営業とマーケティングの連携がうまくいかない本当の原因
最も重要なのは、組織のサイロ化解消には対話促進だけでなく、SFA・MAのデータ連携と営業・マーケの共通KPI設計という『仕組み』を整備することです。この土台を整えることで、部門間連携が実現します。
「マーケティングから渡されるリードの質に不満がある」「営業とマーケで目標・指標が噛み合わず、連携がうまくいかない」——BtoB企業の営業部長やマーケティング責任者から、こうした声を聞くことは少なくありません。
2025年の調査によると、日本のITリーダーの86%がデータのサイロ化が組織のビジネス課題を引き起こしていると回答しています(ただしIT部門対象の調査であり、営業・マーケ視点とは異なる可能性があります)。
組織のサイロ化とは、部門や部署が孤立し、互いに連携や情報共有が行われない状態を指します。日本企業では「タコ壺化」とも呼ばれています。
この記事で分かること
- 組織サイロ化の定義と営業部門に現れる症状
- 定例ミーティングを増やしても改善しない理由
- サイロ化を解消する「仕組み」の整備方法
- 成功事例と失敗パターンの対比
- 営業×マーケ連携を実現する具体的なステップ
なぜ定例ミーティングを増やしても改善しないのか
よくある失敗パターンとして、組織サイロ化を「コミュニケーション不足」と捉え、交流会や定例ミーティングの増設だけで解決しようとするケースがあります。しかし、この考え方は誤りです。
根本原因はデータ分断と共通目標の欠如にあり、対話を増やすだけではサイロ化は解消しません。営業とマーケが別々のシステムでデータを管理し、異なるKPIを追いかけている状態では、いくら会議を増やしても本質的な連携は実現しないのです。
対話を促進することは大切ですが、それは「仕組み」を整えた上で効果を発揮します。
組織のサイロ化とは|営業部門に現れる症状と影響
組織のサイロ化は、営業部門においてリード情報の分断、商談進捗の不透明化、マーケティング施策との断絶といった症状として現れます。
データサイロとは、部門ごとにデータが分断・孤立し、組織全体で一元管理・活用ができていない状態を指します。
2025年の調査によると、日本の回答者の97%がシステム間のインテグレーションに苦慮しており、組織内で実際に接続されているアプリケーションは平均25%にとどまるという結果が出ています。多くの企業で、システム連携が十分に進んでいない実態が浮き彫りになっています。
営業成果を阻害するデータサイロの構造
データサイロは、営業成果に直接的な悪影響を与えます。リード情報が分断されると、マーケティングが獲得したリードの質や温度感が営業に正しく伝わらず、適切なタイミングでのアプローチができなくなります。
同じ調査では、AIエージェント導入企業では97%がデータサイロ化を課題と認識している一方、未導入企業でも81%が同様の課題を抱えていることが明らかになっています。デジタル化が進む企業ほど、データサイロの問題を深刻に捉えている傾向がうかがえます。
商談化率の低下、顧客情報の重複、フォロー漏れといった問題は、多くの場合、個人のスキルではなくデータ分断という構造的な課題に起因しています。
サイロ化を解消する仕組み|データ連携と共通KPI設計
サイロ化を解消するには、対話ではなく「仕組み」を整備することが必要です。具体的には、SFA・MAのデータ連携基盤と、営業・マーケ共通のKPI設計が核心となります。
CRO(Chief Revenue Officer) とは、売上責任を統括する役職です。営業・マーケ・カスタマーサクセスを横断し、サイロ解消を推進する役割を担います。近年、CROを設置して組織横断的に売上責任を統括する企業が増加傾向にあります。
まず自社の連携状況を診断するために、以下のチェックリストを活用してください。
【チェックリスト】営業×マーケ連携度診断チェックリスト
- MQL(マーケティング成熟リード)の定義が営業と合意されている
- SQL(営業成熟リード)の定義が明文化されている
- リードの引き渡し基準が数値で定義されている
- SFAとMAが連携し、リード情報が自動同期されている
- 営業とマーケで共通のダッシュボードを閲覧している
- リードの進捗状況をリアルタイムで把握できる
- 商談化率・受注率を部門横断で計測している
- 定期的なレビュー会議で共通KPIを確認している
- リードの質に関するフィードバックループが機能している
- マーケ施策の効果を受注ベースで評価している
- 顧客情報の重複・不整合が解消されている
- リード対応のSLA(応答時間)が定義されている
- 両部門の責任範囲が明確になっている
