Salesforceを導入しているが、マーケティングオートメーション機能も使うべきか迷っている...
B2B企業のマーケティング担当者の多くが、Salesforceを営業管理(CRM)として導入しているものの、マーケティングオートメーション(MA)機能については「どのような機能があるのか」「CRM連携のメリットは何か」「他のMAツールと比べてどうなのか」といった疑問を抱えています。
SalesforceはAccount Engagement(旧Pardot)とMarketing Cloudという2つのMA製品を提供しており、それぞれBtoB・BtoCに特化した機能を備えています。Salesforce CRMとシームレスに統合されている点が大きな強みですが、料金や機能の複雑さから導入判断に迷うケースも少なくありません。
この記事では、SalesforceのMA機能の特徴、Account EngagementとMarketing Cloudの違い、料金プラン、CRM連携メリット、導入判断のポイントをご紹介します。
この記事のポイント:
- SalesforceのMAは2種類:BtoB向けAccount Engagement(旧Pardot)、BtoC向けMarketing Cloud
- Salesforce CRMとシームレスに統合され、マーケ~営業~CSまでデータ連携がスムーズ
- AI機能「Einstein」で配信タイミング最適化、2025年は自律型AI「Agentforce」導入
- Account Engagement Plusは年間¥3,960,000、Marketing Cloudは個別見積もり
- 導入に向いている企業:Salesforce CRM既存導入、大企業、複雑なマーケ施策を実施している企業
1. SalesforceエコシステムにおけるMAの重要性
(1) マーケティング~営業~サポートのデータ統合
SalesforceのMA製品の最大の強みは、Salesforce CRMとシームレスに統合されている点です。マーケティング~営業~カスタマーサポートまでのデータが一元管理され、部門間の情報共有が円滑になります。
データ統合のメリット:
- リード情報の自動連携: MAで獲得したリードが自動的にCRMに登録され、営業担当に割り当てられる
- 商談進捗の可視化: 営業がCRMに入力した商談情報をマーケティングが把握し、フォローアップ施策を実施
- カスタマーサポート連携: 既存顧客のサポート履歴をマーケティング施策に活用(アップセル・クロスセル)
- Unified Customer Profile: Data Cloud統合により、マーケ・営業・CS・コマースデータを即座にアクション化
これにより、部門間のサイロ化を解消し、一貫した顧客体験を提供できます。
(2) SalesforceのMA製品の市場ポジション
SalesforceはCRM市場でトップシェアを持ち、MA市場でも主要プレイヤーの一つです。特にBtoB企業の中堅〜大企業で導入実績が多く、既存のSalesforce CRMとの連携を重視する企業に選ばれています。
競合するMAツールとしては、HubSpot(中小〜中堅企業に人気)、Marketo(BtoB大企業向け)、SATORI(日本国内企業に強い)などがあります。
2. SalesforceのMA製品:Account EngagementとMarketing Cloud
(1) Account Engagement(旧Pardot)とは(BtoB向け)
Account Engagementは、Salesforce提供のBtoB向けMAツールです。リードナーチャリング(見込み客の育成)とSalesforce CRM連携が強みで、中長期的な購買プロセスを持つBtoB企業に適しています。
主な機能:
- リードスコアリング・グレーディング: 見込み客の行動(Webサイト訪問、メール開封等)を数値化し、受注確度を評価
- メール配信・ナーチャリング: セグメント別のメール配信、ドリップキャンペーン(段階的な情報提供)
- ランディングページ・フォーム作成: 外部ツール不要でリード獲得施策を実施
- Salesforce CRM連携: リード情報の自動同期、営業への自動割り当て
(2) Marketing Cloud Engagementとは(BtoC向け)
Marketing Cloud Engagementは、Salesforce提供のBtoC向けMAツールです。マルチチャネル(メール・SNS・Web・LINE等)で統一されたメッセージ配信が可能で、大量の顧客に対してパーソナライズされた体験を提供します。
主な機能:
