ABMアカウント選定で失敗する企業の共通課題
ABMを始めたいがアカウント選定基準が曖昧で、リストを作成しても活用されず、MA/SFAとの連携も進まず、結局従来の営業手法に戻ってしまうという課題を抱えていませんか?
ABMアカウント選定の成功は、選定基準を定めリストを作成するだけでなく、MA/SFA実装設定(スコアリング・ワークフロー)とデータ管理ツール開発まで完了させることで実現します。
この記事で分かること
- アカウント選定基準の定義からリスト作成までの具体的な手順
- MA/SFA実装設定とスコアリング・ワークフロー設定の方法
- リストが形骸化しないためのデータ管理と定期更新の仕組み
- ABMアカウント選定チェックリストとアカウント選定基準比較表(即座に実行可能)
調査によると、ABMを知るBtoB企業の70.6%が実践中で、そのうち約8割(80%)が成果を実感しています。一方で、アカウント選定基準を定めてリストを作成すれば十分と考え、MA/SFA実装設定やデータ管理ツールの開発を後回しにして、結局リストが形骸化し活用されないという失敗パターンが多く見られます。
ABMツール導入前の課題として、営業アポ率のばらつき解消や質の高いリスト作成時間(数週間)の短縮が挙げられます。ツールによりリアルタイム更新が可能になりますが、導入後もリストを活用する仕組み(MA/SFA実装設定、営業連携、定期更新)を整備しなければ、成果は出ません。
本記事では、ABMアカウント選定基準の定義からMA/SFA実装設定、データ管理ツール開発まで一気通貫で解説し、読者が自社でターゲットアカウントリストを作成し、実際に活用できるようにします。
ABMアカウント選定とは|BtoB営業で成果を出すアカウント選定の基本概念
**ABM(アカウントベースドマーケティング)**とは、特定の高価値アカウントを選定し、個別最適化されたマーケティング・営業施策で深耕するBtoB手法です。アカウント選定は、ABMの最初のステップであり、成否を分ける重要なプロセスです。
ABMでは**パレートの法則(80/20の法則)**(上位2割の顧客が売上の8割を占めるという経験則)を活用し、高LTVアカウントを抽出するのが標準的な方法です。ただし、パレートの法則は経験則であり、業種・ビジネスモデルにより顧客分布が異なることに注意が必要です。
ABMの定義とアカウント選定の重要性
ABMが従来のマーケティングと異なる点は、多数のリードに一律のアプローチをするのではなく、特定の高価値アカウントに集中し、個別最適化された施策を展開することです。そのため、どのアカウントを選定するかがABM成功の鍵を握ります。
調査によると、2025年時点で日本BtoB企業の70%超がABMを実践しており、そのうち約8割が成果を実感しています。成果を実感している企業とそうでない企業の違いは、アカウント選定基準が明確で、選定したアカウントに対して実際にアプローチできる仕組みを構築しているかどうかにあります。
パレートの法則とアカウント選定基準の基本
ABMアカウント選定では、既存顧客の上位2割を分析することから始めます。パレートの法則を活用し、高LTVアカウントの共通パターンを特定することで、類似の非顧客アカウントを効率的に抽出できます。
**LTV(顧客生涯価値)**とは、1顧客が取引期間全体を通じて企業にもたらす利益総額で、アカウント選定の優先度判断基準です。LTV期待額・リピート率・投資意欲などの選定基準を定義することで、営業リソースを最も効果の高いアカウントに集中させることができます。
アカウント選定基準の4軸は、以下の通りです。
- 企業規模: 従業員数、売上高、資本金など
- 業種: 製造業、IT、金融、サービスなど
- LTV: 期待される顧客生涯価値
- 投資意欲: 予算確保状況、導入意欲、決裁権者の関与度
これらの4軸を組み合わせてアカウントを評価し、優先順位を付けることが重要です。
ターゲットアカウントリスト作成の具体的な手順|既存顧客分析からデータ収集まで
