営業目標の達成率が低い、見込み精度が上がらない...どう改善すべき?
「営業目標を達成できない月が続いている」「売上予測の精度が低く、経営判断に困っている」——そんな課題を抱えている営業マネージャーや経営者は多いのではないでしょうか。
営業活動を数値で把握し、目標達成に向けた軌道修正を行うためには「予実管理」が欠かせません。しかし、エクセルでの手動管理では限界があり、ツール導入を検討しているという声もよく聞きます。この記事では、営業の予実管理の目的・やり方から、精度を上げるポイント、ツール活用まで実践的に解説します。
この記事のポイント:
- 予実管理とは「予算(計画)」と「実績(結果)」を比較・分析する経営管理手法
- 最低でも月次、できれば週次・日次で実施することで早期の軌道修正が可能
- Excel管理には限界があり、規模拡大に伴いSFA/CRMツール導入を検討
- 「ヨミ表」を活用して案件ごとの受注確度を可視化すると精度が向上
- 細かい差異に固執せず、全体への影響が大きい項目に優先的に対応
営業の予実管理が重要な理由
営業の予実管理が重要な理由は、以下の3点に集約されます。
予実管理の重要性:
| 目的 | 効果 |
|---|---|
| 営業判断の精度向上 | 数値に基づく客観的な意思決定が可能に |
| リスクの早期発見 | 目標未達の兆候を早期に察知し対処 |
| リソース配分の最適化 | 成果が出ている施策にリソースを集中 |
予実管理を適切に行うことで、「なぜ目標を達成できたのか(できなかったのか)」を分析し、次のアクションにつなげることができます。勘や経験に頼った営業から、データに基づく営業へ変革するための基盤となるのが予実管理です。
予実管理の基礎知識と目的
(1) 予算と実績の比較分析とは
予実管理とは、「予算(計画)」と「実績(結果)」を比較・分析し、差異の原因を特定して経営改善に活かす管理手法です。「予算実績管理」とも呼ばれます。
予実管理で比較する主な項目:
- 売上高: 予算と実績の差額、達成率
- 粗利: 利益率の推移、計画との乖離
- 案件数: パイプラインの量的な充足度
- 受注率: 商談から受注への転換率
- 経費: コスト管理、予算内での運用
差異分析のポイント:
- 差異が生じた原因を特定(価格、数量、タイミング等)
- プラス差異(予算超過達成)とマイナス差異(未達)の両方を分析
- 一時的な要因か、構造的な問題かを見極める
(2) 営業判断の精度向上とリスク早期発見
予実管理を適切に行うことで、以下のような効果が期待できます。
営業判断の精度向上:
- 過去のデータに基づく売上予測が可能に
- 案件の受注確度を客観的に評価
- 営業リソースの適切な配分
リスク早期発見:
- 目標未達の兆候を早期に察知
- パイプラインの不足を事前に把握
- 特定顧客・商材への依存リスクを可視化
予実管理の頻度を高める(月次→週次→日次)ことで、問題が大きくなる前に対処できるようになります。
予実管理の具体的なやり方と進め方
(1) 予算策定から差異分析までの5ステップ
営業の予実管理は、以下の5ステップで進めることが一般的です。
ステップ1: 予算策定
- 年間・四半期・月間の売上目標を設定
- 過去実績・市場動向・営業リソースを考慮
- トップダウン(経営目標から逆算)とボトムアップ(案件積み上げ)を組み合わせる
ステップ2: KPI設定
- 売上目標を達成するための中間指標を設定
- 例: 商談数、受注率、顧客単価、リード数
- 測定可能で、行動につながる指標を選ぶ
ステップ3: 実績データの収集
- 営業活動の結果を定期的に記録
- 売上、商談数、受注数、案件進捗などを把握
- CRM/SFAツールを活用すると自動化が可能
ステップ4: 差異分析
- 予算と実績の差異を算出
- 差異の原因を特定(価格・数量・タイミング等)
- 全体への影響が大きい項目に優先的に対応
ステップ5: アクションプラン策定
- 差異を埋めるための具体的なアクションを決定
- 担当者・期限・目標値を明確化
- 次回の予実管理でアクションの効果を検証
(2) 日次・週次・月次での実施サイクル
予実管理は、サイクルを短くするほど早期の軌道修正が可能になります。
推奨される実施サイクル:
| サイクル | 確認内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 日次 | 案件進捗、当日の活動結果 | 即時対応が必要な問題の発見 |
| 週次 | 週間の売上・商談状況、KPI進捗 | 週単位での軌道修正 |
| 月次 | 月間の予実差異、原因分析 | 翌月以降の戦略調整 |
実施のポイント:
- 毎週・毎月同じ曜日・日程で実施(習慣化)
- 短い時間で効率的に確認(長時間の会議は避ける)
- 数値だけでなく「なぜ」を議論する
Excel管理とSFA/CRMツールの比較
(1) Excelのメリット・デメリットと限界
多くの企業では、まずExcelで予実管理を始めるケースが多いです。
Excelのメリット:
- 導入コストが低い(既存のソフトウェアを活用)
- 自由にカスタマイズ可能
- 操作に慣れている人が多い
Excelのデメリット・限界:
- 手動更新のため時間・労力がかかる
- 計算式ミス・データ破損のリスク
- 複数人での同時編集が困難
- データ量が増えると管理が複雑化
- リアルタイムの情報共有ができない
Excel予実管理表の基本項目:
- 売上高(予算・実績・達成率・差異)
- 経費(予算・実績・達成率・差異)
- 利益(売上高-経費、達成率)
- 案件別・担当者別・商品別などの内訳
