マーケティング部長の役割と本記事の目的
多くの方が悩むマーケティング部長の役割。結論は、マーケティング部長は、戦略立案だけでなく、MA/SFA活用を前提としたKPI設計・運用体制構築・部門間連携の実装まで一気通貫で担うことで成果を出せるということです。
マーケティング部長としての役割が曖昧で、戦略立案はできるが実行・定着が伴わないという課題を抱える企業が少なくありません。MA/SFAを導入したものの、ツールが活用されず、部門間連携がうまく機能していないケースも多く見られます。
この記事で分かること
- CMOとマーケティング部長の違いと、それぞれの役割範囲
- マーケティング部長に求められる主要な業務内容とスキル
- MA/SFA活用を前提とした実務プロセスと組織運営の方法
- 陥りがちな失敗パターンと、成果を出すための回避策
- 一気通貫プロセスを実現するための具体的なチェックリスト
本記事では、マーケティング部長の役割理解に加え、MA/SFA活用を前提とした実装・運用定着までの一気通貫プロセスを明示します。戦略立案で終わらず、実装・運用定着までの一気通貫プロセスにおけるマーケティング部長の役割を理解することで、MA/SFA導入済みでも活用不全に悩む企業の課題解決につながります。
マーケティング部長とCMOの違い
マーケティング部長とCMO(最高マーケティング責任者)は、役割範囲や権限、経営への影響力において明確な違いがあります。
CMO(最高マーケティング責任者) とは、経営層(Cレベル)の役職で、企業全体のマーケティング戦略を立案・主導し、部署横断的に実行する責任者です。一方、マーケティング部長は、中間管理職で、主にマーケティング部門内の運用・監督に特化し、経営戦略への影響力が限定的な役割を担います。
しかし、多くの企業では「CMOとマーケティング部長は同じ」という誤解が存在します。日本では、マーケティング注力企業300社のうちCMO/執行役員設置率は33.6%にとどまり、部長職が標準的な組織構造となっているのが実態です。
CMOとマーケティング部長の定義と役割
CMOは経営層(Cレベル)の役職として、企業全体のマーケティング戦略を立案・主導し、部署横断的に実行する責任者です。経営会議への参加、予算決定権、他部門(営業、開発、カスタマーサクセス)との連携を主導する権限を持ちます。
一方、マーケティング部長は中間管理職として、主にマーケティング部門内の運用・監督に特化し、経営戦略への影響力が限定的です。CMOが定めた戦略を実行する立場にあり、リード獲得、コンテンツ制作、MAツール運用などの実務を統括します。
【比較表】CMOとマーケティング部長の違い
| 項目 | CMO(最高マーケティング責任者) | マーケティング部長 |
|---|---|---|
| 役職レベル | 経営層(Cレベル) | 中間管理職 |
| 戦略策定 | 企業全体のマーケティング戦略を主導 | CMOが定めた戦略を実行 |
| 権限範囲 | 部署横断的(営業、開発、CSを含む) | マーケティング部門内 |
| 予算決定権 | あり(経営会議で承認) | 限定的(CMOや経営層の承認が必要) |
| 経営への影響力 | 高い(経営会議メンバー) | 限定的(報告・提案が中心) |
| 主な業務 | 戦略立案、経営会議参加、部門間連携 | 実務統括、KPI管理、チームマネジメント |
| 求められるスキル | 経営視点、戦略立案力、部門間調整力 | データ分析力、実務遂行力、チーム統率力 |
グローバルトレンド:CMOからCROへのシフト
グローバル市場では、CMOポストが減少傾向にあり、Chief Revenue Officer(CRO) へのシフトが進んでいます。CROとは、収益全体を統括する経営層の役職で、マーケティング・営業・カスタマーサクセスを横断的に管理します。
Fortune 500のBtoB企業では、CMO級責任者の保有率が2024〜2025年に48%から42%に減少しました。同期間で、Chief Revenue Officer任命が17%増、Chief Sales Officerが58%増となっており、収益責任を明確化する方向にシフトしています。
また、グローバル傾向として、Chief Product Officerが80%増、Chief Revenue Officerが73%増という肩書き変化率が報告されています(2020年代後半のグローバルデータ。日本市場と完全一致せず参考値として扱う)。これは、マーケティング責任者の役割が多様化し、製品戦略や収益全体の最適化にまで拡大していることを示しています。
マーケティング部長の主要な役割と業務内容
マーケティング部長の主要な役割は、マーケティング戦略の立案と実行、KPI管理とデータ分析、営業部門との連携、マーケティング組織の構築と運営です。リード獲得とナーチャリングに特化し、ペルソナ設計、訴求軸整理、顧客接点構築、KPI管理を主導することが求められます。
