SDRとBDRの違いを理解するだけでは成果が出ない理由
自社の成長フェーズとリソースに合ったSDR/BDR体制の方向性を明確にするために必要なのは、SDRとBDRは「どちらが優れているか」ではなく、自社のリード獲得状況と成長フェーズに応じて適切に選択・組み合わせることです。
近年、THE MODEL(Salesforce社が提唱した営業プロセス分業モデル。マーケ・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの4分業体制)を採用するSaaS企業が増加し、SDR/BDR分業が標準化しつつあります。しかし、SDRとBDRの定義だけを理解して、自社の状況を考慮せずに流行りの手法を導入してしまい、リソースが分散して成果が出ないケースが後を絶ちません。
この記事で分かること
- SDRとBDRの基本的な定義と役割の違い
- ターゲット企業規模・KPI・スキルセットの具体的な違い
- 自社の成長フェーズに応じた最適な導入判断基準
- MA/SFAツールを活かしたSDR/BDR運用の実践ポイント
SDRとBDRとは?基本的な役割と定義
SDRとBDRは、どちらもインサイドセールスの手法ですが、アプローチの方向性が根本的に異なります。まずは両者の基本定義を明確にしておきましょう。
SDR(Sales Development Representative) とは、インバウンド型のインサイドセールス担当です。問い合わせや資料請求などのリードをフォローアップし商談化する役割を担います。
BDR(Business Development Representative) とは、アウトバウンド型のインサイドセールス担当です。ターゲット企業に能動的にアプローチし新規商談を創出する役割を担います。
SQL(Sales Qualified Lead) は、マーケティング部門がスコアリング等で営業引き渡し適格と判断したリードを指します。SDRの主要業務は、このSQL化の判定と営業への適切な引き継ぎです。
SDR(反響型インサイドセールス)の役割
SDRは、自社にアクションを起こした見込み客(顕在層)を対応・選別する役割です。主な業務には以下が含まれます。
- 問い合わせ、ホワイトペーパーダウンロード、セミナー参加などのインバウンドリードのフォローアップ
- リードの資格確認(SQL化)とクローザーへの引き継ぎ
- 顧客の興味やニーズに応じたパーソナライズされた情報提供
SDRのターゲットは従業員500名未満のSMB(中小企業)が中心で、受注数が多いため効率的な対応が可能とされています。SDRは「問い合わせ対応係」ではなく、リードの質を見極めて営業に適切に引き継ぐことが本来の役割です。
BDR(新規開拓型インサイドセールス)の役割
BDRは、自社がターゲットに定めた企業に対して能動的にアプローチし、商談機会を創出する役割です。主な業務には以下が含まれます。
- ターゲット企業リストの作成と優先順位付け
- 電話、メール、DM、SNSなどを活用した新規アプローチ
- 決裁フローのヒアリングや組織図の把握
- 意思決定者へのアプローチルート設計
日本国内のエンタープライズ企業は約11,000社で、全体の0.3%と限定的です。そのため、BDRは戦略的にターゲットを絞る必要があり、「飛び込み営業のデジタル版」ではなく、戦略的アプローチが求められます。
SDRとBDRの違いを徹底比較
SDRとBDRの違いを理解するには、ターゲット・アプローチ方法・KPI・スキルセットなど複数の観点から比較することが重要です。以下の比較表で両者の違いを整理します。
【比較表】SDRとBDRの違い比較表
| 比較項目 | SDR(反響型) | BDR(新規開拓型) |
|---|---|---|
| 営業タイプ | インバウンド型 | アウトバウンド型 |
| ターゲット企業規模 | SMB(従業員500名未満の中小企業) | エンタープライズ(大企業) |
| リード獲得元 | 問い合わせ・資料請求・セミナー参加 | 自社で作成したターゲットリスト |
| リードの特性 | 多くのリードが獲得できるが確度にバラツキがある | リード数は少ないが確度が高い |
| 主なKPI | 問い合わせ対応件数、商談化率 | 新規リード獲得数、アポイント設定率 |
| 求められるスキル | 顧客ニーズの引き出し、信頼関係構築 | 市場調査、ターゲット選定、戦略的アプローチ |
| 市場の特性 | チャーンレートが高い傾向 | チャーンレートが低く契約単価・継続率が高い |
| メリット | 効率的に多くの商談を創出可能 | 安定収益につながる大型契約の獲得 |
| リスク | インバウンド施策がないと機能しない | 戦略なしでは成果が出にくい |
チャーンレートとは、一定期間における顧客離脱率のことで、SaaSビジネスで重要な指標です。エンタープライズ市場はチャーンレートが相対的に低く、一度契約すれば契約単価が高く継続率も高いため安定収入につながるとされています。
ターゲット企業規模の違い
SDRとBDRの最も大きな違いは、ターゲットとする企業規模です。SDRはSMB(従業員500名未満の中小企業)を中心にターゲットとし、多くのリードを効率的に対応することが求められます。一方、BDRはエンタープライズ(大企業)をターゲットとしますが、日本国内のエンタープライズ企業は約11,000社(全体の0.3%)と限定的であり、戦略的なターゲット選定が不可欠です。
