営業パイプライン管理の基本|案件進捗の可視化と売上予測の精度向上

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/25

営業案件の管理が属人化していて、売上予測が全く当たらない...

営業マネージャーの方は、「どの案件がどこまで進んでいるか分からない」「営業担当者に聞かないと状況が把握できない」「月末の売上予測がいつも外れる」といった悩みを抱えることが多いのではないでしょうか。営業活動が属人化すると、案件進捗の可視化が困難になり、売上予測の精度も低下します。

この記事では、営業パイプライン管理の基本概念から、ステージ設計、KPI設定、ツール活用、運用のポイントまでを体系的に解説します。

この記事のポイント:

  • パイプライン管理は、営業プロセスにおいて見込み顧客の現在地(ステージ)を可視化し、進捗・停滞・失注タイミングを把握する管理方法
  • 目的は「案件進捗の可視化」「売上予測精度の向上」「ボトルネック特定と営業プロセスの改善」の3点
  • ファネルは「漏斗」で脱落を前提、パイプラインは「パイプ」で各ステージでの滞留や停滞を管理する点が異なる
  • 典型的なステージは「リード獲得→ヒアリング→初回商談→提案→クロージング→受注」の5-7フェーズ、細分化しすぎると運用が形骸化
  • 主要KPIはリード総数、コンバージョン率、案件数、成約率(クロージング率)、平均商談期間
  • 小規模企業(営業10名以下)はExcelで十分、中規模以上はSFA/CRMツール(Salesforce・Sansan等)が推奨

1. 営業パイプライン管理とは?基本概念と目的

営業パイプライン管理の定義と目的を解説します。

(1) パイプライン管理の定義と重要性

営業パイプライン管理とは、営業プロセスにおいて見込み顧客の現在地(ステージ)を可視化し、各段階での進捗状況や停滞を把握する管理方法です。

営業プロセスを「リード獲得」「ヒアリング」「初回商談」「提案」「クロージング」「受注」などのフェーズに分け、各フェーズにどれだけの案件があるか、どの案件がどのフェーズで停滞しているかを「見える化」します。

重要性:

  • 属人化の解消: 営業担当者に聞かなくても案件状況が把握できる
  • 売上予測の精度向上: 各ステージの案件数と成約率から売上を予測
  • マネジメントの効率化: ボトルネックを特定し、リソースを適切に配分

(2) ファネルとパイプラインの違い

よく混同される「セールスファネル」と「セールスパイプライン」の違いを整理します。

セールスファネル(営業漏斗):

  • 形状: 漏斗(じょうご)型
  • 前提: 各段階で一定数が脱落することを前提
  • 視点: 「何人が脱落したか」「どこで脱落が多いか」に注目
  • 用途: マーケティング施策の効果測定、コンバージョン率の改善

セールスパイプライン:

  • 形状: パイプ(管)型
  • 前提: 各ステージでの滞留や停滞を管理
  • 視点: 「どのステージにどれだけの案件があるか」「どこで停滞しているか」に注目
  • 用途: 案件進捗管理、売上予測、ボトルネック特定

パイプライン管理は、ファネル管理よりも「個別案件の進捗状況」に注目する点が特徴です。

(3) パイプライン管理の3つの目的(可視化・予測・改善)

パイプライン管理の主な目的は以下の3点です:

目的1: 案件進捗の可視化

  • 全案件がどのステージにあるかを一目で把握
  • 営業担当者ごとの案件状況を比較
  • どの案件が停滞しているかを特定

目的2: 売上予測精度の向上

  • 各ステージの案件金額と成約率から売上を予測
  • 月末・四半期末の着地見込みを算出
  • 目標達成に必要な追加施策を判断

目的3: ボトルネック特定と営業プロセスの改善

  • どのステージで停滞が多いかを分析
  • 失注タイミングを可視化し、改善策を検討
  • 営業プロセスを継続的に改善(PDCA)

パイプライン管理は手段であり、目的は売上予測精度の向上と営業プロセスの改善であることを忘れてはいけません。

2. ステージ設計とフェーズ分け

パイプライン管理の要となるステージ設計を解説します。

(1) 典型的な営業プロセスのフェーズ分け

典型的なBtoB営業のフェーズ分けは以下の通りです:

標準的な5-7フェーズ:

  1. リード獲得: 展示会・ウェビナー・資料ダウンロード等で見込み客情報を獲得
  2. ヒアリング(初回接触): 電話・メールで課題や興味を確認
  3. 初回商談: 対面・オンライン会議で詳細ヒアリング
  4. 提案: 提案書・見積書を提出
  5. クロージング: 契約交渉・稟議承認待ち
  6. 受注: 契約締結

業種による違い:

  • 短期商材(数週間〜1ヶ月): 3-4フェーズで簡素化
  • 長期商材(数ヶ月〜1年以上): 7-10フェーズで細分化(複数回の提案、PoC実施等)

自社の営業プロセスに合わせてフェーズを定義することが重要です。

(2) 最適なステージ数の決め方

ステージ数は多すぎても少なすぎても問題があります。

ステージ数が多すぎる場合:

  • データ入力・計測・分析の手間が増える
  • 営業担当者が正確に更新しなくなり、運用が形骸化

ステージ数が少なすぎる場合:

  • ボトルネックを特定しにくい
  • 売上予測の精度が低下

推奨:

  • 小規模企業(営業10名以下): 3-5フェーズ
  • 中規模企業(営業10-50名): 5-7フェーズ
  • 大企業(営業50名以上): 7-10フェーズ

ボトルネック特定と売上予測に必要な最低限のフェーズに留めることがポイントです。

(3) MQL・SQLの定義と基準設定

マーケティング部門と営業部門が分かれている企業では、**MQL(Marketing Qualified Lead)SQL(Sales Qualified Lead)**の定義が重要です。

MQL(Marketing Qualified Lead):

  • マーケティング部門が獲得した見込み客で、営業にパスする基準を満たしたもの
  • 例:資料ダウンロード3回以上、ウェビナー参加1回以上、リードスコア50点以上

SQL(Sales Qualified Lead):

  • 営業部門が精査し、商談化する価値があると判断した見込み客
  • 例:ヒアリングで予算・決裁権・導入時期が確認できた

MQLとSQLの基準を明確にすることで、マーケティングと営業の連携がスムーズになります。

3. 管理指標・KPIの設定方法

パイプライン管理で設定すべきKPI(重要業績評価指標)を解説します。

(1) リード総数・コンバージョン率・案件数

リード総数:

  • マーケティング活動で獲得した見込み客の総数
  • 月間リード数、四半期リード数を計測

コンバージョン率:

  • 各ステージから次のステージへ進む割合
  • 例:初回商談→提案への移行率、提案→受注への移行率

案件数:

  • 各ステージにある案件の数
  • 月末時点でどのステージに何件あるかを確認

これらを組み合わせることで、「目標達成に必要な商談数」を逆算できます。

(2) 成約率(クロージング率)・平均商談期間

成約率(クロージング率):

  • 商談から受注に至る割合
  • 例:初回商談100件のうち20件が受注 → 成約率20%

平均商談期間:

  • 初回商談から受注までにかかる平均時間
  • 業種や商材により大きく異なる(数週間〜1年以上)

これらを把握することで、「いつ頃受注できそうか」を予測できます。

(3) KGIから逆算したKPI設定方法

KGI(重要目標達成指標)から逆算してKPIを設定する方法を解説します。

逆算の例:

  1. KGI(目標): 月間売上1,000万円
  2. 平均受注単価: 100万円
  3. 必要な受注件数: 1,000万円 ÷ 100万円 = 10件
  4. 成約率: 20%
  5. 必要な商談数: 10件 ÷ 20% = 50件
  6. リード→商談化率: 10%
  7. 必要なリード数: 50件 ÷ 10% = 500件

このように逆算することで、「月間500件のリードが必要」「月間50件の商談が必要」といったKPIを設定できます。

(4) 海外調査に見る参考値

海外調査による業界平均のKPI参考値は以下の通りです(ただし、業界や企業により大きく異なります):

参考値(BtoB SaaS業界):

  • リード→商談化率: 5-15%
  • 商談→受注率(成約率): 15-30%
  • 平均商談期間: 1-6ヶ月

自社の実績データを蓄積し、業界平均と比較することで、改善余地を特定できます。

4. 効果的なツール活用(Excel vs CRM/SFA)

パイプライン管理を効率化するツールを解説します。

(1) Excelでの簡易管理の方法とテンプレート

小規模企業(営業10名以下)では、Excelでの簡易管理が現実的です。

Excelテンプレートの作成方法:

  • 列:案件名、顧客名、ステージ、金額、受注予定日、担当者
  • 行:個別案件
  • ピボットテーブルでステージ別の集計を作成
  • グラフでパイプラインを可視化

メリット:

  • 初期コストがかからない
  • カスタマイズが容易
  • 小規模なら十分機能する

デメリット:

  • データ入力が手動で手間がかかる
  • 複数人で同時編集が困難
  • リアルタイムでの可視化が難しい

(2) CRM/SFAツールのメリット(Salesforce・Sansan等)

中規模以上の企業では、CRM/SFAツールの導入が推奨されます。

主要なCRM/SFAツール:

  • Salesforce: 世界最大手のCRM/SFA、高機能、カスタマイズ性が高い
  • Sansan: 名刺管理とCRM/SFAを統合、日本企業に強い
  • HubSpot CRM: 無料プランあり、中小企業向け
  • Zoho CRM: コスパ良好、中小企業向け

メリット:

  • データの自動整理・分析が容易
  • リアルタイムでの可視化が可能
  • 複数人での同時編集・共有がスムーズ
  • レポート・ダッシュボード機能が充実

デメリット:

  • 初期設定とライセンス費用がかかる
  • 運用定着までに時間がかかる
  • カスタマイズには専門知識が必要な場合がある

注意: ツールの機能や料金は変更される可能性があるため、導入時は公式サイトで最新情報を確認することを推奨します。

(3) 企業規模別の選択肢

企業規模別の推奨ツールは以下の通りです:

小規模企業(営業5-10名以下):

  • Excelでの簡易管理
  • HubSpot CRMの無料プラン

中規模企業(営業10-50名):

  • Salesforce(Sales Cloud)
  • Sansan
  • Zoho CRM

大企業(営業50名以上):

  • Salesforce(Sales Cloud + カスタマイズ)
  • 独自開発のSFA

自社の規模・予算・既存システムとの連携を考慮して選定することが重要です。

5. よくある失敗と運用のポイント

パイプライン管理でよくある失敗と、運用を成功させるポイントを解説します。

(1) フェーズを細分化しすぎて運用が形骸化

フェーズを細分化しすぎると、以下の問題が発生します:

  • 営業担当者がステージ更新を面倒に感じる
  • データ入力が正確でなくなる
  • 分析が複雑になりすぎて活用できない

対策:

  • 最初はシンプルなフェーズ分けから始める(3-5フェーズ)
  • 運用が定着してから必要に応じて細分化
  • ボトルネック特定と売上予測に必要な最低限のフェーズに留める

(2) データ入力が正確でなく分析精度が低下

ツールを導入しても、営業担当者が正確にデータを入力しなければ、可視化や分析の精度が低下します。

対策:

  • 入力項目を最小限にする(必須項目は絞る)
  • 定期的に入力状況をチェックし、フィードバック
  • 入力のメリット(案件管理がラクになる、上司に聞かれなくなる等)を伝える
  • CRM/SFAツールの自動入力機能(MA連携等)を活用

(3) ボトルネックの特定と改善アクション

パイプライン管理の最大の目的は、ボトルネックを特定し改善することです。

ボトルネックの特定方法:

  • 各ステージでの滞留時間を可視化
  • コンバージョン率が低いステージを特定
  • 失注が多いステージを特定

改善アクション例:

  • 初回商談→提案のコンバージョン率が低い: ヒアリングスキル強化研修、提案テンプレートの整備
  • 提案→クロージングで停滞: 稟議承認プロセスの短縮支援、ケーススタディの提供
  • 特定の営業担当者の成約率が低い: 個別コーチング、成功事例の共有

(4) パイプラインレビューの進め方

パイプラインレビューは、週次または月次で定期開催し、案件状況を確認します。

レビューの進め方:

  1. ダッシュボード確認: 各ステージの案件数・金額を確認
  2. ボトルネック特定: 停滞が多いステージ、滞留時間が長い案件を特定
  3. 失注分析: 失注理由を確認し、改善策を検討
  4. 改善アクション決定: 営業担当者と具体的な改善アクション(追加施策、リソース配分)を決定
  5. 次回レビューで進捗確認: PDCAサイクルを回す

営業担当者との対話を重視し、一方的な指示ではなく、協力して改善策を考えることが重要です。

6. まとめ:成功のための6-7ステップ

パイプライン管理を成功させるための具体的なステップをまとめます。

(1) Salesforceの7ステップ

Salesforceが提唱する7ステップは以下の通りです:

  1. 営業プロセスの定義: 自社の営業プロセスをフェーズに分ける
  2. 各フェーズの定義: 各フェーズの開始条件・終了条件を明確化
  3. KPI設定: リード総数、コンバージョン率、成約率等を設定
  4. ツール選定: ExcelまたはCRM/SFAツールを選定
  5. データ入力ルール整備: 必須項目、更新頻度、入力方法を定義
  6. 定期レビュー: 週次または月次でパイプラインレビューを実施
  7. 継続的改善: ボトルネックを特定し、PDCAサイクルを回す

(2) Sansanの6ステップ

Sansanが提唱する6ステップは以下の通りです:

  1. 営業プロセスの可視化: 現状の営業プロセスを整理
  2. ステージ設計: 3-7フェーズに分ける
  3. KPI設定: コンバージョン率、成約率、平均商談期間を設定
  4. ツール導入: CRM/SFAツールを導入し、データ入力を開始
  5. ボトルネック特定: 各ステージの停滞を分析
  6. 改善アクション実施: 営業プロセスを継続的に改善

(3) 企業規模・業種に応じた適用方法

パイプライン管理の手法や推奨ツールは、企業規模・業種により適切なものが異なります。

小規模企業(営業5-10名以下):

  • Excelでの簡易管理から始める
  • 3-5フェーズのシンプルな設計
  • 週次でのレビュー

中規模企業(営業10-50名):

  • CRM/SFAツール(Salesforce、Sansan等)を導入
  • 5-7フェーズの標準的な設計
  • 週次レビュー + 月次の詳細分析

大企業(営業50名以上):

  • Salesforceなど高機能CRM/SFAツールを導入
  • 7-10フェーズの詳細な設計
  • 週次レビュー + 月次・四半期の包括分析

最後に: 営業パイプライン管理は、案件進捗の可視化、売上予測精度の向上、ボトルネック特定による営業プロセスの改善を実現する強力な手法です。ただし、パイプライン管理は手段であり、目的は売上目標の達成です。ツール導入だけでなく、営業担当者の理解と協力を得て、継続的に運用・改善していくことが成功の鍵です。

※この記事の情報は2024-2025年時点のものです。ツールの機能や料金は変更される可能性があるため、導入時は公式サイトで最新情報をご確認ください。KPIの参考値は業界や企業により大きく異なる可能性があるため、自社の状況に合わせた設定が必要です。

よくある質問

Q1パイプライン管理とは具体的に何を管理するのか?

A1営業プロセスにおいて、見込み顧客の現在地(ステージ)を可視化し、各段階での進捗状況、停滞、失注タイミングを把握します。典型的には「リード獲得→ヒアリング→初回商談→提案→クロージング→受注」の5-7フェーズに分け、各フェーズにどれだけの案件があるか、どの案件がどのフェーズで停滞しているかを管理します。主な目的は売上予測精度の向上とボトルネック特定です。

Q2ExcelとSFA/CRMツール、どちらで管理すべきか?

A2小規模企業(営業10名以下)はExcelでの簡易管理で十分です。中規模以上(営業10名以上)はSFA/CRMツール(Salesforce、Sansan、HubSpot CRM等)が推奨されます。ツールはデータ自動整理・分析が容易でリアルタイム可視化が可能ですが、初期設定とライセンス費用がかかり、運用定着までに時間がかかる点に注意が必要です。

Q3どのようにフェーズを分けるのが適切か?

A3典型的なBtoB営業では「リード獲得→ヒアリング→初回商談→提案→クロージング→受注」の5-7フェーズが標準的です。細分化しすぎると入力・計測・分析の手間が増え、営業担当者が正確に更新しなくなり運用が形骸化します。ボトルネック特定と売上予測に必要な最低限のフェーズ(小規模企業3-5フェーズ、中規模企業5-7フェーズ)に留めることがポイントです。

Q4パイプラインレビューの進め方は?

A4週次または月次で定期開催します。具体的には、(1)ダッシュボードで各ステージの案件数・金額を確認、(2)ボトルネックを特定(停滞が多いステージ、滞留時間が長い案件)、(3)失注理由を分析、(4)営業担当者と具体的な改善アクション(追加施策、リソース配分、スキル強化研修等)を決定、(5)次回レビューで進捗を確認しPDCAサイクルを回します。一方的な指示ではなく、営業担当者と協力して改善策を考えることが重要です。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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