シリーズB段階で営業組織の課題が顕在化する理由
シリーズB段階の営業組織とは何か。シリーズB段階の営業組織は、創業メンバーの属人的な営業から脱却し、MA/SFAを活用した営業プロセスの標準化と可視化によって、採用した営業メンバーが早期に成果を出せる再現性のある体制を構築することが成長の鍵です。
シリーズBとは、PMF達成済みで事業が軌道に乗り、スケールのために数億〜数十億円を投下するミドルステージの資金調達ラウンドを指します。PMF(Product Market Fit) は、製品が市場ニーズに適合し、持続的な成長が見込める状態であり、シリーズBの前提条件となります。
帝国データバンクによると、2025年度上期の企業倒産件数は5,146件(前年同期比+3.1%)で、原因の最多は「販売不振」です。この数字が示すように、事業を成長させるためには営業組織の構築が極めて重要です。
グローバル調査によると、シリーズBは「市場シェア拡大と運用効率(ユニットエコノミクス)達成」が主目的とされています(日本市場では異なる傾向がある可能性があります)。つまり、単に売上を伸ばすだけでなく、効率的に成長することが求められるフェーズです。
この記事で分かること
- シリーズB段階で営業組織に求められる要件
- よくある失敗パターンと回避方法
- MA/SFAを活用した営業プロセスの標準化方法
- 営業組織構築の実践ステップとチェックリスト
シリーズB段階の営業組織に求められる要件
シリーズB段階では、効率的な成長と組織のスケールを両立できる営業体制が求められます。
シリーズB調達額の相場は数億〜数十億円とされており、事業によっては50億円規模になることもあります。この資金を活用して、営業組織を含む事業基盤を拡大することが一般的です。
シリーズA〜B前後で組織規模は30名から100名超まで拡大し、各部門に経験ある責任者を置くフェーズに入ります。営業組織においても、創業メンバーによる属人的な営業から、分業化された組織的な営業への移行が求められます。
ユニットエコノミクスとは、顧客1単位あたりの収益性指標です。LTV/CAC比率で測定し、一般的に3倍以上が健全とされています。シリーズB段階では、この指標を意識した効率的な顧客獲得が重要になります。
シリーズA/B/Cの違いと営業組織の進化
各ラウンドでは、営業組織に求められる役割が異なります。
Burn Multipleとは、資金効率指標で、投下資金に対してどれだけARRが増加したかを示します。低いほど効率的であり、シリーズB以降では特に重視される傾向にあります。
【比較表】シリーズA/B/C段階別・営業組織設計比較表
| ラウンド | 調達規模感 | 組織規模 | 営業組織の特徴 | 求められること |
|---|---|---|---|---|
| シリーズA | 数千万〜数億円 | 10-30名 | 創業メンバー中心の属人営業 | PMF検証・勝ちパターンの発見 |
| シリーズB | 数億〜数十億円 | 30-100名超 | 分業体制への移行期 | プロセス標準化・再現性構築 |
| シリーズC | 数十億円以上 | 100名超 | 組織的営業体制の確立 | スケール・市場シェア拡大 |
シリーズAでは創業メンバーが属人的に営業を行い、勝ちパターンを見つける段階です。シリーズBではその勝ちパターンを標準化し、新たに採用したメンバーでも再現できる体制を構築します。シリーズCではその体制をさらにスケールさせていきます。
シリーズB営業組織で陥りがちな失敗パターン
よくある失敗パターンは、シリーズB調達後に営業人員を急拡大するも、営業プロセスが属人化したままで新メンバーが成果を出せず、採用コストだけが増加してしまうことです。この「人を増やせば売上が上がる」という考え方は誤りです。
人員拡大より先に、営業プロセスの標準化と可視化の仕組みづくりが必要です。創業メンバーの頭の中にある「暗黙知」を、誰でも実行できる「形式知」に変換することが、再現性のある営業組織の第一歩となります。
「採用すれば成果が出る」は誤り
創業メンバーの暗黙知が共有されていない状態で営業メンバーを採用すると、以下の問題が発生します。
- 新メンバーが何をすればいいかわからず、立ち上がりに時間がかかる
- 創業メンバーの時間が新人指導に取られ、自身の営業活動が停滞する
- 成果が出ない新メンバーが早期離職し、採用コストが無駄になる
- 「うちの営業は難しい」という誤った認識が広がる
これらの問題を回避するには、採用前に営業プロセスを言語化し、MA/SFAで可視化しておくことが重要です。
MA/SFA活用による営業プロセスの標準化