- データ入力ルールが統一されている
- 連携の課題を定期的に議論する場がある
MQL・SQL定義統一の実践方法
MQL・SQLの定義統一は、データ連携の前提となる重要なステップです。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング活動を通じて一定の条件を満たし、営業に引き渡す準備ができた見込み客を指します。SQL(Sales Qualified Lead) とは、営業が商談対象として認定した見込み客を指します。
定義統一のプロセスとしては、まず営業とマーケの双方が参加するワークショップを開催し、「どのような状態のリードなら営業がフォローすべきか」を議論します。次に、具体的な条件(行動スコア、属性条件、エンゲージメント履歴など)を明文化し、SFA・MAに実装します。
定義を決めて終わりではなく、定期的にレビューし、商談化率の実績に基づいて調整することが重要です。
サイロ化解消の成功事例と失敗パターン
成功事例と失敗パターンを対比することで、実践のポイントが明確になります。
富士通では、CRO(売上責任者)が「売って終わり」営業から脱却し、組織横断連携で提供価値最大化を推進した事例があります(2025年)。営業・マーケ・カスタマーサクセスを一体で捉え、顧客価値に基づく共通目標を設定したことが成功の鍵でした。ただし、これは企業発信の事例であり、成功バイアスがある点に留意が必要です。
失敗パターンとしては、以下のケースが典型的です。
- ツール導入だけで終わる:SFAやMAを導入したものの、運用ルールや共通KPIを設計せず、結局部門ごとにバラバラに使っている
- コミュニケーション改善だけに頼る:定例ミーティングを増やしても、データが連携していないため議論が噛み合わない
- 現場任せにする:経営層のコミットなく、現場担当者だけに連携を任せてしまう
成功のポイントは、仕組み整備と成果観の共有を同時に進めることです。
営業×マーケ連携を実現するステップ
営業×マーケ連携を実現するには、現状診断から運用定着まで段階的に進めることが有効です。以下のステップ対応表を参考にしてください。
【比較表】サイロ化解消ステップ対応表
| ステップ | 目的 | 主な施策 | 成果物 |
|---|---|---|---|
| 現状診断 | 連携の課題を可視化 | チェックリストによる自己診断、ヒアリング | 課題一覧、優先順位 |
| KPI定義統一 | 共通目標の設定 | MQL・SQL定義のワークショップ、SLA策定 | 定義書、運用ルール |
| データ連携基盤 | 情報の一元化 | SFA・MA連携設定、データ統合 | 連携済みシステム |
| 運用定着 | 継続的な改善 | 定期レビュー、KPIモニタリング | ダッシュボード |
| 改善サイクル | 成果の最大化 | 商談化率分析、定義見直し | 改善レポート |
SFA・MA連携を見据えた導入準備
ツール導入だけではサイロ解消は実現しません。導入前に以下の準備が必要です。
組織合意の形成:経営層を含めて、なぜサイロ解消が必要か、どのような成果を目指すかを合意します。現場だけの取り組みでは推進力が不足しがちです。
プロセス設計:リードの流れ(獲得→育成→引き渡し→商談→受注)を可視化し、どの段階で何を計測するかを設計します。ツール設定はこのプロセス設計に基づいて行います。
データ品質の確保:既存データの重複・不整合を解消し、入力ルールを統一します。データ品質が低いまま連携しても、かえって混乱を招きます。
まとめ|対話ではなく仕組みでサイロ化を解消する
本記事では、営業とマーケティングの連携を阻害するサイロ化の原因と、解消のための仕組みについて解説しました。
本記事の要点
- サイロ化の根本原因はコミュニケーション不足ではなく、データ分断と共通目標の欠如
- 日本企業の多くがシステム間連携に苦慮しており、接続されているアプリは平均25%にとどまる
- 解消には対話ではなく「仕組み」が必要——SFA・MA連携と共通KPI設計
- MQL・SQL定義の統一がデータ連携の前提となる
- 成功のポイントは仕組み整備と成果観の共有を同時に進めること
次のステップとして、まず本記事のチェックリストで自社の連携状況を診断してみてください。課題が見えてきたら、MQL・SQL定義の見直しから着手することをおすすめします。
改めて強調すると、組織のサイロ化解消には対話促進だけでなく、SFA・MAのデータ連携と営業・マーケの共通KPI設計という『仕組み』を整備することが必要です。この土台を整えることで、部門間連携が実現します。
