施策効果測定の現状と課題
多くの人が見落としがちですが、施策の効果測定は実施後ではなく実施前に「基準設定」と「測定の仕組み化」を行うべきです。
効果測定とは、マーケティング施策の成果を数値データで評価し、費用対効果(ROI)を把握するプロセスです。2024年のイプロス調査によると、BtoB企業の92%が引き合い獲得施策を実施していますが、課題として引き合いの量不足(52.0%)、質不足(50.9%)、効果測定の難しさ(23.5%)を挙げています。約4分の1の企業が効果測定に課題を抱えている現状があります。
よくある失敗パターンとして、施策を実施してから「効果測定をしてほしい」と依頼し、基準がないため結果の良し悪しを判断できず、レポート作成だけが目的になってしまうケースが挙げられます。このような後付けの効果測定では、次の施策改善に繋げることができません。
この記事で分かること
- 効果測定と効果検証の違いと、正しい測定プロセス
- KPI/KGIの設定方法と、KGIから逆算してKPIを設定する具体例
- 施策実施前に準備すべき事項のチェックリスト
- MA/SFAツールを活用した効果測定の仕組み化方法
本記事では、施策実施前の基準設定と測定の仕組み化により、MA/SFAツール資産を活かした効果測定を実現する方法を解説します。
効果測定とは?効果検証との違い
効果測定と効果検証は混同されがちですが、明確な違いがあります。効果測定とは、マーケティング施策の成果を数値データで評価し、費用対効果(ROI)を把握するプロセスです。一方、効果検証とは、測定結果をもとに「再度同じ施策を実施するかどうか」を判断するプロセスを指します。
効果測定と効果検証を混同すると、数値を把握するだけで次の施策に繋げられない状態に陥ります。測定→検証の順で実施し、PDCAサイクルを回すことが重要です。
効果測定の定義と目的
効果測定の目的は、施策の費用対効果(ROI)を把握し、次の施策改善に繋げることです。何が効いているか分からない状態では、予算配分の最適化もできません。
効果測定により以下のことが明確になります:
- どの施策が最もROIが高いか
- 改善すべき施策はどれか
- 予算をどこに重点配分すべきか
効果検証との違い
効果測定で得た数値データをもとに、再度同じ施策を実施するか判断するのが効果検証です。測定結果が良好であれば施策を継続・拡大し、不十分であれば改善または中止を判断します。
効果測定→効果検証の流れでPDCAを回すことで、施策の精度が向上します。測定だけで満足せず、必ず検証まで実施することが成功の鍵です。
効果測定の主要指標(KPI)とKGIからの逆算
効果測定の主要指標を理解し、適切に設定することが重要です。KPI(Key Performance Indicator) とは、施策の目標達成度を測る重要業績評価指標で、リード数、転換率、ROIなどが含まれます。KGI(Key Goal Indicator) とは、最終的な経営目標を示す指標で、売上、受注数などを指します。
KPIを「なんとなく」設定すると成果が出ず、PDCA未回し状態に陥ります。KPIはKGI(最終目標)から逆算して設定することが基本です。
【チェックリスト】施策実施前の効果測定準備チェックリスト
- 施策の目的を明確に定義している(認知拡大、リード獲得、商談化、受注など)
- KGI(最終目標)を設定している(例:受注15件、売上1,000万円)
- KGIから逆算してKPIを設定している(例:受注率25%でKGI15件なら商談数60件をKPIに)
- 測定方法を決定している(MA/SFAツール、Google Analytics等)
- 基準値(ベンチマーク)を設定している(過去実績、業界平均値など)
- 測定期間を設定している(月次、四半期など)
- データ収集の仕組みを構築している(自動連携、手動入力など)
- 責任者を明確にしている(誰が測定・報告するか)
- レビュー頻度を設定している(週次進捗確認、四半期KPI見直し)
- 予算を設定している(施策予算、測定コスト)
- 成功基準を明確にしている(KPI達成率○○%以上など)
- 失敗時の対応を決定している(改善策、中止判断基準)
- 関係者への共有方法を決定している(ダッシュボード、レポート)
- MA/SFAツールとの連携を確認している(データ連携可否、API利用可否)
- セグメント別の測定を設計している(業界別、企業規模別など)
KPIとKGIの関係
KGIは最終的な経営目標(売上、受注数)、KPIは途中の重要指標(リード数、転換率)です。KGIから逆算してKPIを設定することで、目標達成に必要な中間指標を明確にできます。
(例)受注率25%、目標受注数15件の場合のKPI設定