KPIとスキルセットの違い
SDRのKPIは、問い合わせ対応件数や商談化率が一般的です。顧客の興味やニーズに応じたパーソナライズされた情報提供により、信頼関係を構築するスキルが重要となります。
BDRのKPIは、新規リード獲得数やアポイント設定率が中心です。市場や業界のトレンドを把握し、最適なターゲットリストを作成する能力や、組織図把握・決裁フローのヒアリングといった戦略的アプローチのスキルが求められます。
成長フェーズ別:SDR/BDR導入の判断基準
自社にとって最適なインサイドセールス体制を構築するには、成長フェーズとリソース状況に応じた判断が必要です。SDRとBDRを同時に立ち上げようとする企業が多いですが、組織の成熟度とリソースを考慮し、段階的に導入する方が成功しやすいとされています。
【フロー図】SDR/BDR選択フローチャート
flowchart TD
A[インサイドセールス体制の検討開始] --> B{インバウンドリードは安定して獲得できているか?}
B -->|はい| C[SDRから導入を検討]
B -->|いいえ| D{エンタープライズ企業の開拓が必要か?}
D -->|はい| E[BDRの導入を検討]
D -->|いいえ| F[まずインバウンド施策を強化]
C --> G{エンタープライズ攻略も必要か?}
G -->|はい| H[SDR体制確立後にBDR追加]
G -->|いいえ| I[SDR体制の強化・拡大]
E --> J[ターゲットリスト作成・戦略設計から開始]
F --> K[コンテンツマーケティング・広告等の施策実施]
インバウンドリードが安定している場合
既にリード獲得ができている企業は、SDRから始めることが標準的なアプローチです。SDR導入時はインバウンド施策(コンテンツマーケティング)との連動が重要であり、リード獲得施策なしにSDRを置いても効果が出にくいことに注意が必要です。
SDRを導入する際のポイントは以下の通りです。
- マーケ部門との連携体制を構築する
- リードスコアリングの基準を明確にする
- SQL化の判定基準を営業部門と合意する
- 対応リードの優先順位付けルールを決める
エンタープライズ開拓が必要な場合
大企業との取引拡大を目指す場合は、BDRの導入を検討します。エンタープライズ市場はチャーンレートが相対的に低く、一度契約すれば契約単価が高く継続率も高いため安定収入につながるとされており、BDR投資の根拠となります。
ただし、日本国内のエンタープライズ企業は約11,000社と限定的であるため、以下のような戦略的アプローチが不可欠です。
- ターゲット企業の優先順位を明確に設定する
- 組織図を把握し、意思決定者を特定する
- 決裁フローを理解した上でアプローチする
- 長期的な関係構築を前提とした計画を立てる
SDR/BDR運用を成功させるMA/SFA活用のポイント
SDR/BDR体制を効果的に運用するには、MAやSFAツールの活用が鍵となります。リードスコアリングに基づく自動化されたSDR/BDR連携が進んでおり、ツールを適切に活用することで成果を高められます。
一例として、あるBDR支援企業では製造業・人材・SaaS50社以上で商談化率1.6%安定、月50件超の商談創出ケースがあると報告されています(ただし、これは支援企業の自己申告データであり、業種・規模・前提条件により結果は大きく異なることに注意が必要です)。
SDRのためのリードスコアリング設計
SDR運用においては、MAツールを活用したリードスコアリングが成果を左右します。SQL(Sales Qualified Lead) の判定基準を明確にし、営業引き渡しのタイミングを最適化することが重要です。
リードスコアリング設計のポイントは以下の通りです。
- 行動スコア(Web閲覧、資料DL、セミナー参加など)の重み付け
- 属性スコア(企業規模、業種、役職など)の設定
- SQL判定の閾値と営業への引き継ぎルール
- スコアリングロジックの定期的な見直し
BDRのためのターゲットリスト設計
BDR運用においては、SFAツールを活用したターゲットリスト管理が重要です。日本国内のエンタープライズ企業は約11,000社と限定的であるため、ターゲット絞り込みの精度が成否を分けます。
ターゲットリスト設計のポイントは以下の通りです。
- ICP(理想的な顧客像)の明確化
- 企業情報データベースの活用と優先順位付け
- 組織図・決裁フローの事前調査
- アプローチ履歴と次回アクションの管理
まとめ:自社に最適なSDR/BDR体制を構築するために
この記事では、SDRとBDRの違いについて、定義・ターゲット・KPI・スキルセットなど多角的な観点から解説しました。
SDRとBDRは、それぞれ異なる強みを持つインサイドセールス手法です。SDRはインバウンドリードを効率的に商談化することに強みがあり、BDRはエンタープライズ企業への新規開拓に強みがあります。どちらが優れているかではなく、自社のリード獲得状況と成長フェーズに応じて適切に選択・組み合わせることが、インサイドセールスの成果を最大化する鍵です。
一般的には、まずSDRから始めてインバウンドリードの対応体制を整え、その後必要に応じてBDRを追加するステップが標準的なアプローチとされています。自社の状況を振り返り、最適なSDR/BDR体制の構築に向けて次のステップを踏み出してみてください。
