Salesforce初期設定で「後から困らない」ための考え方
多くの人が見落としがちですが、Salesforceの初期設定は「将来の活用を見据えた設計」で行うことで、導入後の活用定着と部門間連携がスムーズになります。
Salesforceを導入したものの、初期設定のやり方がわからない、設定したが活用できていないという声は少なくありません。実際、2020年末から2021年にかけて、日本企業複数社でSalesforce設定不備による情報漏洩が発生しており、初期設定の重要性が改めて認識されています。
この記事で分かること
- Salesforce初期設定で優先すべき項目と優先順位
- ユーザー管理と権限設定の正しい進め方
- 標準オブジェクトとレポート機能の初期設定ポイント
- 後から困らないための設定チェックリスト
この記事では、従業員50〜300名規模の企業でマーケティングや営業企画を担当されている方を対象に、スムーズな運用開始のための初期設定を解説します。
初期設定で押さえるべき基本項目と優先順位
Salesforceの初期設定は、大きく「会社情報・組織情報」「ユーザー管理」「標準オブジェクト」「レポート」の4カテゴリに分かれます。特に重要なのは、後から変更が困難な項目を最初に設定することです。
会計年度期首月とは、組織の会計年度が始まる月を指します。Salesforceのデフォルトは1月ですが、日本企業の多くは4月始まりのため、最初に変更が必要です。
【比較表】設定項目と優先度一覧表
| カテゴリ | 設定項目 | 優先度 | 変更難易度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 会社情報 | 会計年度期首月 | 高 | 変更困難 | 日本企業は4月に変更 |
| 会社情報 | マスタ通貨 | 高 | 変更困難 | 後から変更不可 |
| 会社情報 | 組織名 | 中 | 変更可能 | 最大80文字 |
| 会社情報 | 代表電話番号 | 中 | 変更可能 | 最大40文字 |
| ユーザー管理 | プロファイル設計 | 高 | 再設計必要 | 権限セットと併用 |
| ユーザー管理 | 権限セット設計 | 高 | 柔軟に変更可 | 推奨される管理方法 |
| ユーザー管理 | ゲストユーザー確認 | 高 | 変更可能 | セキュリティ上重要 |
| オブジェクト | 取引先項目設計 | 中 | 再設計必要 | 分析を見据えて設計 |
| オブジェクト | 商談フェーズ設計 | 中 | 再設計必要 | 営業プロセスに合わせる |
| レポート | レポートフォルダ構成 | 低 | 柔軟に変更可 | 運用しながら調整 |
| レポート | ダッシュボード設計 | 低 | 柔軟に変更可 | 可視化の基盤 |
会社情報・組織情報の設定
会社情報・組織情報は、Salesforce環境の基盤となる設定です。特に会計年度期首月とマスタ通貨は後から変更が困難、または変更できないため、最優先で正しく設定する必要があります。
組織名は最大80文字、代表電話番号は最大40文字までSalesforceに登録可能です。これらは後から変更できますが、最初に正確な情報を入力しておくことで、取引先への通知やレポートの見た目が整います。
ユーザー管理と権限設定の正しい進め方
ユーザー管理と権限設定は、セキュリティと運用効率の両面で重要な設定です。「とりあえず動けばいい」と最小限の設定で済ませてしまうと、後からデータの不整合や権限問題が発生して大幅な手戻りが起きるケースが多いです。
ゲストユーザーとは、認証なしでSalesforceサイトにアクセスするユーザーを指します。権限設定ミスで情報漏洩の原因になりやすいため、初期設定時に確認が必要です。
Auraエンドポイントは、Lightning Experience導入後にデフォルト有効となるAPI接続点です。設定不備があると外部からのデータアクセスが可能になるリスクがあります。
プロファイルと権限セットの使い分け
プロファイルは、ユーザーの基本属性とアクセス権限を定義する設定です。一方、権限セットは、プロファイルに追加でアクセス権限を付与する機能で、1ユーザーに複数割り当て可能な柔軟な権限管理ができます。
