IT企業のリード獲得が「商談に繋がらない」問題とは
IT企業のリード獲得は、施策単体ではなくMA/SFA活用とIS連携を組み込んだ「商談化プロセス」として設計することで成果が出ます。
多くのIT企業がリード獲得施策を展開していますが、「リードは増えたのに商談に繋がらない」という課題を抱えています。2025年の調査によると、BtoB企業経営者の48.6%が「リードの質が理想通りに獲得できていない」と回答しており、この数値は2024年比で7.6ポイント増加しています。
リードジェネレーションとは、見込み顧客情報をマーケティング施策を通じて新規に獲得する活動全般を指します。しかし、獲得したリードを商談化するためのプロセスが整備されていなければ、せっかくのリードが活用されないまま放置されてしまいます。
グローバルではB2Bプレーヤーの約65%がリード育成プロセスを確立していないという調査結果もあります(日本市場では異なる可能性がある点に留意が必要です)。
この記事で分かること
- IT企業のリード獲得における基本概念と課題構造
- 主要なリード獲得チャネルの特性と選定基準
- リード獲得から商談化までのプロセス設計方法
- MA/SFAを活用した商談化率向上の実践ポイント
- リード獲得〜商談化プロセス設計チェックリスト
IT企業のリード獲得における基本概念と課題構造
リード獲得の成果を最大化するには、まず基本概念を正しく理解し、IT企業特有の課題を把握することが重要です。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング部門が一定の基準で「商談に進む可能性がある」と判定したリードを指します。一方、SQL(Sales Qualified Lead) は、営業部門が直接アプローチすべきと判断した、商談化の見込みが高いリードです。
リードナーチャリングとは、獲得したリードを継続的にフォローし、購買意欲を高めて商談化可能な状態に育成する活動です。リード獲得の課題として「リードの育成が難しい」と回答した企業は29.9%にのぼり、2024年比で3.9ポイント増加しています。
リード獲得からMQL・SQL判定までの流れ
リードが商談に至るまでの流れは、一般的に以下のようなプロセスをたどります。
- 施策によるリード獲得(資料ダウンロード、セミナー参加など)
- マーケティング部門によるMQL判定
- インサイドセールスによるアプローチ・商談化判断
- SQL判定後、フィールドセールスへ引き継ぎ
MQLからSQLへの判定基準は企業によって異なります。「資料ダウンロード後に3回以上サイト訪問があった」「決裁権者からの問い合わせである」など、自社の商材やターゲットに合わせた基準を設定することが重要です。
IT企業に特有のリード獲得課題
IT企業には、他業界とは異なる固有の課題があります。2025年の調査によると、IT・通信業では52.2%が「自社サイトのアクセス数が減った」と回答しており、これは全業種中で最も高い割合です(この調査は企業担当者への主観調査であり、客観的なログデータに基づくものではない点に注意が必要です)。
さらに、Webトラフィック減少を経験した企業の94.5%が「リード獲得・商談機会に影響している」と回答しています。AI検索の台頭により、従来のSEO依存型のリード獲得だけでは限界が出てきていることがうかがえます。
こうした状況を踏まえると、IT企業はチャネルの多角化とともに、獲得したリードを確実に商談化するプロセス設計がより重要になっています。
IT企業に有効なリード獲得チャネルと特性
リード獲得チャネルは、オンライン・オフラインともに複数の選択肢があり、自社の状況に合った組み合わせを選ぶことが重要です。
2025年の調査によると、BtoB企業で最も実施されているリード獲得施策はSNSで36.4%、「最も効果を感じている施策」でも33.3%で1位となっています(2024年比で11.9ポイント増加)。一方、リード獲得目標を達成している企業では「SEO」が最も成果が出たチャネルとして41.3%が回答しており、未達成企業より25.1ポイント高い結果となっています。
【比較表】IT企業向けリード獲得チャネル比較表(特性・適合度)
| チャネル | 特性 | リード獲得速度 | リードの質 | コスト感 | IT企業との相性 |
