シリーズA投資×営業組織|投資家に評価される体制構築ガイド

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2026/1/1610分で読めます

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シリーズA調達と営業組織:資金だけでは成長できない理由

シリーズA段階のスタートアップが次の成長ステージに進むには、資金調達だけでなく、調達後の営業組織設計(分業体制の確立、MA/SFAによるプロセス標準化、投資家に説明できるKPI体系)を早期に整備することが重要です。

2025年上半期の日本国内スタートアップ資金調達総額は3,399億円(INITIAL集計)で前年比4%増と、スタートアップへの投資は堅調に推移しています。2024年の年間総投資額は7,793億円に達しており、資金調達の機会は広がっています。

しかし、資金調達に成功しても、その後の営業組織構築が追いつかず、成長が鈍化するケースは少なくありません。投資家は資金の使い道として、営業組織の拡大と標準化を重視しており、属人的な営業体制のままでは次のラウンドでの評価に影響する可能性があります。

この記事で分かること

  • シリーズAの定義と投資ラウンドの位置づけ
  • 投資ラウンド別の営業組織課題と対応策
  • シリーズA段階で整備すべき営業組織の設計方法
  • 投資家に評価される営業KPI体系の考え方

この記事では、シリーズA調達済みまたは調達検討中のスタートアップの営業責任者・事業責任者を対象に、営業組織設計の実践的な指針を解説します。

シリーズAの定義と投資ラウンドの位置づけ

シリーズAとは、シード後の成長投資ラウンドであり、プロダクト・マーケット・フィット(PMF)確認後、事業拡大に向けた資金調達段階を指します。シード期でプロダクトの方向性が定まり、一定の顧客基盤ができた企業が、本格的な成長投資を行うタイミングです。

2024年の日本スタートアップ全体の1社あたり資金調達額は平均3.1億円、中央値7,760万円とされています。シリーズA特化の公的統計は限定的ですが、BtoB SaaSでは数億円規模の調達が一般的な傾向にあります。

投資ラウンドは一般的に、シード→シリーズA→シリーズB→シリーズC以降と進みます。シリーズAは、シード期で検証した仮説をもとに、営業・マーケティング組織を拡大し、売上成長を加速させるフェーズです。

DD(デューデリジェンス) とは、投資判断前に行う企業の財務・法務・事業などの詳細調査プロセスです。シリーズAでは、事業計画の実現可能性だけでなく、営業組織の体制や成長の再現性も投資家の重要な判断材料となります。

シリーズA段階の企業特性と課題

シリーズA段階の企業は、PMF達成後の拡大期にあり、営業組織に関して以下のような課題に直面することが多いです。

属人的な営業からの脱却が進まない

創業期から活躍してきた少数の営業担当者に依存した状態が続き、新規採用した人材が同じパフォーマンスを発揮できないケースがあります。営業プロセスが暗黙知化しており、再現性のある組織になっていないことが原因です。

営業データの蓄積・活用ができていない

顧客情報や商談履歴がスプレッドシートやメールに散在し、営業活動の可視化ができていない状態です。投資家へのレポーティングにも支障をきたし、次のラウンドでの評価にも影響します。

分業体制が整っていない

マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスといった機能分化ができておらず、営業担当者がすべてを担当している状態です。組織拡大に伴い、効率的な分業体制の構築が求められます。

投資ラウンド別の営業組織課題と対応策

投資ラウンドごとに、営業組織が直面する課題と求められる対応策は異なります。以下の比較表で、各段階の特徴を整理します。

【比較表】投資ラウンド別営業組織の課題と対応策比較表

投資ラウンド 主な課題 対応策 投資家が見るポイント
シード 営業体制が未整備、創業者が営業を兼務 初期顧客の獲得、PMF検証に集中 プロダクトの市場適合性、初期トラクション
シリーズA 属人的な営業、プロセス未標準化 分業体制の構築、MA/SFAの導入・活用開始 営業プロセスの再現性、KPI管理体制
シリーズB以降 組織拡大に伴う生産性低下、データ活用の高度化 営業組織のスケール、データドリブンな意思決定 成長の持続性、ユニットエコノミクスの改善

