価(CPC/CPA)より獲得効率重視が主流となっています(BtoB広告運用レポート2025)。また、広告経由リードの商談化率は11〜20%がボリュームゾーンで、「商談化率15%」をひとまずの標準目標とするのが妥当とされています(BtoB広告運用レポート2025)。ただし、これらも業種や商材によって大きく異なる目安であることを念頭に置いてください。

投資家が見るマーケティングKPIとは

IPO/M&A時に投資家・経営層が重視するのは、ARR(年間経常収益)・パイプライン金額・LTV/CACといった指標です。マーケティング部門が「リード数」だけを報告していては、経営層との対話が成り立ちません。

マーケKPIと経営KPIの接続が重要であり、「有効商談数」「パイプライン創出額」へKPIをシフトさせることで、投資家が求める指標との整合性を取ることができます。

シリーズC段階のマーケティング組織設計とMA/SFA活用

属人的運用から脱却するためには、組織設計とツール活用の両面からアプローチすることが必要です。RevOps(Revenue Operations) とは、マーケ・インサイドセールス・フィールドセールス・CSを一体の収益組織として設計・運用する考え方です。

CPA高騰を受けて強化したい施策として、SNS施策55.9%、SEO施策52.4%、CRM施策47.6%が上位に挙がっています(BtoBマーケティングCPA調査2025)。短期の広告費投下に依存するのではなく、オーガニック流入やナーチャリング強化による全体ROI改善に舵を切る企業が増えています。

リードの受注率を上げるために必要な取り組みとして、発信コンテンツの見直し50.5%、営業への詳細な顧客情報提供34.7%、受注率の高いチャネルへの施策集中34.2%が上位となっています(BtoBマーケティングKPI調査2024)。これらの取り組みを組織的に実行するためには、MA/SFA連携による再現性のあるプロセス構築が基盤となります。

【チェックリスト】シリーズC段階マーケティング組織設計チェックリスト

  • マーケティングKPIが経営KPI(ARR・パイプライン)と接続している
  • CPA目標値が設定され、定期的にモニタリングしている
  • 商談化率の目標値が設定され、追跡している
  • LTV/CAC比率を算出・管理している
  • MA/SFAが導入され、データが連携している
  • リードスコアリングのルールが定義されている
  • マーケからセールスへのリード引き渡し基準が明確
  • 施策別ROIを可視化できる仕組みがある
  • マーケ・インサイドセールス・フィールドセールスの役割分担が明確
  • 定例のRevOps会議(部門横断レビュー)を実施している
  • コンテンツ制作の体制・プロセスが整備されている
  • オーガニック流入(SEO・SNS)の強化計画がある
  • ナーチャリングシナリオが設計されている
  • 投資家・経営層向けのレポーティング体制が整っている
  • 属人的なノウハウがドキュメント化されている

RevOps視点でのマーケ・セールス連携

RevOps視点でマーケとセールスを連携させることで、部門間の分断を解消し、収益最大化を図ることができます。営業への詳細な顧客情報提供が34.7%の企業で受注率向上に必要な取り組みとして認識されており(BtoBマーケティングKPI調査2024)、MA/SFAを活用した情報連携が効果的です。

具体的には、リードの行動履歴・スコア・関心トピックをセールスに引き継ぐことで、商談の質を高めることができます。

シリーズC段階マーケティング施策別KPI設計の実践

施策ごとに適切なKPIを設定し、投資対効果を可視化することがシリーズC段階では求められます。以下の表は、主要施策別のKPI設計例です。

【比較表】シリーズC段階マーケティング施策別KPI設計表

施策カテゴリ 主要KPI 計測指標例 優先度の考え方
リスティング広告 CPA・CVR クリック数、CV数、CPA 短期リード獲得に有効、CPA高騰時は見直し
SNS広告 CPA・エンゲージメント リーチ、CV数、フォロワー増 認知拡大とリード獲得の両立
SEO/コンテンツ オーガニック流入・CV数 PV、滞在時間、CV数 中長期のCPA改善に寄与
イベント・展示会 名刺獲得数・商談化率 来場者数、商談数 業界認知・リード獲得の両面
PR・広報 メディア掲載数・認知度 記事掲載数、指名検索数 ブランド構築(ROI可視化は難しい)
CRM/ナーチャリング 商談化率・受注率 メール開封率、商談創出数 既存リードの活性化
ウェビナー 参加者数・商談化率 申込数、参加率、商談数 リード育成と商談創出

