KPIを設定したいけれど、何を指標にすべきか分からない...
事業部門のマネージャーや経営企画担当者の多くが、「KPIを設定したいけれど、どの指標を選べばいいか分からない」「設定したKPIが適切か判断できない」という悩みを抱えています。 KPIは目標達成のプロセスを可視化し、チーム全体で進捗を共有するために不可欠な指標ですが、正しい設定方法を知らないと「KPI倒れ」に陥るリスクもあります。
この記事では、KPIの基礎知識から、SMART原則に基づく設定手順、BtoB営業・マーケティングなど部門別の具体例、運用のコツまで、実務で使える情報を解説します。
この記事のポイント:
- KPIは目標達成のプロセスを測る指標、KGIは最終ゴールを測る指標
- 設定手順は「KGI設定 → KFS特定 → KPI設定 → KPIツリーで可視化」の順
- SMARTの法則(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限付き)を守ることが重要
- BtoB営業では受注数から逆算し、商談プロセス係数を用いてKPIを設定する
- KPIとOKRは併用可能で、OKRのKR(主要な結果)の達成度を測るためにKPIを活用できる
1. 導入:なぜKPI設定がビジネス成功の鍵なのか
2024年現在、Webマーケティングや営業DXの文脈でKPI管理の重要性がさらに高まっており、リアルタイムでの進捗把握が主流になっています。
KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)は、目標達成のために必要なプロセスが適切に実行されているかを管理・評価する指標です。 ビジネス目標を達成するためには、「何を」「いつまでに」「どれだけ」達成すべきかを明確にし、チーム全体で共有する必要があります。
KPI設定のメリット:
- 目標達成までのプロセスが可視化され、進捗状況をリアルタイムで把握できる
- チーム全体で目標を共有し、役割分担が明確になる
- PDCAサイクルを回すことで、継続的な改善が可能になる
KPIを適切に設定することで、「何をすれば目標達成できるか」が明確になり、ビジネスの成功確率が高まります。
2. 基礎知識:KPI・KGI・KSF・OKRの定義と関係性
(1) KPIとKGIの違い:ゴールとプロセスの関係
KPIとKGIの違いを理解することが、KPI設定の第一歩です。
- KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標): 最終的なゴールを意味する指標(例: 売上1億円、受注数100件)
- KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標): KGI達成のために必要なプロセスを測る指標(例: リード獲得数300件、商談獲得数50件)
KGIが「どこへ向かうか」を示すゴール指標であるのに対し、KPIは「どうやって到達するか」を示すプロセス指標です。
(2) KSF(重要成功要因)の役割
KSF(KFS)は、Key Factor for Success(重要成功要因)の略で、目標達成に必要な重要な要素を指します。
KPIとKSFの関係:
- KSFは「KGI達成に必要な要素」を洗い出したもの
- KPIは「KSFの進捗を測る具体的な指標」
例(BtoB営業の場合):
- KGI: 受注数100件
- KSF: リード獲得、商談創出、提案品質向上
- KPI: リード獲得数300件、商談獲得数50件、提案成功率60%
KGI設定 → KSF特定 → KPI設定の順で設計することで、KGI達成に直結する指標を選定できます。
(3) OKRとKPIの違いと併用方法
OKR(Objectives and Key Results:目標と主要な結果)は、60-70%達成を目指す挑戦的な目標管理手法です。
OKRとKPIの主な違い:
| 項目 | KPI | OKR |
|---|---|---|
| 目的 | 業績評価・プロセス管理 | 挑戦的な目標設定 |
| 達成目標 | 100%達成を目指す | 60-70%達成を目指す |
| 評価頻度 | 週次・月次 | 四半期ごと |
| 適用範囲 | 部門・個人 | 全社・チーム |
Asanaの資料によると、KPIとOKRは併用可能で、OKRのKR(主要な結果)の達成度を測るためにKPIを設定する方法が有効とされています。
併用例:
- OKR: 「新規顧客獲得を強化する」(KR: 新規リード数を前四半期比50%増加)
- KPI: 月間リード獲得数150件(前四半期平均100件 × 1.5倍)
3. KPI設定の具体的手順:SMART原則とKPIツリーの作成
(1) ステップ1:KGI(最終目標)の明確化
KPI設定の第一ステップは、KGI(最終目標)を明確にすることです。
KGI設定のポイント:
- 数値で測定可能な目標にする(例: 売上1億円、受注数100件)
