シリーズB企業がインサイドセールス組織で直面する課題
多くの方が悩むシリーズB段階のインサイドセールス組織強化。結論は、採用拡大やツール導入だけでなく、MA・SFAのデータ連携とKPI設計という『仕組み』を整備することで、シリーズCに向けたスケーラブルな営業体制の土台が構築できます。
シリーズBとは、スタートアップの資金調達ラウンドの一つで、事業成長・組織拡大フェーズを指します。この段階では、営業組織の強化が経営課題の一つとなります。
インサイドセールス(IS) とは、電話やメール等の非対面チャネルで見込み客にアプローチし、商談化を担う営業機能です。インサイドセールス白書2025によると、インサイドセールス部門の平均メンバー数は7.0名(過去最低を更新)、社会人経験平均9.5年(過去最低を更新)とされています(IS職202名対象のインターネット調査、自己申告ベース)。人材確保の難しさがうかがえます。
2025年上半期の日本国内スタートアップ資金調達総額は3,399億円(前年比+4%)と報告されており、シリーズB企業への投資も活発です。しかし、調達した資金をどう活用するかが成長の分かれ目となります。
この記事で分かること
- シリーズB段階のインサイドセールス組織における課題
- やりがちな失敗パターンとその回避策
- シリーズB段階で整備すべき仕組みと診断チェックリスト
- シリーズCを見据えた運用定着の進め方
シリーズB段階の企業特性とインサイドセールスの役割
シリーズB段階の企業は、事業の成長性が検証され、組織を拡大するフェーズにあります。この段階でインサイドセールスは、マーケティングからの見込み客を商談化し、フィールドセールスに引き渡す重要な役割を担います。
国内セールステック市場規模は2024年現在4,797.2億円で、5年後には6,030.7億円に成長すると予測されています(年平均成長率約4.7%。ただし将来推計値のため変動リスクあり)。営業DXの潮流を背景に、インサイドセールスの重要性は高まっています。
SFA利用率は2016年の9.5%から2022年には32.1%に増加しており、営業活動の可視化・効率化が進んでいます。
THE MODELとは、分業型営業モデルとして知られ、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスを分離して効率化を図る手法です。シリーズB企業の多くがこのモデルを参考に組織設計を行っています。
THE MODELの限界とシリーズB以降の課題
THE MODELは分業による効率化に有効ですが、導入すれば自動的にスケールするわけではありません。
シリーズB以降は、インサイドセールスからフィールドセールスへの移行設計が課題となります。また、直販だけに依存せず、パートナー戦略との併用も検討すべきとされています。THE MODELの議論はSaaS業界中心で語られることが多く、業界・事業特性により適用可否が異なる点にも注意が必要です。
シリーズB企業がやりがちなインサイドセールス組織拡大の失敗パターン
シリーズBで調達した資金を使い、インサイドセールスの採用を急拡大するが、プロセス設計やツール連携が追いつかず、結局属人化したまま成果が伸び悩む——これが典型的な失敗パターンです。この考え方は誤りです。
IS組織の人数拡大が成果に直結するわけではありません。プロセス設計とツール活用が先決であり、仕組みが整わないまま採用を急拡大すると、個人の能力に依存した組織となり、再現性のある成長が困難になります。
採用先行・仕組み後回しの罠
「まず人を採用してから仕組みを整える」というアプローチは、シリーズB企業でよく見られます。しかし、採用が計画通りに進んでも、以下のような問題が発生しがちです。
- 新メンバーの教育・オンボーディングが属人的になる
- 営業プロセスが人によって異なり、成果にばらつきが出る
- マーケティングとの連携がうまくいかず、リードの引き渡しが滞る
- データが整備されておらず、KPIの測定・改善ができない
採用と並行して、もしくは採用より先に、プロセス設計とツール連携を整備することが重要です。
シリーズB段階で整備すべきインサイドセールスの仕組み
シリーズB段階でインサイドセールス組織を強化するには、以下の仕組みを整備することが重要です。
インサイドセールス白書2025によると、1日平均架電件数は34件(過去最高を更新)、リード追客回数は平均5.1回(過去最高を更新)とされています(IS職202名対象のインターネット調査、自己申告ベースのためバイアスの可能性あり)。これらの数値は業界ベンチマークとして参考になりますが、自社の商材やプロセスに応じた最適値は異なります。
