マーケティングBPRとは:プロセス設計から実装まで一気通貫で進める重要性
結論から言えば、最も重要なのはマーケティングBPRを、プロセス設計だけでなくMA/SFA設定・専用ツール開発まで一気通貫で実装することで成果につながり、専門家による実装支援を活用することで形骸化を防ぎやすくなるという点です。
マーケティングBPRとは、マーケティング領域の業務プロセスをゼロベースで抜本的に再設計する取り組みを指します。リード獲得から商談、受注、LTV最大化までのプロセス全体を見直し、部門間連携を含めて改革することが特徴です。
調査によると、中小企業の58.5%が年間マーケティング予算100万円未満であり、Webマーケティング施策全体に「十分に成果を実感している」企業は10.0%にとどまっています。多くの企業がマーケティング施策に投資しながらも、期待した成果を得られていない現状があります。
この背景には、プロセス設計だけで終わってしまい、MA/SFAへの実装や部門間連携が後回しになっているケースが少なくありません。
この記事で分かること
- マーケティングBPRの定義と基本概念
- BPRが必要とされる背景とメリット
- 具体的な進め方と着手前チェックリスト
- 自社実施か専門家支援かの判断基準
BPRの基礎知識とマーケティング領域への適用
BPR(Business Process Re-engineering) とは、既存の業務プロセスをゼロベースで抜本的に再設計する業務改革手法です。部分的な改善ではなく、プロセス自体を作り替える点が特徴となります。
マーケティング領域でBPRを適用する場合、対象となる範囲は以下のとおりです。
- リード獲得(Webサイト、広告、展示会、コンテンツマーケティングなど)
- リード育成(メールマーケティング、スコアリング、ナーチャリングシナリオなど)
- 商談創出(インサイドセールスによるアプローチ、MQLからSQLへの転換)
- 受注・フォロー(営業活動、カスタマーサクセス、LTV最大化)
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング部門が一定の条件を満たすと判断した見込み顧客を指します。営業部門への引き渡し前のリードです。
SQL(Sales Qualified Lead) とは、営業部門が商談化の可能性ありと判断した見込み顧客のことです。MQLから精査を経て昇格したリードを指します。
マーケティングBPRでは、このMQLからSQLへの転換プロセスを含め、部門間の連携を最適化することが重要なポイントとなります。
BPRと業務改善の違い
BPRと業務改善は混同されやすいですが、本質的に異なるアプローチです。
業務改善は、既存のプロセスを前提として部分的なムダを取り除く取り組みです。例えば、入力作業の効率化や承認フローの短縮などが該当します。
BPRは、既存のプロセス自体を前提とせず、ゼロベースでプロセスを再設計します。「なぜこの業務が必要なのか」「この業務は本当に価値を生んでいるか」という問いから始まります。
よくある誤解として「MA/SFAなどのツールを導入すればBPRは完了」という考え方がありますが、これは誤りです。ツールはあくまで手段であり、プロセス自体が再設計されていなければ、ツールの機能を十分に活用することはできません。
マーケティングBPRが必要とされる背景とメリット
マーケティングBPRが今必要とされている背景には、デジタル化の進展と顧客行動の変化があります。
調査によると、2024年時点でデータ活用企業は43.7%、BIツール導入企業17.8%、CRM導入企業22.5%の水準にとどまっています。ツール導入が進みつつある一方で、十分に活用できている企業はまだ限定的です。
また、2024年度のCRM導入率は37.2%(2023年度36.2%から+1.0pt)で、ゆるやかな増加傾向にあります。
さらに、マーケターの約7割が「AIによる顧客行動の変化」を感じている一方、「変化に対応できている」と答えたのは24%にとどまるという調査結果もあります。多くの企業が変化を認識しながらも、対応が追いついていない状況がうかがえます。
ROMI(Return on Marketing Investment) とは、マーケティング投資対効果を指します。マーケティング施策への投資がどれだけの売上・利益をもたらしたかを測る指標です。BPRにより、このROMIを向上させることが期待されます。
マーケティングBPRのメリットは以下のとおりです。
- 部門間の連携強化による商談化率の向上
- データ活用基盤の整備によるマーケティング施策の最適化
- 属人化の解消と業務の標準化
- ツール活用の促進と投資対効果の向上
MA/SFA導入済みなのに活用できていない企業の課題
MA/SFAを導入済みにもかかわらず活用できていない企業には、共通する課題があります。
よくある失敗パターンとして、マーケティングBPRを「戦略レポート」や「プロセス設計」だけで終わらせ、MA/SFAへの実装や部門間連携を後回しにして、結局現場に定着せず形骸化してしまうケースがあります。この考え方は誤りであり、設計だけでは成果につながりません。
具体的には以下のような課題が挙げられます。
- マーケティングと営業でリードの定義が統一されていない
- データが散在しており、一元管理できていない
- ツールへの入力が定着せず、データの精度が低い
- スコアリングやナーチャリングの設計が不十分
- 導入時の設計が現場の実態と合っていない
CRM導入率は増加傾向にありますが、「認知しているが活用していない」層が大きく、活用率とのギャップが課題となっています。
マーケティングBPRの進め方と着手前チェックリスト
マーケティングBPRを進める際は、現状分析から始め、目指すべき姿を定義した上で、実装・定着まで一気通貫で進めることが重要です。