- 期限を設定する(例: 2025年3月末までに)
- 全社戦略と整合性を取る
(2) ステップ2:KFS(重要成功要因)の特定
KGI達成に必要な要素(KFS)を洗い出します。
KFS特定の方法:
- KGI達成のために「何が必要か」をブレインストーミング
- 過去のデータや業界ベンチマークを参考にする
- 3-5個程度の重要要因に絞り込む
例(BtoB営業のKGI: 受注数100件):
- リード獲得(新規顧客の母数を増やす)
- 商談創出(リードから商談への転換率を高める)
- 提案品質向上(商談から受注への転換率を高める)
(3) ステップ3:SMARTの法則でKPIを設定
SMARTの法則は、KPI設定の5要素を意味します:
- Specific(具体的): 誰が見ても分かる明確な指標
- Measurable(測定可能): 数値で測定できる
- Achievable(達成可能): 現実的に達成可能な数値
- Relevant(関連性): KGIやKSFと関連している
- Time-bound(期限付き): 期限が明確
SMARTに沿ったKPI設定例:
- ❌ 「リード獲得を増やす」(曖昧)
- ✅ 「2025年3月末までに月間リード獲得数300件を達成する」(SMART準拠)
SATORIの資料によると、SMARTの法則を守らないと、曖昧な目標になり測定・評価が困難になるため、KPI設定時には必ず意識することが推奨されています。
(4) ステップ4:KPIツリーで可視化・共有
KPIツリーは、KGIを起点とし、KGI達成に必要なKPIをロジックツリー(樹形図)で可視化したものです。
KPIツリー作成の4ステップ(THE MOLTS):
- KGI設定: 最終目標を樹形図の頂点に配置
- 因数分解: KGIを構成する要素に分解(例: 売上 = リード数 × 商談率 × 受注率 × 平均単価)
- KPI設定: 分解した要素にKPIを設定
- 優先順位付け: 影響度の高いKPIに注力
KPIツリーを作成することで、KGI達成に必要な要素を因数分解し、チーム全体で目標を共有できます。
4. 部門別KPI設定の具体例(営業・マーケティング・CS・開発)
(1) BtoB営業のKPI:受注数から逆算する設計法
BtoB営業では、受注目標(KGI)から逆算し、商談プロセス係数を用いてKPIを設定するのが一般的です。
設計例(KGI: 受注数100件):
- 商談→受注率: 20%(業界平均20-30%)
- 必要商談数: 100件 ÷ 0.2 = 500件
- リード→商談率: 10%(業界平均5-10%)
- 必要リード数: 500件 ÷ 0.1 = 5,000件
BtoB営業のKPI例:
- リード獲得数: 月間400-500件(5,000件 ÷ 12ヶ月)
- 商談獲得数: 月間40-50件(500件 ÷ 12ヶ月)
- 提案成功率: 20%以上
- 平均受注単価: 200万円(売上KGIが2億円の場合)
(2) マーケティングのKPI:リード・MQL・SQLの管理
ferret Oneの資料によると、BtoBマーケティングでは、リード創出からSQL(営業引き渡し)までのフェーズ別にKPIを設定するのが推奨されています。
マーケティングKPIの例:
| フェーズ | KPI | 具体例 |
|---|---|---|
| 認知拡大 | PV、UU、セッション数 | 月間PV 10万、UU 3万 |
| リード獲得 | CVR、リード獲得数 | CVR 3%、リード獲得数300件/月 |
| リード育成 | MQL(Marketing Qualified Lead)数 | MQL 150件/月 |
| 営業引き渡し | SQL(Sales Qualified Lead)数 | SQL 50件/月 |
マーケティング施策別KPI:
- SEO: オーガニック流入数、検索順位
- Web広告: クリック率(CTR)、CPA(顧客獲得単価)
- ウェビナー: 参加者数、リード獲得数
- メールマーケティング: 開封率、クリック率
(3) カスタマーサクセスと開発部門のKPI例
カスタマーサクセスのKPI:
- 継続率(リテンション率): 90%以上
- 解約率(チャーンレート): 5%以下
- NPS(Net Promoter Score): 50以上
- オンボーディング完了率: 80%以上
開発部門のKPI:
- スプリント完了率: 90%以上
- バグ発生率: 10件/月以下
- デプロイ頻度: 週2回以上
- コードレビュー完了時間: 24時間以内
5. 運用のコツ:PDCAサイクルとよくある失敗パターン
(1) KPI達成に向けたPDCAサイクルの回し方
KPI設定後は、PDCAサイクルを回すことで継続的な改善が可能になります。
PDCAサイクルの実践:
- Plan(計画): KGI・KPI設定、施策立案
- Do(実行): 施策実行、データ収集
