経営会議でのマーケ報告がうまくいかない理由と本記事の目的
実は経営会議でのマーケティング報告は、マーケ指標をそのまま見せるのではなく、経営層の関心事(売上貢献・投資対効果・成長予測)に紐づくビジネス指標に「翻訳」して伝えることで、理解と意思決定を促進できます。
「マーケティング活動の成果を報告しても、経営層に『で、売上にどう貢献しているの?』と聞かれて困った」という経験はないでしょうか。多くのマーケティング担当者が抱えるこの課題は、マーケ指標と経営指標の「言語の違い」に起因しています。
2025年7月の調査(1,032社対象)によると、売上成長率10%以上の企業はマーケティングスコアが平均23.4点で、横ばい企業の19.7点の約1.2倍、減少企業の13.5点の約1.7倍という結果が報告されています。マーケティング活動の質と売上成長には相関があり、経営層にこの関連性を適切に伝えることが重要です。
この記事で分かること
- 経営層が本当に知りたいマーケティング指標(CAC・LTV・ROASなど)の基礎
- マーケ専門指標を経営指標に「翻訳」する具体的な方法
- 経営会議向け報告資料の構成と作成手順
- MA/SFAデータを活用したダッシュボード構築のポイント
経営層が知りたいマーケ指標とは|CAC・LTV・ROASの基礎
経営層がマーケティング報告で知りたいのは、MQL数やメール開封率ではなく、「売上貢献」「投資対効果」「成長予測」に直結する指標です。以下の用語を理解することが、経営言語への翻訳の第一歩となります。
CAC(Customer Acquisition Cost) とは、顧客獲得単価を指します。マーケティング・営業費用の合計を獲得顧客数で割って算出し、「1社の顧客を獲得するのにいくらかかるか」を示す指標です。経営層にとっては投資効率を判断する重要な数値となります。
LTV(Lifetime Value) とは、顧客生涯価値を指します。一顧客から得られる収益の総額で、平均顧客生涯売上×利益率で算出します。CAC/LTV比が3:1以上であれば、投資対効果が健全な目安と言われています。
ROAS(Return on Ad Spend) とは、広告費用対効果を指します。広告経由売上÷広告費×100で算出します。2025年1月の調査では、BtoB企業Web広告で重視する指標としてROASが57.0%で最多となっており、次点でCVRが41.0%、CTRが39.0%という結果でした。
パイプライン貢献とは、マーケティング経由リードが売上にどれだけ寄与したかを示す指標です。「マーケティング活動から生まれた商談がどれだけ受注に結びついたか」を数値で示すことで、経営層に対して売上貢献を説明できます。
よくある失敗:MQL数を報告しても伝わらない
MQL数やメール開封率などマーケ専門指標をそのまま経営会議で報告し、経営層から「それが売上にどうつながるのか」と問われて説明できず、マーケ投資の価値が伝わらないというケースは典型的な失敗パターンです。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング部門が一定基準を満たすと判断し、営業に引き渡す準備が整ったリードを指します。この指標自体はマーケティング活動の成果を測る上で重要ですが、経営層にとっては「で、それが売上にどうつながるの?」という疑問が残ります。
この問題の根本原因は、マーケ指標から売上貢献への変換ができていないことです。MQL数を報告するのではなく、「MQLのうち何%が商談化し、そこから何%が受注に至り、結果として売上にいくら貢献したか」というストーリーで伝える必要があります。
マーケ指標を経営指標に翻訳する方法
マーケ指標を経営指標に翻訳するには、「マーケ活動→リード獲得→商談化→受注→売上」というファネル全体を数値で可視化し、各段階の変換率を把握することが重要です。
2025年1月の調査では、BtoB企業がWeb広告で重視する指標はROASが57.0%で最多でした。また、課題としてROAS向上が47.2%、質の高いリード獲得が46.2%と報告されています。つまり、多くの企業が「投資対効果」と「質」を重視しており、経営層への報告もこの観点を中心に構成すると伝わりやすくなります。
具体的な翻訳方法として、以下のフローを意識してください。
- MQL→商談化率を算出: MQL数のうち、営業が商談として認定した割合を計算
- 商談→受注率を算出: 商談のうち、受注に至った割合を計算
- 受注→売上貢献を算出: 受注金額の合計からマーケ貢献売上を算出
- CAC/LTV比で投資対効果を説明: CAC/LTV比3:1以上を目安に健全性を説明
【比較表】経営会議向けマーケティングKPI一覧
| マーケ指標 | 経営指標への翻訳 | 経営層への説明ポイント |
|---|---|---|
| MQL数 | パイプライン貢献額 | 「MQL→商談→受注」の変換率を示し、売上への貢献金額で報告 |
| メール開封率 | リード育成効率 | 開封率単体ではなく、育成後の商談化率向上として説明 |
