SaaS営業とは|サブスクリプション型ビジネスにおける営業の特徴
(1) SaaS(Software as a Service)の基礎知識
SaaS(Software as a Service)とは、クラウド上で提供されるソフトウェアサービスです。従来のパッケージソフトのように買い切りで購入するのではなく、月額・年額でサブスクリプション契約を結び、継続的に利用します。
代表的なSaaSには、Salesforce(CRM)、HubSpot(マーケティングオートメーション)、Slack(コミュニケーション)、Zoom(Web会議)などがあります。
(2) サブスクリプション型ビジネスモデルと営業の役割
サブスクリプション型ビジネスでは、契約時の初期収益は限定的で、継続利用による長期的な収益が重要です。そのため、営業は契約獲得だけでなく、契約後の顧客満足度向上・解約防止にも責任を持ちます。
従来型営業との違い:
- 従来型営業: 契約獲得がゴール
- SaaS営業: 契約獲得は通過点、継続利用がゴール
(3) 国内SaaS市場の動向|2024年1.4兆円、2028年2兆円予測
国内SaaS市場は急成長しています。One Capitalの調査によると、2024年の国内SaaS市場規模は1.4兆円、2028年には2兆円に達すると予測されています(年率約11%成長)。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の普及により、中小企業でもSaaS導入が進んでおり、求人数も増加傾向にあります。
SaaS営業と一般営業の違い|継続課金・LTV重視・分業体制の本質
(1) 契約形態の違い|買い切り型vs継続課金型
一般営業(買い切り型):
- 契約時に全額を支払い
- 契約獲得が営業のゴール
- 初期収益が大きい
SaaS営業(継続課金型):
- 月額・年額で継続的に支払い
- 契約後の継続利用が前提
- 短期間では利益が得られず、長期的な顧客関係が必要
(2) 営業目標の違い|初期契約獲得vsLTV最大化
一般営業では初期契約獲得が目標ですが、SaaS営業ではLTV(Life Time Value、顧客生涯価値)最大化が目標です。
LTV(顧客生涯価値)とは:
- 1顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益の総額
- 例: 月額10,000円のSaaSを3年間利用した場合、LTV = 10,000円 × 36ヶ月 = 360,000円
LTVを最大化するには、契約時の金額だけでなく、継続利用期間を延ばすことが重要です。
(3) 「売って終わり」ではなく「売ってからがスタート」の考え方
SaaS営業では、契約後のオンボーディング(初期導入支援)、活用支援、アップセル(上位プランへの移行)、クロスセル(関連製品の提案)が売上に直結します。
営業担当者は、契約時に顧客との信頼関係を築き、カスタマーサクセス部門にスムーズに引き継ぐことが求められます。
The Model型営業プロセス|マーケティング・IS・FS・CSの4段階分業
(1) The Modelとは|営業プロセスの4段階分業化
The Modelとは、営業プロセスをマーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの4段階に分業化し、各段階を数値化する営業モデルです。SaaS企業で広く採用されており、営業効率を最大化します。
(2) マーケティング|リード獲得とナーチャリング
マーケティング部門は、Webサイト・SNS・広告・セミナー等でリード(見込み客)を獲得し、メールやコンテンツで育成(ナーチャリング)します。
主なKPI:
- リード獲得数
- コンバージョン率(CV率)
(3) インサイドセールス|オンラインツールを活用した非対面営業
インサイドセールスは、電話・メール・チャットなどのオンラインツールを活用した非対面営業です。マーケティングから引き継いだリードを育成し、商談化(フィールドセールスへの引き継ぎ)を担当します。
主な役割:
- リードの優先順位付け(リードスコアリング)
- 課題ヒアリング
- 商談化(フィールドセールスへの引き継ぎ)
SaaS営業の分業体制との相性が良く、営業効率を向上させます。
(4) フィールドセールス|対面商談とクロージング
フィールドセールスは、対面(またはオンライン商談)で顧客と接し、クロージング(契約締結)を担当します。
主な役割:
- デモンストレーション
- 提案書作成
- 契約交渉・クロージング
(5) カスタマーサクセス|継続利用支援と解約防止
カスタマーサクセスは、契約後の顧客の成功を支援し、継続利用と解約防止を担います。
主な役割:
- オンボーディング(初期導入支援)
- 活用支援(定期的なフォローアップ)
