営業の失注率が高くて悩んでいる...
BtoB企業の営業活動において、失注は避けられない課題です。しかし、「なぜ失注したのかが分からない」「失注理由を分析しても改善策が見えない」「同じ理由で何度も失注してしまう」といった悩みを抱えている営業担当者やマネージャーは多いと思います。
この記事では、BtoB企業の営業担当者・マネージャー向けに、営業失注の主な理由、分析方法、具体的な改善策とPDCAサイクルの回し方を詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 失注は営業プロセス改善の重要な情報源(「宝の山」として活用すべき)
- 主な失注理由は価格・機能・競合・タイミング・提案力・信頼関係の6つ
- 失注分析は営業プロセス別・担当者別・競合別・業界別・時系列の5つの方法で行う
- SFA・CRMツールを活用することで失注要因をより正確に分析できる
- 失注を防ぐには丁寧なヒアリング、ニーズに合った提案、決裁者の早期特定が重要
1. 営業失注の定義と向き合う重要性
失注を正しく分析・改善するには、まず「失注」の定義を組織で明確にする必要があります。
(1) 失注とは何か(受注に至らなかったケース・契約キャンセル)
失注とは、商品やサービスをプレゼンしたにもかかわらず発注をもらえなかったケース、または受注された取引がキャンセルになったケースを指します。
失注の具体例:
- プレゼン・提案を行ったが、受注に至らなかった
- 見積もりを提出したが、他社が選ばれた
- 契約寸前でキャンセルになった
- 商談が長期化し、最終的に「検討を見送る」と連絡があった
(2) 「失注」の定義を組織で明確にする必要性
組織内で「失注」の定義が明確でないと、営業担当者が無期限に「交渉中」と判断し、営業リソースを浪費する可能性があります。
失注の定義を明確にするメリット:
- 営業担当者が「いつまで追いかけるべきか」を判断できる
- 失注データを正確に収集できる(データの品質が向上)
- 営業リソースを有効活用できる(見込みの薄い案件に時間をかけない)
失注の定義例:
- 「提案後3ヶ月経過しても返答がない場合は失注とみなす」
- 「顧客から明確に『見送る』と連絡があった時点で失注とする」
- 「競合他社が選ばれた時点で失注とする」
(3) 失注を営業プロセス改善の重要な情報源として活用する
失注は単なる「失敗」ではなく、営業プロセスを改善するための重要な情報源です。2024年のトレンドとして、失注案件を「宝の山」として活用する「失注リカバリー戦略」が注目されています。
失注から学べること:
- 営業プロセスのどこにボトルネックがあるか(アポ取り・ヒアリング・提案・クロージング)
- 自社の製品・サービスの弱点はどこか(価格・機能・品質)
- 競合他社との差別化ポイントは何か
- 営業担当者ごとの傾向はどうか(ヒアリングが弱い、提案力が不足等)
2. 営業失注の主な理由6つ(価格・機能・競合・タイミング・提案力・信頼関係)
失注理由は大きく6つに分類できます。それぞれの理由と具体例を理解しましょう。
(1) 価格・予算の不一致(費用対効果の説明不足)
価格・予算の不一致は、最も一般的な失注理由の一つです。
よくあるパターン:
- 顧客の予算を超える見積もりを提示した
- 競合他社の方が安価だった
- 費用対効果を十分に説明できず、顧客が「高い」と感じた
価格失注の背景:
- 顧客の予算を事前にヒアリングできていない
- 費用対効果(ROI)を具体的に説明できていない
- 価格以外の価値(サポート体制・導入実績・機能の優位性等)を訴求できていない
(2) 機能・品質の不十分(ニーズとのミスマッチ)
自社の製品・サービスが顧客のニーズに合致していない場合、失注につながります。
よくあるパターン:
- 顧客が求める機能が自社製品に実装されていない
- 競合他社の方が機能面で優位だった
- 品質(性能・信頼性・セキュリティ等)が顧客の要求水準を満たしていない
機能・品質失注の背景:
- 顧客のニーズを正確に把握できていない(ヒアリング不足)
- 自社製品の機能・品質を過大評価している
- 競合他社の製品を十分に研究していない
(3) 競合他社の優位性(差別化ポイントの不明確さ)
競合他社が選ばれる場合、自社との差別化ポイントが不明確である可能性があります。
よくあるパターン:
- 競合他社の方が価格・機能・ブランド力で優位だった
- 競合他社の営業担当者の方が信頼関係を構築できていた
- 顧客が既に競合他社の製品を使っており、乗り換えコストが高かった
競合失注の背景:
- 競合他社の強み・弱みを十分に分析できていない
- 自社の差別化ポイントを明確に訴求できていない
- 競合比較表を用意していない
(4) タイミング・導入時期の問題
タイミングが合わず、失注するケースもあります。
よくあるパターン:
- 顧客の導入時期が未定(「いつか導入したい」という状態)
- 予算の都合で次年度以降に延期された
- 組織変更・人事異動により商談が中断した
タイミング失注の背景:
- 顧客の導入時期を事前にヒアリングできていない
- 「いつまでに導入したいか」を明確にできていない
- 長期的なフォローアップ体制がない
(5) 提案内容の不十分(ヒアリング不足・一方的な提案)
提案内容が顧客のニーズに合致していない、または一方的な提案になっている場合、失注につながります。
よくあるパターン:
- ヒアリング不足で顧客のニーズを正確に把握できていない
- 一方的に自社製品の機能を説明するだけ(顧客の課題解決につながらない)
- 提案資料が分かりにくい、または専門用語が多すぎる
提案失注の背景:
- ヒアリングスキルが不足している
- 顧客の課題を深掘りできていない
- 提案資料の作成スキルが不足している
(6) 営業担当者への信頼不足(態度・行動・決裁者への到達不足)
営業担当者の態度や行動が原因で失注するケースもあります。
よくあるパターン:
- 遅刻・資料忘れなど基本的なビジネスマナーの欠如
- 顧客の質問に的確に答えられない(知識不足)
- 決裁者に会えず、担当者レベルで止まってしまう
信頼失注の背景:
- 基本的なビジネスマナーの徹底不足
- 製品・サービスの知識不足
- 決裁者の早期特定ができていない
3. 失注分析の5つの方法(営業プロセス別・担当者別・競合別・業界別・時系列)
失注分析は、以下の5つの方法で行うと効果的です。
(1) 営業プロセス別分析(アポ取り・ヒアリング・提案・クロージング)
営業プロセスの各段階ごとに失注理由と傾向を把握することで、ボトルネックを特定できます。
営業プロセスの段階:
- アポ取り: 初回訪問のアポイントを取る段階
- 初回訪問・ヒアリング: 顧客のニーズや課題を聞き出す段階
- 提案・プレゼン: 見積もり・提案資料を提示する段階
- クロージング: 契約締結を目指す段階
プロセス別分析の例:
- アポ取り段階での失注が多い → アプローチ方法・ターゲティングに問題がある可能性
- ヒアリング段階での失注が多い → ヒアリングスキル・信頼関係構築に問題がある可能性
- 提案段階での失注が多い → 提案内容・価格設定に問題がある可能性
- クロージング段階での失注が多い → 決裁者への到達不足・競合対策に問題がある可能性
(2) 営業担当者別分析(担当者ごとの傾向把握)
担当者ごとにどういった要因での失注が多いのか分析することで、担当者ごとの傾向が把握でき、1人1人に合わせた改善策を講じることができます。
担当者別分析の例:
- A担当者: 価格失注が多い → 費用対効果の説明スキル向上が必要
- B担当者: 提案失注が多い → ヒアリングスキル・提案資料作成スキル向上が必要
- C担当者: 競合失注が多い → 競合比較・差別化ポイントの訴求スキル向上が必要
(3) 競合他社別分析(競合との差別化ポイント特定)
競合他社ごとに失注理由を分析することで、競合との差別化ポイントを特定できます。
競合別分析の例:
- 競合A社に負ける場合: 価格で負けることが多い → 費用対効果の訴求強化、または柔軟な価格設定が必要