**ターゲットアカウントリスト**とは、ABMで優先的にアプローチする高価値見込み顧客のリストで、既存顧客分析とデータ収集により作成します。リスト作成は、以下の4つのステップで進めます。
【チェックリスト】ABMアカウント選定チェックリスト
既存顧客分析
- 既存顧客の売上・利益データを収集
- 上位2割の顧客を特定(パレートの法則を活用)
- 上位顧客の共通属性を抽出(企業規模、業種、地域、取引額、リピート率等)
- LTV期待額を計算(取引額×リピート率×取引期間)
- 投資意欲の高い顧客パターンを分析(予算確保状況、決裁権者の関与度等)
データ収集
- 企業データベースツールを選定(保有データ量100万件以上を推奨)
- 選定基準に基づいてリストを抽出(企業規模、業種、地域等)
- データクレンジングを実施(重複・誤記・古いデータを除去)
- 自動名寄せ機能で精度を向上
- AI需要測定で受注見込みを判定(投資意欲、購買タイミング予測)
リスト抽出
- 選定基準に合致するアカウントを抽出
- リスト規模を確認(平均リスト規模は数百〜数千アカウント)
- 既存顧客と重複していないか確認
- 除外条件を設定(競合企業、過去に断られた企業等)
優先順位付け
- LTV期待額でスコアリング(高LTV: +30点、中LTV: +20点、低LTV: +10点等)
- リピート率でスコアリング(高リピート: +20点、中リピート: +10点等)
- 投資意欲でスコアリング(高投資意欲: +30点、中投資意欲: +15点等)
- 総合スコアで優先順位を付ける(上位から順に S/A/B/Cランクに分類)
- Sランク・Aランクを最優先アプローチ対象とする
リスト管理
- MA/SFAツールにアカウントリストを取り込む
- 月次自動更新を設定
- 外部DB(SPEEDA/Fourin等)との連携設定
- 営業担当者へのアカウント割り当てルールを策定
- 定期的な見直しサイクルを確立(月次または四半期ごと)
既存顧客分析と選定基準の定義
パレートの法則を活用し、既存顧客の上位2割を特定することから始めます。上位顧客の共通属性(企業規模、業種、地域、取引額、リピート率等)を抽出し、選定基準を定義します。
具体的な手順は以下の通りです。
- 既存顧客の売上・利益データを収集: CRM/SFAから既存顧客の取引データを抽出
- 上位2割の顧客を特定: 売上またはLTVでソートし、上位20%を抽出
- 共通属性を分析: 上位顧客の企業規模、業種、地域、取引額、リピート率などを集計
- 選定基準を定義: 共通属性を基に、「従業員数100名以上」「製造業」「年間取引額500万円以上」といった選定基準を定義
この分析により、自社にとって価値の高いアカウントの特徴が明確になります。
データ収集とリスト抽出の実践方法
データクレンジングとは、重複・誤記・古いデータを除去し、アカウントリストの精度を高める処理です。上位ABMツールは数百万件規模の国内企業データを保有し、AI需要測定(AIを活用してアカウントの投資意欲や購買タイミングを予測し、受注見込みを判定する機能)で受注見込み判定精度を向上させています。
データ収集の具体的な手順は以下の通りです。
- 企業データベースツールを選定: 保有データ量が多いツール(100万件以上)を選定することで、抽出できるアカウントの選択肢が広がります
- 選定基準に基づいてリストを抽出: 企業規模、業種、地域などの条件で絞り込み
- データクレンジングを実施: 重複・誤記・古いデータを自動または手動で除去
- 自動名寄せ機能で精度を向上: 同一企業の表記ゆれ(株式会社の有無、カナ表記の違い等)を統一
- AI需要測定で受注見込みを判定: 投資意欲の高いアカウントを優先的にリスト化
これらのプロセスを通じて、質の高いターゲットアカウントリストが完成します。
アカウント選定の優先順位付け方法
アカウント選定の優先順位付けは、LTV期待額・リピート率・投資意欲を基準にスコアリングし、平均リスト規模は数百〜数千アカウントとなります。
スコアリングの具体例は以下の通りです。
LTV期待額でのスコアリング
- 1,000万円以上: +30点