|---|---|---|---|---|---|
| SEO/コンテンツマーケティング | 中長期で安定したリード獲得が可能。検索意図が明確なため質が高い傾向 | 遅い | 高い | 中〜高 | 高い |
| SNS(X、LinkedIn等) | 即効性があり、認知拡大にも有効。IT業界ではLinkedInの活用も多い | 中〜速い | 中程度 | 低〜中 | 高い |
| Web広告(リスティング等) | 即効性が高いが、継続的なコストが発生。ターゲティング精度が重要 | 速い | 中程度 | 高い | 中程度 |
| ウェビナー/オンラインセミナー | 参加者の関心度が高く、商談化しやすい傾向。企画・運営の工数が必要 | 中程度 | 高い | 中程度 | 高い |
| 展示会/カンファレンス | 対面での接点を作れるため印象に残りやすい。出展コストは高め | 中程度 | 高い | 高い | 中〜高 |
| 紹介/リファラル | 信頼関係があるため商談化率が高い。件数のコントロールが難しい | 不定期 | 非常に高い | 低い | 高い |
オンライン施策の特性と選定基準
SEOは中長期施策として位置づけられ、一度コンテンツを作成すれば継続的にリードを獲得できる点が強みです。先述の通り、リード獲得目標達成企業ではSEOが成果チャネルとして最も多く挙げられています。
SNSは即効性があり、特にIT業界ではXやLinkedInでの情報発信が効果を発揮するケースが増えています。また、BtoB企業経営者の63.6%がリード獲得施策で生成AIを活用しており、そのうち27.1%がコンテンツ作成に活用しているというデータもあり、効率化ツールとして活用が進んでいます。
オフライン施策の特性と選定基準
展示会やセミナーなどのオフライン施策は、対面での接点を持てるため、リードの質が高くなる傾向があります。特にIT企業の場合、技術的な説明や製品デモを直接行える機会は貴重です。
紹介・リファラルは、既存顧客や取引先からの紹介によるリード獲得であり、信頼関係がすでにあるため商談化率が高い傾向にあります。ただし、件数を計画的にコントロールすることが難しいため、他のチャネルと組み合わせて活用することが一般的です。
リード獲得から商談化までのプロセス設計
リード獲得施策を次々と増やしても、MA/SFAでの管理やIS連携が整備されていなければ、リードは放置・塩漬けになり商談化率は上がりません。これはIT企業がよく陥る失敗パターンです。
インサイドセールスとは、電話・メール・オンライン商談などを通じて非対面で営業活動を行う手法・組織を指します。リード獲得から商談化までのプロセスには、このインサイドセールスとマーケティング部門の連携が不可欠です。
グローバルではB2Bプレーヤーの約65%がリード育成プロセスを確立していないとされています(日本市場では異なる可能性がある点に注意が必要です)。逆に言えば、プロセスを確立できれば競合との差別化要因になり得ます。
リードナーチャリングの設計ポイント
獲得したリードをすぐに商談化できるとは限りません。検討段階が初期のリードに対しては、継続的な情報提供を通じて関心度を高めていく必要があります。
リード獲得の課題として「リードの育成が難しい」と回答した企業は29.9%にのぼります。育成が難しい要因としては、コンテンツ不足、適切なタイミングでのアプローチができていない、リードのステージ管理ができていないなどが挙げられます。
ナーチャリングのシナリオ設計では、以下のような流れを検討することが一般的です。
- 資料ダウンロード直後:お礼メール+関連コンテンツの案内
- 1週間後:導入事例や活用方法のコンテンツ配信
- 興味関心を示した場合:ウェビナー案内や個別相談の打診
- 反応が薄い場合:定期的なメルマガで接点を維持
マーケティングとインサイドセールスの連携設計
MQL判定後、インサイドセールスへ引き渡す際のルールを明確にすることが重要です。「どのような状態のリードをいつ引き渡すか」「引き渡し後のフォロー期限はいつまでか」といった点を事前に定義しておきます。
引き渡し基準の例としては、以下のようなものがあります。
- スコアが一定値以上になった場合
- 特定のアクション(価格ページ閲覧、デモ申込など)を行った場合
