Salesforceで失注分析を行う方法と改善アクションの立て方

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/26

商談が失注したのに、なぜ負けたのか分からない...

「失注した案件を振り返っても、何が原因だったのか分からない」「Salesforceにデータは入っているけれど、どう分析すればいいのか分からない」——こうした課題を抱える営業マネージャー・経営者は少なくありません。

失注分析は、営業プロセスを改善し、受注率を向上させるための重要な取り組みです。Salesforceを活用すれば、失注データを体系的に収集・分析し、改善アクションにつなげることができます。

この記事では、Salesforceを活用した失注分析の方法について、レポート作成から改善プロセスまで解説します。

この記事のポイント:

  • 失注分析は「機能要因」(製品・価格)と「営業要因」(プロセス・コミュニケーション)に分類して行う
  • Salesforceの商談レポート機能で成約・不成約を可視化し、失注パターンを特定
  • 失注理由を聞く際は「2段階質問法」で本音を引き出す
  • 分析結果を個人に蓄積せず、組織全体でナレッジ共有することが重要
  • PDCAサイクルを回し、継続的に営業力を向上させる

1. 失注分析とは|営業改善における重要性と基本概念

まず、失注分析の基本を押さえましょう。

(1) 失注分析の定義と目的(営業プロセス改善・受注率向上)

失注分析とは、営業活動において成約・契約に至らなかった原因を分析し、次回以降の営業・提案活動に活かす取り組みです。

失注分析の目的:

  • 失注パターンを特定し、再発を防止する
  • 営業プロセスの問題点を発見し、改善する
  • 受注率を向上させる
  • 組織全体の営業力を底上げする

失注は避けられないものですが、その原因を分析し改善することで、同じ失敗を繰り返さない営業組織を作ることができます。

(2) 機能要因(製品・価格・サポート)と営業要因(プロセス・コミュニケーション)の分類

失注理由は、大きく2つに分類できます。

機能要因(製品・サービス起因):

  • 製品の機能が顧客ニーズに合わない
  • 価格が予算を超えている
  • サポート体制が不十分
  • 導入・実装の手間が大きい
  • 競合製品の方が優れている

営業要因(営業プロセス起因):

  • ヒアリングが不十分で課題を把握できていない
  • 提案内容が顧客の課題に合っていない
  • コミュニケーション・フォローが不足している
  • 決裁者へのアプローチができていない
  • タイミングが合わなかった

この2分類で整理することで、対策の方向性が明確になります。

(3) 失注分析がもたらす3つの効果(パターン発見・対策立案・組織学習)

失注分析を行うことで、以下の効果が期待できます。

1. パターン発見: 「特定の競合に負けることが多い」「提案フェーズでの失注が多い」など、失注パターンを発見できます。

2. 対策立案: パターンが分かれば、「競合対策のトークを強化する」「提案力研修を行う」など、具体的な対策を立てられます。

3. 組織学習: 失注情報を組織で共有することで、他のメンバーが同じ失敗を避けられるようになります。

2. Salesforceを活用した失注分析方法|レポート・ダッシュボード設定

Salesforceで失注分析を行う具体的な方法を解説します。

(1) 商談オブジェクトからの成約・不成約レポート作成

Salesforceの標準機能で失注分析レポートを作成できます。

レポート作成手順:

  1. レポートタブから「新規レポート」を選択
  2. レポートタイプ「商談」を選択
  3. 期間フィルタを設定(今四半期、今年度など)
  4. 「ステージ」または「成立」フィールドでフィルタ
  5. グループ化設定(成約/不成約、月別、担当者別など)
  6. 集計(件数、金額など)を設定
  7. レポートを保存

分析の観点:

  • 全商談のうち、失注した割合はどれくらいか
  • どの月・四半期に失注が多いか
  • どの担当者の失注率が高いか

(2) 失注理由フィールドの設定とカスタマイズ

失注理由を体系的に分析するには、専用のフィールドを設定します。

失注理由フィールドの設定手順:

  1. 設定から「オブジェクトマネージャ」→「商談」を選択
  2. 「項目とリレーション」から「新規」
  3. データ型「選択リスト」を選択
  4. 項目ラベル「失注理由」を設定
  5. 選択肢を入力(価格、競合、機能、タイミング等)
  6. ページレイアウトに追加

推奨する失注理由の分類(例):

分類 選択肢例
機能要因 価格が高い、機能が不足、競合の方が良い
営業要因 提案力不足、フォロー不足、決裁者に会えず
顧客都合 予算なし、タイミング合わず、プロジェクト中止

