営業のKPI管理、Salesforceを導入したけれど何を設定すればいいのか分からない...
「Salesforceを導入したけれど、どのKPIを設定すればいいのか分からない」「ダッシュボードを作っても、結局活用できていない」——こうした課題を抱える営業マネージャーは少なくありません。
KPI(重要業績評価指標)は、営業目標の達成度を測定し、改善アクションにつなげるための指標です。しかし、適切なKPIを設定しなければ、営業活動の可視化も改善も進みません。
この記事では、SalesforceでのKPI管理について、設定すべき指標の一覧から可視化方法、PDCAサイクルの回し方まで解説します。
この記事のポイント:
- KPIは「活動指標」「プロセス指標」「成果指標」「長期的価値指標」の4分類で設計する
- KGI(最終目標)からKPIを導き出すKPIツリーの作成が効果的
- Salesforceのレポート・ダッシュボード機能でKPIをリアルタイム可視化
- KPIは設定するだけでは効果なし、定期的なモニタリングとアクションが必須
- アポイント数よりパイプライン創出件数・金額を重視するケースも
1. SalesforceでKPI管理を始める前に知っておくべきこと
SalesforceでKPI管理を始める前に、基本的な考え方と注意点を確認しましょう。
(1) なぜSalesforceでKPI管理が重要なのか
SalesforceでKPI管理を行う最大のメリットは、リアルタイムでの可視化です。
リアルタイム可視化のメリット:
- 営業活動のデータが自動で蓄積される
- ダッシュボードで進捗を即座に確認できる
- 問題の早期発見と対策が可能になる
- チーム全体で同じ指標を共有できる
ExcelでのKPI管理と比較すると、データ入力・集計の手間が削減され、リアルタイム性が向上します。
(2) KPI設定でよくある失敗パターンと対策
KPI設定でよく見られる失敗パターンを把握しておきましょう。
失敗パターン1: KPIが多すぎる KPIを20個、30個と設定してしまうと、どれが重要か分からなくなります。重要な指標に絞り込むことが大切です。
失敗パターン2: 活動量だけを追う 「訪問件数」「電話件数」など活動量だけを追うと、質が伴わない活動になりがちです。成果に直結する指標とのバランスが必要です。
失敗パターン3: ダッシュボードを作っただけで満足 ダッシュボードを作成することが目的ではありません。「状況を判断し、具体的なアクションを取る」ことが本質的な目的です。
2. 営業KPIの基本とKGIとの違い
KPIとKGIの違いを理解し、適切な指標設計の基礎を押さえましょう。
(1) KPI・KGIの定義と関係性
KGI(Key Goal Indicator): ビジネスの最終的な目標を示す指標です。売上高、利益率、市場シェアなどが該当します。
KPI(Key Performance Indicator): KGI達成に向けた中間目標を評価する指標です。商談数、受注率、顧客獲得数などが該当します。
関係性: KGIを達成するために、どの中間指標(KPI)を改善すべきかを設計します。例えば、売上高(KGI)を達成するために、商談数や受注率(KPI)を設定します。
(2) SMARTの法則を使ったKPI設定
KPI設定にはSMARTの法則が有効です。
| 要素 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| Specific | 具体的 | 「売上を上げる」→「新規顧客売上を増やす」 |
| Measurable | 測定可能 | 「頑張る」→「月10件受注」 |
| Achievable | 達成可能 | 現状の1.2倍程度が目安 |
| Relevant | 関連性 | KGIとの関連が明確 |
| Time-bound | 期限あり | 「月末まで」「四半期末まで」 |
この5要素を満たすことで、曖昧ではない、評価可能なKPIになります。
(3) KPIツリーによる目標の構造化
KPIツリーは、KGI(最終目標)からKPIへの関係性をツリー状に図式化したフレームワークです。
KPIツリーの例:
売上高(KGI)
├─ 新規顧客売上
│ ├─ 商談数(KPI)
│ ├─ 受注率(KPI)
│ └─ 平均単価(KPI)
└─ 既存顧客売上
├─ 継続率(KPI)
└─ アップセル率(KPI)
KPIツリーを作成することで、組織目標の達成に向けて何をすべきかが明確になります。