参考事例として、GROWTH VERSEは2024年にシリーズCラウンドで総額29.2億円(みずほ銀行からの借入20億円を含む)の資金調達を実施しています(GROWTH VERSE シリーズC資金調達リリース)。ただし、これは単一企業の事例であり、同様の成果が再現されることを保証するものではありません。

まとめ:シリーズC段階のマーケティング成功に必要なこと

本記事では、シリーズC段階のマーケティング戦略について、KPI設計、組織設計、施策別の実践方法を解説しました。

重要なポイント

  • シリーズCでは「リード数」から「有効商談数・パイプライン創出額・LTV/CAC」へKPIをシフトする
  • 「広告費を増やすだけ」「KPI設計を後回し」では投資対効果が見えないまま資金を消耗するリスクがある
  • MA/SFA連携を軸にした再現性のあるプロセス構築が、属人的運用からの脱却の鍵
  • RevOps視点でマーケ・セールス・CSを一体の収益組織として設計することが有効

まずは本記事のチェックリストを使って、自社のマーケティング組織・プロセスの現状を確認してみてください。不足している項目から優先的に着手することで、IPO/M&Aを見据えた持続的な成長基盤を構築できます。

シリーズC段階のマーケティングはIPO/M&Aを見据えた「再現性」と「ROI可視化」が鍵であり、MA/SFA連携を軸にした組織・プロセス設計を整備することで、属人的な運用から脱却し持続的な成長基盤を構築できます。

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よくある質問

Q1シリーズC段階でマーケティングKPIは何を見るべきですか?

A1シリーズC段階ではリード数よりも有効商談数・パイプライン創出額・LTV/CACを重視すべきです。BtoB広告で最も重視されているKPIはCVR(コンバージョン率)で28.7%という調査結果があり、単価より獲得効率を重視する傾向があります。投資家・経営層への説明責任を果たすため、マーケKPIと経営KPIの接続が重要です。

Q2シリーズC企業の商談化率の目安はどのくらいですか?

A2広告経由リードの商談化率は11〜20%がボリュームゾーンで、15%をひとまずの標準目標とするのが妥当とされています。ただしこれは業種や商材により大きく異なる目安であり、自社の過去実績と比較しながら適切な目標値を設定することが重要です。

Q3シリーズCでCPA高騰にどう対応すべきですか?

A3CPA高騰対策として強化したい施策はSNS55.9%、SEO52.4%、CRM47.6%が上位に挙がっています。短期の広告費投下に依存するのではなく、オーガニック流入やナーチャリング強化による全体ROI改善に舵を切る企業が増えています。

Q4シリーズC段階でMA/SFA導入は必須ですか?

A4必須ではありませんが、IPO/M&Aを見据えるなら再現性のあるプロセス構築のために推奨されます。受注率向上には営業への詳細顧客情報提供(34.7%)が重要であり、MA/SFA連携がその基盤となります。属人的な運用から脱却するためにも、データに基づいたプロセス設計が有効です。

Q5シリーズBとシリーズCのマーケティングの違いは何ですか?

A5シリーズBはPMF達成後の成長加速が目的ですが、シリーズCはIPO/M&Aを視野に入れた事業拡大フェーズです。マーケティングも「リード供給」から「売上成長モデル全体の設計」へ役割が拡大し、ROIの説明責任が増します。KPIもリード数から有効商談数・パイプライン金額へシフトすることが求められます。

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