- マルチチャネル統合: メール、SMS、SNS(Facebook、Twitter/X)、Web、モバイルアプリ、LINEなど
- Journey Builder: 顧客の購買プロセスに応じた最適なコミュニケーションを自動化
- パーソナライゼーション: 個々の顧客に合わせたコンテンツ・メッセージを配信
- リアルタイムセグメント生成: 顧客行動に基づいてリアルタイムにセグメントを生成し、即座に最適化
(3) Pardot→Account Engagementへの名称変更(2022年4月)
2022年4月に、PardotからAccount Engagementに名称が変更されました。これは製品名の統一を目的としたもので、機能は同一です。ユーザー側の対応は不要で、Pardotと呼んでも通じますが、公式には「Marketing Cloud Account Engagement」が正式名称です。
(4) BtoB vs BtoCの選択基準
どちらを選ぶべきかは、ビジネスモデルにより異なります。
| 項目 | Account Engagement | Marketing Cloud |
|---|---|---|
| ターゲット | BtoB企業 | BtoC企業 |
| 顧客数 | 数百〜数万件 | 数万〜数百万件 |
| 購買プロセス | 中長期(数ヶ月〜1年) | 短期(数日〜数週間) |
| 主要機能 | リードスコアリング、ナーチャリング | マルチチャネル統合、パーソナライゼーション |
| 重点KPI | リード獲得数、商談化率 | メール開封率、購買率、LTV |
BtoB企業でも大量のリード獲得を行う場合や、BtoC的なアプローチが必要な場合はMarketing Cloudを選択するケースもあります。
3. Salesforce MAの主要機能と特徴
(1) リードスコアリング・グレーディング(受注確度の数値化)
Account Engagementの重要な機能の一つがリードスコアリング・グレーディングです。
リードスコアリング:
- 見込み客の行動(Webサイト訪問、資料ダウンロード、メール開封等)を数値化
- 点数が高いリードほど受注確度が高いと判断
- 営業チームは高スコアのリードを優先的に対応
リードグレーディング:
- 見込み客の属性(企業規模、業種、役職等)を評価
- ターゲット適合度を判定(A・B・C等のグレード付け)
- スコアリングと組み合わせて、「高スコア×高グレード」のリードを最優先
これにより、営業効率が大幅に向上し、受注率の改善が期待できます。
(2) メール配信・ランディングページ・フォーム作成
基本的なMA機能として、メール配信・ランディングページ・フォーム作成が備わっています。
メール配信:
- セグメント別配信(業種・企業規模・行動履歴等で分類)
- ドリップキャンペーン(段階的に情報を提供し、育成)
- A/Bテスト(件名・コンテンツを比較し、最適化)
ランディングページ・フォーム:
- ドラッグ&ドロップで簡単作成
- フォーム入力情報は自動的にCRMに連携
- コンバージョン率を測定し、改善
外部ツールを使用せず、Salesforce内で完結できる点が利点です。
(3) AI機能「Einstein」(配信タイミング最適化・予測分析)
SalesforceのAI機能「Einstein」は、配信タイミングの最適化や予測分析を自動実行します。
Einsteinの主な機能:
- Send Time Optimization: 個々の顧客が最もメールを開封しやすい時間帯を予測し、自動配信
- エンゲージメント予測: リードがエンゲージする可能性を予測し、優先順位付け
- コンテンツ推奨: 顧客の行動履歴に基づいて最適なコンテンツを推奨
- 売上予測: 商談データから売上予測を自動生成
これにより、メール開封率・クリック率が向上し、マーケティングROIが改善されます。
(4) Agentforce(2025年新機能、自律型AIエージェント)
2025年に導入された「Agentforce」は、自律型AIエージェントで、戦略設定のみでマーケティング施策を自動実行する機能です。
Agentforceの特徴:
- エージェント型マーケティング: 戦略を設定すると、AIが24時間365日自律的に施策を実行
- リアルタイム最適化: 顧客の行動に応じてリアルタイムにキャンペーンを調整
- 個別化対応: 個々の顧客に最適化されたメッセージ・タイミングで自動配信
- Summer '25リリース: AIレポート・キャンペーン自動化・コンテンツツール・同意管理が強化
Agentforceは、マーケティング担当者の業務負荷を大幅に軽減し、より戦略的な業務にリソースを集中できるようにします。
