Salesforceレポートを活用できない企業に共通する課題
多くの人が見落としがちですが、Salesforceレポートは作成手順を理解するだけでなく、誰がいつどう活用するかの運用設計まで行うことで、営業・マーケの意思決定に貢献するツールになります。
「Salesforceを導入してレポート機能も使っているが、いまいち成果につながっている実感がない」「レポートは作成できるようになったが、結局誰も見ていない」——こうした課題を抱える企業は少なくありません。
レポート機能の使い方を覚えてとりあえず作成したものの、運用設計がないまま放置され、結局誰も見ないレポートが増えていく——これはSalesforce導入企業によくある失敗パターンです。この記事では、レポートの作成方法から活用のための運用設計まで、成果につなげるためのポイントを解説します。
この記事で分かること
- Salesforceレポートの基本機能とレポートタイプの種類
- レポートビルダーを使った作成手順
- 目的に応じたレポートタイプの選び方
- レポートを社内で活用するための運用設計ポイント
この記事は、Salesforce導入済み企業のマーケティング責任者・営業企画担当者(従業員50-300名規模)を対象としています。なお、画面操作の説明は2026年1月時点のLightning Experienceに基づいています。
Salesforceレポートの基本機能と種類
Salesforceレポートは、Salesforce内のデータを条件に応じて抽出・集計し、分析するための機能です。まずはレポートの基本概念と種類を理解し、全体像を把握しましょう。
レポートタイプとは、レポートで使用するデータソース(オブジェクト)と項目を定義するテンプレートです。標準とカスタムの2種類があり、どのレポートタイプを選ぶかによって取得できるデータが決まります。
レポートには、データを一覧表示する「表形式レポート」、グループ化して集計する「サマリーレポート」、行と列の両方でグループ化する「マトリックスレポート」、複数のレポートブロックを統合する「結合レポート」の4つの形式があります。
レポートビルダーは、Salesforceでレポートを作成・編集するためのUIです。ドラッグ&ドロップで項目追加やフィルター設定が可能で、プログラミングの知識がなくてもレポートを作成できます。
レポートとダッシュボードの違い・使い分け
レポートとダッシュボードは、それぞれ異なる役割を持っています。
レポートは、特定の条件でデータを抽出・集計し、詳細を分析するためのものです。フィルター条件を設定して必要なデータだけを抜き出したり、グループ化して集計したりできます。
一方、ダッシュボードは、複数のレポートをグラフやチャートとして一画面に可視化し、全体像を把握・共有するためのものです。経営層への報告や定例会議での状況共有など、サマリー情報を素早く把握したい場面に適しています。
使い分けの目安として、詳細なデータを掘り下げて分析したい場合はレポート、全体の傾向や複数の指標を俯瞰したい場合はダッシュボードを選択するのが一般的です。
Salesforceレポートの作成手順
レポートの作成は、レポートビルダーを使って以下の手順で進めます。基本的な流れを押さえておけば、さまざまなレポートを作成できるようになります。
基本的な作成手順:
レポートタイプの選択: 分析したいデータに応じたレポートタイプを選びます。商談データを分析したい場合は「商談」、リードを分析したい場合は「リード」のレポートタイプを選択します。
項目の追加: レポートビルダーの左側に表示される項目一覧から、レポートに含めたい項目をドラッグ&ドロップで追加します。
フィルター条件の設定: 「今月作成された商談のみ」「特定の担当者のデータのみ」など、抽出条件を設定します。
グループ化と集計: サマリーレポートやマトリックスレポートを作成する場合は、グループ化する項目を設定します。サマリーレポートでは最大3つまでグループ化が可能です。たとえば「地域→担当者→月」のような階層でデータを集計・分析できます。
保存と実行: レポートに名前を付けて保存し、実行してデータを確認します。
レポートの基本的な編集操作
レポートビルダーでは、視覚的な操作でレポートを編集できます。
主な編集操作として、項目の並び替え(ドラッグ&ドロップ)、列幅の調整、フィルター条件の追加・変更、集計項目(合計・平均・最大・最小など)の追加があります。
フィルター設定では、「相対日付」機能を使うと便利です。「今月」「過去90日間」「来週」などの相対的な期間指定ができるため、レポートを開くたびに条件を変更する手間が省けます。
また、作成したレポートは「レポートフォルダ」に保存されます。フォルダの共有設定により、特定のユーザーやグループにのみレポートを公開することも可能です。
レポートタイプの選び方と活用シーン
レポートタイプは、分析の目的に応じて適切なものを選ぶことが重要です。主なレポートタイプの特徴と活用シーンを比較表で整理します。
【比較表】レポートタイプ別活用シーン比較表
| レポートタイプ | 特徴 | 活用シーン | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 標準レポートタイプ | Salesforceがあらかじめ用意したテンプレート。取引先、商談、リード等の標準オブジェクトに対応 | 基本的な営業・マーケ分析(商談パイプライン、リード状況など) | 標準オブジェクト間の組み合わせに限定される |
| カスタムレポートタイプ | ユーザーが作成できるテンプレート。最大4つのオブジェクトリレーションを選択可能 | 独自の分析軸が必要な場合(カスタムオブジェクト連携、特定の項目組み合わせ) | 事前の要件整理が重要。4オブジェクト制限あり |
