ABM(アカウントベースドマーケティング)とは|意味と本記事の目的
最も重要なのは、ABMは概念を理解するだけでは成果につながらず、MA/SFA連携の実装から運用定着まで一気通貫で設計できる専門家と組むことで、戦略を実行可能な形に落とし込み、成果につなげられるという点です。
ABM(Account Based Marketing) とは、自社にとって重要な特定企業(アカウント)を事前に特定し、営業とマーケティングが連携しながら個社単位でカスタマイズされたアプローチを展開するマーケティング戦略です。
グローバルのABM市場は2025年に約10.3億ドル、2030年に18.3億ドルに拡大する予測で、年平均成長率(CAGR)12.1%とされています(ただし、これはグローバル市場データであり、日本単独の公的統計は存在しません)。ABMへの注目が高まる中、「ABMとは何か」を理解するだけでなく、実際に成果を出すための実装方法まで把握することが重要です。
この記事で分かること
- ABMの意味と基本概念
- ABMとデマンドジェネレーションの違い
- ABMが適している企業の特徴と導入適性チェックリスト
- ABMのメリット・デメリット
- MA/SFA連携を前提としたABM実施フロー
ABMの定義と基本概念|従来のマーケティング手法との違い
ABMは、従来の「広くリードを集める」マーケティングとは根本的に異なり、「狙うべき企業を最初に決め、その企業に対して最適化した施策を展開する」アプローチです。
ICP(Ideal Customer Profile) とは、ABMにおいて優先的にターゲットとすべき理想的な顧客像を定義したプロファイルです。企業規模・業種・課題などの条件で定義し、このICPに基づいてターゲットアカウント(重点的にアプローチする対象企業)を選定します。
デマンドジェネレーションとは、広くリードを集め、育成し、商談につなげるマーケティングアプローチです。ABMとは対照的に「広く薄く」アプローチする手法であり、リード数を重視する点が特徴です。
ABMとデマンドジェネレーションの違い
ABMとデマンドジェネレーションの最大の違いは、アプローチの順序にあります。
デマンドジェネレーションは「施策を打つ→リードが集まる→育成→商談化」という流れです。広告やコンテンツで広くリードを獲得し、その中から商談化しそうなリードを育成していきます。
一方、ABMは「ターゲット企業を決める→その企業向けに施策を打つ→商談化」という流れです。最初にアプローチすべき企業を絞り込み、その企業に対してカスタマイズした施策を展開します。
どちらが優れているというわけではなく、商材特性やターゲット市場によって最適なアプローチは異なります。
ABMが注目される背景と適している企業
ABMが注目される背景には、BtoB購買行動の変化とテクノロジーの進化があります。また、日本のインサイドセールス導入率は40.6%で、米国の80%超と比較すると約2倍の成長余地があるとされており、BtoB営業・マーケティングの高度化が進む中でABMへの関心も高まっています。
ABMが適している企業には、いくつかの共通する特徴があります。以下のチェックリストで、自社がABMに適しているかを確認してみてください。
【チェックリスト】ABM導入適性チェックリスト
- 高単価商材(年間契約数百万円以上)を扱っている
- 顧客の意思決定に複数の部門・担当者が関与する
- ターゲット企業数が限定的(数百〜数千社程度)
- 長期的な顧客関係(LTV向上)を重視している
- 営業とマーケティングの連携体制がある、または構築可能
- MA/SFA/CRMなどのツールを導入済み、または導入予定
- ターゲット企業に対する深い理解がある
- 個社別にカスタマイズした提案ができるリソースがある
- リード数よりも商談化率・受注額を重視できる
- 経営層がABMへのKPIシフトを理解・支持している
- 既存顧客のアップセル・クロスセルに注力したい
- 特定業種・市場に強みを持っている
ABMに向いている企業の特徴
ABMが特に効果を発揮しやすいのは、以下のような企業です。
高単価商材を扱う企業:年間契約単価が数百万円以上のSaaS、ITソリューション、コンサルティングサービスなどを提供する企業は、1社あたりの売上インパクトが大きいため、ABMの投資対効果が高くなりやすい傾向があります。
複数意思決定者が存在する案件:IT部門+業務部門+経営層など、複数のステークホルダーが関与する長期検討型の案件では、アカウント単位でのアプローチが有効です。
ターゲット市場が限定的な企業:日本国内でターゲット企業が数百〜数千社程度に絞れる市場(特定業種向けSaaS、産業機械、外資ITの日本市場攻略など)では、ABMのアプローチが効率的です。
ABMのメリット・デメリット|成果を出すための前提条件
ABMには多くのメリットがある一方、成果を出すためには適切な設計と運用が不可欠です。
よくある失敗パターンとして、ABMの概念やフレームワークを学んで自社内で実装しようとしたものの、MA/SFAの設定やマーケ・営業連携の仕組み構築が進まず、戦略が絵に描いた餅になってしまうケースがあります。この考え方は誤りであり、ABMは「概念を学べば成果が出る」というものではありません。
