「Salesforceで業務を自動化したいけれど、どう始めればいいか分からない..."
B2B企業でSalesforceを運用していると、「手作業の繰り返し業務が多い」「入力ミスが発生する」「営業担当者が事務作業に追われている」といった課題を抱えることがあります。これらの課題は、Salesforceの自動化機能を活用することで解決できます。
この記事では、Salesforceの自動化機能の基礎知識から、Flow Builderの主要機能と使い方、実践例とベストプラクティス、注意点とよくある失敗パターンまでを解説します。
この記事のポイント:
- Salesforce自動化は現在「Flow Builder」に統合され、旧ツール(Process Builder・Workflow Rules)は2025年12月31日にサポート終了
- Flow Builderはノーコード設計で、プログラミング知識なしでもドラッグ&ドロップでフローチャート構造を構築可能
- 2022年3月時点でSalesforce顧客全体で1090億時間の労働時間削減実績
- Record Trigger Flowとscreen Flowが主要機能で、レコード操作やユーザーインタラクティブな処理を自動化
- 自動化の失敗パターン:複雑化によるパフォーマンス低下、誤設定による大量レコードへの影響、API制限超過
1. Salesforce自動化とは?業務効率化の必要性
Salesforce自動化とは、Salesforce Platform上で繰り返し発生する業務プロセスを自動化し、手作業を削減する仕組みです。
なぜ自動化が必要なのか?
B2B営業の現場では、以下のような課題が発生しがちです:
- 繰り返し業務の工数: リードの割り当て、フォローアップメールの送信、商談ステージの更新など、定型的な作業に時間を取られる
- ヒューマンエラー: 手作業による入力ミスや対応漏れが発生する
- 業務の属人化: 担当者によって対応が異なり、品質のバラつきが生じる
- 戦略的業務への時間不足: 事務作業に追われ、顧客との関係構築や提案活動に時間を割けない
Salesforce自動化を活用することで、これらの課題を解決し、以下のメリットが得られます:
ビジネスメリット:
- 工数削減: 2022年3月時点でSalesforce顧客全体で1090億時間の労働時間削減実績(Salesforce公式「Salesforceの自動化「フロー」はどう進化しているの?」、2024年)
- 品質向上: 自動化により一貫したプロセスを実現し、ヒューマンエラーを削減
- 営業生産性の向上: 営業担当者は戦略的業務(提案活動・顧客関係構築)に集中可能
- スピードアップ: リード対応の迅速化、承認プロセスの短縮化
2. Salesforce自動化機能の基礎知識(Flow Builder・旧ツールの廃止)
(1) Salesforce自動化の3種類(Workflow Rules・Process Builder・Flow Builder)
Salesforceには、歴史的に以下の3種類の自動化ツールがありました(クラスメソッド「Salesforceのプロセスの自動化3種の違いについて」、2024年):
① Workflow Rules(ワークフロールール):
- Salesforce初期からの基本的な自動化ツール
- シンプルな条件分岐と自動処理(メール送信、項目更新、タスク作成等)
- 複雑なロジックには対応できない
② Process Builder(プロセスビルダー):
- 2015年頃に登場した中級レベルの自動化ツール
- より複雑な条件分岐と複数アクションの実行が可能
- GUIで視覚的に設計できる
③ Flow Builder(フロービルダー):
- 最も高機能で柔軟性が高い自動化ツール
- フローチャート構造でノーコード開発が可能
- 複雑なビジネスロジックにも対応
(2) Flow Builderへの統合(Winter '23リリース)
2023年のWinter '23リリースで、Salesforceは自動化機能をFlow Builderに統合しました(Salesforce公式「フロー(自動化)|Sales Cloud|Salesforce サクセスナビ」、2024年)。
統合の背景:
- 複数の自動化ツールが並存することによる混乱の解消
- 最新機能の開発リソースをFlow Builderに集中
- ユーザー体験の統一
(3) Process BuilderとWorkflow Rulesのサポート終了(2025/12/31)
重要な期限:
- Process BuilderとWorkflow Rulesは2025年12月31日にサポート終了予定(Salesforce公式発表)
- 既存の自動化は動作し続けるが、新規作成・編集はできなくなる
- セキュリティパッチや不具合修正も提供されなくなる
影響:
- 新規の自動化は必ずFlow Builderで作成する必要がある
- 既存のProcess BuilderとWorkflow Rulesも、Flow Builderへの移行が推奨される
(4) Flow Builder移行の重要性
移行すべき理由:
- 最新機能の活用: Flow Builderのみが新機能の対象
- 長期的なサポート: Salesforceの開発方針としてFlow Builderに注力
- セキュリティリスク回避: サポート終了後の脆弱性対応がない
移行のタイミング:
- 新規作成は今すぐFlow Builderで
- 既存の自動化は2025年12月31日までに移行計画を立てる
Salesforceは移行支援ツール「Process Builder Migration Tool」を提供しており、既存のProcess BuilderをFlow Builderに変換できます(Salesforce公式サクセスナビ、2024年)。
3. Flow Builderの主要機能と使い方
Flow Builderの主要機能と実践的な使い方を解説します。
(1) Record Trigger Flow(レコードトリガフロー):レコードの作成・更新・削除時の自動処理
Record Trigger Flowは、レコードの作成・更新・削除をトリガーに自動実行されるフローです。
主な活用例:
- リードの自動割り当て: 新規リードが作成されたら、地域・業種に応じて営業担当者に自動割り当て
- 商談ステージ更新時の通知: 商談が「提案」ステージに進んだら、マネージャーに通知メールを送信
- データ品質の維持: 項目が更新されたら、関連レコードの項目も自動更新して整合性を保つ
設定のポイント:
- トリガー条件: レコード作成時、更新時、削除時のいずれかを選択
- エントリ条件: 「リード状態が'新規'」「金額が100万円以上」等の条件を設定
- アクション: 項目更新、メール送信、タスク作成、Apex呼び出し等
(2) Screen Flow(画面フロー):ユーザーインタラクティブな一括処理
Screen Flowは、ユーザーがインタラクティブに操作できる画面付きフローです。
主な活用例:
- 一括データ更新: 営業担当者が複数の商談を一括で特定ステージに更新するボタン
- ガイド付きデータ入力: 新規リード登録時に、必須項目を漏れなく入力できるウィザード形式の画面
- 承認申請: 割引申請等を画面上で入力し、承認プロセスに回す
設定のポイント:
- 画面要素: テキスト入力、選択リスト、チェックボックス等のUI部品を配置
- データ検証: 入力値のチェック(必須項目、数値範囲等)
- 確認画面: アクション実行前に確認画面を表示
(3) ノーコード開発:ドラッグ&ドロップでフローチャート構造を構築
Flow Builderの最大の特徴は、プログラミング知識なしでもドラッグ&ドロップで自動化ロジックを構築できる点です(All's「Salesforceのフローとは?できることや使い方の基本を解説」、2024年)。
フローチャート構造の要素:
- 開始: フローの開始条件(Record Trigger、Screen、Scheduled等)
- 決定: 条件分岐(if-then-else)
- ループ: 繰り返し処理(複数レコードに対する処理等)
- 割り当て: 変数への値の設定
- レコード操作: 作成、読み取り、更新、削除
- アクション: メール送信、Apex呼び出し、外部システム連携等
設計の流れ:
- 業務プロセスをフローチャートで整理
- Flow Builderで各要素をドラッグ&ドロップで配置
- 各要素のプロパティ(条件式、項目マッピング等)を設定
- デバッグ機能でテスト実行
- 本番環境へデプロイ
(4) 外部システム連携機能:CRM・MAツール等との統合
Flow Builderは外部システムとの連携も可能で、より高度な自動化を実現できます(Salesforce公式「Salesforce Flow - 複雑なプロセスを簡単に自動化」、2024年)。
連携例:
- マーケティングオートメーション(MA)ツール: Marketo、HubSpot等からリード情報を自動取得
- 会計システム: 受注確定時に会計システムに自動連携