(5) Data Cloud統合(Unified Customer Profile活用)
SalesforceのData Cloudと統合することで、マーケ・営業・CS・コマースデータを一元管理し、Unified Customer Profile(統合顧客プロファイル)を活用できます。
Data Cloud統合のメリット:
- 全データの即座なアクション化: CRM、MA、カスタマーサポート、ECサイトのデータをリアルタイムに統合
- 360度の顧客理解: 顧客の購買履歴、サポート履歴、Webサイト行動を一元把握
- クロスチャネル施策: オンライン・オフラインの行動を統合し、一貫した顧客体験を提供
これにより、顧客一人ひとりに最適化された体験を提供し、LTV(顧客生涯価値)の最大化が可能になります。
4. 料金プランと他のMAツールとの比較
(1) Account Engagement料金(Plusプランは年間¥3,960,000)
Account Engagementの料金プランは以下の通りです(2024年時点)。
Account Engagementの料金:
- Plusプラン: 年間¥3,960,000(月額約¥330,000)
- 対象: 中堅〜大企業、Salesforce CRM既存導入企業
- 主な機能: リードスコアリング、メール配信、ランディングページ、Salesforce連携
※料金は企業規模・契約内容により異なる場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。
(2) Marketing Cloud料金(個別見積もり)
Marketing Cloudの料金は公開されておらず、個別見積もりとなります。企業規模・利用機能により価格が大きく変動するため、事前に見積もりを依頼する必要があります。
料金変動の要因:
- 送信メール数(月間〇〇万通等)
- 利用チャネル数(メール・SMS・SNS等)
- ユーザー数
- カスタマイズ要件
一般的には、Account Engagementよりも高額になるケースが多いと言われています。
(3) 2023年値上げ実施と今後の料金改定リスク
2023年にSalesforceは値上げを実施し、最大月額60,000円/ユーザーとなりました。今後も料金改定の可能性があるため、導入時には長期的なコスト見通しを考慮する必要があります。
料金改定リスク:
- Salesforceは定期的に料金を改定
- 契約更新時に料金が上がる可能性
- 機能追加に伴う追加料金の可能性
事前に複数年契約での料金固定や、価格保証条件を確認することを推奨します。
(4) 他ツール比較(Salesforce vs HubSpot vs Marketo)
Salesforceと主要なMAツールの比較を整理します。
| 項目 | Salesforce | HubSpot | Marketo |
|---|---|---|---|
| 主なターゲット | 中堅〜大企業 | 中小〜中堅企業 | 大企業 |
| 料金(年間) | ¥3,960,000〜 | 無料〜¥1,200,000程度 | 個別見積もり |
| CRM連携 | Salesforce CRMと統合 | HubSpot CRM統合 | 各種CRM連携可能 |
| 主な強み | Salesforce連携、AI機能 | 使いやすさ、低価格 | 高度な分析、BtoB特化 |
| 日本語サポート | あり | あり | あり |
どれが最適かは、企業規模・予算・既存システム(CRM)により異なります。複数のツールを比較し、自社に合うものを選定することが重要です。
(5) 導入コストと運用コストの総合評価
MA導入では、初期費用だけでなく運用コストも考慮する必要があります。
導入コスト:
- ライセンス費用(年間¥3,960,000〜)
- 初期設定費用(外部パートナーに委託する場合)
- データ移行費用(既存MAからの移行の場合)
- トレーニング費用(社内担当者の教育)
運用コスト:
- 年間ライセンス費用
- 外部パートナーの運用サポート費用(必要に応じて)
- コンテンツ制作費用(メール、ランディングページ等)
- 人件費(社内運用担当者)
総合的なコストを見積もり、ROI(投資対効果)を試算してから導入を判断することが重要です。
5. Salesforce CRM連携メリットと導入判断のポイント
(1) シームレスなデータ連携(マーケ~営業~CS)
Salesforce CRMとMAがシームレスに連携することで、部門間のデータ共有が円滑になります。
データ連携のメリット:
- リード情報の自動同期: MAで獲得したリードが即座にCRMに登録
