データ連携ツールが必要な背景と本記事の目的
データ連携ツールとは何か。データ連携ツールの選定だけでは部門間のデータ活用は実現できず、MA/SFA/CRM連携を見据えた業務設計と運用体制構築まで一体で進める専門家支援が重要です。
MA・SFA・CRMなど複数のツールを導入したものの、データが分断されてマーケティングと営業の連携がうまくいかないという課題を抱える企業は少なくありません。2025年の国内データプラットフォーム市場(データ統合・管理基盤を含む)のソフトウェア売上規模は7,371億円(前年比7.7%増)に達し、2029年には9,934億円に成長すると予測されています(IDC Japan、2025年6月発表)。
総務省の2024年調査では、企業のクラウド利用率が80.6%に達しており、クラウド上のツール間でデータを連携させるニーズは年々高まっています。しかし、ツールを導入しただけではデータ連携は実現しません。本記事では、ツール選定だけでなく、業務設計・運用体制構築まで含めたデータ連携の進め方を解説します。
この記事で分かること
- EAI・ETL・iPaaSの違いと各ツールタイプの特徴
- データ連携ツールのタイプ別比較表(ノーコード/ローコード/開発型)
- ツール選定で失敗しないためのポイントと注意点
- MA/SFA/CRM連携設計チェックリスト
データ連携ツールの種類と基本概念|EAI・ETL・iPaaSの違い
データ連携ツールは、EAI(リアルタイム連携)、ETL(バッチ処理)、iPaaS(クラウド連携)の大きく3タイプに分類され、それぞれ用途が異なります。
EAI(Enterprise Application Integration) とは、企業内の異なるアプリケーション間をリアルタイムでデータ連携させる統合手法です。主に業務アプリケーションの同期を目的とし、受発注システムと在庫管理システムの連携などに用いられます。
ETL(Extract, Transform, Load) とは、データを抽出(Extract)、変換(Transform)、ロード(Load)するバッチ処理中心の手法です。データウェアハウス構築や大量データの定期処理に適しています。
iPaaS(Integration Platform as a Service) とは、クラウド上でアプリケーション間のデータ連携を実現するサービスです。EAI的な機能をクラウドで提供する形態で、MA/SFA/CRMなどのSaaS間連携に適しています。国内iPaaS市場は2021年度売上36.6%増と成長しており、2026年度には115億円規模に達する見込みです(ITR、2022年7月発表)。
データパイプラインとは、データを収集元から分析基盤まで自動的に流す一連の処理フローを指します。ETLやiPaaSで構築することが一般的です。
リアルタイム連携が必要な場合はEAI系、大量データの定期処理にはETL系、クラウドSaaS間連携にはiPaaSと、自社の連携要件に応じて適切なタイプを選択することが重要です。
データ連携ツールのタイプ別比較|ノーコード・ローコード・開発型
データ連携ツールは、ノーコード型、ローコード型、開発型(フルスクラッチ)の3タイプに分類でき、自社のエンジニアリソースや連携要件に応じて選択します。
データ連携ツール市場では、IBM MQが最大シェアを持ち、次いでSrush(8.69%)、SMART DATA COLLECTOR(6.31%)、TROCCO(6.06%)、PowerCenter(5.88%)、ASTERIA Warp(5.00%)と続いています。上位7ツールで全体の49.94%を占めており、市場は比較的分散している状況です(BOXIL調査、2025年8月時点、参考値)。
【比較表】データ連携ツールタイプ別比較表
| タイプ | 特徴 | メリット | デメリット | 適した企業・用途 |
|---|---|---|---|---|
| ノーコード型 | GUI操作で連携設定が可能 | 非エンジニアでも構築可能、導入スピードが速い | 複雑な連携には対応しにくい | 中小企業、シンプルなSaaS間連携 |
| ローコード型 | GUI+簡易スクリプトで設定 | 柔軟性と導入しやすさのバランス | 一定のIT知識が必要 | 中堅企業、ある程度複雑な連携 |
| 開発型(フルスクラッチ) | コードベースで完全カスタマイズ | 複雑な要件にも対応可能 | 開発コスト・期間がかかる | 大企業、レガシーシステム連携 |