- カスタマーサポートシステム: サポートチケット起票時にSalesforceの取引先情報を参照
連携方法:
- REST API: 外部システムのREST APIを呼び出し
- MuleSoft: エンタープライズレベルの統合プラットフォーム(別途ライセンス必要)
- AppExchange: Salesforce公式マーケットプレイスから連携アプリをインストール
4. 自動化の実践例とベストプラクティス
実務でよく使われる自動化の実践例とベストプラクティスを紹介します。
(1) リード管理の自動化:割り当て・通知・スコアリング
シナリオ: 新規リードが登録されたら、以下の処理を自動実行したい:
- 地域・業種に応じて営業担当者に自動割り当て
- 担当営業にメール通知
- リードスコア(関心度)を計算
Flow Builder設定:
- トリガー: レコード作成時(リードオブジェクト)
- 決定1: 地域が「東京」→ 担当者Aに割り当て、地域が「大阪」→ 担当者Bに割り当て
- アクション1: 担当者にメール通知
- 割り当て: リードスコアを計算(Webサイト訪問回数×10 + 資料請求×20)
- レコード更新: リードスコアを更新
ベストプラクティス:
- 割り当てルールは定期的に見直す(担当者の異動・エリア変更に対応)
- スコアリングロジックは営業部門とすり合わせて設計
(2) 商談管理の自動化:ステージ更新・承認プロセス
シナリオ: 商談が「提案」ステージに進んだら、以下の処理を自動実行したい:
- マネージャーに通知
- 金額が500万円以上の場合、承認申請を起票
Flow Builder設定:
- トリガー: レコード更新時(商談オブジェクト、フェーズ項目が変更された場合のみ)
- 決定1: フェーズが「提案」
- アクション1: マネージャーにメール通知
- 決定2: 金額が500万円以上
- アクション2: 承認プロセス起票(Apex呼び出し or 標準承認プロセス連携)
ベストプラクティス:
- 承認基準(金額閾値)はビジネスルールに基づいて設定
- 承認待ちのリマインダー機能も併設
(3) タスク管理の自動化:フォローアップリマインダー
シナリオ: 商談が「見込み」ステージに1週間滞在したら、営業担当者にフォローアップタスクを自動作成したい。
Flow Builder設定:
- トリガー: スケジュール実行(日次バッチ)
- レコード検索: フェーズが「見込み」かつ最終更新日が7日以前の商談を取得
- ループ: 検索結果の商談に対して繰り返し処理
- アクション: 営業担当者にタスク作成(「○○社への提案フォローアップ」)
ベストプラクティス:
- スケジュール実行は深夜等の業務時間外に設定してパフォーマンスへの影響を最小化
- タスク作成の重複を避ける(既存タスクの有無を事前チェック)
(4) MuleSoft統合による複雑なプロセス自動化
エンタープライズレベルの複雑な業務プロセスには、MuleSoftを活用した統合が有効です(Salesforce公式「Salesforce Flow - 複雑なプロセスを簡単に自動化」、2024年)。
活用例:
- 複数の基幹システム(ERP、会計、在庫管理等)とSalesforceを連携
- リアルタイムデータ同期
- 複雑なデータ変換・マッピング
注意点:
- MuleSoftは別途ライセンスが必要(コスト増)
- 導入には専門知識が必要なため、SIパートナーと連携することが一般的
(5) テスト環境での検証の重要性
自動化を本番環境にデプロイする前に、必ずテスト環境(Sandbox)で検証してください。
検証項目:
- 正常系のテスト:期待通りに動作するか
- 異常系のテスト:エラーハンドリングが適切か
- パフォーマンステスト:大量レコードでも動作するか
- 既存フローとの干渉:他の自動化と競合しないか
Salesforceの「Agentforce Testing Center」(2024年11月発表)は、AIエージェントの自動テスト・ライフサイクル管理をSandbox環境で実行可能にする最新ツールです(Salesforce公式プレスリリース、2024年)。
5. 自動化の注意点とよくある失敗パターン
Salesforce自動化で陥りやすい失敗パターンと、その回避方法を紹介します。
(1) 自動化ロジック複雑化によるパフォーマンス低下
失敗パターン:
- フローに多数の条件分岐・レコード操作を詰め込みすぎる
- 結果としてフロー実行時間が長くなり、ユーザー体験が低下
回避方法:
- シンプルに保つ: 1つのフローで1つの目的に絞る