SFA(Sales Force Automation) とは、営業活動の情報を可視化・管理し、効率化を支援するシステムです。通電率とは、架電に対して相手と実際に通話できた割合を指します。
【比較表】シリーズB段階で整備すべき仕組み一覧表
| 領域 | 整備すべき仕組み | 目的 | 優先度 |
|---|---|---|---|
| プロセス | 営業プロセスの標準化 | 属人化防止、再現性確保 | 高 |
| プロセス | リード引き渡し基準の明確化 | マーケ・IS連携の効率化 | 高 |
| ツール | MA・SFA連携 | データの一元管理、可視化 | 高 |
| ツール | 行動ログの自動記録 | 分析・改善の基盤作り | 中 |
| KPI | 商談化率・通電率の計測 | 成果の可視化、改善指標 | 高 |
| KPI | リード追客回数の管理 | フォロー漏れ防止 | 中 |
| 教育 | オンボーディングプログラム | 立ち上がり期間短縮 | 中 |
| 教育 | ナレッジ共有の仕組み | 属人化防止、ノウハウ蓄積 | 中 |
※優先度は一般的な目安です。自社の状況に応じて調整してください。
MA・SFA連携とKPI設計のポイント
MA・SFAのデータ連携とKPI設計は、シリーズB段階のインサイドセールス組織を仕組み化するうえで核となる要素です。
追跡指標(メールクリック・ウェブ訪問・資料開封)を活用し、リードの関心度を把握することで、優先順位をつけたアプローチが可能になります。ただし、追跡指標を取得しても即時フォローにつなげられていない企業も多いとされており、データ活用と行動の連携が課題となります。
KPI設計では、商談化率・通電率・リード追客回数など、組織として追うべき指標を明確にし、定期的に計測・改善するサイクルを回すことが重要です。
インサイドセールス組織の診断と改善ステップ
自社のインサイドセールス組織がシリーズB段階で整備すべき仕組みを備えているか、以下のチェックリストで診断してみてください。
IS組織構築は、初期は少人数体制からスタートし、KPI達成を確認しながら段階的に拡大するアプローチが有効です。
【チェックリスト】シリーズB段階のインサイドセールス組織診断チェックリスト
- 営業プロセスが標準化・文書化されている
- リードの引き渡し基準(MQL定義)が明確になっている
- MA・SFAが連携しデータが一元管理されている
- 商談化率・通電率などのKPIを定期的に計測している
- リード追客回数を管理し、フォロー漏れを防止している
- 行動ログが自動で記録される仕組みがある
- 新メンバー向けのオンボーディングプログラムがある
- ナレッジ・ノウハウの共有の仕組みがある
- マーケティングチームとの定例MTGが設定されている
- KPIに基づく改善サイクルが回っている
- 採用計画と仕組み整備の優先順位が明確になっている
- シリーズCを見据えた組織拡大計画がある
シリーズCを見据えた運用定着の進め方
シリーズCに向けては、「成長の再現性」を示せる組織体制が重要になります。投資家による選別が強化される傾向にあり、成長の再現性を示せる企業に資金が集中するとされています。
運用定着のためには、以下のポイントを意識することが重要です。
- KPIに基づくPDCAサイクルを定着させる
- 属人的なノウハウを組織のナレッジとして蓄積する
- 採用と仕組み整備を並行して進める計画を立てる
- マーケティング・フィールドセールスとの連携を強化する
まとめ|仕組みで構築するシリーズB段階のインサイドセールス組織
本記事では、シリーズB段階のインサイドセールス組織強化について、課題から実践ステップまで解説しました。
本記事の要点
- シリーズB段階では、人材確保の難しさと属人化がインサイドセールス組織の課題となりやすい
- 採用急拡大してもプロセス設計・ツール連携が追いつかず属人化するのは典型的な失敗パターン
- MA・SFAのデータ連携とKPI設計を先に整備することで、スケーラブルな組織の土台が作れる
- チェックリストで自社組織の現状を診断し、不足している仕組みから着手する
次のステップとして、まずチェックリストで自社組織の現状を確認し、整備が不足している領域を特定することをおすすめします。
改めて強調すると、シリーズB段階のインサイドセールス組織強化は、採用拡大やツール導入だけでなく、MA・SFAのデータ連携とKPI設計という『仕組み』を整備することで、シリーズCに向けたスケーラブルな営業体制の土台が構築できます。