ナーチャリングとは、見込み顧客の行動や属性に応じて、段階的にパーソナライズしたメールを自動配信しリードを育成する手法です。マーケティング部長は、このナーチャリングプロセスを設計し、MAツールを活用して実装・運用する役割を担います。
BtoB マーケティングでは、新規リード数をコントロール可能と評価する担当者が58%にとどまっており(2024年調査、n=190。IDEATECH調査で、BtoB マーケティング担当者限定のアンケートベース)、リード獲得の難しさが浮き彫りになっています。また、受注率管理の必要性を実感する担当者は68.4%(「非常にそう思う」30.5%+「ややそう思う」37.9%、2024年調査、n=190。IDEATECH調査で、定性評価のため具体的な受注率数値ではない)と高く、単なるリード数増加ではなく、質の高いリード獲得と育成が重要視されています。
BtoB マーケティングで重視される事項として、顧客課題解決提案が54.4%、ROI示唆が39.1%、差別化強調が38.8%となっており(2024年、n=327。VALUES調査で、BtoB マーケティング担当者限定のアンケートベース)、マーケティング部長には顧客視点での価値提案力が求められます。
マーケティング戦略の立案と実行
マーケティング戦略の立案と実行は、マーケティング部長の中核業務です。市場調査を通じて顧客ニーズや競合動向を把握し、ターゲット設定とポジショニングを明確にします。
具体的には、以下のような業務を担います。
- 市場調査とペルソナ設計(顧客の課題、購買プロセス、意思決定者の特定)
- ターゲット設定とセグメンテーション(業種、企業規模、課題別の優先順位付け)
- ポジショニング戦略の策定(自社の強みと競合との差別化ポイントの明確化)
- マーケティングミックス(製品、価格、流通、プロモーション)の決定
- コンテンツ戦略の立案(ホワイトペーパー、ウェビナー、ブログ記事など)
マーケティング戦略は、CMOや経営層が定めた全社戦略に基づいて立案し、マーケティング部門内で実行可能な計画に落とし込むことが求められます。
KPI管理とデータ分析
KPI管理とデータ分析は、マーケティング部長が成果を測定し、継続的に改善するために不可欠な業務です。KPI(重要業績評価指標) とは、ビジネスの目標達成度を測定するための定量的な指標です。
マーケティング部長は、以下のようなKPIを設定し、進捗を管理します。
- リード獲得数(月次、四半期、年次)
- リード獲得単価(CPL: Cost Per Lead)
- リードからMQL(Marketing Qualified Lead)への転換率
- MQLからSQL(Sales Qualified Lead)への転換率
- 受注率(SQLから成約に至る割合)
- マーケティングROI(投資対効果)
BtoB マーケティングでは、新規リード数をコントロール可能と評価する担当者が58%という調査結果があり(2024年調査、n=190。IDEATECH調査)、リード獲得の難しさが示されています。また、受注率管理の必要性を実感する担当者は68.4%と高く(2024年調査、n=190。IDEATECH調査)、単なるリード数ではなく、質の高いリード獲得と受注率向上が重視されています。
KPI達成率を継続的にモニタリングし、目標に対する進捗を確認することが重要です。業界では、KPI達成率80%以上を目安に進捗管理することが一般的です。
営業部門との連携
営業部門との連携は、マーケティング部長の重要な役割の一つです。マーケティングで獲得したリードを営業に引き渡し、受注につなげるプロセスを円滑にすることが求められます。
具体的には、以下のような連携が必要です。
- リード引き渡しルールの明確化(MQLからSQLへの基準設定)
- 営業フィードバックの収集(リードの質、顧客ニーズ、競合情報)
- 顧客ニーズの商品開発への反映(営業が得た顧客の声をマーケティングや開発部門に共有)
- SLA(Service Level Agreement)の策定(マーケティングと営業の責任範囲と目標の合意)
マーケティング部長は、営業部門との連携を強化し、顧客ニーズを商品開発に反映させる役割も担います。営業が現場で得た顧客の課題や要望を、マーケティング戦略や製品改善に活かすことで、顧客満足度と受注率の向上につながります。
MA/SFA活用を前提としたマーケティング部長の実務
MA/SFA活用を前提とした実装・運用プロセスにおけるマーケティング部長の役割は、戦略立案だけでなく、KPI設計・運用体制構築・部門間連携の実装まで一気通貫で担うことです。
リードスコアリングとは、見込み顧客の行動(ページ閲覧、フォーム送信等)を点数化し、購買意欲を定量評価する仕組みです。マーケティング部長は、このリードスコアリングの設計と運用を主導し、営業部門に質の高いリードを引き渡す体制を構築します。