- 決裁権者からの問い合わせがあった場合
また、インサイドセールスがアプローチした結果、「まだ商談化には早い」と判断したリードをマーケティング部門に戻す(リサイクル)フローも設計しておくと、リードを無駄にせずに済みます。
MA/SFA活用による商談化率向上の実践
MA/SFAを正しく活用することで、リード管理の効率化と商談化率の向上を実現できます。
BtoB企業経営者の48.6%が「リードの質が理想通りに獲得できていない」と感じている中、その解決策としてMA/SFAを活用したリード評価・管理の仕組み化が有効です。ただし、ツールを導入しただけでは成果は出ません。運用設計とプロセス整備が前提となります。
【チェックリスト】IT企業のリード獲得〜商談化プロセス設計チェックリスト
- ターゲット顧客のペルソナを定義している
- リード獲得チャネルを複数設計している(SEO、SNS、広告、セミナー等)
- リード獲得時に取得する情報項目を定義している
- リードの情報をMA/SFAに集約する仕組みがある
- MQLの判定基準を明確に定義している
- SQLの判定基準を明確に定義している
- リードスコアリングのルールを設計している
- スコアリングに使用する行動データを取得できている
- ナーチャリングのシナリオを設計している
- ナーチャリング用のコンテンツを準備している
- マーケティングからISへの引き渡しルールが明確である
- ISからマーケティングへのリサイクルルールが明確である
- ISのアプローチ活動を記録する仕組みがある
- 商談化率のモニタリング指標を設定している
- 施策ごとのリード獲得数を計測できる
- 施策ごとの商談化率を計測できる
- 定期的なプロセス見直しの機会を設けている
リードスコアリングとMQL判定の自動化
リードスコアリングとは、リードの行動や属性に基づいてスコアを付与し、商談化可能性を数値化する手法です。これにより、「いつ、どのリードにアプローチすべきか」の判断を効率化できます。
スコアリング設計では、以下の2軸を組み合わせることが一般的です。
- 属性スコア:企業規模、業種、役職などの「誰か」を評価
- 行動スコア:サイト訪問、資料ダウンロード、メール開封などの「何をしたか」を評価
(例)スコアリング設計のイメージ
- 資料ダウンロード:+10点
- 価格ページ閲覧:+15点
- ウェビナー参加:+20点
- 役職が部長以上:+10点
- 従業員数100名以上:+10点 ※スコア合計が50点以上でMQL判定 ※実際のスコア設定は自社の商談化実績を分析して調整が必要です
SFA連携によるIS活動の最適化
インサイドセールスの活動を可視化し、効率化するためにはSFA(営業支援システム)との連携が有効です。
活動記録を一元管理することで、以下のような効果が期待できます。
- 誰がいつどのリードにアプローチしたかが把握できる
- アプローチ結果(商談化/リサイクル/不成立)の傾向が見える
- チーム全体の商談化率をモニタリングできる
モニタリング指標としては、「リード獲得数」「MQL判定率」「SQL判定率」「商談化率」「アプローチ件数」「平均アプローチ回数」などを設定するのが一般的です。
IT企業のリード獲得成功の鍵:施策とプロセスの両輪
IT企業のリード獲得において成果を出すためのポイントを整理します。
まず、リード獲得チャネルは自社の状況に合わせて複数を組み合わせることが重要です。SEOは中長期の安定したリード獲得源として、SNSは即効性のある施策として、それぞれの特性を活かして活用します。
次に、獲得したリードを商談化するためのプロセス設計が不可欠です。MQL/SQLの判定基準、マーケティングとインサイドセールスの連携ルール、ナーチャリングシナリオなどを明確にしておきます。
そして、MA/SFAを活用してリード管理を効率化し、商談化率をモニタリングする仕組みを構築します。ツール導入だけでなく、運用設計とプロセス整備が成果を左右します。
まずは自社の現状を棚卸しし、本記事で紹介したチェックリストを活用してプロセスの整備状況を確認してみてください。IT企業のリード獲得は、施策単体ではなくMA/SFA活用とIS連携を組み込んだ「商談化プロセス」として設計することで成果が出ます。
