「案件が多すぎて、どれから手をつければいいかわからない...」
営業担当者やマネージャーの多くが、案件管理に課題を抱えています。「Excelで管理しているが、最新情報がわからない」「案件の進捗を把握できず、気づいたら失注していた」「担当者しか状況を知らない」——こうした悩みは珍しくありません。
営業案件を適切に管理できれば、優先すべき案件に集中し、受注確度を高め、売上予測の精度を向上させることができます。
この記事では、営業案件管理の基本的な考え方から、効率的な管理方法、ツール活用のポイントまでを実践的に解説します。
この記事のポイント:
- 案件管理の必須項目は顧客名・案件名・取引額・進捗状況・受注確度・受注見込時期
- 営業メンバー10名以下ならExcelでも対応可能、10名以上ならSFAツールを検討
- 入力項目はシンプルに始め、段階的に拡充するのが定着のコツ
- 週次1on1ミーティングで案件進捗を定期的に確認
- ツール導入だけでは効果は出ない、運用ルールの整備が重要
1. 営業案件管理とは何か
営業案件管理とは、顧客情報や営業の進捗状況を管理し、可視化することです。商談単位での進捗、受注確度、見込み時期などを管理し、営業活動全体を把握・最適化するための取り組みです。
案件管理の目的:
- 案件の進捗状況をリアルタイムで把握する
- 受注確度の高い案件に営業リソースを集中する
- 売上予測の精度を高める
- 業務の属人化を防ぎ、チームで情報を共有する
- 失注要因を分析し、営業活動を改善する
案件管理ができていない場合の問題:
- どの案件が優先すべきかわからない
- 案件のフォローが漏れ、気づいたら失注
- 担当者しか案件状況を知らない(属人化)
- 売上予測が当たらず、経営判断に支障
- 引き継ぎ時に情報が失われる
案件管理は、営業担当者個人の業務効率化だけでなく、組織としての営業力強化にも直結する重要な取り組みです。
2. 案件管理で押さえるべき項目とフレームワーク
(1) 基本項目(顧客情報・取引額・進捗状況・受注確度)
案件管理で管理すべき基本項目は以下の通りです。最初からすべてを完璧に管理しようとせず、まずは最低限の項目から始めることをおすすめします。
必須項目(最低限これだけは管理):
| 項目 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 案件名 | 商談を識別する名称 | 案件の特定 |
| 顧客名 | 取引先の企業名 | 顧客情報の管理 |
| 顧客担当者名 | 先方の窓口となる人 | コミュニケーション管理 |
| 営業担当者名 | 自社の担当者 | 責任の明確化 |
| 取引額(見込み金額) | 受注した場合の金額 | 売上予測 |
| 進捗状況(ステージ) | 現在の商談段階 | 進捗把握 |
| 受注確度 | 成約の可能性 | 優先順位付け |
| 受注見込時期 | 成約の見込み時期 | 売上予測・リソース配分 |
追加で管理すると良い項目:
- 案件化の経路(問い合わせ、紹介、展示会など)
- 競合情報
- 次のアクション・期限
- 失注理由(失注時)
入力項目が多すぎると、営業担当者の負担が増え、更新されなくなるリスクがあります。まずはシンプルに始め、必要に応じて項目を追加していくアプローチが現実的です。
(2) ステージ管理の設計方法
ステージ管理とは、商談の進捗を段階的に管理する方法です。自社の営業プロセスに合わせてステージを設計します。
ステージ設計例(B2B営業):
| ステージ | 定義 | 主なアクション |
|---|---|---|
| 1. 初回接触 | 顧客との最初のコンタクト | 課題ヒアリング、ニーズ確認 |
| 2. ヒアリング・課題確認 | 顧客の課題を深掘り | 詳細ヒアリング、要件整理 |
| 3. 提案 | ソリューションを提示 | 提案書作成、プレゼン |
| 4. 見積提出 | 具体的な金額を提示 | 見積書作成、条件交渉 |
| 5. 交渉・クロージング | 最終調整 | 条件交渉、契約書準備 |
| 6. 受注/失注 | 結果確定 | 契約締結 or 失注理由記録 |
ステージ設計のポイント:
- ステージは5〜7段階程度が管理しやすい
- 各ステージの定義(何をもって次のステージに進むか)を明確にする
- 自社の営業プロセスに合わせてカスタマイズする
- 全員が同じ基準で運用できるようルールを明文化する
(3) 受注確度の設定基準
受注確度は、案件が成約に至る可能性を表す指標です。営業予測の精度を高めるために、基準を明確に定義しておくことが重要です。
受注確度の設定例:
| 確度 | 定義 | 基準 |
|---|---|---|
| 10% | 初期段階 | 初回接触、ニーズ未確認 |
| 30% | 検討段階 | 課題確認済み、予算未確定 |
