SaaS営業が注目される背景と本記事で分かること
SaaS営業は分業体制と顧客との継続関係構築が肝であり、各役割の連携とデータ活用ができれば成果を最大化できる——本記事ではこの結論を詳しく解説します。
SaaS(Software as a Service) とは、クラウド上のソフトウェアにインターネット経由でアクセスし、月額・年額のサブスクリプション課金で利用するサービス形態です。日本のSaaS市場規模は2021年時点で6,081億円、2026年予測で1兆6,681億円と成長が見込まれています(総務省試算に基づく)。また、総務省「通信利用動向調査」によると、2022年時点でクラウドサービスを利用している企業は7割を超えており、SaaS営業の需要は今後も拡大していくと考えられています。
この記事で分かること
- SaaS営業の定義とマーケ・IS・FS・CSの分業体制
- SaaS営業と一般営業の違い(比較表付き)
- よくある失敗パターンと成功する組織の共通点
- ロール別の年収相場と求められるスキル
- SaaS営業組織の健全性チェックリスト
SaaS営業の基本と分業体制の理解
SaaS営業の最大の特徴は、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの分業体制にあります。一般的な営業が「1人で見込み客発掘から契約まで完結する」のに対し、SaaS営業では各フェーズを専門の役割が担当し、リレー形式で顧客を育成・契約・継続に導きます。
SaaS営業では「受注すれば終わり」ではありません。サブスクリプションモデルのため、契約後の継続率向上・解約防止・アップセルまでが営業活動の範囲に含まれます。この点が売り切り型の一般営業との大きな違いです。
マーケティング・IS・FS・CSの役割分担
インサイドセールス(IS) とは、電話・メール・Web会議を活用し、対面訪問せずにリード育成・商談創出を行う営業手法・職種です。フィールドセールス(FS) は、顧客との対面またはオンライン商談を通じて提案・クロージングを担当する営業職種を指します。カスタマーサクセス(CS) は、契約後の顧客に対し導入支援・活用促進・解約防止・アップセルを行い、LTV最大化を担う職種です。
これらの役割がマーケティング→IS→FS→CSとリレー形式でつながることで、専門性を活かした効率的な営業プロセスが実現します。各役割は異なるKPIを持ち、ISはアポイント創出数、FSは受注数・受注金額、CSは解約率・アップセル率などを追いかけるのが一般的です。
MRR・ARR・NRRなど知っておくべき指標
MRR / ARRは、Monthly/Annual Recurring Revenue(月次・年次の定期収益)を示すSaaSの重要指標です。NRR(Net Revenue Retention) は、既存顧客からの収益維持率を表し、解約・ダウングレードを差し引き、アップセル・クロスセルを加味した指標として重視されています。
BtoB SaaSでは年次解約率5〜10%以下が「良い水準」とされ、NRRは100〜120%を目標とする企業が多いとされています(ただし、業種・顧客規模により差があります)。これらの指標を把握することで、日々の営業活動が収益にどうつながるかの理解が深まります。
SaaS営業と一般営業の違い
SaaS営業と一般営業の最も大きな違いは、収益モデルとKPIにあります。一般営業は受注額・粗利が中心的な評価軸ですが、SaaS営業ではMRR・解約率・NRRなどの継続収益に関する指標が重要になります。
【比較表】SaaS営業と一般営業の違い比較表
| 比較軸 | SaaS営業 | 一般営業 |
|---|---|---|
| 収益モデル | サブスクリプション(月額・年額課金) | 売り切り型(一括購入) |
| 顧客との関係 | 長期継続・関係構築重視 | 受注完了で一区切り |
| ゴール | 継続率向上・アップセル・LTV最大化 | 受注額・粗利の最大化 |
| 主なKPI | MRR、解約率、NRR、商談化率 | 売上、粗利、受注件数 |
| 分業体制 | マーケ・IS・FS・CSで役割分担 | 1人で全プロセスを担当することが多い |
| 評価指標 | 継続率・解約率・アップセル率を重視 | 新規受注額・件数を重視 |
収益モデルの違い:売り切り型とサブスクリプション型
売り切り型のビジネスでは、受注額が大きいほど営業成績が高く評価されます。一方、サブスクリプション型のSaaSでは、初回の契約金額だけでなく「どれだけ長く使い続けてもらえるか」が収益を左右します。そのため、SaaS営業では顧客との継続的な関係構築が必須となります。
KPI設計と評価軸の違い
一般営業では売上・粗利が中心的なKPIですが、SaaS営業ではMRR・解約率・NRRが重要になります。BtoB SaaSでは年次解約率5〜10%以下、NRR100〜120%を目標とする企業が多いとされています(業種・顧客規模により差があります)。これらの指標をクリアすることで、既存顧客からの収益が安定し、新規獲得コストを効率的に回収できる構造が作れます。