小規模なチーム(10名以下)であればExcelでも十分対応できますが、規模拡大に伴い限界が見えてくることが一般的です。
(2) SFA/CRMツールの自動化・リアルタイム共有
SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理システム)を活用することで、予実管理を効率化・高精度化できます。
SFA/CRMツールのメリット:
| 項目 | Excel | SFA/CRMツール |
|---|---|---|
| データ入力 | 手動 | 営業活動と連動して自動記録 |
| 共有 | ファイル共有 | リアルタイムでチーム共有 |
| 可視化 | グラフ手動作成 | ダッシュボードで自動可視化 |
| 予測精度 | 担当者の勘 | 過去データに基づく予測 |
| 分析 | ピボットテーブル | ドリルダウン・多角的分析 |
代表的なSFA/CRMツール:
- Salesforce: グローバルリーダー、大企業〜中堅企業向け
- HubSpot: 無料プランあり、中小企業向け
- GENIEE SFA/CRM: 国産、中小企業向け
- Mazrica Sales: 国産、使いやすさに定評
※各ツールの料金・機能は変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。
予実管理の精度を上げるポイント
(1) ヨミ表の活用と受注確度の可視化
営業の予実管理精度を上げるには、「ヨミ表」の活用が効果的です。
ヨミ表とは: 案件ごとの受注確度を可視化し、売上予測の精度を向上させる営業管理ツールです。
ヨミ表の基本構成:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 案件名 | 顧客名・商談内容 |
| 金額 | 予想受注金額 |
| 受注確度 | A(90%以上)、B(60-90%)、C(30-60%)、D(30%未満) |
| クロージング予定日 | 受注予定時期 |
| ステータス | 商談中、提案中、交渉中など |
確度別の売上予測例:
確度A案件: 1,000万円 × 90% = 900万円
確度B案件: 800万円 × 70% = 560万円
確度C案件: 500万円 × 40% = 200万円
—————————————————
加重平均売上予測: 1,660万円
受注確度を設定する際は、過去の実績データに基づいて確度基準を定義し、担当者による認識のばらつきを防ぐことが重要です。
(2) よくある失敗例と対策
失敗例1: 細かい差異に固執する
- 小さな数値の違いにこだわり、全体の予実管理が滞る
- 対策: 全体への影響が大きい差異に優先的に対応。重要度で優先順位をつける
失敗例2: 予算に過度に固執する
- 市場環境が変化しても予算を変更せず、実態と乖離
- 対策: 必要に応じて予算を見直す。四半期ごとの予算ローリングも検討
失敗例3: 数値の記録だけで終わる
- 予実を記録するだけで、改善アクションにつながらない
- 対策: 差異分析後、必ず具体的なアクションプランを策定。PDCAを回す
失敗例4: ツール導入後に定着しない
- SFA/CRMを導入したが、入力が徹底されない
- 対策: 運用ルールの策定、定着支援(トレーニング・フォロー)、入力のインセンティブ設計
まとめ:予実管理を成功させるために
営業の予実管理は、目標達成に向けた軌道修正を可能にする重要なプロセスです。成功させるためのポイントをまとめます。
成功の鍵:
- 定期的な実施: 最低月次、できれば週次・日次で予実を確認
- 差異の優先順位付け: 全体への影響が大きい項目から対応
- ヨミ表の活用: 案件ごとの受注確度を可視化し、予測精度を向上
- ツール活用: 規模拡大に伴いSFA/CRMで効率化・自動化
- アクションにつなげる: 数値の記録だけでなく、改善行動を実行
次のアクション:
- 現状の予実管理方法を棚卸し(Excel/ツール、頻度、担当者)
- 予実差異の大きい項目・期間を特定
- ヨミ表の導入・確度基準の定義
- SFA/CRMツールの比較検討(規模拡大が見込まれる場合)
- 週次・月次の予実管理ミーティングを定例化
予実管理は、継続的な改善サイクルを回すことで効果を発揮します。まずは現状を把握し、できることから始めてみましょう。
よくある質問:
Q: 予実管理はどのくらいの頻度で行うべきですか? A: 最低でも月次、できれば週次・日次の短いサイクルで実施することをお勧めします。間を空けずに定期的にチェックすることで、乖離が大きくなる前に対処できます。
Q: Excelと専用ツールどちらで予実管理すべきですか? A: 小規模(10名以下)ならExcelで十分です。規模拡大に伴いデータ量が増えると管理が複雑化するため、SFA/CRMツールの導入を検討しましょう。自動化・リアルタイム共有で精度向上が期待できます。
Q: 予実に乖離が生じた場合どうすべきですか? A: まず原因を分析し、改善アクションを立案・実行します。全体への影響が大きい差異に優先的に対応し、小さな数値の違いにこだわりすぎないことがポイントです。必要に応じて予算自体の見直しも検討しましょう。
Q: 予実管理のKPIは何を設定すべきですか? A: 売上高、粗利、案件数、受注率、達成率が代表的なKPIです。自社の営業プロセスに合わせて、測定可能で行動につながる指標を選びましょう。
Q: ヨミ表とは何ですか? A: 案件ごとの受注確度を可視化し、売上予測の精度を向上させる営業管理ツールです。A(90%以上)〜D(30%未満)などの確度を設定し、加重平均で売上予測を算出します。