- KGI: 受注数15件
- KPI1: 商談数60件(15件 ÷ 25% = 60件)
- KPI2: MQL数120件(商談化率50%と仮定すると60件 ÷ 50% = 120件)
- KPI3: 新規リード数600件(MQL転換率20%と仮定すると120件 ÷ 20% = 600件) ※実際の転換率は業種・企業規模により大きく変動します
このように、KGIから逆算してKPIを設定することで、各段階で達成すべき目標が明確になります。
主要なBtoB指標
BtoB企業が効果測定で重視すべき主要指標は以下の通りです。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング部門が育成し、営業に引き渡す準備ができたリードを指します。SQL(Sales Qualified Lead) とは、営業部門が商談可能と判断したリードです。CAC(Customer Acquisition Cost) とは、顧客獲得コスト、つまり1件の顧客を獲得するためにかかった費用を指します。
マーケティング・セールス合同レビュー導入により、MQL→SQL転換率が18%から32%に向上、CAC(顧客獲得コスト)が15%削減、リードタイムが30日から22日に短縮した事例があります。この事例では、定期的なレビューによりマーケティングと営業の連携が強化され、リードの質が向上したことが成功の要因とされています。ただし、この数値は特定企業の実績であり、業種や企業規模により再現性は異なります。
効果測定の方法・手順(施策実施前の基準設定)
施策を実施してから「効果測定をしてほしい」と依頼し、基準がないため結果の良し悪しを判断できず、レポート作成だけが目的になり次の施策に繋がらないケースは、典型的な失敗パターンです。効果測定は施策実施後ではなく実施前に基準設定を行うことが重要です。
施策実施前に行うべきことは、目標設定、KPI設定、測定方法決定、基準値設定の4ステップです。これらを事前に整備することで、施策実施後に「何と比較すべきか」が明確になり、正しい判断が可能になります。
施策実施前に行うべきこと
施策実施前の基準設定の具体的な手順は以下の通りです。
ステップ1: 目標設定 施策の目的を明確にします。認知拡大、リード獲得、商談化、受注など、何を達成したいかを定義します。
ステップ2: KPI設定 KGI(最終目標)から逆算してKPIを設定します。例えば、受注率25%でKGI15件なら商談数60件をKPIに設定します。
ステップ3: 測定方法決定 MA/SFAツール、Google Analytics等、どのツールでどのデータを取得するかを決定します。
ステップ4: 基準値設定 過去実績や業界平均値を参考に、目標達成の基準となる数値を設定します。基準値がないと、結果が「良いのか悪いのか」を判断できません。
【管理シート】施策効果測定シート(MA/SFAデータ連携版)
以下のCSV形式のシートをコピーして、施策ごとの効果測定にご活用ください。
施策名,実施期間_開始,実施期間_終了,KGI名,KGI目標値,KGI実績値,KGI達成率(%),KPI1名,KPI1目標値,KPI1実績値,KPI1達成率(%),KPI2名,KPI2目標値,KPI2実績値,KPI2達成率(%),施策予算(円),実績コスト(円),ROI(%),備考
ウェビナーA,2025-01-01,2025-01-31,受注数,15,12,80,商談数,60,48,80,MQL数,120,96,80,500000,450000,267,参加率60%
コンテンツマーケB,2025-02-01,2025-02-28,受注数,10,8,80,商談数,40,32,80,新規リード数,200,160,80,300000,280000,285,SEO対策実施
計算列の定義:
- KGI達成率(%) = (KGI実績値 ÷ KGI目標値) × 100
- KPI達成率(%) = (KPI実績値 ÷ KPI目標値) × 100
- ROI(%) = ((施策効果 - 実績コスト) ÷ 実績コスト) × 100
このシートをMA/SFAツールと連携し、リアルタイムでデータを更新することで、効果測定を仕組み化できます。
成功事例から学ぶ効果測定のポイント
成功事例から効果測定のポイントを学びましょう。ウェビナー集中開催施策(1ヶ月で22回開催)により、新規リード501件、プレ商談37件、売上1,000万円超、ROI 416%を達成した事例があります(LANY社)。この事例では、事前に「1ヶ月で22回開催」「新規リード500件目標」など明確な基準を設定し、毎週進捗を確認しながらウェビナーテーマを調整したことが成功の要因です。