SaaS営業組織でよくある失敗パターンと成功のポイント
SaaS営業組織の成果を左右するのは、分業体制の設計と役割間の連携です。**「とりあえずインサイドセールスを置けばいい」という考え方は誤りです。**マーケ・IS・FS・CS間の情報連携やKPI設計を軽視すると、せっかくの分業体制が機能せず、成果が出ない状態に陥りやすくなります。
分業体制が機能しない原因
分業体制がうまく機能しない典型的な原因は、役割間の情報共有不足です。たとえば、ISがアポイントを取得しても、FSに顧客の背景情報が引き継がれなければ商談の質が下がります。また、「人を増やせばスケールする」という考えも危険です。単価やLTV設計ができていない状態で高年収人材を採用すると、顧客獲得コスト(CAC)を回収できなくなるリスクがあります。
成果を出す組織の共通点
成果を出すSaaS営業組織には共通点があります。データ駆動で意思決定を行い、ナレッジを組織全体で共有し、各役割のKPIに整合性を持たせていることです。トップパフォーマーの営業プロセスを分析し、組織の「勝ちパターン」としてナレッジ化することで、属人化を防ぎつつ全体の成果を高められます。MA/CRM/SFAなどのツールを活用し、リードから受注、継続までの一連のプロセスをトラッキングすることも重要です。
SaaS営業の年収・キャリアパスと必要スキル
SaaS営業の年収は、一般的な営業職と比較して高い水準にあります。日本の営業職全体の平均年収は約470万円であるのに対し、SaaS業界の平均年収は600〜700万円台で、業界・職種平均を上回っています(調査母集団や算出方法により差があります)。帝国データバンク調査による国内上場企業全体の平均年収は671万円(2024年4月〜2025年3月)であり、SaaS企業の平均年収はすでにこの水準を超えている傾向がみられます。
【チェックリスト】SaaS営業組織の健全性チェックリスト
- マーケティング・IS・FS・CSの役割と責任範囲が明確に定義されている
- 各役割間でリード・商談情報がリアルタイムで共有されている
- IS→FS→CSへの引き継ぎルールが文書化されている
- 各役割のKPIが設定され、全体のKGIと整合性がとれている
- MRR・解約率・NRRなどの指標を定期的にモニタリングしている
- トップパフォーマーの営業プロセスがナレッジ化されている
- MA/CRM/SFAでリードから受注・継続までトラッキングできている
- 解約理由を分析し、CSにフィードバックする仕組みがある
- 新規採用時にオンボーディングプログラムが整備されている
- 定期的な営業ミーティングでKPI進捗と課題が共有されている
- 顧客からのフィードバックが製品改善に活かされている
- 営業プロセスの改善PDCAが定期的に回っている
ロール別の年収相場
SaaS営業職の年収レンジはロール別に異なります。目安として、インサイドセールス約550万円、フィールドセールス約700万円、カスタマーサクセス約680万円、エンタープライズ営業約950万円とされています(調査母集団により差があります)。
外資系SaaS企業の営業職年収は、大手外資系企業で約1,100〜1,200万円と推定されるケースもあります(推定値であり、インセンティブ込みの想定です)。ただし、外資系はパフォーマンスに応じた変動給の比率が高い傾向があるため、固定給のみで比較する際は注意が必要です。
求められるスキルと経験
SaaS営業で活躍するために求められるスキルは多岐にわたります。データ分析力、顧客課題の深掘り力、MA/SFA等のツール活用力、論理的なコミュニケーション力が代表的です。また、サブスクリプションモデルへの理解やLTV・NRRなどの指標を把握する力も重要です。
業界未経験からSaaS営業に転職するケースも増えています。未経験者に求められるのは、新しい知識を積極的に学ぶ姿勢と、データを活用した仮説検証の習慣です。SaaS業界は変化が速いため、継続的な学習意欲が成果を左右します。
SaaS営業で成果を出すために押さえるべきポイント
本記事では、SaaS営業の基礎から分業体制、年収・スキルまで解説してきました。日本のSaaS市場規模は2021年時点で6,081億円、2026年予測で1兆6,681億円と成長が見込まれており(総務省試算に基づく)、SaaS営業の需要は今後も高まっていくと考えられています。
転職を検討している方は、分業体制の各役割とKPIの違いを理解しておくことが重要です。自分がどのロールに適性があるか、どのような指標で評価されるかを把握した上で判断することで、ミスマッチを防げます。
組織改善を担当するマネージャーの方は、まず現状の役割間連携とKPIの整合性を見直すことをおすすめします。「とりあえず人を増やす」「ツールを入れる」のではなく、情報連携の仕組みとKPI設計を先に整えることが、成果を最大化するための第一歩です。
SaaS営業は分業体制と顧客との継続関係構築が肝であり、各役割の連携とデータ活用ができれば成果を最大化できます。本記事で紹介したチェックリストを参考に、自社の組織状況を確認してみてください。