マーケティング責任者が顧客獲得から維持までの体制を構築した企業では、トップライン成長率が1.4倍〜2.3倍になったという報告があります(CMOからCEO昇格企業の事例)。これは、戦略立案だけでなく、実装・運用定着までを一気通貫で担うことの重要性を示しています。
【チェックリスト】マーケティング部長の役割確認チェックリスト
- マーケティング戦略が明文化されており、チーム全員が理解している
- ターゲットペルソナが具体的に定義されている(課題、購買プロセス、意思決定者)
- リード獲得のKPIが設定されており、進捗を定期的に確認している
- リードスコアリングの基準が明確で、MAツールに実装されている
- MQLからSQLへの引き渡し基準が営業部門と合意されている
- ナーチャリングシナリオが設計され、MAツールで自動配信されている
- 受注率を定期的に測定し、改善施策を実施している
- 営業部門からのフィードバックを収集し、マーケティング施策に反映している
- マーケティングROIを測定し、予算配分を最適化している
- コンテンツ戦略が立案され、定期的に更新されている
- SFA/CRMにマーケティングデータが連携されている
- リード獲得単価(CPL)を把握し、コスト削減策を検討している
- マーケティング施策ごとの効果測定を実施している
- チームメンバーのスキル育成計画が策定されている
- 競合分析を定期的に実施し、差別化ポイントを更新している
- 顧客の課題解決提案を訴求軸に据えたコンテンツを制作している
- 営業部門とのSLA(責任範囲と目標の合意)が明文化されている
- MA/SFAツールの活用状況を定期的にレビューし、改善している
- リードの質を定期的に営業部門と確認し、改善している
- マーケティング予算の配分(デジタル広告、コンテンツ、イベント)が最適化されている
KPI設計と運用体制の構築
KPI設計と運用体制の構築は、マーケティング部長が成果を出すための基盤です。KPI設計では、全社目標(売上、利益)から逆算し、マーケティング部門が担うべき指標を明確にします。
具体的には、以下のようなKPIを設計します。
- リード獲得数:月次、四半期、年次の目標を設定
- リード獲得単価(CPL):広告費や施策ごとのコストを把握
- MQL転換率:リードからMQLへの転換率を測定
- SQL転換率:MQLからSQLへの転換率を測定
- 受注率:SQLから成約に至る割合を測定
- マーケティングROI:投資対効果を測定
運用体制の構築では、これらのKPIを定期的にモニタリングし、改善施策を実行するプロセスを確立します。週次または月次でKPIレビュー会議を開催し、進捗確認と課題の洗い出しを行うことが推奨されます。
また、MAツールにKPIダッシュボードを設定し、リアルタイムで進捗を可視化することで、迅速な意思決定が可能になります。
部門間連携の実装
部門間連携の実装は、マーケティング部長が一気通貫プロセスを実現するための鍵です。マーケティング部門と営業部門の連携体制を構築し、リード引き渡しルールを明確化することが重要です。
具体的には、以下のような連携を実装します。
- リード引き渡しルールの策定:MQLの定義(スコアリング基準、行動履歴、属性情報)を営業部門と合意し、SFAに連携
- SLA(Service Level Agreement)の締結:マーケティングが提供するリード数と質、営業がフォローアップする期限と方法を明文化
- 定期的なフィードバック会議:営業部門からリードの質、顧客ニーズ、競合情報をヒアリングし、マーケティング施策に反映
- 顧客データの一元管理:MA/SFAツールを連携し、リードの行動履歴、商談状況、受注情報を統合管理
マーケティング部門と営業部門の連携がうまく機能すると、リードの質が向上し、受注率の改善につながります。営業部門からのフィードバックを活用して、ペルソナ設計やコンテンツ戦略を継続的に改善することが重要です。
マーケティング部長が陥りがちな失敗パターンと回避策
マーケティング部長が陥りがちな失敗パターンとして、戦略立案や方針決定に注力し、MA/SFAツールの設定や運用体制構築を現場任せにしてしまうことが挙げられます。この失敗パターンに陥ると、ツールが活用されず、部門間連携も機能しない状態に陥ります。
ソートリーダーシップ構築の課題として、人的リソース不足が47.1%、社内の理解・協力が得られにくいが27.7%という調査結果があります(2024年調査、n=242。IDEATECH調査で、ソートリーダーシップ特化の課題調査)。ソートリーダーシップとは、業界内で専門知識や洞察を共有し、信頼される思想的リーダーとしての地位を確立することです。マーケティング部長は、リソース不足や社内の理解不足という課題に直面しながらも、実装・運用まで一気通貫で担う必要があります。