- 非同期処理: 大量レコード処理はバッチ処理(Scheduled Flow)で夜間実行
- 定期的な見直し: パフォーマンスモニタリングとフローの最適化
(2) レコードトリガフローの誤設定(大量レコードへの影響)
失敗パターン:
- エントリ条件を広く設定しすぎて、意図しない大量のレコードに影響
- 例:「全ての商談更新時」に実行するフローで、誤って全商談を更新してしまう
回避方法:
- エントリ条件を厳格に: 必要最小限のレコードのみ対象にする
- テスト環境での検証: 少数レコードでテスト→大量レコードでテスト
- ロールバック計画: 万が一の場合に備えてデータバックアップを取得
(3) 外部システム連携時のAPI制限(コール数上限)
失敗パターン:
- 外部システムとのAPI連携で、Salesforceの**API制限(コール数上限)**を超過
- 例:1レコードごとにAPI呼び出しをして、1日の上限を超える
回避方法:
- バッチ処理: 複数レコードをまとめてAPI呼び出し(Bulkify)
- 非同期処理: Platform Event等を活用して非同期化
- API使用量のモニタリング: 定期的にAPI使用量を確認し、上限に近づいたら対策
SalesforceのAPI制限は、エディションによって異なります(例:Enterprise Editionで1日あたり1,000コール + ユーザー数×1,000コール)。詳細は公式ドキュメントでご確認ください。
(4) 自動化設定のドキュメント化不足
失敗パターン:
- フローの設計意図・仕様を文書化せず、属人化
- 担当者変更時に「何のためのフローか分からない」状態になる
回避方法:
- フロー説明欄の活用: Flow Builder内の「説明」欄に目的・仕様を記載
- 外部ドキュメント: フロー一覧、業務フロー図をWiki等で管理
- 命名規則: フロー名に目的を明記(例:「リード自動割り当て_東京大阪」)
(5) 2024年最新トレンド:AIエージェント「Agentforce Testing Center」
2024年11月、SalesforceはAgentforce Testing Centerを発表しました(Salesforce公式プレスリリース、2024年)。
主要機能:
- AIエージェントのライフサイクル管理: AI自動化の設計・テスト・デプロイを一元管理
- Sandbox環境での自動テスト: 本番環境に影響を与えずにAIエージェントをテスト
- CRM統合: Salesforce CRMと統合されたAIカスタマーサービス自動化
活用シーン:
- カスタマーサービスの自動応答(チャットボット等)の品質テスト
- AIによる商談推奨ロジックの検証
このツールは、従来のFlow自動化をさらに進化させ、AI活用の敷居を下げるものとして注目されています。
6. まとめ:Salesforce自動化を成功させるポイント
Salesforce自動化は、B2B企業の営業効率化・業務品質向上を実現する強力な手段です。
この記事の要点:
- Salesforce自動化は現在「Flow Builder」に統合され、旧ツール(Process Builder・Workflow Rules)は2025年12月31日にサポート終了
- Flow Builderはノーコード設計で、プログラミング知識なしでもフローチャート構造を構築可能
- 2022年3月時点でSalesforce顧客全体で1090億時間の労働時間削減実績
- Record Trigger FlowとScreen Flowが主要機能で、レコード操作やユーザーインタラクティブな処理を自動化
- よくある失敗:複雑化によるパフォーマンス低下、誤設定による大量レコードへの影響、API制限超過、ドキュメント化不足
次のアクション:
- 現在の業務プロセスを棚卸しし、自動化候補をリストアップ
- Process BuilderやWorkflow Rulesを使用している場合、Flow Builderへの移行計画を立てる(2025/12/31期限)
- テスト環境(Sandbox)で小規模なフローを試作し、Flow Builderの操作に慣れる
- Salesforce公式のTrailhead(無料学習プラットフォーム)でFlow Builderのチュートリアルを受講
- 本番環境へのデプロイ前に必ずテスト環境で検証を実施
Salesforce自動化は一度で完璧を目指すのではなく、小さく始めて継続的に改善していくことが成功のカギです。まずは日々の繰り返し業務から自動化を始めてみましょう。
