Salesforceを導入しても「使われない」が起きる構造的な理由
最も重要なのは、Salesforce導入は、導入前のデータ整備・業務フロー設計から導入後の活用・定着化まで一気通貫で計画することです。多くの企業がSalesforce導入を検討していますが、「導入したものの現場で使われない」という課題を抱えています。
この記事で分かること
- Salesforce導入で成果が出ない構造的な原因
- Salesforceの主要製品と機能の概要
- 導入前に必要な準備(データ整備・業務フロー設計)
- 導入から定着化までの具体的な流れ
- 導入パートナー選定と定着化のポイント
CRM(Customer Relationship Management) とは、顧客関係管理のことで、顧客データを一元管理し、営業・マーケティング・カスタマーサービスを統合的に支援するシステムです。
調査によると、Salesforceユーザー企業の97%がデータを収集していますが、そのデータを活用して顧客体験を変革できているのは24%のみです(IBM調査、グローバルサンプルのため日本企業の比率は不明瞭)。また、AI施策のROI目標を達成できているのは33%のみで、失敗・放棄は20%という結果も報告されています。
これらの数字が示すのは、Salesforceを導入するだけでは成果が出ないという現実です。導入前準備から定着化まで一気通貫で計画することが、成功と失敗を分ける要因となります。
Salesforceとは:主要製品と機能の概要
Salesforceは、グローバルCRM市場で20.7%のシェアを持ち、全CRMベンダー中1位のポジションにあります(2024年IDC調査)。営業分野では13年連続、カスタマーサービス12年連続、マーケティング6年連続で1位を獲得しています。
日本国内においても、CRM市場は2023年に2,497億円(前年比13.4%増)に達し、Salesforceのシェアは22.1%で1位です。2位との差は15.7ポイントあり、Sales Cloudは38.82%のシェアを獲得しています。
Salesforceは複数の製品ラインナップを持ち、企業のニーズに応じて選択・組み合わせることができます。
Sales Cloud:営業支援(SFA)の中核機能
Sales Cloudは、Salesforceの営業支援(SFA)製品です。案件管理、商談管理、売上予測などの機能を提供し、営業活動の可視化と効率化を支援します。
主な機能として、リード管理、商談のパイプライン管理、活動履歴の記録、レポート・ダッシュボードによる可視化などがあります。営業チームの活動状況をリアルタイムで把握し、マネジメントの質を向上させることが期待できます。
Marketing CloudとMA連携の可能性
Marketing Cloudは、Salesforceのマーケティングオートメーション製品です。メール配信、顧客ジャーニー設計、キャンペーン管理を支援します。
Data Cloudは、Salesforceのデータ統合プラットフォームで、複数システムの顧客データを統合・活用可能にします。Sales CloudとMarketing Cloudをデータ連携させることで、マーケティングから営業までの一気通貫の顧客管理が実現できます。
将来的なMA連携を見据えて、導入初期からデータ項目の設計やセグメント設計を検討しておくことが、拡張性の担保につながります。
Salesforce導入のメリット・デメリット
「Salesforceを導入すれば営業がうまくいく」「SaaSだから設定は簡単」という考え方は誤りです。導入のメリットとデメリットを正しく理解した上で、準備と計画を進めることが重要です。
Salesforce導入のメリット:データ活用による成果
Salesforce導入の最大のメリットは、顧客データの一元管理とそれに基づく営業・マーケティングの最適化です。
調査によると、データ活用先進派(活用して顧客体験を変革できている24%の企業)は、収益成長率60%超、収益性51%上回り、市場投入時間61%短縮を達成しているという結果があります(IBM調査、グローバルサンプルのため再現性を保証するものではありません)。
これは「導入すれば自動的に成果が出る」ことを意味するのではなく、データを適切に整備・活用できた企業が成果を上げているということです。
Salesforce導入の注意点:統合・活用の難しさ
一方で、導入には課題もあります。調査によると、日本の回答者の97%がシステム間インテグレーションに苦慮しており、現在接続できているアプリは平均25%のみです。
この数字は、Salesforceを単独で導入しても、既存システムとの連携が困難であることを示しています。導入前に既存システムとの連携方針を明確にしておくことが、活用のハードルを下げる鍵となります。
中堅中小企業においては、AI活用率は22.2%(前年+4.3pt)と増加傾向にありますが、活用するためには十分な準備と設計が必要です。
Salesforce導入前に必要な準備:データ整備と業務フロー設計
Salesforce導入で成果を出すためには、導入前の準備が最も重要です。調査によると、内製化意向は93.6%ありますが、停滞企業の7割以上が開発プロセス未整備という結果が報告されています。準備なしに導入を進めても、「使いこなせない」状態に陥るリスクが高いのです。
【チェックリスト】Salesforce導入前準備チェックリスト
- 導入目的と期待成果を経営層と合意している
- 導入責任者・プロジェクトオーナーを任命している