- 商談進捗の可視化: 営業が入力した商談情報をマーケティングが把握
- 営業への自動通知: 高スコアのリードが発生したら営業に自動通知
- カスタマーサポート連携: サポート履歴を活用したアップセル施策
(2) 部門間連携強化と情報共有の円滑化
MA×CRM統合により、部門間のサイロ化を解消し、組織全体で一貫した顧客体験を提供できます。
部門間連携のメリット:
- マーケティング: 営業の商談進捗を把握し、フォローアップ施策を実施
- 営業: リードスコアを参照し、優先順位をつけて対応
- カスタマーサポート: 顧客の購買履歴・マーケティング履歴を把握し、最適なサポートを提供
これにより、顧客満足度の向上と成約率の改善が期待できます。
(3) 導入事例と成果(業界別・企業規模別)
Salesforce公式の導入事例では、以下のような成果が報告されています。
導入事例の成果:
- リード獲得数の増加(数倍〜数十倍)
- 商談化率の向上(リードスコアリングにより優先対応)
- 営業効率の改善(商談進捗の可視化)
- 顧客満足度の向上(一貫した顧客体験の提供)
ただし、これらの成果は企業規模・業種・運用体制により異なります。自社の状況に応じて、どの程度の効果が期待できるかを慎重に評価する必要があります。
※執筆時点の情報です。最新の導入事例は公式サイトでご確認ください。
(4) 導入に向いている企業(Salesforce CRM既存導入、大企業、複雑なマーケ施策)
Salesforce MAの導入に向いている企業の特徴は以下の通りです。
導入に向いている企業:
- Salesforce CRM既存導入: CRMとの統合メリットを最大限活用できる
- 中堅〜大企業: 予算面でのハードルをクリアできる
- 複雑なマーケティング施策: リードナーチャリング、マルチチャネル施策を実施している
- 部門間連携を重視: マーケ・営業・CSのデータ統合を重視
- 専門知識のある担当者: MAの設定・運用に専門知識が必要
逆に、小規模企業や単純なメール配信のみを行う場合は、HubSpot等の低価格ツールの方が適しているケースもあります。
(5) 導入時の注意点(専門知識必要、外部パートナーサポート推奨)
Salesforce MAは機能が豊富で複雑なため、導入・運用には専門知識が必要です。
導入時の注意点:
- 専門知識が必要: 設定・運用には認定資格保有者が推奨される
- 外部パートナーサポート: 初期設定や運用支援を外部パートナーに委託するケースが多い
- トレーニングコスト: 社内担当者の教育に時間とコストがかかる
- 機能の過不足: 多機能すぎて使いこなせない、または必要な機能が不足している場合もある
導入前に、外部パートナーに相談し、自社の要件に合うかを慎重に評価することが重要です。
6. まとめ:BtoB/BtoCで選ぶべき製品
Salesforceは、BtoB向けAccount Engagement(旧Pardot)とBtoC向けMarketing Cloudという2つのMA製品を提供しています。どちらもSalesforce CRMとシームレスに統合され、マーケ~営業~CSまでのデータ連携がスムーズに行える点が大きな強みです。
Account EngagementはリードスコアリングとSalesforce CRM連携が強みで、中長期的な購買プロセスを持つBtoB企業に適しています。一方、Marketing Cloudはマルチチャネル統合とパーソナライゼーションが強みで、大量の顧客に対してBtoC的なアプローチを行う企業に適しています。
料金はAccount Engagement Plusが年間¥3,960,000、Marketing Cloudは個別見積もりとなり、中小企業には予算面でのハードルが高い可能性があります。既にSalesforce CRMを導入している中堅〜大企業で、複雑なマーケティング施策を実施している場合に最も効果を発揮します。
次のアクション:
- 自社のビジネスモデル(BtoB/BtoC)を確認する
- Salesforce CRMの導入状況を確認する(既存導入の有無)
- 必要なMA機能をリスト化する(リードスコアリング、マルチチャネル等)
- 予算を試算する(初期費用・運用費用を含む総合コスト)
- 複数のMAツール(Salesforce、HubSpot、Marketo等)を比較検討する
- Salesforce公式または外部パートナーに相談し、見積もりを依頼する
自社の規模・予算・既存システムに応じて、最適なMA製品を選択しましょう。Salesforce MAは強力なツールですが、導入には専門知識とコストが必要なため、慎重に評価することが重要です。