3. Salesforceで管理すべき営業KPI一覧
営業KPIは「活動指標」「プロセス指標」「成果指標」「長期的価値指標」に分類できます。
(1) 活動指標:商談数・アポイント数・アクティビティ数
活動指標は、営業担当者の行動量を測定する指標です。
| 指標 | 内容 | Salesforceでの確認方法 |
|---|---|---|
| 商談数 | 新規作成した商談の件数 | 商談レポート |
| アポイント数 | 顧客訪問・Web会議の件数 | 行動レポート |
| コール数 | 電話発信の件数 | アクティビティレポート |
| メール数 | 送信したメールの件数 | アクティビティレポート |
注意点: セールスフォース社のBDRチームでは、アポイント数をKPIにしないケースもあると言われています。質より量になることを防ぐため、パイプライン創出件数・金額と受注金額に焦点を当てているとのことです。
(2) プロセス指標:受注率・案件進捗・リードタイム
プロセス指標は、営業プロセスの効率を測定する指標です。
| 指標 | 内容 | 算出方法 |
|---|---|---|
| 受注率 | 商談から受注に至った割合 | 受注件数 ÷ 商談件数 |
| 案件進捗率 | 各フェーズへの進捗割合 | 次フェーズ件数 ÷ 前フェーズ件数 |
| リードタイム | 商談開始から受注までの日数 | 受注日 − 商談作成日 |
| SQL数 | 営業有効と判断したリード数 | マーケから引き渡されたリード |
プロセス指標を改善することで、活動量を増やさずに成果を向上させることが可能です。
(3) 成果指標:売上・利益・顧客獲得単価
成果指標は、最終的なビジネス成果を測定する指標です。
| 指標 | 内容 |
|---|---|
| 売上高 | 受注金額の合計 |
| 粗利益 | 売上高 − 原価 |
| 顧客獲得単価(CAC) | 顧客獲得にかかったコスト |
| 平均受注単価 | 受注金額合計 ÷ 受注件数 |
成果指標はKGIに近い指標です。活動指標・プロセス指標と組み合わせて、原因分析に活用します。
(4) 長期的価値指標:経常収益・LTV・解約率
近年、営業リーダーの間では長期的価値を測定する指標が重視されるようになっています。
| 指標 | 内容 |
|---|---|
| 経常収益(MRR/ARR) | 月次/年次の定期収益 |
| 顧客生涯価値(LTV) | 顧客1社から得られる総収益 |
| 顧客維持率 | 継続利用している顧客の割合 |
| 解約率(Churn Rate) | 解約した顧客の割合 |
SaaSビジネスやサブスクリプションモデルでは、これらの指標が特に重要です。
4. SalesforceでのKPI設定・可視化方法
SalesforceでKPIを設定・可視化する具体的な方法を解説します。
(1) レポート機能によるKPI設定手順
Salesforceのレポート機能でKPIを集計する基本手順です。
手順:
- レポートタブから「新規レポート」を作成
- レポートタイプを選択(商談、活動、リードなど)
- 期間フィルタを設定(今月、今四半期など)
- 集計方法を設定(件数、金額、平均など)
- グループ化を設定(担当者別、フェーズ別など)
- レポートを保存
ポイント: レポートは「ゴール→目標→方針→活動」の順で設計します。最終目標(KGI)から逆算して、必要なKPIレポートを作成しましょう。
(2) ダッシュボードでの可視化方法
ダッシュボードは、複数のレポートを1画面にまとめて表示する機能です。
ダッシュボード作成手順:
- ダッシュボードタブから「新規ダッシュボード」を作成
- コンポーネントを追加(グラフ、数値、表など)
- 各コンポーネントにレポートを紐付け
- レイアウトを調整
- 共有設定を行う
よく使うコンポーネント:
- ゲージ: 目標達成度を視覚化
- 折れ線グラフ: 推移を確認
- 棒グラフ: 担当者別・製品別の比較
- 数値: 重要指標のハイライト
(3) 効果的なダッシュボードの3要素
効果的なダッシュボードには、3つの要素をバランス良く盛り込むことが推奨されています。
1. 結果(成果指標): 売上高、受注件数など、最終的な成果を示す指標。「どれだけ達成したか」を確認します。
2. プロセス(進捗指標): 商談進捗率、パイプライン金額など、進捗状況を示す指標。「目標達成に向けて順調か」を確認します。