- 競合B社に負ける場合: 機能で負けることが多い → 自社製品の機能強化、または他の価値(サポート体制・導入実績等)の訴求が必要
(4) 業界別分析(業界特有の失注パターン把握)
業界ごとに失注理由を分析することで、業界特有の失注パターンを把握できます。
業界別分析の例:
- 製造業: 導入時期が長期化する傾向(稟議プロセスが複雑)
- IT業界: 競合比較が厳しい傾向(複数社比較が一般的)
- 金融業: セキュリティ・コンプライアンス要件が厳しい傾向
(5) 時系列分析(シーズンやトレンドによる変化)
時系列で失注理由を分析することで、シーズンやトレンドによる変化を把握できます。
時系列分析の例:
- 年度末(3月): 予算消化で受注率が上がる傾向
- 年度初め(4月): 予算未確定で失注が増える傾向
- 特定の月: 競合他社のキャンペーンで失注が増える傾向
4. 失注理由を正確に聞き出すヒアリング手法
失注理由を正確に把握するには、失注後のヒアリングが重要です。
(1) 失注後のヒアリングで率直な理由を引き出す方法
失注後のヒアリングでは、顧客が本音を話しやすい質問の仕方が重要です。
効果的な質問例:
- 「今回は残念ながらご縁がありませんでしたが、差し支えなければ、選定されなかった理由を教えていただけますか?」
- 「次回の提案に活かしたいので、どの点が不足していたか率直にご意見をいただけますか?」
- 「競合他社と比較して、どの点が決め手になりましたか?」
ヒアリングのポイント:
- 顧客を責めるような質問は避ける
- 「次回の提案に活かしたい」という姿勢を示す
- 具体的な改善ポイントを聞き出す
(2) 顧客が本音を話しやすい質問の仕方
顧客が本音を話しやすくするには、以下のような質問の仕方が効果的です。
本音を引き出す質問例:
- 「率直にお聞きしますが、価格面で問題がありましたか?」(Yes/Noで答えやすい質問)
- 「もし価格が同じだったら、当社を選んでいただけましたか?」(仮定の質問で本音を引き出す)
- 「今回の選定で最も重視されたポイントは何でしたか?」(優先順位を明確にする)
(3) 「失注原因」と「失注理由」の区別(2024年最新トレンド)
2024年12月に株式会社Xpotentialが公開した記事では、「失注原因」と「失注理由」を区別することが推奨されています。
失注原因と失注理由の違い:
- 失注原因: 営業プロセスや営業担当者の行動に起因する問題(ヒアリング不足・提案力不足・決裁者への到達不足等)
- 失注理由: 顧客が表明する理由(価格・機能・競合等)
区別するメリット:
- 失注原因を特定することで、営業プロセスの改善につながる
- 失注理由だけに注目すると、営業担当者の行動改善が進まない可能性がある
(4) SFA・CRMツールを活用した失注データの記録
SFAやCRMツールを活用することで、営業活動を可視化し、失注要因をより正確に分析できます。
主なSFA・CRMツール:
- Salesforce(世界最大のCRM、高機能)
- HubSpot CRM(無料プランあり、使いやすい)
- Mazrica Sales(国産、AI活用)
- GENIEE SFA/CRM(国産、定着率99%)
- Zoho CRM(コストパフォーマンスが高い)
ツール活用のメリット:
- 失注データを一元管理できる
- 営業プロセス別・担当者別・競合別・業界別・時系列で自動的に分析できる
- ダッシュボードで失注状況をリアルタイムで可視化できる
5. 失注理由別の改善策とPDCAサイクルの回し方
失注理由ごとの具体的な改善策と、PDCAサイクルの回し方を紹介します。
(1) 価格失注への対策(費用対効果の明確化・柔軟な価格設定)
価格失注を減らすには、費用対効果の明確化と柔軟な価格設定が重要です。
費用対効果の明確化:
- ROI(投資対効果)を具体的に数値で示す(例: 「導入後6ヶ月で初期投資を回収できます」)
- 導入事例を活用し、実際の効果を提示する