DataOpsとは、データの収集・統合・分析の運用プロセスを自動化・最適化するアプローチです。開発と運用を統合するDevOpsのデータ版であり、ローコード・開発型ツールを活用する際に重要な概念となります。
データ連携ツール選定で失敗しないためのポイント
データ連携ツールを選定する際は、機能と価格だけでなく、導入後の業務設計・運用体制まで考慮することが重要です。
国内CRM市場は2021年に1,812億円(前年比13.0%増)に達し、2026年には2,918億円規模に成長すると予測されています(IDC Japan)。MA・SFA・CRMなど連携先システムが増えるほど、ツール選定の重要性は高まります。
選定時に確認すべきポイント
- 連携先システム:MA/SFA/CRMなど、どのシステムとの連携が必要か
- データ量・更新頻度:リアルタイム連携が必要か、バッチ処理で十分か
- 運用体制:エンジニアがいるか、非エンジニア部門で運用するか
- 将来的な拡張性:新しいツールの追加に対応できるか
よくある失敗:ツール導入後にデータが活用されない
「機能と価格」だけでデータ連携ツールを選定し、導入後の業務設計や運用体制を考えずに進めると、ツールは入ったがデータが活用されないという失敗パターンに陥ります。この考え方は誤りです。
「データ連携ツールを導入すれば自動的にデータが統合される」という誤解がよくありますが、実際には連携設計とデータ品質管理が不可欠です。どの部門がどのデータをどのように活用するかという業務設計がなければ、ツールを導入しても部門間連携は進みません。
失敗を避けるためには、ツール選定の前に「データの一元化要件を明確にする」「連携後の業務フローを設計する」「運用担当者を決める」といった準備が必要です。
MA/SFA/CRM連携を成功させるためのデータ連携設計
MA/SFA/CRM連携を成功させるには、ツール選定だけでなく、業務設計と運用体制の構築を一体で進めることが重要です。
【チェックリスト】MA/SFA/CRM連携設計チェックリスト
- 連携するシステムの一覧を整理した(MA/SFA/CRM/その他)
- 各システムのデータ項目と形式を確認した
- どのデータをどの方向に連携するか要件を定義した
- リアルタイム連携かバッチ処理か、連携頻度を決定した
- データの名寄せ・重複排除のルールを設計した
- 連携後の業務フローを設計した(マーケ→営業のリード引き渡しなど)
- 各部門でのデータ活用シーンを明確にした
- 運用担当者・責任者をアサインした
- エラー発生時の対応フローを設計した
- データ品質チェックの仕組みを検討した
- テスト計画を策定した
- 導入後の効果測定指標を決定した
連携設計の進め方と専門家支援の活用
MA/SFA/CRM連携設計は、以下のステップで進めることが一般的です。
- 要件定義:連携するシステム、データ項目、連携頻度を明確化
- ツール選定:要件に合ったツールタイプ(ノーコード/ローコード/開発型)を選択
- 連携設計:データマッピング、変換ルール、エラーハンドリングを設計
- 導入・テスト:テスト環境で検証後、本番環境に導入
- 運用・改善:定期的なデータ品質チェックと業務フローの改善
連携設計では、DataOpsの考え方を取り入れて運用プロセスを自動化・最適化することが重要です。また、専門家(DataOpsコンサル)を早期に巻き込むことで、設計ミスや運用定着の失敗リスクを軽減できます。
まとめ:データ連携ツールの選定から活用までを成功させるために
本記事では、データ連携ツールの種類(EAI/ETL/iPaaS)とタイプ別比較、選定のポイント、MA/SFA/CRM連携設計のチェックリストを解説しました。
重要なポイント
- データ連携ツールは用途に応じてEAI系・ETL系・iPaaSから選択する
- ノーコード型は中小企業向け、開発型は大規模連携向けと用途を明確化する
- 機能と価格だけでなく、導入後の業務設計・運用体制まで考慮して選定する
- MA/SFA/CRM連携では、チェックリストを活用して要件を整理する
データ連携ツールの選定だけでは部門間のデータ活用は実現できません。MA/SFA/CRM連携を見据えた業務設計と運用体制構築まで一体で進める専門家支援が重要です。まずはチェックリストを活用して自社の連携要件を整理し、必要に応じて専門家に相談することをお勧めします。