- Check(評価): 週次・月次でKPI達成状況を確認
- Action(改善): 未達の場合は施策を見直し、達成した場合は次の目標を設定
定期レビューの頻度:
- 週次レビュー: リード数、商談数など短期KPI
- 月次レビュー: 受注数、売上など中期KPI
- 四半期レビュー: KGI達成状況、KPI設定の見直し
(2) よくある失敗:KPI倒れ・目標設定ミス・管理の複雑化
失敗パターン1: KPI倒れ(KGIとKPIの因果関係が不明確)
KGIとKPIの因果関係が曖昧だと、KPIを達成してもKGI達成につながらない「KPI倒れ」が発生します。
対策:
- KPIツリーで因果関係を可視化
- 定期的にKPIとKGIの相関を検証
失敗パターン2: 目標設定ミス(高すぎる・低すぎる)
KPIは達成可能な数値にすることが重要で、高すぎる目標設定はモチベーション低下を招きます。
対策:
- 過去データや業界ベンチマークを参考に現実的な目標を設定
- 四半期ごとに目標を見直す
失敗パターン3: 管理の複雑化(KPIを細かく設定しすぎ)
KPIを細かく設定しすぎると管理が複雑になり、本質的な目標達成から遠ざかる可能性があります。
対策:
- 1部門あたり3-5個程度に絞る
- 本当に重要な指標(先行指標)に注力
6. まとめ:KPI設定成功のチェックリストと次のアクション
KPI設定は、KGI達成のプロセスを可視化し、チーム全体で目標を共有するために不可欠です。 SMARTの法則を守り、KPIツリーで因果関係を整理することで、効果的なKPI設定が可能になります。
BtoB営業では受注数から逆算し、マーケティングではリード・MQL・SQLのフェーズ別にKPIを設定するのが基本です。 KPI設定後はPDCAサイクルを回し、定期的にレビュー・改善を行うことで、継続的な成果向上が期待できます。
KPI設定成功のチェックリスト:
- KGI(最終目標)を明確に設定した
- KFS(重要成功要因)を洗い出した
- SMARTの法則に沿ってKPIを設定した
- KPIツリーで因果関係を可視化した
- 1部門あたり3-5個程度に絞った
- 週次・月次でレビューする体制を整えた
次のアクション:
- 自社のKGI(最終目標)を明確にする
- KGI達成に必要なKFS(重要成功要因)を3-5個洗い出す
- SMARTの法則に沿ってKPIを設定し、KPIツリーで可視化する
- 週次・月次でKPIをレビューし、PDCAサイクルを回す
適切なKPI設定で、目標達成までのプロセスを可視化し、ビジネスの成功確率を高めましょう。
よくある質問:
Q: KPIとKGI、KSFの違いは何ですか?どう使い分ければいいですか? A: KGI(最終目標)達成に必要な要素がKSF(重要成功要因)、KSFの進捗を測るのがKPI(プロセス指標)です。KGI設定 → KSF特定 → KPI設定の順で設計するのが基本となります。例えば、KGIが「受注数100件」の場合、KSFは「リード獲得」「商談創出」、KPIは「リード獲得数300件」「商談獲得数50件」といった形で設定します。
Q: KPIを細かく設定しすぎて管理が大変です。どう改善すべきですか? A: KPIツリーで因果関係を整理し、本当に重要な指標(先行指標)に絞りましょう。目安として1部門あたり3-5個程度に抑え、週次・月次で定期レビューできる範囲に設定することが推奨されます。KPIが多すぎると管理が複雑になり、本質的な目標達成から遠ざかる可能性があります。
Q: BtoB営業のKPIはどう設定すればいいですか? A: 受注目標(KGI)から逆算し、商談プロセス係数(商談→受注率、リード→商談率)を用いてリード数・商談数・アポ数などの中間KPIを設定します。業界平均は商談→受注率20-30%、リード→商談率5-10%程度です。例えば、受注目標100件の場合、商談500件(100件÷0.2)、リード5,000件(500件÷0.1)が必要になります。
Q: KPIとOKRはどちらを使えばよいですか?併用は可能ですか? A: KPIは業績評価・プロセス管理に適しており、100%達成を目指す指標です。OKRは挑戦的な目標設定に適しており、60-70%達成を目指す指標です。併用は可能で、OKRのKR(主要な結果)の達成度を測るためにKPIを設定する方法が有効とされています。例えば、OKRで「新規リード数を前四半期比50%増加」と設定し、KPIで「月間リード獲得数150件」と具体化する形です。
Q: 設定したKPIが適切かどうかを判断する基準は何ですか? A: SMARTの法則(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限付き)を満たしているか、KGIとの因果関係が明確か、過去データや業界ベンチマークと比較して現実的かの3点を確認しましょう。また、四半期ごとにKPIとKGIの相関を検証し、KPIを達成してもKGIが改善しない場合は、KPI設定を見直す必要があります。
