営業部長採用が難しい理由と成功の鍵
自社の営業組織に合った営業部長を採用し、営業チームを強化するために必要なのは、過去の営業実績だけでなく、自社の営業組織のフェーズとビジネスモデルに合ったマネジメントスタイル・組織構築力を評価軸に加えた選考設計です。
営業部長とは、営業チームの売上目標達成管理、マーケティング部門とのリード連携、戦略立案と実行を担う管理職です。多くの企業が「営業部長を採用したいが、どのような人材を採用すべきか分からない」「どう評価すべきか分からない」という課題を抱えています。
2025年の調査によると、ミドル人材(35-50歳程度の中堅層人材)の求人は約8割が「増加する」と予測されており、求人増加職種のトップ3に「営業」(36%)が含まれています。また、最も採用ニーズが高いポジションは「課長クラス」(58%)です(エン・ジャパン調査)。
さらに、2025年の中途採用で管理職を採用した割合は49.6%で、2021年から10ポイント以上増加しています。部長クラス・課長クラスともに約10ポイント増加しており、管理職採用のニーズは確実に高まっています(マイナビ調査)。
この記事で分かること
- 営業部長の役割と求められるスキル
- 営業部長採用市場の最新動向
- 組織フェーズに合った評価基準の設計方法
- 営業部長採用の進め方とチェックリスト
なお、本記事は営業部長を採用する企業向けの内容です。求職者向けの転職アドバイスは対象外としています。
営業部長の役割と求められるスキル
営業部長には、営業チームの売上目標達成管理だけでなく、マーケティング部門との連携や戦略立案・実行力が求められます。
営業部長の主な役割は以下の3つです。
- 売上目標達成管理: チーム全体の目標設定、進捗管理、メンバー育成
- マーケティング連携: マーケティング部門から供給されるリードの質・量を調整し、商談化率を高める
- 戦略立案と実行: 市場環境に応じた営業戦略の策定と実行推進
リードミスマッチとは、マーケティングが獲得したリードと営業が求めるリードの質・属性にズレが生じている状態を指します。営業部長には、このリードミスマッチを低減し、マーケティングと営業の連携を円滑にする能力が求められます。
営業実績とマネジメント力は別物
営業力が高い人材がそのまま営業部長として成功するとは限りません。
プレイヤーとして優秀な営業担当者は、個人の営業スキルや顧客との関係構築力に長けています。しかし、営業部長に求められるのは、チーム全体のパフォーマンスを最大化するマネジメント力と、マーケティング部門との連携力です。
この違いを理解せずに「営業成績が良いから」という理由だけで採用すると、入社後にマネジメントで苦労し、組織の混乱を招くリスクがあります。
営業部長採用市場の動向と採用難易度
営業部長の採用市場は競争が激化しており、採用難易度は上昇傾向にあります。
2023年の日本の労働力人口約6,740万人のうち、営業職従事者は約810万人(全体の約12%)と推定されています。2008年の870万人から60万人減少しており、母集団そのものが縮小しています(総務省労働力調査ベースの推定値。業界や定義により異なる可能性があります)。
先述の通り、2025年調査ではミドル人材求人の約8割が増加予測で、「課長クラス」(58%)が最も採用ニーズが高いポジションとなっています。採用したい企業が増える一方で、母集団は減少しているため、優秀な営業部長候補の採用競争は一層激しくなっています。
さらに、2030年には日本の労働力が644万人不足すると予測されており(総務省統計局推計)、中長期的にも人材確保は困難になることが見込まれます。
営業部長候補の評価基準と選考設計
営業部長候補の評価では、過去の営業実績だけでなく、自社の組織フェーズに合ったマネジメントスタイルと組織構築力を評価軸に加えることが重要です。
**よくある失敗パターンとして、過去の営業実績や大手企業での経験だけを重視して採用すると、自社の組織規模・文化とのミスマッチが発生するケースがあります。**この場合、期待した成果が出ないだけでなく、早期離職や組織の混乱につながるリスクがあります。大手企業で成功した経験があっても、自社の組織フェーズやビジネスモデルに合わなければ活躍は難しいのです。
【比較表】営業部長候補評価基準表
| 評価軸 | 立ち上げ期(〜30名) | 拡大期(30〜100名) | 成熟期(100名〜) |
|---|---|---|---|
| マネジメントスタイル | プレイングマネージャー型 | 組織構築・育成型 | 最適化・改善型 |
| 求められる経験 | 新規開拓・0→1の立ち上げ経験 | チーム拡大・採用・育成経験 | 組織改善・効率化経験 |
| マーケティング連携 | 自らリード獲得も担当 | マーケ部門との連携設計 | データ活用・ABM推進 |
| 組織構築力 | 少人数チームの牽引 | 採用・オンボーディング設計 | 組織再編・分業体制構築 |
| KPI管理 | 個人・チーム目標管理 | 部門横断のパイプライン管理 | 全社営業戦略との整合 |
| 重視すべきポイント | 行動力・実績 | 再現性・仕組み化能力 | 戦略思考・調整力 |
ABM(アカウントベースドマーケティング) とは、特定のターゲット企業に絞ってマーケティング・営業活動を展開する戦略です。成熟期の組織では、このような高度な施策を推進できる営業部長が求められます。
組織フェーズに合った営業部長像の定義
自社の営業組織がどのフェーズにあるかを明確にし、それに合った人材像を定義することが採用成功の第一歩です。
以下の質問に答えることで、自社に必要な営業部長像が見えてきます。
- 現在の営業チームは何名体制か?