- 500〜1,000万円: +20点
- 500万円未満: +10点
リピート率でのスコアリング
- リピート率80%以上: +20点
- リピート率50〜80%: +10点
- リピート率50%未満: +5点
投資意欲でのスコアリング
- 予算確保済み・決裁権者が積極関与: +30点
- 予算検討中・担当者レベルで関心あり: +15点
- 情報収集段階: +5点
総合スコアで優先順位を付け、上位から順に S/A/B/Cランクに分類します。Sランク・Aランクを最優先アプローチ対象とし、営業リソースを集中させます。平均リスト規模は数百〜数千アカウントですが、業種・企業規模により変動するため、自社のリソースと営業体制に合わせて調整してください。
アカウント選定後のMA/SFA実装設定|スコアリング・ワークフロー・アラート設定の具体的な方法
選定したアカウントリストをMA/SFAに取り込み、スコアリング・ワークフロー・アラート設定で自動アプローチを構築することで、リストが形骸化せず実際に活用される仕組みを作ります。
ABMツールの料金相場は、Starterプラン¥2,800/月(月250件送信)からPro¥49,000/月(2,500件)が一般的な目安です(具体的な導入時は個別見積もりが必要)。ツールによりリアルタイム更新が可能になり、営業アポ率のばらつき解消や質の高いリスト作成時間(数週間)の短縮が実現します。
【比較表】アカウント選定基準比較表(企業規模・業種・LTV・投資意欲別)
企業規模,業種,LTV期待額,投資意欲,優先度,スコア,アプローチ方法
従業員1000名以上,製造業,1000万円以上,予算確保済み,Sランク,80点以上,経営層向け個別提案・専任営業配置
従業員1000名以上,IT,1000万円以上,予算確保済み,Sランク,80点以上,経営層向け個別提案・専任営業配置
従業員500-1000名,製造業,500-1000万円,予算検討中,Aランク,60-79点,部門長向け提案・定期フォロー
従業員500-1000名,IT,500-1000万円,予算検討中,Aランク,60-79点,部門長向け提案・定期フォロー
従業員100-500名,製造業,500万円未満,情報収集段階,Bランク,40-59点,担当者向けナーチャリング・セミナー招待
従業員100-500名,IT,500万円未満,情報収集段階,Bランク,40-59点,担当者向けナーチャリング・セミナー招待
従業員100名未満,その他,500万円未満,情報収集段階,Cランク,39点以下,メールマガジン・定期接触
MA/SFAへのアカウントリスト取り込みとフィールド設計
MA/SFAツールにアカウントリストを取り込む際は、以下のフィールドを設計します。
標準フィールド
- 企業名
- 業種
- 企業規模(従業員数)
- 所在地(都道府県、市区町村)
- 電話番号
- Webサイト
カスタムフィールド
- LTV期待額(スコアリング用)
- 投資意欲レベル(高/中/低)
- 優先度ランク(S/A/B/C)
- 総合スコア(数値)
- 最終接触日
- 担当営業
カスタムフィールドを適切に設計することで、後述のスコアリング・ワークフロー設定がスムーズに行えます。既存CRM/MAとの統合性を確認し、データの重複や不整合が発生しないよう注意してください。
スコアリング・ワークフロー・アラート設定の実践
**バイイングシグナル**とは、顧客の購買意欲を示す行動(Webサイト訪問、資料ダウンロード等)をリアルタイムで検知する指標です。バイイングシグナルを検知し、スコアに応じた自動メール配信や営業アラート通知を設定することで、タイムリーなアプローチが可能になります。
スコアリング設定の例
- Webサイト訪問(価格ページ): +15点
- 資料ダウンロード: +20点
- セミナー参加: +25点
- 問い合わせフォーム送信: +30点
- メール開封: +5点
- メール内リンククリック: +10点
ワークフロー設定の例
- スコア80点以上(Sランク): 営業に即座にアラート通知 + 個別メール自動配信