自社の商材・業界に合わせて10〜15項目程度で設定し、定期的に見直すことが推奨されます。

(3) ダッシュボードによる失注パターンの可視化

ダッシュボードで失注パターンを可視化しましょう。

推奨するダッシュボードコンポーネント:

1. 失注率推移グラフ: 月別・四半期別の失注率の推移を折れ線グラフで表示。トレンドを把握します。

2. 失注理由別の内訳: 失注理由ごとの件数・金額を円グラフまたは棒グラフで表示。主要な失注要因を特定します。

3. 担当者別失注率: 営業担当者別の失注率を比較。個別のフォローアップや研修に活用します。

4. 競合別失注件数: どの競合に負けているかを可視化。競合対策の優先順位づけに活用します。

3. 主要な失注理由と分析軸|機能要因・営業要因の分類

失注分析を多角的に行うための分析軸を解説します。

(1) 5つの分析軸(営業担当者別・プロセス別・商材別・業種別・競合別)

複数の軸で分析することで、失注要因を多角的に把握できます。

分析軸 分析内容 活用方法
営業担当者別 誰の失注率が高いか 個別研修・コーチング
プロセス別 どの段階で失注が多いか プロセス改善
商材別 どの商材が失注しやすいか 商品開発・価格見直し
業種別 どの業種に弱いか ターゲティング見直し
競合別 どの競合に負けているか 競合対策強化

(2) よくある失注理由9パターンと対応策

よくある失注理由と、その対応策を整理します。

機能要因:

失注理由 対応策
価格が高い 価格の根拠説明、ROI訴求、分割払い提案
機能が不足 代替案提示、今後の開発ロードマップ共有
競合の方が良い 差別化ポイントの明確化、競合対策トーク
サポート不安 導入支援・サポート体制の詳細説明

営業要因:

失注理由 対応策
提案力不足 提案力研修、成功事例の共有
ヒアリング不足 ヒアリングシート改善、ロールプレイ
フォロー不足 フォロータイミングのルール化
決裁者に会えず 早期の決裁者特定、上層へのアプローチ
タイミング合わず 長期フォロー体制、ナーチャリング強化

(3) 多角的分析による失注要因の特定方法

単一の軸だけでなく、複数の軸を組み合わせて分析します。

分析例:

  • 「A担当者は、B業種に対して、競合Cに負けることが多い」
  • 「提案フェーズでの失注が多く、理由は『価格が高い』」

このように複数の軸を組み合わせることで、より具体的な改善アクションを立てられます。

4. 失注理由のヒアリング手法|本音を引き出す2段階質問法

Salesforceのデータだけでは分からない「本当の失注理由」をヒアリングする方法を解説します。

(1) 建前の理由(価格・タイミング)を超えた本音ヒアリング

顧客に失注理由を尋ねると、建前の回答が返ってくることが多いです。

よくある建前の回答:

  • 「価格が合いませんでした」
  • 「タイミングが悪かったです」
  • 「予算の都合で」

これらの回答だけでは、本当の問題点が分かりません。「価格」と言われても、それが本当の理由かどうかは分からないのです。

(2) 2段階質問法の実践(理由確認→改善確認)

本音を引き出すために、2段階の質問を行います。

1段階目: 失注理由の確認 「今回ご採用いただけなかった理由を教えていただけますか?」

2段階目: 改善確認 「もし〇〇(1段階目で聞いた理由)が改善されていたら、弊社に決まっていましたか?」

回答パターンと解釈:

  • 「はい、決まっていた」→ 聞いた理由が本当の失注理由
  • 「いいえ、それでも難しかった」→ 別の理由がある。さらに掘り下げる

この2段階質問法により、建前ではなく本音の失注理由を把握できます。

(3) ヒアリング結果の記録とSalesforceへの反映

ヒアリング結果は必ずSalesforceに記録します。

記録すべき内容:

  • 顧客から聞いた失注理由(1段階目の回答)
  • 改善確認の回答(2段階目の回答)
  • 本当の失注理由(分析結果)
  • 顧客からのフィードバック・要望

記録方法:

  • 失注理由フィールドに選択肢を選ぶ
  • 詳細を「説明」フィールドやメモに記録
  • 活動履歴にヒアリング内容を記録

5. 分析結果を活用した改善プロセス|PDCAサイクルの実践

分析結果を改善アクションにつなげるプロセスを解説します。

(1) 失注パターンの特定と優先順位づけ

まず、分析結果から優先的に対策すべき失注パターンを特定します。

優先順位づけの基準:

  • 件数・金額インパクト: 失注件数・金額が大きいパターンを優先
  • 改善可能性: 営業要因は改善しやすい、機能要因は時間がかかる
  • 再発頻度: 繰り返し発生しているパターンを優先

例: 「提案フェーズでの失注が多く、理由は『提案力不足』」 → 営業要因で改善可能性が高い → 優先的に対策

(2) 改善アクションプランの立案(研修・プロセス見直し・ツール導入)

失注パターンに応じた改善アクションを立案します。

改善アクションの例:

失注パターン 改善アクション
提案力不足 提案力研修、成功事例の共有、ロールプレイ
ヒアリング不足 ヒアリングシート改善、チェックリスト作成
競合に負ける 競合対策トークの整備、差別化ポイント明確化
フォロー不足 フォロータイミングのルール化、自動リマインド設定
価格が高い ROI訴求資料作成、分割払い提案の検討

(3) ナレッジ共有と組織全体での営業力向上

失注分析の効果を最大化するには、組織全体での共有が重要です。

ナレッジ共有のポイント:

  • 失注情報を個人に蓄積させない
  • 定期的な振り返りミーティングで共有
  • 成功事例・失敗事例を全員で学ぶ
  • ナレッジ共有を評価対象にする

注意点: 失注分析を個人の責任追及や評価に使うと、正確な情報が報告されなくなります。「改善目的である」ことを組織全体で共有し、率直に失注理由を報告できる雰囲気を作ることが重要です。

6. まとめ|継続的な営業力向上のための重要ポイント

Salesforceを活用した失注分析の方法と改善プロセスを解説しました。

失注分析の重要ポイント:

  • 失注理由を「機能要因」と「営業要因」に分類して分析
  • 複数の軸(担当者別・プロセス別・商材別・業種別・競合別)で多角的に分析
  • 2段階質問法で本当の失注理由を把握
  • 分析結果を改善アクションにつなげ、PDCAサイクルを回す
  • 組織全体でナレッジ共有し、営業力を底上げ

次のアクション:

  1. Salesforceで失注理由フィールドを設定・整備する
  2. 失注分析レポート・ダッシュボードを作成する
  3. 失注した顧客に2段階質問法でヒアリングする
  4. 分析結果を基に優先的な改善アクションを立案する
  5. 定期的な振り返りミーティングでナレッジ共有する

失注率の適正水準は業種・商材により異なります。自社の過去データと比較し、継続的な改善を重視してください。

よくある質問:

Q: Salesforceで失注分析レポートを作るには? A: 商談オブジェクトでレポートタイプ「商談」を選択し、成約・不成約でグループ化します。失注理由フィールドを追加し、月別・担当者別などの軸で集計・可視化します。

Q: 失注理由の分類はどう設定すべき? A: 機能要因(価格・機能・競合)と営業要因(提案力・ヒアリング・タイミング)に大別します。自社の商材・業界に合わせて10〜15項目程度で設定し、定期的に見直すことが推奨されます。

Q: 顧客に失注理由を聞きにくい場合は? A: 「今後のサービス改善のため」という目的を明確にし、アンケート形式やメールでの回答も検討してください。2段階質問法で「改善されたら決まっていたか」まで確認することで、本音を引き出せます。

Q: 失注率の適正水準は? A: 業界・商材により異なりますが、BtoB営業で失注率60〜80%程度が一般的と言われています。自社の過去データと比較し、継続的な改善を重視してください。競合分析で業界平均との比較も有効です。

よくある質問

Q1Salesforceで失注分析レポートを作るには?

A1商談オブジェクトでレポートタイプ「商談」を選択し、成約・不成約でグループ化します。失注理由フィールドを追加し、月別・担当者別などの軸で集計・可視化します。

Q2失注理由の分類はどう設定すべき?

A2機能要因(価格・機能・競合)と営業要因(提案力・ヒアリング・タイミング)に大別します。自社の商材・業界に合わせて10〜15項目程度で設定し、定期的に見直すことが推奨されます。

Q3顧客に失注理由を聞きにくい場合は?

A3「今後のサービス改善のため」という目的を明確にし、アンケート形式やメールでの回答も検討してください。2段階質問法で「改善されたら決まっていたか」まで確認することで、本音を引き出せます。

Q4失注率の適正水準は?

A4業界・商材により異なりますが、BtoB営業で失注率60〜80%程度が一般的と言われています。自社の過去データと比較し、継続的な改善を重視してください。競合分析で業界平均との比較も有効です。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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