営業プロセスの標準化には、MA/SFAの活用が効果的です。これにより、属人的なノウハウを組織の資産として蓄積・活用できます。
経営管理SaaSのDIGGLEはシリーズBで17.5億円を調達し、従業員数を104名から160名へ約54%拡大予定と報告されています(特定企業事例のため一般化には注意が必要です)。また、同社は昨年のBurn Multipleが約0.5と高効率で、今後は1倍程度を維持しながら成長率2倍継続を目指すとされています。このように、効率的な成長を実現している企業は、営業プロセスの標準化に投資していることが多いです。
SDR/BDRとは、インサイドセールス職種を指します。SDRはインバウンドリード対応、BDRはアウトバウンド開拓を担当します。シリーズB段階では、インサイドセールス(SDR/BDR)とフィールドセールス(AE)の分業体制を構築することで、営業効率を高めることが一般的です。
営業プロセスの可視化とKPI設計
MA/SFA連携による可視化では、以下の要素を整備します。
- リード獲得からクロージングまでの各ステージの定義
- 各ステージ間の転換率の計測
- 営業活動の量(架電数、商談数等)の記録
- パイプラインの金額と確度の管理
ユニットエコノミクスを健全に保つためには、CAC(顧客獲得コスト)回収期間やLTV/CAC比率などの投資効率指標を整備し、定期的にモニタリングすることが重要です。営業プロセスが可視化されていれば、どこにボトルネックがあるかを特定し、改善施策を打つことができます。
シリーズB営業組織構築の実践ステップ
シリーズB段階で営業組織を構築する際は、以下のステップで進めることが効果的です。
組織規模が30名から100名超まで拡大するこの段階では、各部門に経験ある責任者を置くことが求められます。営業組織においては、営業企画(RevOps)の専任者を設置することで、プロセスの標準化と改善を継続的に推進できます。
【チェックリスト】シリーズB営業組織構築チェックリスト
- 現在の営業プロセスを言語化・文書化している
- 各営業ステージ(リード〜商談〜受注)の定義が明確である
- MA/SFAツールを導入している
- 営業活動がMA/SFAに記録される運用ルールがある
- リードのスコアリング基準を設定している
- MQL/SQLの定義と引き渡し基準が明確である
- パイプラインの可視化ができている
- 営業KPIを設定し、定期的にレビューしている
- CAC・LTV/CAC比率を計測している
- SDR/BDRとフィールドセールスの分業体制を設計している
- 営業のオンボーディングプログラムを整備している
- 商談テンプレート・トークスクリプトを用意している
- 成功事例・失敗事例のナレッジを蓄積している
- 営業企画(RevOps)の担当者または体制がある
- 営業とマーケティングの連携ルールが明確である
- 定期的な営業会議・パイプラインレビューを実施している
チェックが半分以下の場合、営業人員の拡大よりも先にプロセス整備を優先することをおすすめします。
専門家支援の活用とタイミング
自社リソースだけでは営業組織の構築が難しい場合、専門家支援の活用も選択肢となります。
以下のようなタイミングで外部支援を検討することが有効です。
- MA/SFAの導入・設計段階
- 営業プロセスの言語化・標準化
- KPI設計と可視化基盤の構築
- SDR/BDR体制の立ち上げ
- 営業責任者の採用・育成
特にMA/SFA導入は、設計段階で専門的な知見があると、後の運用が大きく変わります。ツールの機能だけでなく、自社の営業プロセスに合った設計ができるかがポイントです。
まとめ|再現性のある営業組織がシリーズB成長の鍵
本記事では、シリーズB段階の営業組織構築について解説しました。
重要なポイントを振り返ります。
- シリーズBは効率的成長が求められるフェーズであり、営業組織のスケールが課題となる
- 「人を増やせば売上が上がる」という考え方は誤り。プロセス標準化が先
- MA/SFA活用により営業プロセスを可視化し、再現性を確保する
- SDR/BDRとフィールドセールスの分業体制を構築する
- 営業企画(RevOps)専任者の設置を検討する
まずは本記事のチェックリストを活用し、自社の営業組織の現状を確認してみてください。チェックが少ない項目から優先的に取り組むことで、採用拡大の前にプロセス基盤を整えることができます。
シリーズB段階の営業組織は、創業メンバーの属人的な営業から脱却し、MA/SFAを活用した営業プロセスの標準化と可視化によって、採用した営業メンバーが早期に成果を出せる再現性のある体制を構築することが成長の鍵です。