シリーズA段階では、シード期の属人的な営業から脱却し、再現性のある営業組織を構築することが最も重要な課題です。この段階で営業プロセスの標準化とツール整備を怠ると、組織拡大時に生産性が低下し、シリーズB以降の調達に影響する可能性があります。

シリーズA段階の営業組織設計と標準化

シリーズA段階で整備すべき営業組織の設計方法について解説します。このセクションが、本記事の核心部分です。

よくある失敗パターンとして、「優秀な営業を採用すれば売上は伸びる」と考え、営業プロセスの標準化やツール整備を後回しにするケースがあります。この考え方は誤りです。個人の能力に依存した営業では、組織拡大に伴い成果がばらつき、投資家に対して成長の再現性を示すことができません。

営業組織の標準化には、以下の3つの要素が重要です。

1. 分業体制の確立

マーケティング(リード獲得)→インサイドセールス(商談化)→フィールドセールス(クロージング)→カスタマーサクセス(継続・拡大)という分業体制を整えることで、各機能の専門性を高め、組織全体の生産性を向上させます。

2. MA/SFAによるプロセス標準化

営業活動をデータで管理し、プロセスを可視化することで、属人化を防ぎます。特定のツールを推奨するものではありませんが、顧客管理・商談管理・活動記録などを一元管理できる仕組みが必要です。

実際に、営業データプラットフォームを提供するインフォボックスは、2025年1月にシリーズAで16.5億円を調達し、累計23.5億円に到達しています。これは営業データ活用への投資家の関心の高さを示す一例といえます(ただし、個別事例のため一般化には注意が必要です)。

3. 投資家に説明できるKPI体系の整備

売上だけでなく、営業プロセスの各段階を測定できるKPIを設計し、データに基づいた改善サイクルを回すことが重要です。

【チェックリスト】シリーズA営業組織整備チェックリスト

  • 営業プロセスが文書化されている
  • リード獲得から商談、受注までの各段階が定義されている
  • 各段階の移行基準(リードスコアリング、商談化基準など)が明確である
  • 顧客情報・商談情報を一元管理するツール(SFA/CRM)を導入している
  • 営業活動の記録ルールが定められ、遵守されている
  • マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの分業体制がある
  • 各機能の責任範囲と引き渡し基準が明確である
  • CAC(顧客獲得単価)を計測できる体制がある
  • LTV(顧客生涯価値)を算出できるデータが蓄積されている
  • MRR(月次経常収益)の推移を把握している
  • 営業KPIのダッシュボードがあり、定期的にレビューしている
  • 投資家向けの営業レポートを作成できる体制がある
  • 新規営業担当者のオンボーディングプログラムがある
  • 営業活動の成功パターンがナレッジ化されている
  • 失注分析を定期的に行い、改善に活かしている

投資家に評価される営業KPI体系

投資家がシリーズA段階の営業組織で重視するKPIについて解説します。

CAC(顧客獲得単価) とは、1顧客を獲得するためにかかるマーケティング・営業コストです。マーケティング費用と営業人件費の合計を、新規獲得顧客数で割って算出します。

LTV(顧客生涯価値) とは、1顧客から生涯を通じて得られる総収益の予測値です。月額単価×継続期間(チャーンレートから算出)で計算するのが一般的です。

MRR(月次経常収益) とは、SaaS企業の月間定期収入です。成長率の主要指標として投資家に重視されます。

投資家は、CAC/LTVの比率(LTVがCACの3倍以上が目安とされることが多い)やMRR成長率を見ることで、ビジネスモデルの健全性と成長性を評価します。これらのKPIを計測・改善できる体制を整えることが、次のラウンドでの評価につながります。

シリーズA後の営業拡大に向けた準備

シリーズA調達後の営業拡大と、次のラウンド(シリーズB)に向けた準備について解説します。

2025年上半期の日本国内スタートアップ資金調達総額は、速報値で3,810億円(前年同期比-26.2%)という調査もあり、調達環境は変動しています(調査機関により数値が異なるため、複数の情報源を参照することをお勧めします)。