| サマリーレポート | グループ化して集計できる形式。最大3つまでグループ化可能 | 担当者別・月別・商品別などの集計分析 | グループ化の階層設計を事前に検討する |
| マトリックスレポート | 行と列の両方でグループ化できる形式 | クロス集計分析(月×担当者、地域×商品など) | 複雑になりやすいため、目的を明確にする |
| 結合レポート | 複数のレポートブロック(最大5つ)を1つのレポートに統合 | 異なるレポートタイプのデータを比較分析(商談×リードの比較など) | 構造が複雑になるため運用設計が重要 |
標準レポートタイプは、Salesforceがあらかじめ用意したレポートタイプで、取引先、商談、リード等の標準オブジェクトに対応しています。基本的な分析であれば、まず標準レポートタイプで対応できるかを確認することをお勧めします。
カスタムレポートタイプの作成と注意点
カスタムレポートタイプは、ユーザーが作成できるレポートタイプで、最大4つのオブジェクトリレーションを選択できます。標準レポートタイプでは取得できないオブジェクトの組み合わせや項目が必要な場合に作成を検討します。
カスタムレポートタイプを作成する際は、以下の点に注意が必要です。
事前の要件整理が重要: 最大4オブジェクトまでという制限があるため、どのオブジェクトを含める必要があるかを事前に整理します。後から変更が難しいため、分析要件を先に固めることが大切です。
命名規則の統一: 複数のカスタムレポートタイプを作成すると管理が煩雑になるため、命名規則を決めておくことをお勧めします。
必要最小限の作成: 標準レポートタイプで対応できる場合は、カスタムレポートタイプを新たに作成する必要はありません。むやみに増やすと管理コストが上がります。
結合レポートは、複数のレポートブロック(最大5つ)を1つのレポートに統合できる形式です。異なるレポートタイプのデータを1つの画面で比較分析したい場合に活用できますが、構造が複雑になりやすいため、目的を明確にしてから作成することが重要です。
成果につなげるレポート運用設計のポイント
レポートを作成できるようになっても、それだけでは成果につながりません。誰が・いつ・どのように活用するかという運用設計が、レポート活用の成否を分けます。
よくある失敗として、「とりあえずレポートを作成したが、誰も見ていない」「更新されないまま放置されている」「何のためのレポートか分からなくなった」というケースがあります。これらは運用設計の欠如が原因であることがほとんどです。
【チェックリスト】成果につなげるレポート設計チェックリスト
- レポートの目的(何を判断するためのものか)を明文化している
- レポートの対象者(誰が見るか)を明確にしている
- 更新頻度(日次/週次/月次)を決めている
- 共有方法(ダッシュボード化/メール配信/会議での共有)を決めている
- レポートの閲覧・編集権限を適切に設定している
- レポートフォルダの整理ルールを決めている
- 定期的なレポート棚卸しのタイミングを決めている
- レポート結果を元にしたアクション(誰が何をするか)を定義している
- ダッシュボードへの組み込みを検討している
- 定期メール配信設定を検討している
- レポートの廃止基準を決めている
- レポート作成者と運用担当者を明確にしている
特に重要なのは、ダッシュボード化と定期メール配信です。レポートを単体で放置せず、ダッシュボードに組み込んで可視化したり、関係者に定期的にメール配信したりすることで、社内での活用が進みやすくなります。
レポートが活用されない原因と対策
レポートが社内で活用されない場合、以下の原因が考えられます。
原因1: 誰向けのレポートか不明確
作成者本人しか意図が分からないレポートは、他のメンバーに活用されません。対策として、レポート名に目的を含める(例:「月次営業会議用_商談パイプライン」)、レポートの説明欄に目的と対象者を記載する、といった工夫が有効です。
原因2: 更新・共有されない
作成したまま放置されているレポートは、データが古くなり価値が低下します。対策として、定期メール配信を設定して自動で共有する、ダッシュボードに組み込んで定例会議で確認する、といった仕組み化が効果的です。
原因3: レポート結果からのアクションが不明
「このデータを見て何をすべきか」が分からないレポートは活用されません。レポート設計時に、結果に応じたアクション(例:「商談化率が基準を下回った場合は営業マネージャーがフォロー」)を事前に定義しておくことが重要です。
Salesforceレポート活用成功のポイントまとめ
本記事では、Salesforceレポートの基本機能から運用設計まで解説しました。要点を整理します。
レポート作成の基本
- レポートタイプの選択が分析の起点。まず標準レポートタイプで対応できるか確認する
- レポートビルダーでドラッグ&ドロップによる直感的な操作が可能
- サマリーレポートでは最大3つまでグループ化可能
レポートタイプの選定
- 標準レポートタイプで対応できない場合にカスタムレポートタイプを検討
- カスタムレポートタイプは最大4オブジェクト、結合レポートは最大5ブロックの制限がある
- 事前の要件整理が重要
運用設計のポイント
- レポートの目的・対象者・更新頻度・共有方法を明確にする
- ダッシュボード化と定期メール配信で活用を促進する
- レポート結果からのアクションを事前に定義する
今日から取り組めるアクション:
- 既存レポートを棚卸しし、目的・対象者が不明確なものをリストアップする
- 活用されていないレポートを整理し、必要に応じて廃止する
- 主要なレポートについて、本記事のチェックリストで運用設計を見直す
Salesforceレポートは作成手順を理解するだけでなく、誰がいつどう活用するかの運用設計まで行うことで、営業・マーケの意思決定に貢献するツールになります。まずは既存レポートの棚卸しから始めてみてください。