「戦略立案だけで成果が出る」「リード数が増えれば売上が上がる」という誤解を持つマーケティング部長は少なくありません。しかし、実際には、MA/SFA設定や組織連携体制の構築まで伴わないと、ツールが活用されず成果に結びつきません。また、リード数を増やすだけでは、受注率が低いままでは売上向上にはつながらないのです。
失敗パターン1:戦略立案で終わり、実装が伴わない
戦略立案はできるが実行・定着が伴わない失敗パターンは、多くのマーケティング部長が経験する課題です。戦略を立案しても、MA/SFAツールの設定や運用体制構築を現場に丸投げしてしまうと、ツールが活用されず、期待した成果が得られません。
この失敗パターンに陥る原因として、以下が挙げられます。
- マーケティング部長がツールの詳細設定を理解していない
- 現場メンバーにツール設定を任せきりにし、進捗を確認していない
- 運用ルールが明文化されておらず、属人化している
- 部門間連携の体制が整備されていない
この問題を回避するには、マーケティング部長自身がMA/SFAツールの基本機能を理解し、設定・運用プロセスに関与することが重要です。完全に現場任せにせず、週次または月次で進捗確認を行い、課題があればすぐに改善策を講じる体制を構築することが求められます。
失敗パターン2:リード数重視で受注率管理が疎かになる
リード数を重視するあまり、受注率管理やナーチャリングが疎かになる失敗パターンも多く見られます。「リード数が増えれば売上が上がる」という誤解を持つマーケティング部長は、リード獲得数をKPIに設定し、質よりも量を追求してしまいがちです。
受注率管理の必要性を実感する担当者は68.4%にのぼり(「非常にそう思う」30.5%+「ややそう思う」37.9%、2024年調査、n=190。IDEATECH調査)、多くのマーケティング担当者が受注率の重要性を認識しています。しかし、実際にはリード数を追求するあまり、リードの質が低下し、営業部門が対応しきれないという問題が発生します。
この問題を回避するには、リード数だけでなく、受注率やMQL→SQL転換率などの質的指標をKPIに含めることが重要です。また、ナーチャリングシナリオを設計し、見込み顧客の購買意欲を段階的に高めるプロセスを構築することで、質の高いリードを営業部門に引き渡すことができます。
回避策:一気通貫プロセスの実現
失敗を回避するための一気通貫プロセスとは、戦略立案から実装・運用定着までをマーケティング部長が一貫して担うプロセスです。
マーケティング責任者が顧客獲得から維持までの体制を構築した企業では、トップライン成長率が1.4倍〜2.3倍になったという報告があります(CMOからCEO昇格企業の事例)。これは、戦略立案だけでなく、実装・運用定着までを一気通貫で担うことの重要性を示しています。
一気通貫プロセスを実現するためには、以下のようなアプローチが有効です。
- 戦略立案と実装を分離せず、マーケティング部長自身が実装プロセスに関与する
- MA/SFAツールの設定を現場任せにせず、部長自身が設計・承認する
- リードスコアリング、ナーチャリングシナリオ、営業連携ルールを明文化し、運用体制を構築する
- KPIレビュー会議を定期的に開催し、進捗確認と改善策の実行を徹底する
- 営業部門とのSLAを締結し、責任範囲と目標を明確化する
マーケティング部長が一気通貫プロセスを実現することで、戦略が実行に移され、ツールが活用され、部門間連携が機能するようになります。
まとめ:一気通貫プロセスでマーケティング部長として成果を出す
本記事では、マーケティング部長の役割と、MA/SFA活用を前提とした実務プロセスについて解説しました。
記事の要点
- CMOは経営層で企業全体戦略に関与、マーケティング部長は中間管理職で部門内運用に特化する
- マーケティング部長の主要な役割は、戦略立案、KPI管理、営業部門との連携、組織運営
- 戦略立案だけでなく、MA/SFA活用を前提としたKPI設計・運用体制構築・部門間連携の実装まで一気通貫で担うことが重要
- 「戦略立案だけで成果が出る」「リード数が増えれば売上が上がる」という誤解を避け、受注率やナーチャリングを重視する
- マーケティング責任者が顧客獲得〜維持体制を構築すると、トップライン成長率が1.4倍〜2.3倍になる
マーケティング部長は、戦略立案だけでなく、MA/SFA活用を前提としたKPI設計・運用体制構築・部門間連携の実装まで一気通貫で担うことで成果を出せるのです。戦略立案で終わらせず、実装・運用定着までを一貫して担うことが、マーケティング部長として成果を出すための鍵となります。
次のアクション
- 本記事のチェックリストを活用して、自社のマーケティング体制を確認する
- CMOとマーケティング部長の違いを理解し、自社の組織構造を見直す
- MA/SFAツールの活用状況をレビューし、運用体制を改善する
- 営業部門とのSLAを締結し、リード引き渡しルールを明確化する
- KPIレビュー会議を定期開催し、一気通貫プロセスを実現する