- アップセル・クロスセルの提案
- 解約防止(Churn対策)
カスタマーサクセスの成果がLTV最大化に直結します。
SaaS営業の主要KPI|ARR・MRR・Churn Rate・LTVの重要性
(1) ARR・MRR|年間・月間経常収益の管理
ARR(Annual Recurring Revenue、年間経常収益):
- 年間の継続的な売上
- SaaSビジネスの成長を測る重要指標
MRR(Monthly Recurring Revenue、月間経常収益):
- 月間の継続的な売上
- 月次での進捗管理に使用
(2) Churn Rate(解約率)|2.0%以下が目安
Churn Rate(解約率)は、一定期間内に解約した顧客の割合です。SaaSビジネスで最重要指標の一つとされており、2.0%以下を目安とすることが一般的です。
計算式:
- Churn Rate = (解約顧客数 ÷ 期初の総顧客数) × 100
解約率が高いと、新規契約を獲得しても収益が伸びず、ビジネスが成長しません。
(3) LTV(顧客生涯価値)|長期的な顧客関係の価値測定
LTV(Life Time Value、顧客生涯価値)は、1顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益の総額です。
計算式:
- LTV = 平均月額料金 × 平均継続期間(月数)
LTVを最大化するには、解約率を下げ、アップセル・クロスセルで単価を上げることが重要です。
(4) CAC(顧客獲得コスト)とのバランス
CAC(Customer Acquisition Cost、顧客獲得コスト)は、1顧客を獲得するためにかかる費用です。
計算式:
- CAC = 営業・マーケティング費用 ÷ 新規顧客獲得数
健全な指標:
- LTV ÷ CAC = 3以上
LTVがCACの3倍以上であれば、営業・マーケティング投資が効率的と判断できます。
SaaS営業で成功するための実践的戦略|顧客課題の解決と信頼関係構築
(1) 「製品を売る」から「顧客の課題を解決する」へ
SaaS営業の本質は、「製品を売る」ことではなく「顧客の課題を解決する」ことです。顧客の潜在的な課題を引き出し、SaaSがどのように解決できるかを提案する力が求められます。
(2) 部署をまたいだ関係性構築とLTV向上
契約時に特定の担当者だけでなく、部署をまたいだ複数の関係者と接点を持つことで、解約リスクを低減できます。担当者が異動・退職しても、他の関係者が継続利用を支援してくれる可能性が高まります。
(3) SFA・CRM・MAツールを活用したデータ共有と営業効率化
SFA(Sales Force Automation)、CRM(Customer Relationship Management)、MA(Marketing Automation)などのツールを活用し、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセス間でデータを共有することで、スムーズなコミュニケーションと営業効率化を実現します。
(4) オンボーディング連携による初期離脱の防止
契約直後の初期離脱を防ぐため、営業はカスタマーサクセスにスムーズに引き継ぎ、オンボーディング(初期導入支援)を連携して進めることが重要です。
まとめ|2024-2025年のSaaS営業トレンドと今後の展望
SaaS営業は、サブスクリプション型ビジネスの特性上、契約後の継続利用とLTV最大化が目標です。The Model型営業プロセスを採用し、主要KPIを数値管理することで、営業効率を最大化できます。
(1) 生成AIの活用|既存プロダクトへのAI統合と新たな価値創出
2024年のトレンドは生成AIの台頭です。既存プロダクトへのAI機能統合により、新たな価値創出が進んでいます(Figma、Notion、国内ではFlyle、Loglassなど)。
(2) Muscular Growth|効率的で収益性の高い成長へシフト
2023年から「Muscular Growth(筋肉質な成長)」がキーワードとなり、成長至上主義から効率的で収益性の高い成長へシフトしています。
(3) エンタープライズ市場への注力とARPU向上
エンタープライズ市場(大企業向け)への注力により、ARPU(Average Revenue Per User、ユーザーあたり平均収益)向上が期待されています。
次のアクション:
- The Model型営業プロセスを自社に導入し、各段階のKPIを設定する
- 解約率(Churn Rate)を定期的に測定し、2.0%以下を目指す
- SFA・CRM・MAツールを導入し、部門間のデータ共有を強化する
- 生成AIツールを活用し、営業効率を向上させる
SaaS営業の本質を理解し、顧客課題の解決とLTV最大化を実現しましょう。