また、デジタルマーケティング強化により、売上貢献が前年比250%増、営業生産性が30%増、案件化時間が45日から28日に短縮、ROI 3.2倍を達成した事例もあります。この事例では、MA/SFAツールを活用してリードスコアを可視化し、優先度の高いリードに営業リソースを集中させたことが成果に繋がりました。
これらの成功事例に共通するのは、施策実施前に明確な基準を設定し、定期的にレビューしながらPDCAを回している点です。ただし、これらの数値は特定企業の実績であり、企業規模・業種により再現性は異なるため、自社の状況に合わせた目標設定が重要です。
MA/SFAを活用した効果測定の仕組み化
MA/SFAツールを活用することで、効果測定を仕組み化できます。MAツール(Adobe Marketo Engage等)導入により、スコアリング機能でホットリードを営業に自動連携し、営業成約率が25%向上した事例があります。
MAツールのスコアリング機能は、リードの行動(メール開封、ウェブサイト訪問、資料ダウンロードなど)を自動的に点数化し、一定のスコアに達したリードを営業に通知します。これにより、営業は優先度の高いリードに集中でき、成約率が向上します。
日本市場では、マーケティング起点の売上貢献率やナーチャリング効率を重視する傾向があります。MA/SFAツールを活用してこれらの指標を可視化することで、マーケティング部門の貢献度を定量的に示すことができます。
MAツールでのホットリード可視化
MAツールのスコアリング機能を活用することで、ホットリードを可視化できます。リードスコアが一定基準(例:100点以上)に達したら自動的に営業に通知し、即座にアプローチすることで成約率が向上します。
MAツール導入により営業成約率が25%向上した事例では、スコアリング基準を明確に設定し、営業とマーケティングで合意したことが成功の要因です。「どのような行動を何点とするか」を事前に決めておくことで、営業は納得してリードにアプローチできます。
特定のMAツールに限らず、一般的なMA機能として、スコアリング、リード育成、行動トラッキングが提供されています。既存のMA/SFAツールがあれば、これらの機能を活用して効果測定を仕組み化しましょう。
ダッシュボードでの可視化とレビュー頻度
ダッシュボードで効果測定の結果を可視化し、定期的にレビューすることが重要です。週次で短期進捗確認、四半期で中長期KPI見直しを行うレビュー頻度が推奨されます。
週次レビューでは、リード獲得数、MQL数、商談数などの短期KPIを確認し、目標に対する進捗を把握します。四半期レビューでは、ROI、CAC、LTV(顧客生涯価値)などの中長期KPIを見直し、施策の継続・改善・中止を判断します。
ABテストで小規模変更を検証し、ダッシュボードで可視化することで組織横断PDCAが回ります。例えば、ランディングページのタイトルをABテストで検証し、勝ちパターンを他の施策にも展開することで、全体の成果が向上します。
ダッシュボードは、MA/SFAツールの標準機能、Google Data Studio、Tableau等を活用して構築できます。重要なのは、関係者全員が同じダッシュボードを見て判断できる状態を作ることです。
まとめ
施策の効果測定は実施後ではなく実施前に「基準設定」と「測定の仕組み化」を行うべきです。
本記事では、効果測定と効果検証の違い、KPI/KGIの設定方法、施策実施前の基準設定の重要性、MA/SFAツールを活用した効果測定の仕組み化を解説しました。
施策実施前の基準設定: 施策実施前に目標設定、KPI設定、測定方法決定、基準値設定の4ステップを実施することで、施策実施後に正しい判断が可能になります。基準がないと結果の良し悪しを判断できず、レポート作成だけが目的になり次の施策に繋がりません。
MA/SFA活用: MA/SFAツールのスコアリング機能でホットリードを可視化し、営業に自動連携することで成約率が向上します。ダッシュボードで可視化し、週次で短期進捗確認、四半期で中長期KPI見直しを行うことで、組織横断でPDCAを回せます。
レビュー頻度: 週次レビューで短期KPIを確認し、四半期レビューで中長期KPIを見直すことで、施策の精度が向上します。ABテストとダッシュボード可視化により、小規模変更を検証しながら全体最適を目指しましょう。
次のアクション
- 施策実施前の効果測定準備チェックリストを使って、次の施策の準備をする
- 施策効果測定シート(MA/SFAデータ連携版)をコピーして、効果測定を仕組み化する
- MA/SFAツールのスコアリング機能を活用し、ホットリードを可視化する
施策実施前の基準設定→MA/SFA活用→レビュー頻度設定の流れを実践し、効果測定を仕組み化して次の施策改善に繋げましょう。
