SaaSグロース戦略|PLG/SLGの選び方と成長を支える仕組み化

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2026/1/1910分で読めます

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SaaSのGrowth期に直面する成長戦略の課題

PMFを達成し成長フェーズに入ったがPLG/SLGの選択や組織体制の整備をどう進めればよいかわからないという課題を解決したいなら、SaaSのGrowth期では、PLG/SLGの戦略選択だけでなく、MA/SFAのデータ連携とインサイドセールス組織の仕組み化によって、スケーラブルな成長基盤を構築できます。

MRR(Monthly Recurring Revenue) とは、月次経常収益を指します。SaaS企業の安定収益を測る基本指標です。

国内SaaS市場は2024年に1.4兆円規模に達し、2028年までに年平均11%成長で2兆円超に達すると予測されています(IDC Japan)。市場全体が成長する中、SaaS企業の間では二極化が進行しています。ARR100億円超の日本上場SaaS企業は12社、トップのラクスは400億円台に達しています(2025年2月時点)。

このような環境下で、PMF達成後の成長フェーズに入った企業が直面するのは「どの成長戦略を選ぶべきか」という問いです。PLG(製品主導成長)とSLG(営業主導成長)のどちらを選ぶべきか、組織体制やツール基盤をどう整備すべきか—本記事では、これらの課題に対する実践的な解決策を解説します。

この記事で分かること

  • SaaS成長指標(MRR・LTV/CAC・NRR・ARPA)の基本と見方
  • PLGとSLGの違いと自社に適した戦略の選び方
  • Growth期に必要な組織体制と仕組み化のポイント
  • Growth期移行のためのチェックリスト

SaaS成長指標の基本|MRR・CAC・LTV・チャーン率の見方

SaaS事業の健全性を評価するには、複数の指標を組み合わせて見ることが重要です。単一の指標だけで判断すると、事業の実態を見誤る可能性があります。

LTV/CAC比率とは、顧客生涯価値と顧客獲得コストの比率を指します。3倍以上が健全性の目安とされています。LTV/CAC比率は理想3倍以上がSaaSグロースの鉄則とされ、CAC回収期間は12-18ヶ月が健全性の目安とされています。ただし、これらはグローバル基準の目安であり、日本市場固有の統計は限定的です。

Net Revenue Retention(NRR) とは、純収益維持率を指します。既存顧客からの収益維持・拡大を示す指標で、110%以上が理想とされています。NRRは投資家評価にも直結する重要指標ですが、この目安もグローバル基準であり、日本市場の実績データは限定的である点には留意が必要です。

ARPA向上がLTV改善の鍵

ARPA(Average Revenue Per Account) とは、顧客1社あたりの平均月間収益を指します。クロスセルや値上げによって向上を図ることができます。

国内上場SaaSのARPAは3年間で30%上昇(年平均10%)しており、値上げ・クロスセル効果による成長が顕著です。LTV改善のためには、新規顧客獲得だけでなく、既存顧客からの収益拡大を意識したARPA向上施策が重要です。

PLGとSLGの違いと自社に適した戦略の選び方

SaaSの成長戦略には大きく分けてPLGとSLGの2つのアプローチがあります。どちらが優れているかという問いに正解はなく、自社のプロダクト特性や意思決定者、導入段階に応じて選択することが重要です。

PLG(Product-Led Growth) とは、製品自体が営業を行う成長モデルを指します。無料トライアルやフリーミアムを通じて顧客が自発的に有料化します。

SLG(Sales-Led Growth) とは、営業主導で顧客を獲得する成長モデルを指します。営業担当者による交渉で契約を獲得します。

PLG導入企業では無料→有料転換率が15%から17%に上昇(約12%改善)、有料継続率も99.1%から99.5%へ向上した事例があります。また、トヨクモはPLGによるセルフサーブ型の顧客獲得で、セールス・インサイドセールス組織を持たずPSR 6.3倍の評価を獲得しています。

【比較表】SaaSグロース戦略(PLG/SLG)比較表

比較項目 PLG(Product-Led Growth) SLG(Sales-Led Growth)
定義 製品自体が営業を行う成長モデル 営業主導で顧客を獲得する成長モデル
主な顧客獲得方法 無料トライアル、フリーミアム 営業担当者による提案・交渉
意思決定者 現場ユーザー(ボトムアップ) 経営層・部門責任者(トップダウン)
適したプロダクト 操作が直感的、導入障壁が低い 導入に説明が必要、高単価
導入段階 ランディング(初期導入) エクスパンション(拡大・深化)
組織構成 プロダクト・マーケティング中心 営業・インサイドセールス中心
CAC傾向 低い傾向 高い傾向
単価傾向 低〜中単価 中〜高単価
スケーラビリティ 高い(人員増加に依存しにくい) 営業人員に比例
成功事例 トヨクモ(PSR 6.3倍) エンタープライズSaaS企業

※ PLG/SLGの優劣は事業特性により異なります。一律に断定することはできません。

ハイブリッド戦略という選択肢

PLGとSLGを二者択一で考える必要はありません。ランディング段階ではPLGで小規模導入を促進し、エクスパンション段階ではSLGで契約拡大を図るハイブリッド戦略が有効なケースもあります。

例えば、フリーミアムで現場ユーザーに利用してもらい、社内で利用が広がった段階で営業がエンタープライズ契約を提案するというアプローチです。一方のみに依存すると、市場環境の変化や顧客層の変化に対応しにくくなるリスクがあります。

Growth期の組織体制|仕組み化で成長を支える

Growth期に入ったSaaS企業が成長を継続するには、戦略選択だけでなく、それを実行する組織体制と仕組みの構築が不可欠です。

よくある失敗パターンとして、「PLGだから営業組織は不要」「SLGだからプロダクト改善は後回し」という二項対立で考え、部門間連携やツール活用の仕組み化を後回しにしてしまうケースがあります。 これでは持続的な成長は難しくなります。