SLA(Service Level Agreement) とは、マーケティング・営業間の引き渡し基準やフォロー期限などを定めた合意事項を指します。MQL/SQLの定義を共通化し、SLAを策定することがマーケ・営業連携の基盤となります。
基本的なステップは以下のとおりです。
- 現状分析: 現在のマーケティングプロセスを可視化し、課題を特定する
- 目標設定: 目指すべきプロセスと達成すべきKPIを定義する
- プロセス設計: リード獲得から受注までのプロセスを再設計する
- MQL/SQL定義: マーケティングと営業でリードの定義を統一する
- SLA策定: 引き渡し基準やフォロー期限を合意する
- ツール実装: MA/SFAにプロセスを実装する
- 運用定着: 現場での運用を定着させ、継続的に改善する
【チェックリスト】マーケティングBPR着手前チェックリスト
- 現在のマーケティングプロセスを可視化している
- マーケティング部門と営業部門の課題を洗い出している
- 経営層のコミットメントを得ている
- BPR推進の責任者を明確にしている
- 現在のツール(MA/SFA/CRM)の利用状況を把握している
- データの保存場所と形式を整理している
- MQLの定義が明確になっている
- SQLの定義が明確になっている
- マーケティングと営業のKPIを確認している
- 現在のリード獲得経路を把握している
- リードスコアリングの基準を設計している
- ナーチャリングシナリオを検討している
- SLA(引き渡し基準・フォロー期限)を策定している
- データ項目の標準化を検討している
- 運用ルールを明文化している
- 現場担当者へのヒアリングを実施している
- 導入後の効果測定方法を決めている
- 継続的な改善プロセスを設計している
- 必要なリソース(人員・予算・時間)を見積もっている
- 自社実施か専門家支援かを判断している
MA/SFA連携を成功させるためのポイント
MA/SFA連携を成功させるためには、技術的な設定だけでなく、運用面での設計が重要です。
データ項目の標準化
MA・CRM・SFA・Web解析などのツール間でデータ項目を標準化することが、連携の技術的な核となります。会社名、担当者名、メールアドレスなどの基本項目に加え、業種、従業員規模、役職などの属性情報を統一することが重要です。
リードスコアリング設計
属性スコア(企業規模・役職など)と行動スコア(資料ダウンロード・セミナー参加など)の2軸でスコアリングを設計することが一般的です。スコアの閾値を超えたリードをMQLとして営業に引き渡すルールを明確にします。
MQL/SQL定義の共通化
マーケティング部門が「質の高いリード」と考える基準と、営業部門が「商談につながるリード」と考える基準を擦り合わせることが不可欠です。この認識のズレが連携の障害になるケースが多いため、定義の共通化には十分な時間をかけることをおすすめします。
自社実施か専門家支援か:判断基準と選び方
マーケティングBPRを自社で進めるか、専門家の支援を活用するかは、多くの企業が悩むポイントです。それぞれにメリット・デメリットがあります。
【比較表】自社実施 vs 専門家支援 比較表
| 観点 | 自社実施 | 専門家支援 |
|---|---|---|
| コスト | 人件費のみ | 外部費用が発生 |
| スピード | 社内調整に時間がかかる場合がある | 経験に基づき効率的に進められる |
| ノウハウ | 自社で蓄積できる | 他社事例・ベストプラクティスを活用できる |
| 実装力 | MA/SFA設定のスキルが必要 | 設定・開発まで一気通貫で対応 |
| 客観性 | 社内の既存プロセスに引きずられやすい | 第三者視点で抜本的な改革が可能 |
| 定着支援 | 自社で運用ルールを作り込む必要がある | 運用定着までサポートを受けられる |
| リスク | 設計止まりで形骸化するリスクがある | 実装・定着まで伴走してもらえる |
専門家支援を活用すべきケース
以下のようなケースでは、専門家支援の活用を検討することをおすすめします。
MA/SFAの設定・カスタマイズに不安がある場合
ツールの導入経験が少なく、設定やカスタマイズに不安がある場合は、専門家の技術力を活用することで、短期間で適切な実装が可能になります。
設計だけで終わらせたくない場合
過去にプロセス改善を試みたが設計止まりで終わった経験がある場合、専門家による実装・定着までの一気通貫支援が有効です。設計から実装・定着まで伴走してもらうことで、形骸化を防ぐことができます。
社内リソースが限られている場合
マーケティング部門の人員が限られており、BPRに専念できるリソースがない場合は、専門家の支援を受けることで、通常業務と並行してBPRを進めることが可能です。
他社事例やベストプラクティスを知りたい場合
自社だけでは気づけない課題や改善ポイントがある場合、他社事例を知る専門家の視点が役立ちます。業界の標準的なプロセスや成功事例を参考にしながら、自社に最適化した設計が可能になります。
まとめ:マーケティングBPRを成功させるために
マーケティングBPRを成功させるためのポイントを振り返ります。
- マーケティングBPRは、既存のプロセスをゼロベースで再設計する取り組み
- 業務改善とは異なり、プロセス自体を作り替える点が特徴
- MA/SFA導入だけではBPRは完了しない。プロセス再設計が必要
- MQL/SQLの定義共通化とSLA策定がマーケ・営業連携の基盤
- 設計止まりで形骸化させないことが重要
- 自社リソースと課題に応じて専門家支援の活用を検討する
マーケティングBPRは、プロセス設計だけでなくMA/SFA設定・専用ツール開発まで一気通貫で実装することで成果につながります。専門家による実装支援を活用することで、形骸化を防ぎやすくなります。
本記事で紹介したチェックリストを活用して、自社のマーケティングプロセスを見直すところから始めてみてください。