ABMのメリット
ABMのメリットとして、調査データでは高いROI実感が報告されています。
Forresterの2024年調査によると、ABMを実践する企業の99%が「従来施策より高いROIを得ている」と回答しています。また、同調査では23%の企業が「ROIが従来施策の1.5〜3倍になった」と報告しています。
日本市場においても、IDEATECH社の2025年調査によると、日本のBtoB企業でABMを実践している企業の約8割が何らかの成果を実感していると報告されています(ただし、この調査は民間調査であり、サンプル数や対象業種の偏りに注意が必要です)。
これらのデータから、ABMは適切に実践すれば高いROIが期待できる手法であることが示唆されますが、調査対象がABM実践企業に限られるため、サンプルバイアスには注意が必要です。
ABMのデメリット・注意点
ABMには以下のようなデメリット・注意点があります。
設計・運用の難度が高い:ターゲットアカウントの選定、アカウントプラン設計、コンテンツの個別化、営業との連携フロー設計など、高度な設計と継続運用が必要です。
データ基盤の整備が必要:MA/CRM/SFAのデータ統合、アカウント単位の行動ログ整備など、ABMを支えるデータ基盤が必要です。
短期的なリード数減少への社内理解:アカウントを絞るため、リード数KPIだけを見ると一時的に悪化する可能性があります。組織全体でのKPI変更への理解が必要です。
ABM実施の手順|MA/SFA連携を前提とした実践フロー
ABMを成功させるには、ターゲットアカウント選定からMA/SFA連携による実装まで、一貫したフローで設計することが重要です。
アカウントプランとは、ターゲットアカウントごとに策定する営業・マーケティングの戦略計画です。意思決定者・課題・提案シナリオを整理し、アカウント単位でのアプローチを設計します。
【フロー図】ABM実施フロー
flowchart TD
A[ICP定義] --> B[ターゲットアカウント選定]
B --> C[アカウントリサーチ]
C --> D[アカウントプラン策定]
D --> E[コンテンツ・施策の個別化]
E --> F[マルチチャネルアプローチ実行]
F --> G[MA/SFAへの行動データ蓄積]
G --> H{反応あり?}
H -->|Yes| I[営業へアラート・引き渡し]
H -->|No| J[ナーチャリング継続]
J --> F
I --> K[商談化・提案]
K --> L{受注/失注}
L -->|受注| M[カスタマーサクセス・LTV向上]
L -->|失注| N[失注理由分析]
N --> O[ICP・スコアモデル改善]
O --> A
subgraph マーケティング領域
A
B
C
D
E
F
G
J
O
end
subgraph 営業領域
I
K
L
M
N
end
ターゲットアカウントの選定とICP設計
ABMの出発点は、ICP(理想的な顧客像)の定義とターゲットアカウントの選定です。
ICP定義の具体的な観点としては、以下が挙げられます。
- 企業属性:業種、従業員規模、売上規模、エリア
- 組織特性:意思決定構造、IT投資傾向、導入済みツール
- 課題・ニーズ:解決すべき課題、検討のトリガー、導入の緊急度
- 過去実績:既存顧客で成功している企業の共通点
ICPを定義した上で、具体的なターゲットアカウントをリストアップし、優先順位を付けます。
MA/SFA連携による実装と運用定着
ABMの成否は、MA/SFA連携の実装と運用定着にかかっています。
実装のポイントとしては、以下が挙げられます。
- データ統合:MA/CRM/SFAのデータを統合し、アカウント単位で情報を一元管理
- 行動ログ整備:アカウントに紐づく担当者の行動(Web閲覧、メール開封、資料DLなど)を蓄積
- アラート設計:スコア閾値到達時に営業へ自動通知する仕組みを構築
- 連携フロー:マーケから営業への引き渡しルール、フィードバックルールを明文化
戦略だけでなく、これらの実装を一気通貫で設計・実行することが、ABM成功の前提条件です。自社リソースだけで実装が難しい場合は、MA/SFA連携の設定から運用定着まで支援できる専門家と組むことも有効な選択肢です。
まとめ:ABMの意味を理解し、成果につなげるために
本記事では、ABMの意味・定義から、適している企業の特徴、メリット・デメリット、実施フローまで解説しました。
本記事のポイント
- ABMは特定企業(アカウント)に対して個別最適化した施策を展開するマーケティング戦略
- ABMはデマンドジェネレーションと異なり、「狙う企業を決めてから施策を打つ」アプローチ
- 高単価商材、複数意思決定者、ターゲット市場が限定的な企業に向いている
- 成果を出すにはMA/SFA連携の実装から運用定着まで一貫した設計が必要
次のステップとして、「ABM導入適性チェックリスト」で自社の適性を確認し、「ABM実施フロー」を参考に導入計画を検討してみてください。
ABMは概念を理解するだけでは成果につながらず、MA/SFA連携の実装から運用定着まで一気通貫で設計できる専門家と組むことで、戦略を実行可能な形に落とし込み、成果につなげられます。自社リソースでの実装が難しいと感じた場合は、専門家への相談も検討してみてください。