- 現場の主要ユーザーをプロジェクトに巻き込んでいる
- 顧客データの棚卸しを完了している
- 重複データの排除方針を決めている
- データ項目の定義・命名規則を標準化している
- 既存システム(基幹システム、MA等)との連携方針を決めている
- 現状の営業・マーケティング業務フローを可視化している
- Salesforce導入後のあるべき業務フロー(To-Be)を設計している
- 入力ルール・運用ルールを明文化している
- 導入後の教育・トレーニング計画を策定している
- 定着化のためのKPIと測定方法を決めている
- 導入パートナー選定の評価基準を設けている
- 予算と投資対効果の見込みを試算している
- 導入スケジュールを策定している
導入前のデータ整備:何を準備すべきか
データ整備は、Salesforce導入の成否を分ける重要な工程です。具体的には、以下の作業が必要です。
顧客データの棚卸し: 現在保有している顧客データがどこに、どのような形式で存在するかを把握します。Excelファイル、名刺管理ツール、基幹システムなど、データソースを洗い出します。
重複排除: 同一顧客が複数レコードとして存在する場合、統合ルールを決めて重複を排除します。
項目定義の標準化: 「業種」「企業規模」「ステータス」などの項目について、選択肢と定義を標準化します。
業務フロー設計:As-Is/To-Beの整理
業務フロー設計は、現状(As-Is)とあるべき姿(To-Be)を明確にするプロセスです。
As-Is分析: 現状の営業プロセス、情報の流れ、使用しているツール、課題を可視化します。「誰が、いつ、何を、どのように」行っているかを整理します。
To-Be設計: Salesforce導入後のあるべき姿を設計します。入力タイミング、データの流れ、レポート・ダッシュボードの活用シーンを具体化します。
Salesforce導入の流れ:計画から定着化までの全体フロー
導入から定着化までは、段階的なアプローチが効果的です。調査によると、AI施策のROI目標を達成した企業(リーダー群)は、効率60%向上、パイプライン2倍超を達成しています。成功企業に共通するのは、導入だけでなく定着化まで計画的に進めていることです。
【フロー図】導入〜定着化までの全体フロー
flowchart TD
A[要件定義・目的設定] --> B[業務フロー設計]
B --> C[データ整備・移行準備]
C --> D[パートナー選定・契約]
D --> E[システム設定・カスタマイズ]
E --> F[テスト・検証]
F --> G[教育・トレーニング]
G --> H[本番稼働]
H --> I[定着化フォロー]
I --> J[効果測定・改善]
J --> I
各フェーズの概要は以下のとおりです。
- 要件定義・目的設定: 導入目的、期待成果、スコープを明確化
- 業務フロー設計: As-Is/To-Be分析に基づく業務プロセス設計
- データ整備・移行準備: 顧客データの棚卸し、クレンジング、移行計画策定
- パートナー選定・契約: 導入支援パートナーの選定と契約
- システム設定・カスタマイズ: Salesforceの設定、カスタマイズ、連携開発
- テスト・検証: 設定内容の検証、ユーザー受け入れテスト
- 教育・トレーニング: エンドユーザー向けの操作研修、マニュアル整備
- 本番稼働: 本番環境への移行、運用開始
- 定着化フォロー: 入力率モニタリング、課題対応、改善支援
- 効果測定・改善: KPI達成状況の確認、継続的な改善
導入パートナー選定のポイント
導入パートナーの選定は、導入成功に大きく影響します。選定時の観点として、以下が挙げられます。
実績: Salesforce導入の実績件数、類似業種・規模の導入経験
支援範囲: 要件定義から定着化まで一気通貫で支援できるか、部分的な支援か
費用体系: 初期費用、月額費用、追加開発費用の透明性
具体的な費用感は企業規模や要件により大きく変動するため、複数のパートナーから見積もりを取得し、比較検討することを推奨します。
導入後の定着化:入力が習慣化する仕組み
定着化は導入以上に重要なフェーズです。以下のポイントを押さえることで、入力の習慣化を促進できます。
入力のハードルを下げる設定: 必須項目を最小限にする、入力画面をシンプルにする、モバイル対応を整備する
活用メリットの可視化: ダッシュボードで成果を可視化し、入力したデータが活用されていることを実感させる
定期的なレビューの仕組み: 週次・月次でデータを確認するミーティングを設定し、活用を習慣化する
まとめ:Salesforce導入は「準備」と「定着化」で成否が決まる
Salesforce導入を成功させるためには、ツールの選定や設定だけでなく、導入前のデータ整備・業務フロー設計から導入後の活用・定着化まで一気通貫で計画することが不可欠です。
本記事の要点は以下のとおりです。
- Salesforceを導入しても成果が出ない原因は、導入前準備の不足と定着化の仕組み欠如にある
- 導入前にデータ整備と業務フロー設計(As-Is/To-Be分析)を完了させることが重要
- 導入から定着化までの全体フローを計画し、段階的に進めることで成功確率が高まる
- 導入パートナーは実績・支援範囲・費用体系を総合的に評価して選定する
Salesforce導入は、導入前のデータ整備・業務フロー設計から導入後の活用・定着化まで一気通貫で計画することで、「導入したが使われない」という失敗を防ぎ、成果につながる運用を実現できます。本記事のチェックリストとフローを活用して、準備を進めてください。
