ABMを学んでも成果が出ない企業に共通する課題
ABMの進め方で成功するには、フレームワークの理解だけでなくMA/SFA連携の実装設計が不可欠であり、戦略から実装まで一貫して伴走できる専門家の支援を活用することが近道です。
ABM(Account Based Marketing) とは、自社にとって重要なターゲット企業を事前に特定し、営業とマーケティングが連携して企業単位で最適化したアプローチを行うBtoBマーケティング戦略です。
グローバルABM市場規模は2025年に10.3億ドル、2030年には18.3億ドルに成長すると予測され、2025-2030年のCAGRは12.1%とされています(Mordor Intelligence)。日本でもABMへの関心は高まっていますが、多くの企業が「フレームワークは理解したが、どう実装すればいいか分からない」という壁に直面しています。
この記事で分かること
- ABMの定義と従来マーケティングとの違い
- ABMの具体的な進め方とステップ
- MA/SFA連携による成果の出し方
- ABM導入前に確認すべきチェックリスト
ABMの定義と基本概念|従来マーケティングとの違い
ABMは、従来のリード数重視のマーケティングとは根本的に異なるアプローチです。従来型ではリードを大量に獲得してからフィルタリングしますが、ABMでは最初から価値の高いターゲット企業を特定し、そこに集中的にリソースを投入します。
ICP(Ideal Customer Profile) とは、理想顧客像を指します。過去の高LTV案件・高収益案件を分析し、ターゲットとすべき企業の特徴を定義したものです。ABMではまずICPを策定し、そこから具体的なターゲット企業を選定します。
Tier1/Tier2アカウントは、ABMにおけるターゲット企業の優先度分類です。Tier1は最重点アカウント、Tier2は次点で重視するアカウントを指します。
ABM専用プラットフォームの価格帯は2018年比で約3割下落しており、以前より安価に始めやすくなっています(2025年)。これにより、大企業だけでなく中堅企業でもABMを導入しやすい環境が整ってきています。
ABMが向いている企業・向いていない企業
ABMはすべての企業に適しているわけではありません。高単価・長期検討型のBtoB商材を扱う企業に向いています。
日本ではSaaS・製造・ITサービス各社を中心にABM専任チーム設置や「見込み客数より受注額・継続率を重視する潮流」への転換が進んでいます(2025年)。
ABMが向いている企業
- 平均取引単価が高い(数百万円以上)
- 意思決定者が複数存在する
- 顧客の検討期間が長い
- ターゲット企業が明確に定義できる
ABMが向いていない企業
- 少額・大量販売型のビジネスモデル
- ターゲット企業が数万社以上存在する
- 営業とマーケティングの連携体制がない
ABMの進め方|実施ステップとフロー
ABMを実施するには、明確なステップを踏んで進めることが重要です。以下のフローに沿って進めることで、戦略から実装まで一貫した取り組みが可能になります。
Named Account制とは、営業担当者ごとに担当企業(アカウント)を明確に割り当てる営業体制です。ABMでの営業・マーケ連携の基盤となります。
【フロー図】ABM実施ステップフロー
flowchart TD
A[ICP策定] --> B[ターゲットアカウント選定]
B --> C[アカウント理解・調査]
C --> D[パーソナライズ施策設計]
D --> E[営業・マーケ連携体制構築]
E --> F[施策実行]
F --> G[効果測定・改善]
G --> D
ターゲットアカウント選定とICP策定
ABMの起点となるのがICP策定とターゲットアカウント選定です。過去の受注実績から「どのような企業が高いLTV(顧客生涯価値)をもたらしているか」を分析し、共通する特徴を抽出します。
ICP策定の手順
- 過去の高収益案件・高LTV案件をリストアップ
- 共通する属性(業種、従業員数、課題など)を抽出
- 優先度に基づきTier1/Tier2に分類
- 具体的なターゲット企業リストを作成
Tier1アカウントは一般的に数十〜数百社程度に絞り込みます。母数が小さい分、商談化率・受注率を重視するKPI設計が重要になります。
アカウント単位の施策設計と営業連携