- スコア60-79点(Aランク): 部門長向け提案メール自動配信 + 定期フォローのタスク作成
- スコア40-59点(Bランク): ナーチャリングメール配信 + セミナー招待
- スコア39点以下(Cランク): メールマガジン配信のみ
リアルタイム更新が可能になることで、営業アポ率のばらつき解消や質の高いリストの維持が実現します。
アカウント選定データの管理と更新方法|定期的な見直しと優先度変更の自動化
リスト作成は一度行えば完了ではなく、定期的な見直しと更新が必要です。市場変化・顧客状況に応じた優先度変更の自動化により、リストが形骸化せず実際に活用される状態を維持できます。
ABM市場全体がCAGR 12.1%で成長中で、日本市場でもデジタル化・自動化が加速しています(グローバル推定値で日本市場特化せず、予測のため変動可能性が高いことに注意)。最新のABMツールでは、AI需要測定による自動優先度変更やリアルタイム行動通知が実装されており、これらの機能を活用することで管理負荷を軽減できます。
定期的なリスト見直しと更新のタイミング
月次でのリスト見直しを推奨します。以下のタイミングで見直しを行ってください。
月次見直し
- 新規アカウント追加(新たに選定基準に合致したアカウント)
- 除外アカウント削除(受注済み、断られた、対象外となった等)
- スコアの再計算(最新の行動履歴を反映)
- 優先度ランクの見直し(S/A/B/Cランクの変更)
四半期見直し
- 選定基準の見直し(上位顧客の傾向変化に対応)
- LTV期待額の再計算(最新の取引実績を反映)
- 投資意欲レベルの更新(予算確保状況、組織変更等)
顧客状況変化の検知タイミング
- 組織変更(決裁権者の異動、部門統廃合等)
- 予算確保状況の変化(新年度予算確定、追加予算承認等)
- 競合製品の導入(導入タイミングを見計らってアプローチ)
これらのタイミングでリストを更新することで、常に最新の状態を維持できます。
カスタムツール開発による選定基準の定量化と自動化
選定基準の定量化(スコアリングモデル、閾値設定)をカスタムツールで自動化することで、リスト管理の負荷を大幅に軽減できます。カスタムツール開発には相応の投資が必要ですが、既存ツールでは対応できない自社独自の選定基準を実装できる点がメリットです。
カスタムツールの機能例
- 外部DB(SPEEDA/Fourin等)との自動連携
- 月次自動更新(最新の企業データを反映)
- AI需要予測(投資意欲の変化を自動検知)
- 優先度自動変更(スコア変動に応じてランクを自動調整)
- 営業アラート自動通知(Sランクアカウントの行動をリアルタイム通知)
既存ツールとカスタムツールの使い分けとしては、標準的なスコアリング・ワークフロー設定は既存ツールで対応し、自社独自の選定基準や複雑なロジックはカスタムツールで補完する形が一般的です。統合方法としては、API連携やデータ同期のバッチ処理で、既存ツールとカスタムツールのデータを一元管理します。
まとめ|ABMアカウント選定成功のポイント
本記事では、ABMアカウント選定の成功は、選定基準を定めリストを作成するだけでなく、MA/SFA実装設定(スコアリング・ワークフロー)とデータ管理ツール開発まで完了させることで実現することを解説しました。
要点整理
- 既存顧客の上位2割を分析し、パレートの法則を活用して高LTVアカウントの共通パターンを特定する
- 企業規模、業種、LTV、投資意欲の4軸でアカウントを評価し、優先順位を付ける
- MA/SFAへのアカウントリスト取り込み、スコアリング・ワークフロー・アラート設定で自動アプローチを構築する
- 月次自動更新と外部DB連携で最新性を保ち、リストが形骸化しない仕組みを作る
- カスタムツール開発で選定基準の定量化と自動化を実現する
次のアクション
本記事で提供したABMアカウント選定チェックリストとアカウント選定基準比較表を活用し、自社のMA/SFA実装設定を完了させてください。リスト作成だけで満足せず、実装・運用まで完了させることで、ABMの成果を最大化できます。