| 50% | 提案段階 | 提案済み、予算確認済み |
| 70% | 交渉段階 | 見積提出済み、決裁者と交渉中 |
| 90% | 内定段階 | 口頭内示あり、契約待ち |
確度設定のポイント:
- 担当者の「感覚」ではなく、客観的な基準を設定する
- 予算確認、決裁者との接触、競合状況などを判断材料にする
- 定期的に確度の妥当性を見直す(楽観的すぎないか確認)
3. Excel管理とSFAツールの使い分け
(1) Excelが適している組織(営業10名以下)
Excelやスプレッドシートでの案件管理は、小規模な組織では有効な選択肢です。
Excelが適しているケース:
- 営業メンバーが10名以下
- 費用をかけずに始めたい
- シンプルな管理で十分
- 集計・分析の頻度が低い
Excelのメリット:
- 導入コストがかからない(既存ツールで対応可能)
- 操作に慣れている人が多い
- カスタマイズが自由
- すぐに始められる
Excelの限界:
- 複数人での同時編集が困難
- 最新情報がどれかわかりにくい
- 入力ミスが発生しやすい
- 詳細な分析・集計に時間がかかる
- スマートフォンからの更新が不便
- ファイルの紛失・破損リスク
Excelでも基本的な案件管理は可能ですが、組織が拡大すると限界が見えてきます。
(2) SFA/CRMツールが必要になるタイミング
以下のような状況になったら、SFA/CRMツールの導入を検討する時期です。
導入検討のシグナル:
- 営業メンバーが10名を超えた
- 複数の営業部門やチームがある
- データの集約・分析に時間がかかっている
- Excelファイルの管理が煩雑になった
- 外出先からの更新が必要になった
- 経営層から正確な売上予測を求められている
SFA/CRMツールのメリット:
- リアルタイムで情報共有できる
- 外出先からスマートフォンで更新可能
- レポート・ダッシュボードで自動集計
- 業務の属人化を防止
- データに基づく営業活動の改善
(3) 主要ツールの比較(Mazrica Sales・Sales Cloud・ネクストSFA等)
代表的な案件管理ツールを比較します。料金は2024年時点の情報であり、変更される可能性があるため、導入前に公式サイトで最新情報を確認してください。
主要ツールの特徴:
| ツール | 特徴 | 適した企業規模 |
|---|---|---|
| Mazrica Sales(旧Senses) | カード形式のUI、AI予測機能、使いやすさ重視 | 中小〜中堅企業 |
| Sales Cloud(Salesforce) | 高いカスタマイズ性、豊富な機能、グローバル標準 | 中堅〜大企業 |
| ネクストSFA | 営業特化、シンプル設計、日本製 | 中小企業 |
| eセールスマネージャー | 国産、日本の営業スタイルに対応 | 中小〜中堅企業 |
| HubSpot CRM | 無料プランあり、マーケティング連携に強み | スタートアップ〜中堅企業 |
| kintone | ノーコードでカスタマイズ可能、業務アプリ全般 | 中小企業 |
ツール選定のポイント:
- 自社の営業プロセスに合うか
- 操作性・使いやすさ(現場が使えるか)
- モバイル対応の有無(外出営業が多い場合は必須)
- 既存システムとの連携
- サポート体制(日本語対応の有無)
- 料金体系(初期費用、月額費用、ユーザー数課金)
導入前に無料トライアルで実際に試すことをおすすめします。
4. 効率的な案件管理の実践方法
(1) 週次1on1ミーティングでの進捗確認
案件管理を形骸化させないためには、定期的な進捗確認が重要です。週次での1on1ミーティングが効果的とされています。
1on1で確認すべき内容:
- 各案件の進捗状況と次のアクション
- 停滞している案件の原因と対策
- 受注確度の妥当性確認
- 案件を進めるために必要なサポート
- 新規案件の見込み
効果的な1on1のポイント:
- 事前に案件一覧を確認しておく(双方が準備)
- 数字の確認だけでなく、課題解決にフォーカス
- 30分〜1時間程度で完結させる
- ツールの画面を見ながら会話(認識のズレを防ぐ)
定期的な確認により、案件の放置を防ぎ、早期に課題を発見できます。
(2) レポート・ダッシュボードの活用
SFA/CRMツールを導入している場合、レポート・ダッシュボード機能を活用することで、案件状況を一目で把握できます。
活用すべきレポート例:
- パイプラインレポート: ステージ別の案件数・金額
- 売上予測レポート: 受注確度×金額で予測売上を算出
- 営業活動レポート: 訪問件数、提案件数などの活動量
- 受注/失注分析: 失注理由の傾向分析
ダッシュボード活用のポイント:
- 毎朝/毎週の定点観測を習慣化
- 異常値(停滞案件、急な確度変更など)を早期発見