- 今後どの程度の人員拡大を予定しているか?
- マーケティング部門との連携はどの程度進んでいるか?
- 営業プロセスの仕組み化・標準化はどの程度進んでいるか?
- 営業部長に求める最優先のミッションは何か?
営業部長採用の進め方とチェックリスト
営業部長の採用は、要件定義から始まり、母集団形成、選考、オファーまでのプロセスで進めます。採用期間は一般的に数ヶ月程度とされますが、企業の知名度や条件により大きく異なります。
以下のチェックリストを活用して、自社の採用準備状況を確認してください。
【チェックリスト】営業部長採用選考チェックリスト
- 自社の営業組織フェーズを明確にしている
- 営業部長に求める最優先ミッションを定義している
- 必須要件と歓迎要件を分けて整理している
- マネジメント経験の具体的な要件を定めている
- マーケティング連携力の評価基準を設定している
- 組織構築・育成経験の評価基準を設定している
- 年収レンジと報酬パッケージを決定している
- 採用チャネル(エージェント・リファラル・ヘッドハンティング等)を選定している
- 書類選考の評価基準を設定している
- 面接官と面接フローを決定している
- 各面接で確認すべき評価ポイントを明確にしている
- リファレンスチェックの実施有無を決定している
- オファー条件の決裁フローを確認している
- 入社後のオンボーディング計画を策定している
- 試用期間中の評価基準を設定している
リファラル採用やヘッドハンティングを活用することで、通常の採用プロセスより短期間で候補者と接触できる可能性があります。
面接で確認すべき質問例
営業部長候補の面接では、過去の実績だけでなく、思考プロセスやマネジメントスタイルを確認することが重要です。
マネジメント経験を確認する質問例
- これまで何名規模のチームをマネジメントしてきましたか?
- メンバーの目標設定と評価はどのように行っていましたか?
- 成果が出ないメンバーに対してどのような対応をしましたか?
組織構築力を確認する質問例
- 採用や育成にどの程度関わってきましたか?
- 営業プロセスの仕組み化で取り組んだことはありますか?
- チーム拡大にあたって直面した課題と解決策を教えてください。
マーケティング連携力を確認する質問例
- マーケティング部門との連携経験はありますか?
- リードの質に課題があった場合、どのように対処しましたか?
- インサイドセールスやカスタマーサクセスとの分業経験はありますか?
まとめ:組織フェーズに合った営業部長採用で営業チームを強化する
本記事では、営業部長採用の難しさと成功のポイントについて解説しました。
2025年調査でミドル人材求人は約8割が増加予測であり、管理職採用のニーズは高まり続けています。中途採用で管理職を採用した割合も49.6%と、2021年から10ポイント以上増加しています。
重要なポイントを整理します。
- 営業力が高い人材がそのまま営業部長として成功するとは限らない
- 過去の営業実績や大手企業経験だけを重視すると組織ミスマッチが発生しやすい
- 自社の営業組織フェーズ(立ち上げ期/拡大期/成熟期)に合った人材像を定義することが重要
- 評価軸にはマネジメントスタイル、組織構築力、マーケティング連携力を含める
- 面接では過去実績だけでなく思考プロセスを確認する
営業部長採用を成功させるには、過去の営業実績だけでなく、自社の営業組織のフェーズとビジネスモデルに合ったマネジメントスタイル・組織構築力を評価軸に加えた選考設計が重要です。本記事のチェックリストを活用し、自社に合った営業部長の採用要件を整理してみてください。
