MAとCRMの違いを理解する前に知っておくべきこと
多くの方が悩むMAとCRMの違い。結論は、MAとCRMは目的とフェーズが異なるツールであり、両者を連携させてマーケ・営業のデータを一気通貫で管理することで、リード獲得から顧客育成まで一貫した顧客体験を提供できるということです。
MA(Marketing Automation) とは、見込み顧客の獲得・育成・スコアリングなど、マーケティング施策を自動化・効率化するツールです。主に「顧客化する前」のリードに対して活用します。一方、CRM(Customer Relationship Management) とは、顧客情報を一元管理し、関係性を維持・強化してLTV(顧客生涯価値)やロイヤルティを高めるためのツールで、主に「顧客化した後」の既存顧客に対して活用します。
MAを含むデジタルマーケティング・プラットフォーム市場は2019〜2024年にかけて年10%前後の成長とされており、国内CRMアプリケーション市場規模は2022年度約2,500億円前後で、2024年度にかけて年数%成長と推計されています。両ツールとも市場が拡大しており、BtoB企業にとって導入検討の重要性は高まっています。
しかし、MAとCRMの「機能の違い」だけを理解してツールを選んでも、成果には直結しません。本記事では、MAとCRMの違いを正しく理解した上で、連携活用まで見据えた実装視点の解説を行います。
この記事で分かること
- MAとCRMの定義・目的・対象フェーズの違い
- MA・CRM・SFAの機能比較と使い分け
- MA・CRM連携のメリットと活用パターン
- 連携を成功させる実装のポイントとチェックリスト
MAとCRMの定義と目的の違い
MAとCRMは、対象とする顧客フェーズと目的が根本的に異なります。MAは「顧客化する前」の見込み顧客を対象とし、CRMは「顧客化した後」の既存顧客を対象とするツールです。
BtoB企業のMA導入率は概ね20〜40%程度という調査結果が散見されます。一方、大企業では7〜8割以上が何らかのCRM/SFAを保有しているとの調査があります。この導入率の差は、CRMが営業活動の基盤として長く活用されてきた歴史と、MAが比較的新しいマーケティング手法であることを反映しています。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング活動により一定の基準を満たした見込み顧客を指します。MAでスコアリングされ、営業へ引き渡す対象となるリードです。MAはこのMQLを効率的に生成・育成するためのツールであり、CRMはMQLが顧客化した後の関係維持を担います。
MAの役割と主な機能
MAは見込み顧客を効率的に獲得し、商談化の確度が高い状態まで育成するためのツールです。
リードスコアリングとは、見込み顧客のWeb閲覧、メール開封、資料DLなどの行動に点数を付与し、商談化の確度を数値化する手法です。MAはこのスコアリング機能を中核として、以下の機能を提供します。
- リード情報の一元管理(Webフォーム経由、展示会名刺など)
- リードスコアリング(行動履歴に基づく確度の数値化)
- メール配信の自動化(シナリオに基づくナーチャリングメール)
- ランディングページ作成・管理
- Web行動のトラッキング
MAを活用することで、マーケティング担当者は手作業では困難な大量のリードに対して、個別最適化されたコミュニケーションを自動で実行できます。
CRMの役割と主な機能
CRMは顧客との関係性を一元管理し、LTV(顧客生涯価値)の最大化を支援するツールです。
CRMの主な機能は以下の通りです。
- 顧客情報の一元管理(企業情報、担当者情報、契約情報)
- コンタクト履歴の記録(商談、問い合わせ、サポート対応)
- 顧客セグメンテーション
- LTV分析・解約予測
- カスタマーサクセスとの連携
CRMを活用することで、顧客との全てのやり取りを可視化し、アップセル・クロスセルの機会を逃さず、解約リスクを早期に検知できます。
MA・CRM・SFAの機能と役割の比較
MA・CRM・SFAは、顧客ライフサイクルの異なるフェーズを担当する3つのツールです。BtoBでは、この3ツールを連携させて運用することで、リード獲得から顧客維持まで一気通貫のデータ管理が可能になります。
SFA(Sales Force Automation) とは、商談・案件管理、活動履歴管理、売上予測など営業プロセスの可視化・効率化を行うツールです。MAとCRMの間の「商談中」フェーズを担当します。
【比較表】MA・CRM・SFA機能比較表
| 項目 | MA | SFA | CRM |
|---|---|---|---|
| 目的 | リードの獲得・育成 | 商談の管理・効率化 | 顧客関係の維持・強化 |
| 対象フェーズ | 顧客化する前(リード) | 商談中(案件) | 顧客化した後(既存顧客) |
| 主な機能 | スコアリング、ナーチャリング、メール配信 | 商談管理、活動記録、売上予測 | 顧客情報管理、LTV分析、CS連携 |
| 主な担当部門 | マーケティング | 営業 | 営業・カスタマーサクセス |
| 価格帯(参考) | 月額15万円〜50万円程度 | 月額3万円〜10万円程度 | 月額3万円〜10万円程度 |
※価格帯はプラン・契約条件・オプションにより変動します。参考値としてお考えください。
価格について補足すると、BtoB向けMAとしてはSalesforce Pardot(現Marketing Cloud Account Engagement)が月額15万円〜52.8万円程度のプラン例があり、国産MA(SATORIなど)は初期費用30万円、月額148,000円程度のレンジで提供されています。国産SFA/CRM(GENIEE SFA/CRMなど)は10ユーザー込みで月額34,800円〜98,000円程度で提供されています。