- マネジメント層への報告資料として活用
(3) モバイル対応による移動時間の活用
外出営業が多い組織では、モバイル対応が案件管理の定着に大きく影響します。
モバイル活用のメリット:
- 訪問直後にその場で更新(記憶が鮮明なうちに)
- 移動時間を活用して案件情報を確認
- 訪問前に顧客情報・過去履歴をチェック
- 上司への報告がリアルタイムに
モバイル利用のポイント:
- 入力しやすいシンプルな画面設計
- 必須項目を絞る(モバイルでの長文入力は負担)
- 音声入力の活用
ツール選定時には、モバイルアプリの使いやすさを実際に確認してください。
5. よくある失敗パターンと対策
(1) 入力項目が多すぎて更新されない
案件管理ツールを導入しても、営業担当者が入力を怠ると効果は出ません。最も多い失敗パターンが「入力項目が多すぎる」問題です。
失敗の原因:
- 「あれも管理したい、これも管理したい」で項目が増える
- 入力に時間がかかり、営業活動の時間が減る
- 入力するメリットが見えない
対策:
- 入力項目は必要最小限に絞る(まずは5〜10項目程度)
- 選択式を多用(フリーテキスト入力を減らす)
- 段階的に項目を追加(最初から完璧を目指さない)
- 入力のメリットを見える化(レポートで活用して見せる)
「シンプルに始めて、必要に応じて拡充する」が定着のコツです。
(2) 業務の属人化によるブラックボックス化
担当者しか案件状況を知らない「属人化」も、案件管理の大きな課題です。
属人化の問題点:
- 担当者の異動・退職時に情報が失われる
- マネージャーが状況を把握できない
- 引き継ぎに時間がかかる
- チームでのサポートができない
対策:
- 定期的な1on1で案件状況を確認・記録
- 案件情報は必ずツールに入力するルールを徹底
- 重要案件はチームで共有(会議で報告)
- 引き継ぎを前提とした記録(誰が見てもわかる書き方)
「自分だけが知っている」状態をなくし、組織として情報を共有する文化を作ることが重要です。
6. まとめ:案件管理を成功させるためのポイント
営業案件管理は、売上予測の精度向上、営業リソースの最適配分、業務の属人化防止など、組織の営業力強化に直結する重要な取り組みです。
成功のポイント:
- 管理項目はシンプルに始め、段階的に拡充する
- 組織規模に応じてExcel/スプレッドシートとSFAツールを使い分ける
- ステージ管理・受注確度の基準を明確に定義する
- 週次1on1で定期的に進捗を確認し、案件の放置を防ぐ
- 入力負荷を減らし、現場が使い続けられる仕組みを作る
- ツール導入だけでなく、運用ルールの整備が重要
次のアクション:
- 現在の案件管理の課題を洗い出す
- 管理すべき必須項目を決める
- ステージ・受注確度の基準を定義する
- Excel管理で十分か、SFAツールが必要かを判断
- ツールを導入する場合は無料トライアルで比較検討
- 運用ルールを策定し、週次1on1を開始する
まずは小さく始め、運用しながら改善していくアプローチがおすすめです。ツール選定時は、各社の公式サイトで最新の料金・機能を確認してください。
よくある質問:
Q: 案件管理で管理すべき項目は何ですか? A: 必須項目は顧客名、案件名、取引額、進捗状況(ステージ)、受注確度、受注見込時期です。最初からすべてを完璧に管理しようとせず、シンプルに始めて段階的に項目を増やすのが定着のコツです。
Q: ExcelからSFAツールに移行すべきタイミングは? A: 営業メンバーが10名を超えた、複数の営業部門がある、データの集約・分析に時間がかかっている、外出先からの更新が必要——こうした状況になったら、SFAツールの導入を検討する時期です。Excel管理の限界が見えたら検討を始めてください。
Q: 案件管理ツールを導入しても定着しない原因は? A: 主な原因は3つあります。入力項目が多すぎる、営業担当者の負担が大きい、入力するメリットが見えない。対策としては、シンプルな項目設計と、データ活用による成果の見える化が定着の鍵です。
Q: 受注確度はどう設定すればよいですか? A: 担当者の「感覚」ではなく、客観的な基準を設定することが重要です。例えば、10%(初期段階)、30%(検討段階・予算未確定)、50%(提案済み・予算確認済み)、70%(見積提出・交渉中)、90%(内定・契約待ち)のように、各段階の定義を明確にしてください。
Q: どのSFA/CRMツールを選べばよいですか? A: 組織規模、予算、必要な機能によって最適なツールは異なります。操作性を重視するならMazrica Sales、高いカスタマイズ性が必要ならSalesforce、費用を抑えたいならHubSpot CRMの無料プランなどが選択肢になります。無料トライアルで実際に試してから判断することをおすすめします。
