広告投資の効果測定、ROASとROIのどちらを見ればいい?
BtoB企業のマーケティング担当者の多くが、広告投資の効果測定で悩んでいます。「ROASが良いのに予算が承認されない」「ROIとROASの違いがよく分からない」「どちらを重視すべきか判断できない」といった課題は珍しくありません。
実は、ROASとROIは測定する対象が異なり、使い分けが重要です。ROASは広告キャンペーンの効率を測る指標、ROIは投資全体の収益性を評価する指標です。この記事では、BtoB企業がROASとROIをどう使い分け、広告投資の効果を正しく測定すべきかを解説します。
この記事のポイント:
- ROASは「売上÷広告費」で100%が基準、ROIは「利益÷投資額」で0%が基準
- 企業は広告運用プランでROASよりROIを重視する傾向がある(利益が出ていなければ存続できないため)
- ROASで広告キャンペーンの効率を測り、ROIで全体的な事業収益性を評価する両方の併用が推奨される
- ROASが高くてもROIが低い場合、コスト構造の見直しが必要
- 2024年時点では、短期的なROASと長期的なROIのバランスを取ることが重視されている
1. ROASとROIとは何か?
まず、ROASとROIの基本的な定義と、なぜこれらの指標が重要なのかを確認しましょう。
(1) ROAS(広告費用対効果)の定義
ROAS(Return On Advertising Spend)は、広告費に対してどれだけの売上を上げられたかを測る指標です。広告キャンペーンの直接的な効率を評価するために用いられます。
ROASの特徴:
- 測定対象は「売上」
- 基準値は100%(100%を下回ると広告費が売上を上回る)
- 広告キャンペーン単位での効率測定に適している
例えば、広告費100万円で売上300万円を得た場合、ROASは300%となります。
(2) ROI(投資利益率)の定義
ROI(Return On Investment)は、投資した資本に対してどれだけの利益が得られたかを測る指標です。広告費だけでなく、人件費や製造コストなども含めた包括的な投資効果を評価します。
ROIの特徴:
- 測定対象は「利益」
- 基準値は0%(0%を上回れば利益が出ている)
- 事業全体の収益性評価に適している
例えば、投資額100万円で利益50万円を得た場合、ROIは50%となります。
(3) 両指標が重要な理由
ROASとROIの両方を組み合わせることで、完全な効果測定が可能になります。ROASだけでは売上の効率しか分からず、ROIだけでは広告キャンペーン単位の評価ができません。
2024年時点で、マーケターはROASとROIの両方を組み合わせて包括的なキャンペーン評価を行う重要性を認識しています。
(参考: GoCardless「ROAS vs. ROI: What's the Difference?」)
2. ROASとROIの違いと使い分け
ROASとROIには3つの重要な違いがあります。
(1) 基準値の違い(ROASは100%、ROIは0%)
ROASは100%を基準に効果判定します。100%を下回ると、広告費が売上を上回っている状態です。一方、ROIは0%を基準に効果判定します。0%を上回れば利益が出ています。
基準値の違い:
- ROAS 100%: 広告費と売上が同額(損益分岐点ではない)
- ROI 0%: 投資額と利益が同額(損益分岐点)
この違いを理解せずに比較すると、誤った判断につながります。
(参考: メディックス「ROIとROASの違いは?計算方法やCPAとの使い分け方についても解説」)
(2) 測定対象の違い(売上 vs 利益)
ROASは「売上」を基準に算出し、ROIは「利益」を基準に算出します。
測定対象の違い:
- ROAS: 広告からの売上 ÷ 広告費
- ROI: 利益 ÷ 投資額
ROASが良くてもROIが悪ければ、利益は生まれていません。両方の指標を加味して施策を考える必要があります。
(3) 使い分けの基準(短期的な広告効率 vs 長期的な事業収益性)
ROASは即座のリターンに基づいてスケールする価値のあるキャンペーンを特定し、ROIはこれらの取り組みがより広範なビジネス目標と一致するかを確認します。
使い分けの基準:
- ROAS: 短期的な広告キャンペーンの効率測定
- ROI: 長期的な事業の収益性評価
企業は広告運用プランを立てる際、ROASよりもROIを重視する傾向があります。利益が出ていなければ企業は存続できないためです。
(参考: Infinity-Agent Lab「【重要指標】ROIとROASの違いとは?意味や計算方法などを解説」)
3. ROASとROIの計算方法
実際にROASとROIをどう計算するかを確認しましょう。
(1) ROASの計算式(広告からの売上 ÷ 広告費 × 100)
ROASの計算式は以下の通りです。
ROAS(%) = (広告からの売上 ÷ 広告費) × 100
計算例:
- 広告費: 100万円
- 広告からの売上: 300万円
- ROAS: (300万円 ÷ 100万円) × 100 = 300%
ROAS 300%は、広告費1円あたり3円の売上を得られたことを意味します。
(参考: NECソリューションイノベータ「ROIとは?意味や計算式、ROASとの違いや改善方法を解説」)
(2) ROIの計算式(利益 ÷ 投資額 × 100)
ROIの計算式は以下の通りです。
ROI(%) = (利益 ÷ 投資額) × 100
計算例:
- 投資額: 100万円(広告費 + 人件費 + その他コスト)
- 利益: 50万円(売上 - 原価 - 経費)
- ROI: (50万円 ÷ 100万円) × 100 = 50%
ROI 50%は、投資額1円あたり0.5円の利益を得られたことを意味します。
注意点: ROIの計算時には広告費以外のコスト(人件費、製造コスト等)も考慮する必要があります。計算方法の詳細は企業により異なる可能性があるため、社内で定義を統一しましょう。
(3) CPA・CACとの関係性
ROAS・ROIと混同されやすい指標に、CPA(顧客獲得単価)とCAC(顧客獲得コスト)があります。
指標の違い:
- ROI・ROAS: リターン指標(投資に対する成果)
- CPA・CAC: コスト指標(成果1件あたりのコスト)
CPAやCACは「1件獲得するのにいくらかかったか」を測り、ROASやROIは「投資に対していくら返ってきたか」を測ります。
4. BtoBマーケティングにおけるROASとROI活用
BtoB企業がROASとROIを活用する際の実践的なポイントを解説します。
(1) BtoBとBtoCでの指標の違い
BtoB広告とBtoC広告では、ROASとROIの評価期間が異なります。
BtoC広告:
- 短期的なROAS最適化が重視される
- 購入までのリードタイムが短い(数日〜数週間)
- キャンペーン単位での即座の効果測定が可能
BtoB広告:
- 長期的なROI視点が重視される
- 購入までのリードタイムが長い(数ヶ月〜1年以上)
- LTV(顧客生涯価値)を考慮した評価が必要
BtoB企業は、短期的なROASだけでなく、長期的なROI視点を持つことが重要です。
(2) 長期LTVを考慮した評価フレームワーク
BtoB SaaS企業では、LTV(顧客生涯価値)を考慮したROI評価が推奨されます。
LTVを考慮したROI評価:
- 初回購入だけでなく、継続利用による売上も含める
- CAC(顧客獲得コスト)とLTVの比率(LTV/CAC)も併せて評価
- 6ヶ月〜1年の期間でROIを評価する
例えば、初回ROAS 150%でも、継続利用で12ヶ月後にROI 200%になるケースもあります。
(3) 企業がROIを重視する理由
企業は広告運用プランを立てる際、ROASよりもROIを重視する傾向があります。
ROIを重視する理由:
- 利益が出ていなければ企業は存続できない
- 広告費以外のコスト(人件費、システム費用等)も含めた評価が必要
- 予算承認には「利益」の説明が求められる
ただし、ROASを無視してよいわけではありません。ROASで広告キャンペーンの効率を測り、ROIで全体的な事業の収益性を評価する両方の併用が重要です。
5. ROASとROIの改善方法
ROASとROIを改善するための実践的なアプローチを紹介します。
(1) ROASが高くROIが低い場合の対処法
ROASが高いのにROIが低い場合、売上は上がっていても利益が出ていない状態です。
対処法:
- 原価率を見直す(仕入れコスト、製造コストの削減)
- 人件費を見直す(業務効率化、外注の活用)
- 広告費以外のコストを分析する(システム費用、運用コスト等)
- 価格設定を見直す(利益率の改善)
ROASのみで判断すると、売上は上がっていても利益が出ていない可能性があります。
(2) 両方の指標を併用した包括的な評価
2024年時点で、マーケターはROASとROIの両方を組み合わせて包括的なキャンペーン評価を行う重要性を認識しています。
併用のベストプラクティス:
- ROASで広告キャンペーンの効率を週次で測定
- ROIで月次・四半期単位の事業収益性を評価
- 両方の指標を加味して予算配分を決定
- ROASは即座のリターン判断、ROIはビジネス目標との整合性確認
(参考: Madgicx「When to Use ROAS vs. ROI in Your Marketing Analytics」)
(3) 即座のリターン判断とビジネス目標の整合性確認
ROASは即座のリターンに基づいてスケールする価値のあるキャンペーンを特定し、ROIはこれらの取り組みがより広範なビジネス目標と一致するかを確認します。
実践例:
- 新規キャンペーン開始後、ROAS 200%を達成
- 予算を2倍にスケールアップ(即座のリターン判断)
- 3ヶ月後にROI 80%を確認(ビジネス目標との整合性)
- コスト構造を見直し、6ヶ月後にROI 120%を達成
デジタルキャンペーンの評価において、短期的なROASと長期的なROIのバランスを取ることが重視されています。
6. まとめ:ROAS・ROIを活用した効果的な広告運用のポイント
ROASとROIは、それぞれ異なる視点で広告投資の効果を測定する指標です。ROASは広告キャンペーンの効率、ROIは事業全体の収益性を評価します。
企業は広告運用プランでROASよりROIを重視する傾向がありますが、両方を併用することで包括的な評価が可能になります。
次のアクション:
- 自社の広告キャンペーンでROASとROIを計算してみる
- ROASが高くてもROIが低い場合、コスト構造を分析する
- 短期的なROASと長期的なROI、両方のバランスを取る
- 業種や事業フェーズに応じた適正値を設定する
両方の指標を活用して、効果的な広告運用と持続可能な事業成長を目指しましょう。
※この記事は2024年11月時点の情報です。最新の計算方法や業界ベンチマークは、各種調査レポートや公式サイトでご確認ください。