選定したアカウントに対しては、企業ごとにパーソナライズされた施策を設計します。営業部門と連携し、Named Account制のもとで一貫したアプローチを行うことが成功の鍵です。
日本国内のLinkedIn会員数は約490万人(2025年1月時点)で、日本の成人人口に対する広告リーチは約4.6%とされています。LinkedInはBtoBターゲティングに有効なチャネルの一つですが、日本市場では他のチャネルとの併用が必要なケースが多いです。
アカウント単位の施策例
- ターゲット企業向けカスタムコンテンツ制作
- キーパーソン向けパーソナライズドメール
- 業界固有の課題に対応したウェビナー開催
- 展示会・イベントでの個別アプローチ
ABMで成果を出すためのMA/SFA活用
ABMで成果を出すには、MA(マーケティングオートメーション)とSFA/CRMの連携が不可欠です。ここで多くの企業が躓きます。
よくある失敗パターンは、ABMのフレームワークやステップを学んで自社で実装しようとするが、MA/SFA連携やデータ統合の設計で躓き、結局ABMが形骸化してしまうケースです。 この考え方は誤りであり、フレームワークの理解だけでは成果は出ません。
ABX(Account Based Experience) とは、ABMの発展形で、マーケティングだけでなく営業・CSも含めたアカウント単位の顧客体験全体を最適化するアプローチです。
Forrester 2024年調査によると、ABMを実践する企業のうち23%が「ROIが従来施策の1.5〜3倍になった」と回答しています。ただし、これは全体平均ではなく、うまく設計・運用できた企業の一部である点に注意が必要です。
MA/SFAデータ連携の設計ポイント
MA/SFAデータ連携で重要なのは、リード単位ではなく企業単位でデータを集約することです。
企業単位でのデータ集約のポイント
- 同一企業に紐づくリードを統合
- 企業単位でのスコアリング(アカウントスコア)
- 営業活動履歴とマーケ接触履歴の統合
- 意思決定者マップの可視化
アカウントスコアリングの設計例
- Webサイト訪問頻度
- コンテンツダウンロード数
- メール開封・クリック率
- イベント参加履歴
- 営業担当者との接触履歴
ABM導入前に確認すべき準備項目
ABM導入を成功させるためには、事前の準備が重要です。以下のチェックリストで自社の準備状況を確認してください。
【チェックリスト】ABM導入準備チェックリスト
- ICPが明確に定義されている
- ターゲットアカウントリスト(Tier1/Tier2)が作成されている
- 営業部門とマーケティング部門の連携体制がある
- Named Account制(担当アカウント制)が導入されている
- MA(マーケティングオートメーション)が導入されている
- SFA/CRMが導入されている
- MA/SFA間のデータ連携が設計されている
- 企業単位でリードを集約できるデータ構造になっている
- アカウントスコアリングのロジックが設計されている
- ターゲットアカウント向けコンテンツが用意されている
- 営業・マーケ共通のKPIが設定されている
- 定期的なレビュー会議の体制がある
- ABM専任またはプロジェクトリーダーがアサインされている
- 予算計画が策定されている
- 効果測定の指標と方法が決まっている
まとめ|ABMで成果を出すための次のステップ
本記事では、ABMの進め方について、基本概念からMA/SFA連携まで解説しました。
ポイントの整理
- ABMは従来のリード数重視から、ターゲットアカウントの商談化・受注を重視するアプローチ
- ICP策定とTier分類でターゲット企業を明確化する
- 営業とマーケティングの連携(Named Account制)が成功の鍵
- MA/SFA連携でデータを企業単位に集約し、アカウントスコアリングを実装する
- 導入前にチェックリストで準備状況を確認する
次のステップ
- チェックリストで自社の準備状況を確認
- 不足している項目を洗い出す
- MA/SFA連携の設計を検討
- 必要に応じて専門家の支援を検討
ABMで成果を出すには、フレームワークの理解だけでなくMA/SFA連携の実装設計が不可欠であり、戦略から実装まで一貫して伴走できる専門家の支援を活用することが近道です。自社だけでの対応が難しい場合は、戦略から実装・運用まで一貫して支援できるパートナーの活用も選択肢の一つです。