Spring '26リリース(2026年春予定)以降、Salesforceはプロファイルから権限セット中心の管理へ移行することが発表されています。今から新規に設定する場合は、プロファイルは基本属性のみに限定し、権限は権限セットで管理する設計を推奨します。
マーケティング担当者には専用の権限セットを作成し、フル管理者権限は付与しないことがセキュリティ上のベストプラクティスです。
ゲストユーザー設定の注意点
2020年5月、TeamSpirit社はSalesforceサイトのゲストユーザー設定不備を確認し公表しました。また、Salesforceは全世界約10万社に導入されていますが(2021年時点)、Lightningリリース(2016年)以降のAuraエンドポイントデフォルト有効が漏洩問題の原因となったケースがありました。
ただし、これらの事例は既にパッチが適用されており、最新環境では同様の問題は発生しにくくなっています。とはいえ、初期設定時にゲストユーザー権限を確認・無効化することは、セキュリティトラブルを防ぐ基本的な対策として重要です。
確認手順としては、設定画面からゲストユーザープロファイルを開き、不要な権限が付与されていないかを確認します。Salesforce公式ヘルプにも確認手順が記載されていますので、併せて参照してください。
取引先・商談などの標準オブジェクト設定
標準オブジェクトの設定は、将来のレポート・分析を見据えた設計が重要です。取引先、取引先責任者、商談、リードの4つが営業活動の基本となるオブジェクトです。
最初に設計しておくと後が楽になるポイントとして、以下の点を意識してください。
- 取引先:業種、従業員規模、地域などのセグメント項目を設計
- 取引先責任者:役職、部門、連絡先情報の項目を整理
- 商談:自社の営業プロセスに合わせたフェーズを設計
- リード:リードソース(流入経路)を漏れなく定義
これらの項目設計は後から変更できますが、データが蓄積されてからの変更は移行作業が発生するため、最初の段階で営業・マーケティング部門と要件を詰めておくことをおすすめします。
レポート・ダッシュボードの初期設定
レポート・ダッシュボードは、Salesforce活用の成果を可視化する機能です。初期設定の段階でフォルダ構成と基本的なレポートを整えておくことで、運用開始後すぐにデータ活用が始められます。
レポートフォルダは、部門別や用途別に整理しておくと、後から必要なレポートを探しやすくなります。ダッシュボードは、経営層向け、営業部門向け、マーケティング部門向けなど、閲覧者に合わせて設計するのが一般的です。
以下のチェックリストで、初期設定の漏れがないか確認してください。
【チェックリスト】Salesforce初期設定チェックリスト
- 会計年度期首月を自社の会計年度に合わせて設定した
- マスタ通貨を正しく設定した
- 組織名・住所・電話番号を登録した
- タイムゾーンと言語設定を確認した
- システム管理者のプロファイルを設定した
- 各部門向けの権限セットを作成した
- ゲストユーザーの権限を確認・無効化した
- Auraエンドポイントの設定を確認した
- 設定変更監視機能を有効にした
- 取引先の業種・規模などセグメント項目を設計した
- 取引先責任者の役職・部門項目を設計した
- 商談フェーズを自社の営業プロセスに合わせて設計した
- リードソースの選択肢を定義した
- レポートフォルダを部門別・用途別に作成した
- 基本的なダッシュボードを作成した
- ユーザーへの権限セット割り当てを完了した
このチェックリストを活用して、初期設定の状況を確認し、漏れがあれば対応してください。
まとめ:活用を見据えた初期設定で導入効果を最大化する
Salesforceの初期設定は、会社情報・ユーザー管理・標準オブジェクト・レポートの4カテゴリを押さえることが基本です。特に会計年度期首月やマスタ通貨など後から変更困難な項目は、最優先で正しく設定してください。
権限設定については、Spring '26リリース(2026年春予定)以降、プロファイルから権限セット中心の管理へ移行することが発表されています。今から設定する場合は、この方向性を踏まえて権限セット中心の設計を行うことで、将来の移行作業を軽減できます。
Salesforceの初期設定は「将来の活用を見据えた設計」で行うことで、導入後の活用定着と部門間連携がスムーズになります。本記事のチェックリストを活用して、自社環境の設定状況を確認し、後から困らない初期設定を完了させてください。