| Web広告クリック数 | 広告経由売上(ROAS) | クリック数ではなく、広告投資に対する売上回収率で報告 |
| セミナー参加者数 | 商談創出数・受注貢献 | 参加者数→商談化数→受注金額のファネルで報告 |
| 資料ダウンロード数 | リード獲得コスト(CAC) | DL数ではなく、1リード獲得あたりのコストで投資効率を説明 |
| Webサイトセッション数 | 認知獲得効率 | セッション数→問い合わせ率→商談化のコンバージョンで説明 |
| SNSフォロワー数 | ブランド認知投資 | フォロワー数ではなく、SNS経由流入→問い合わせ貢献で報告 |
| コンテンツPV数 | オーガニック流入価値 | PV数を広告換算価値に変換し、コスト削減効果として説明 |
経営会議向け報告資料の構成と作成手順
経営会議向けの報告資料は、「サマリー→施策結果→パイプライン貢献→課題と提案」の構成で作成すると、経営層の意思決定を促しやすくなります。
2025年の調査(330名対象)によると、BtoBマーケティングでWeb広告が新規リード獲得の53.8%に貢献しているという結果が報告されています。このような数値を報告に組み込み、マーケ活動の売上貢献度を具体的に示すことが重要です。
報告資料の推奨構成
- エグゼクティブサマリー(1枚): 今月の成果を3行で要約。売上貢献額、前月比、主要KPIの達成状況を記載
- 施策結果(2-3枚): 実施した施策ごとの結果をROASまたはCACで報告。マーケ指標ではなく経営指標で説明
- パイプライン貢献(1枚): マーケ経由リード→商談→受注のファネル図と、売上貢献額を可視化
- 課題と提案(1枚): 次月以降の改善施策を提案。予算配分の変更が必要な場合は投資対効果の見込みも記載
特に重要なのは「提案」パートです。経営会議は意思決定の場であるため、報告だけでなく「次に何をすべきか」「予算をどう配分すべきか」という判断材料を提供することで、マーケティング部門の価値を高めることができます。
MA/SFAデータを経営報告に活用するダッシュボード構築
MA/SFAに蓄積されたデータを経営報告に活用するには、BIツールを使ったダッシュボード構築が効果的です。リアルタイムでKPIを可視化することで、経営会議での説得力が大幅に向上します。
2025年の比較調査によると、Tableauは国内導入実績が約4,000社以上、Power BIは国内利用率2位で月額約2.1万円、Looker Studioは無料で普及しています。中小企業の場合、まずはLooker StudioやPower BIから始め、データ活用の成熟度に応じてツールを選定するのが現実的です。
ダッシュボードで可視化すべき指標
- LTV推移のライングラフ: 顧客生涯価値のトレンドを時系列で表示
- CVR(コンバージョン率)推移: ファネル各段階の変換率を月次で追跡
- CAC推移: 顧客獲得コストの変動を可視化し、投資効率の改善を示す
- パイプライン金額: 商談中の案件金額合計と、受注見込みを表示
【チェックリスト】経営会議報告準備チェックリスト
- 経営層の関心事(売上貢献・投資対効果・成長予測)を事前に確認した
- マーケ指標を経営指標(ROAS・CAC・LTV・パイプライン貢献)に翻訳した
- MQL数ではなく、商談化率・受注率・売上貢献額で報告できる状態にした
- 前月比・前年比など、比較可能な形式でデータを整理した
- エグゼクティブサマリーで成果を3行以内で要約した
- 施策ごとのROASまたはCACを算出した
- パイプライン貢献を図表で可視化した
- 課題と次月の改善提案を用意した
- 予算配分変更の提案がある場合、投資対効果の見込みを試算した
- BIツールまたはスプレッドシートでダッシュボードを準備した
- MA/SFAのデータを最新の状態に更新した
- 報告資料を経営層の言語(専門用語を排除)で記述した
- 質疑応答で想定される質問への回答を準備した
- 報告時間内に収まるよう資料の枚数を調整した
- 意思決定を促す「提案」を必ず含めた
まとめ:「翻訳」で経営層の理解と意思決定を促す
本記事では、経営会議でのマーケティング報告を成功させるための「翻訳」の方法論を解説しました。
重要なポイント
- 経営層はMQL数やメール開封率ではなく、売上貢献・投資対効果・成長予測に関心がある
- CAC・LTV・ROAS・パイプライン貢献を理解し、マーケ指標を経営言語に翻訳する
- 報告資料は「サマリー→施策結果→パイプライン貢献→課題と提案」の構成で作成
- BIツールを活用し、MA/SFAデータをダッシュボードで可視化する
経営会議でのマーケティング報告は、マーケ指標をそのまま見せるのではなく、経営層の関心事(売上貢献・投資対効果・成長予測)に紐づくビジネス指標に「翻訳」して伝えることで、理解と意思決定を促進できます。まずは本記事のチェックリストを活用し、次回の経営会議報告から「翻訳」を実践してみてください。