現在の調達環境では、投資家選別が強化されており、実績を示せる企業に資金が集中する傾向にあります。営業組織の整備と成長実績を示せることが、次のラウンドでの調達成功に直結します。

営業データの蓄積と可視化

次のラウンドに向けて、営業データの蓄積と可視化を進めることが重要です。

SFA/MAの活用ポイント

特定のツールを推奨するものではありませんが、以下の点を意識して運用設計を行うことが効果的です。

  • 顧客情報・商談情報の入力ルールを明確にし、データの品質を担保する
  • 営業活動の記録を習慣化し、後から分析できる状態を作る
  • リード獲得から受注までのコンバージョン率を可視化する
  • 投資家への報告を見据えたダッシュボードを構築する

投資家へのデータ提示

投資家との面談やDD対応において、以下のようなデータを提示できる状態を目指します。

  • MRRの推移と成長率
  • CAC/LTVの実績と改善傾向
  • パイプライン(見込み案件)の状況
  • 営業活動の生産性指標(商談数、受注率など)

これらのデータを定期的に更新・レポートできる体制を整えることで、投資家からの信頼を得やすくなります。

まとめ:シリーズA成功の鍵は営業組織の早期整備

本記事では、シリーズA段階のスタートアップにおける営業組織設計の重要性と、具体的な整備方法について解説しました。

本記事のポイント:

  • シリーズAは資金調達だけでなく、営業組織の標準化が求められるフェーズ
  • 「優秀な営業を採用すれば売上は伸びる」という考えは失敗の原因になる
  • 分業体制の確立、MA/SFAによるプロセス標準化、KPI体系の整備が重要
  • CAC/LTV、MRR成長率など投資家が重視するKPIを計測・改善できる体制を整える
  • 営業データの蓄積と可視化が、次のラウンドでの評価につながる

2025年上半期の日本国内スタートアップ資金調達総額は3,399億円(INITIAL集計)で前年比4%増と、投資環境は引き続き活発です。しかし、投資家選別が強化される中で、成長の再現性を示せる企業に資金が集中する傾向にあります。

シリーズA段階のスタートアップが次の成長ステージに進むには、資金調達だけでなく、調達後の営業組織設計を早期に整備することが重要です。本記事で紹介したチェックリストと比較表を活用し、自社の営業組織整備状況を確認してみてください。

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よくある質問

Q1シリーズAの調達金額の目安はどのくらいですか?

A12024年の日本スタートアップ全体では1社あたり平均3.1億円、中央値7,760万円とされています。シリーズA特化の公的統計は限定的ですが、BtoB SaaSでは数億円規模の調達が一般的な傾向にあります。業種や成長フェーズによって異なるため、自社の事業計画に合わせた調達額を検討することが重要です。

Q2シリーズA段階で営業組織をどう整備すべきですか?

A2分業体制の確立(マーケティング→インサイドセールス→フィールドセールス→カスタマーサクセス)、MA/SFAによるプロセス標準化、投資家に説明できるKPI体系(CAC/LTV、MRR成長率)の整備が重要です。属人的な営業から脱却し、再現性のある組織を構築することで、次のラウンドでの評価にもつながります。

Q32025年のスタートアップ資金調達環境はどうなっていますか?

A32025年上半期の日本国内スタートアップ資金調達総額は3,399億円(INITIAL集計、前年比4%増)と堅調に推移しています。ただし、投資家選別が強化されており、営業実績やKPI管理体制など成長の再現性を示せる企業に資金が集中する傾向にあります。

Q4投資家はシリーズAで営業組織の何を見ていますか?

A4CAC(顧客獲得単価)とLTV(顧客生涯価値)の比率、MRR成長率、営業プロセスの標準化状況、データに基づくKPI管理体制などを重視する傾向があります。属人的な営業ではなく、再現性のある成長モデルを構築できているかがポイントです。

Q5シリーズAの調達にはどのくらいの期間がかかりますか?

A5投資家のDD(デューデリジェンス)を含め、一般的には数ヶ月程度を見込む必要があります。IR資料の準備や営業KPIのデータ整備を事前に進めておくことで、DD対応がスムーズになり、調達期間の短縮につながる可能性があります。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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