- 価格以外の価値(サポート体制・導入実績・機能の優位性等)を訴求する
柔軟な価格設定:
- 複数の価格プランを用意する(エントリープラン・スタンダードプラン・エンタープライズプラン等)
- 初期費用を抑えたプランを提案する
- 支払い条件を柔軟にする(分割払い・サブスクリプション等)
(2) 提案力向上の施策(丁寧なヒアリング・ニーズに合った提案)
提案失注を減らすには、丁寧なヒアリングとニーズに合った提案が重要です。
丁寧なヒアリングの方法:
- 顧客の課題を深掘りする(「なぜそう思うのか?」「具体的にはどういうことか?」と質問を重ねる)
- 顧客の理想像を聞き出す(「理想的にはどうなりたいか?」)
- 顧客の懸念点を確認する(「導入にあたって不安な点はありますか?」)
ニーズに合った提案の方法:
- 事前の分析をもとに、顧客のニーズに合った商品の提案を行う
- 提案資料は分かりやすく、専門用語を避ける
- 導入後のサポート体制も明確に説明する
(3) 決裁者の早期特定と信頼関係構築
決裁者への到達不足による失注を減らすには、決裁者の早期特定と信頼関係構築が重要です。
決裁者の早期特定:
- 初回訪問時に「今回の選定はどなたが最終決定されますか?」と質問する
- 組織図を確認し、決裁者を特定する
- 決裁者との面談を早期に設定する
信頼関係構築の方法:
- 基本的なビジネスマナーを徹底する(遅刻しない・資料を忘れない・約束を守る)
- 顧客の質問に的確に答える(知識不足の場合は「確認してお答えします」と正直に伝える)
- 定期的なフォローアップを行う(情報提供・業界トレンドの共有等)
(4) 営業プロセスのボトルネック特定とPDCA実践
営業プロセスのボトルネックを特定し、PDCAサイクルを回すことで、継続的な改善が可能になります。
PDCAサイクルの回し方:
- Plan(計画): 失注データを分析し、ボトルネックを特定 → 改善策を計画
- Do(実行): 改善策を実行(ヒアリングスキル研修・提案資料のテンプレート化等)
- Check(確認): 改善効果を測定(受注率・失注率の変化を確認)
- Act(改善): 効果が出ない場合は改善策を見直す
(5) SFA・CRMツールによる失注分析の自動化・可視化
2024年のトレンドとして、SFAやCRMツールによる失注分析の自動化・可視化が主流になっています。
自動化・可視化のメリット:
- 失注データを手動で集計する手間が不要
- ダッシュボードでリアルタイムに失注状況を確認できる
- 営業プロセス別・担当者別・競合別・業界別・時系列で自動的に分析できる
ツール活用の注意点:
- ツールを導入するだけでは効果が出ない(データ入力のルール整備が必要)
- 営業担当者がツールを使いこなせるようトレーニングが必要
6. まとめ:失注を「宝の山」として活用するための行動指針
営業失注は単なる「失敗」ではなく、営業プロセスを改善するための「宝の山」です。失注理由を正確に分析し、具体的な改善策を実行することで、受注率を向上できます。
失注を「宝の山」として活用するための行動指針:
- 組織内で「失注」の定義を明確にする
- 失注後のヒアリングで率直な理由を聞き出す
- 失注データをSFA・CRMツールに記録する
- 営業プロセス別・担当者別・競合別・業界別・時系列の5つの方法で分析する
- 失注理由ごとの改善策を計画・実行する
- PDCAサイクルを回し、継続的に改善する
次のアクション:
- 直近3ヶ月の失注データを収集する
- 営業プロセス別に失注理由を分析する
- ボトルネックを特定し、改善策を計画する
- SFA・CRMツール(Salesforce・HubSpot・Mazrica・GENIEE・Zoho等)の導入を検討する
- 営業担当者向けのヒアリングスキル研修を実施する
- 決裁者の早期特定を徹底する
※失注理由や分析方法は営業環境により変化する可能性があります。最新情報は各社公式サイトをご確認ください。(この記事は2024年時点の情報です)