3. 異常/抜け漏れ: 長期間更新のない商談、フォローアップ未実施のリードなど、異常を検知する指標。「問題が発生していないか」を確認します。
この3要素があることで、状況把握から改善アクションまでをダッシュボードで完結できます。
5. 効果的なKPI運用とPDCAサイクル
KPIは設定するだけでは効果がありません。運用方法を解説します。
(1) KPIモニタリングの頻度と方法
KPIの種類によって、適切なモニタリング頻度が異なります。
| KPI種類 | モニタリング頻度 | 方法 |
|---|---|---|
| 活動指標 | 毎日〜週次 | 日報、週次ミーティング |
| プロセス指標 | 週次〜月次 | 週次レビュー、パイプラインレビュー |
| 成果指標 | 月次〜四半期 | 月次会議、四半期レビュー |
| 長期的価値指標 | 四半期〜年次 | 経営会議 |
ダッシュボードを定期的に確認する習慣をチームに定着させることが重要です。
(2) 達成度分析と改善アクション
KPIを確認するだけでなく、達成度を分析し、改善アクションにつなげます。
分析の観点:
- 目標との差異はどれくらいか
- 前期・前年との比較でどう変化しているか
- 担当者別・製品別の差異はあるか
- ボトルネックはどこにあるか
改善アクションの例:
- 受注率が低い → 提案資料・トークの改善
- リードタイムが長い → フェーズごとのタスク見直し
- 活動量が不足 → 優先順位の見直し、業務効率化
(3) セールスフォース社BDRチームの実践例
セールスフォース社のBDRチームでは、以下のようなKPI設定を実践しているとされています。
KPI設定の特徴:
- アポイント数をKPIにしない
- パイプライン創出件数・金額を重視
- 最終的な受注金額との連動を重視
理由: アポイント数をKPIにすると、質より量になりがちです。パイプラインの質と最終的な受注成果に焦点を当てることで、外勤営業との連携がスムーズになるとのことです。
ただし、これはセールスフォース社の特定のチームでの事例であり、すべての企業に当てはまるわけではありません。自社の営業モデルに合わせて検討が必要です。
6. まとめ:部門別・企業規模別KPI設定指針
SalesforceでのKPI管理について解説しました。
KPI設定のポイント:
- KGI(最終目標)からKPIを導き出す
- SMARTの法則で具体的・測定可能な指標にする
- 活動・プロセス・成果・長期的価値の4分類でバランス良く設計
- 重要な指標に絞り込む(多すぎない)
- 定期的なモニタリングとアクションが本質
部門別の主要KPI(参考):
| 部門 | 主なKPI例 |
|---|---|
| 営業 | 商談数、受注率、売上高 |
| インサイドセールス | SQL数、パイプライン創出金額 |
| カスタマーサクセス | 契約更新率、解約率、NPS |
| マーケティング | MQL数、CAC、広告ROI |
次のアクション:
- 自社のKGI(最終目標)を確認する
- KPIツリーで必要な中間指標を洗い出す
- Salesforceでレポート・ダッシュボードを作成する
- チームでモニタリングの頻度・方法を決める
- 定期的にレビューし、改善サイクルを回す
KPI設定は企業規模・業種・部門により異なります。一律の正解はありませんので、自社の状況に合わせて調整してください。Salesforce製品の機能・料金は更新される可能性があるため、最新情報は公式サイトでご確認ください。
よくある質問:
Q: KPIとKGIの違いは何? A: KGIは最終的な経営目標(売上高、利益率など)、KPIはその達成に向けた中間指標(商談数、受注率など)です。KPIツリーで関係性を明確にすることが重要です。
Q: 営業でどのようなKPIを設定すべき? A: 活動指標(商談数・アクティビティ)、プロセス指標(受注率・案件進捗)、成果指標(売上・利益)をバランス良く設定します。業種や営業スタイルにより調整が必要です。
Q: アポイント数はKPIにすべき? A: 一概には言えません。セールスフォース社BDRチームではアポ数をKPIにせず、パイプライン創出件数・金額と受注金額に焦点を当てているケースがあります。質と成果に直結する指標を優先することも選択肢です。
Q: KPIを設定しただけで効果は出る? A: 設定だけでは効果は出ません。定期的にモニタリングし、達成度を分析、具体的なアクションを取るPDCAサイクルが本質的な目的です。ダッシュボードを作っただけで満足しないよう注意が必要です。