PLGを採用していても、エンタープライズ顧客の獲得やアップセル・クロスセルには営業組織の構築が有効です。逆にSLGを採用していても、プロダクトの使いやすさや価値体験が乏しければ、解約率の上昇を招きます。

重要なのは、戦略に合わせて必要な組織機能を整備し、部門間のデータ連携と協業の仕組みを構築することです。

MA/SFA連携によるデータ基盤構築

Growth期に向けた組織体制構築において、MA(マーケティングオートメーション)とSFA(営業支援システム)の連携によるデータ基盤の整備は重要な土台となります。

マーケティング部門が獲得したリードの行動データと、営業部門が持つ商談・受注データを連携させることで、どのチャネル・施策が商談化・受注に寄与しているかを可視化できます。これにより、マーケティング投資の最適化と営業効率の向上を同時に実現できます。

また、データ連携の仕組みが整うことで、特定の担当者に依存しない「属人化しない」営業・マーケティング組織を構築できます。これがスケーラブルな成長を支える基盤となります。

Growth期移行の実践ステップとチェックリスト

Growth期への移行を成功させるためには、成長指標・組織体制・ツール基盤の3つの領域で準備を整える必要があります。以下のチェックリストで自社の現状を確認してください。

【チェックリスト】Growth期移行チェックリスト

  • MRRを正確に計測・モニタリングできている
  • LTV/CAC比率を算出し、3倍以上を維持できている(グローバル基準目安)
  • CAC回収期間を12-18ヶ月以内に抑えられている(グローバル基準目安)
  • NRR(純収益維持率)を計測し、110%以上を目指している(グローバル基準目安)
  • ARPAの推移を把握し、向上施策を検討している
  • PLG/SLGの選択基準を明確にしている
  • 自社プロダクトの意思決定者(現場 or 経営層)を把握している
  • ランディング/エクスパンション段階の戦略を分けて設計している
  • マーケティング組織の役割と目標を明確にしている
  • インサイドセールス組織の構築を検討または着手している
  • マーケティングと営業のKPIを連動させている
  • MAツールを導入し、リード管理ができている
  • SFAツールを導入し、商談・パイプライン管理ができている
  • MA/SFAのデータ連携を設計・実装している
  • チャネル別・施策別の商談化率を可視化できている
  • 定期的にデータを分析し、施策改善に活用している

※ LTV/CAC比率やNRRの目安はグローバル基準であり、事業特性により異なります。

上記チェックリストで不足している項目があれば、優先順位をつけて整備を進めてください。すべてを同時に完璧に整備する必要はなく、段階的に改善していくことが現実的です。

まとめ|戦略選択と仕組み化でSaaSグロースを加速する

本記事では、SaaS事業のGrowth期における成長戦略とその実行に必要な組織体制・仕組み化について解説しました。

要点を整理します。

  • 市場環境: 国内SaaS市場は年平均11%成長で2兆円超へ。ARR100億円超企業12社と二極化が進行
  • 成長指標: LTV/CAC比率3倍以上、NRR110%以上が健全性の目安(グローバル基準)
  • ARPA向上: 国内上場SaaSのARPAは3年で30%上昇。値上げ・クロスセルがLTV改善の鍵
  • PLG/SLG選択: 意思決定者と導入段階に応じて選択。ハイブリッド戦略も有効
  • 組織体制: 「PLGだから営業不要」は誤り。部門間連携と仕組み化が不可欠
  • ツール基盤: MA/SFA連携でデータ可視化と属人化防止を実現

繰り返しになりますが、SaaSのGrowth期では、PLG/SLGの戦略選択だけでなく、MA/SFAのデータ連携とインサイドセールス組織の仕組み化によって、スケーラブルな成長基盤を構築できます。

まずは本記事のチェックリストで自社の現状を確認し、不足している項目から優先的に整備を進めてみてください。

「記事は出してるのに商談につながらない」を解決する。
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よくある質問

Q1PLGとSLGのどちらを選ぶべきですか?

A1意思決定者と導入段階により異なります。現場ユーザーが意思決定者ならPLG、経営層が意思決定者ならSLGが有効です。また、ランディング段階はPLG、エクスパンション段階はSLGというハイブリッド戦略も有効です。トヨクモはPLGでセールス組織なしでPSR 6.3倍の評価を獲得した事例があります。

Q2LTV/CAC比率の目安は何倍ですか?

A2LTV/CAC比率は3倍以上が健全性の目安とされています。また、CAC回収期間は12-18ヶ月以内が理想です。ただし、これらはグローバル基準であり、日本市場固有の統計は限定的です。事業特性により異なることをご留意ください。

Q3SaaS成長指標で最も重要な指標は何ですか?

A3単一の指標ではなく、MRR・LTV/CAC比率・NRR・ARPAを総合的に見ることが重要です。特にNRR(純収益維持率)は110%以上が健全性の目安とされ、投資家評価にも直結します。これもグローバル基準であり、事業特性に応じた評価が必要です。

Q4Growth期に営業組織は必要ですか?

A4PLG戦略でも営業組織が不要とは限りません。エンタープライズ顧客の獲得や、エクスパンション段階での拡大には営業組織の構築が有効です。「PLGだから営業不要」「SLGだからプロダクト改善は後回し」という二項対立で考えず、組み合わせて活用することが重要です。

Q5国内SaaS市場の成長率はどのくらいですか?

A5国内SaaS市場は2024年1.4兆円規模で、2028年までに年平均11%成長で2兆円超に達すると予測されています(IDC Japan)。ARR100億円超の日本上場SaaS企業は12社で、トップのラクスは400億円台に達しています。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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