SFAの位置づけと役割
SFAはMAとCRMの間で「商談中」フェーズを担当し、営業活動の可視化・効率化を実現するツールです。
BtoBでは一般的に、MA→SFA→CRMの「3階建てモデル」が推奨されています。
- MA(リード発掘〜選別): Webからのリード獲得、スコアリングによる選別、MQLの生成
- SFA(商談〜受注): 商談の進捗管理、営業活動の記録、売上予測
- CRM(継続・拡大): 顧客情報の一元管理、アップセル・クロスセル、解約防止
この3階建てモデルを採用することで、マーケティングが獲得したリードがどのように商談化し、受注に至り、その後の顧客関係がどう推移しているかを一気通貫で追跡できます。
MA・CRM連携のメリットと活用パターン
MA・CRM連携の最大のメリットは、マーケティングと営業のデータが一元化され、リードの引き継ぎがスムーズになることです。
**よくある失敗パターン(anti_pattern)として注意すべきは、MAとCRMの機能の違いだけを見てツールを導入し、マーケと営業でデータが分断されたまま運用した結果、リードの引き継ぎが滞り活用不全に陥るケースです。**このパターンでは、マーケティングが苦労して獲得・育成したリードが営業に適切に引き渡されず、せっかくのツール投資が無駄になってしまいます。
連携によるメリットは以下の通りです。
- 施策効果の可視化: マーケが獲得したリードの商談化率・受注率をトラッキングできる
- リードの一貫管理: リード発掘から顧客化、その後の継続まで一気通貫で管理できる
- 部門間連携の強化: マーケと営業の間でリード情報がリアルタイムに共有される
- 顧客体験の向上: 顧客から見て一貫したコミュニケーションが実現できる
連携で実現できる施策効果測定
MA・CRM連携により、マーケティング施策のROI測定が初めて可能になります。
連携がない状態では、マーケティングは「リードを何件獲得したか」までしか測定できません。しかし連携することで、以下のような分析が可能になります。
- どのキャンペーンから獲得したリードが最も商談化率が高いか
- どのコンテンツを閲覧したリードが受注に至りやすいか
- リードソース別の顧客LTVはどう異なるか
これらの分析により、マーケティング投資の最適配分が可能になり、営業との連携も数字に基づいた建設的な議論ができるようになります。
MA・CRM連携を成功させる実装のポイント
MA・CRM連携を成功させるためには、ツール導入だけでなく、データ設計と部門間の運用ルール合意が不可欠です。
以下のチェックリストを活用して、連携導入の準備状況を確認してください。
【チェックリスト】MA・CRM連携導入チェックリスト
- 連携するデータ項目の定義が完了している
- MA側とCRM側のデータフォーマットの整合性を確認した
- MQL(マーケ認定リード)の定義をマーケ・営業間で合意した
- SQL(営業認定リード)の定義を営業チーム内で合意した
- MQLからSQLへの引き渡し条件を明文化した
- リード引き渡し後のフォローアップ期限を設定した
- 営業がフォローしなかったリードの差し戻しルールを決めた
- データ連携の頻度(リアルタイム/バッチ)を決定した
- 重複リードの処理ルールを決めた
- リードステータスの遷移ルールを定義した
- マーケ・営業の定例レビュー会議の頻度を決めた
- KPIダッシュボードの設計が完了している
- データの品質管理担当者をアサインした
- 連携テストの実施スケジュールを決定した
- 運用開始後のサポート体制を確認した
データ連携設計と部門間合意の重要性
MA・CRM連携の成否を分けるのは、MQL/SQLの定義を両部門で合意できているかどうかです。
MQLの定義が曖昧なまま連携を開始すると、以下のような問題が発生します。
- マーケが「確度が高い」と判断したリードを営業が「まだ早い」と差し戻す
- 営業が「もっとリードが欲しい」と言う一方、マーケは「渡しているのにフォローされていない」と感じる
- 両部門の間で責任の押し付け合いが発生する
これを防ぐためには、以下のステップを踏むことが重要です。
- MQLの定義を数値化: 「スコア○点以上」「特定のページを閲覧」など客観的な基準を設定
- SQLの定義を明確化: 「予算がある」「決裁者にアクセス可能」など営業側の基準を明示
- 引き渡しルールの明文化: 「MQL発生から24時間以内に初回コンタクト」など期限を設定
- 定例レビューの実施: 週次または月次で両部門が集まり、数字を見ながら改善点を議論
まとめ|MA・CRMの違いを理解して連携活用するために
本記事では、MAとCRMの違いを定義・目的・対象フェーズの観点から解説し、SFAを含めた3ツールの比較、連携のメリット、成功のためのポイントを紹介しました。
ポイントのまとめ
- MAは「顧客化する前」のリード獲得・育成、CRMは「顧客化した後」の関係維持が目的
- BtoBではMA→SFA→CRMの3階建てモデルが一般的
- 連携により施策効果の可視化、リードの一貫管理、部門間連携の強化が実現
- MQL/SQLの定義合意と運用ルールの明文化が成功の鍵
MAとCRMは目的とフェーズが異なるツールであり、両者を連携させてマーケ・営業のデータを一気通貫で管理することで、リード獲得から顧客育成まで一貫した顧客体験を提供できます。
ツール導入だけで終わらず、連携設計と運用定着まで見据えて取り組むことが、MA・CRM活用成功の鍵です。自社だけでの実装が難しい場合は、導入支援の専門家への相談も選択肢として検討してみてください。
