マーケティングと営業の連携を強化したいけれど、どう進めればいいか
BtoB企業において、マーケティングで獲得したリードを営業が商談化し、受注につなげるプロセスは極めて重要です。しかし「マーケティングと営業で顧客情報が分断されている」「リードがどこで商談になり、なぜ失注したのか分からない」という課題を抱える企業は少なくありません。
Pardot(現Account Engagement)とSalesforceの商談連携を活用することで、リード獲得から商談化、受注までのプロセス全体を可視化し、マーケティングと営業の連携を強化することができます。
この記事では、Pardotと商談を連携させる方法とメリット、設定手順、実践的な活用施策を具体的に解説します。
この記事のポイント:
- PardotはSalesforceの商談データを「参照のみ」で利用(双方向同期ではない)
- Prospect Lifecycle Reportで訪問者から受注まで5段階のファネルを可視化できる
- 商談連携により失注後のリエンゲージメントや受注後のアップセル提案が可能
- リードスコアリングと連携することで、商談化率の向上が期待できる
- 取引先責任者ロールの設定が連携の必須要件
1. Pardot(Account Engagement)と商談連携の基本概念
(1) Pardotから「Account Engagement」への名称変更
Pardot(パードット)は、Salesforceが提供するB2Bマーケティングオートメーション(MA)ツールです。2022年4月にAccount Engagementへ名称変更されましたが、現在も「Pardot」という呼称が広く使われています。
Account Engagementの特徴:
- Salesforceのマーケティングソリューションとして統合
- リード獲得、育成、商談化までのプロセスを支援
- Salesforce CRMとのシームレスな連携
本記事では、一般的に使用されている「Pardot」の名称を主に使用しながら解説します。
(2) なぜ商談連携がマーケティング・営業連携で重要なのか
従来のMAツールでは、マーケティングと営業が顧客情報を別々に管理しているケースが多く、以下のような課題がありました。
よくある課題:
- マーケティングで獲得したリードが営業に渡った後の状況が見えない
- どのマーケティング施策が商談化・受注に貢献したか分からない
- 失注したリードへの再アプローチができていない
- マーケティングROIの正確な測定ができない
PardotとSalesforceの商談連携により、リード獲得から商談化、受注までのプロセスを一元管理し、これらの課題を解決できます。
2. Pardot-Salesforce商談連携の仕組み
(1) データ連携の仕様:参照のみ(双方向同期ではない)
PardotとSalesforceの商談連携において、重要な仕様を理解しておく必要があります。
連携の仕組み:
- Pardotは「Salesforceの商談データを参照する」形式
- Pardotから商談データを作成・編集することはできない
- 商談の作成・編集はSalesforce側でのみ可能
活用方法:
- Pardotのオートメーションルールで商談ステータスを条件に設定
- 商談状況(商談中、受注、失注など)に応じたマーケティング施策を自動実行
- 商談データを参照してセグメント分けを実施
(2) 取引先責任者ロールの必須要件
Pardotで商談データを参照するには、Salesforce側で取引先責任者ロール(Contact Role)の設定が必要です。
取引先責任者ロールとは: Salesforceの商談に関わる取引先責任者を紐付ける機能です。商談に対して「意思決定者」「影響者」「評価者」などの役割を設定できます。
設定が必要な理由:
- 取引先責任者がSalesforce商談のロールに追加されている場合のみ、Pardotから商談データを参照可能
- ロールが設定されていないと、Pardotのオートメーションルールで商談条件が機能しない
確認ポイント:
- 既存の商談に取引先責任者ロールが設定されているか
- 新規商談作成時にロール設定が運用フローに組み込まれているか
(3) 商談はSalesforceでのみ作成・編集可能
Pardotでできること:
- 商談ステータス(商談中、受注、失注など)の参照
- 商談金額、確度、クローズ日などのデータ参照
- 商談状況を条件としたオートメーションルールの実行
Pardotではできないこと:
- 商談の新規作成
- 商談データの編集・更新
- 商談ステータスの変更
この仕様を理解した上で、PardotとSalesforceそれぞれの役割を明確にして運用することが重要です。
3. 商談連携による主要なメリット・活用法
(1) リードスコアリングと商談化率の向上
リードスコアリングとは、見込み顧客の関心度や購買意欲を数値化し、優先順位を付ける手法です。Pardotでは、Webサイト訪問、メール開封、資料ダウンロードなどの行動に応じてスコアを加算できます。
スコアリング活用のポイント:
- スコアが加点される条件を限定し、「なぜその人のスコアが高いのか」を明確にする
- シンプルな運用設計を優先し、複雑なルールを避ける
- 3ヶ月以上訪問がない見込み客のスコアをゼロにリセットし、実際の購買意欲を反映
商談化への活用:
- 一定スコア以上のリードを営業に通知
- スコアの高いリードから優先的にアプローチ
- スコアと商談化率の相関を分析し、閾値を最適化
注意点: スコアのリセットは元に戻すことができないため、慎重に設計・実行する必要があります。
(2) Prospect Lifecycle Report:5段階ファネルの可視化
Prospect Lifecycle Reportは、Pardotのレポート機能で、訪問者から受注まで5段階のファネルを統合して可視化できます。
5段階のファネル:
- Visitor(訪問者): Webサイトへの訪問
- Prospect(見込客): リード情報を獲得した状態
- Marketing Qualified Lead(MQL): マーケティングが認定したリード
- Opportunity(商談): 営業が商談として認定
- Won(受注): 商談が成約
活用メリット:
- 各ファネル間のコンバージョン率を把握
- ボトルネックとなっているステージを特定
- マーケティングと営業のプロセス全体を俯瞰
PardotとSales Cloudを連携させることで、「マーケティング+営業のワンストップツール」として最大効果を発揮できます。
(3) マーケティングROI分析とアトリビューション
商談連携により、マーケティング施策のROI(投資対効果)を正確に測定できるようになります。
分析可能な指標:
- どのキャンペーンが商談化に貢献したか
- チャネル別(メール、Web、イベントなど)の商談化率
- 獲得コストと商談価値の比較
アトリビューション分析:
- 複数のタッチポイントを経て商談化した場合、どの施策が最も貢献したかを分析
- ファーストタッチ、ラストタッチ、マルチタッチなどのモデルで評価
これにより、効果の高いマーケティング施策への投資集中が可能になります。
4. 連携設定の手順と重要なポイント
(1) 事前確認:取引先責任者のロール設定
商談連携を有効に活用するために、まず以下の点を確認します。
確認項目:
- Salesforceの商談に取引先責任者ロールが設定されているか
- 既存の商談すべてにロールが紐付いているか
- 新規商談作成時のロール設定がフローに組み込まれているか
設定手順:
- Salesforceの商談レコードを開く
- 「取引先責任者ロール」関連リストを確認
- 関係する取引先責任者をロールに追加
- 役割(意思決定者、影響者など)を設定
(2) Pardotでの商談データ参照設定
取引先責任者ロールが設定されていれば、Pardotから商談データを参照できます。
参照できるデータ:
- 商談名、ステータス(商談中、受注、失注など)
- 商談金額、確度、クローズ日
- 商談に紐付くキャンペーン情報
設定方法:
- Pardotのオートメーションルールで商談条件を設定
- ダイナミックリストで商談ステータス別にセグメント作成
- エンゲージメントプログラムで商談状況に応じたアクションを設定
(3) オートメーションルール設定時の注意点
商談データを条件に使用する際の注意点を理解しておく必要があります。
複数商談が紐付いている場合:
- 1人の取引先責任者に複数の商談が紐付いている場合、どれか一つでも条件に一致すればルールに該当
- 特定の一つの商談を指定することはできない
対策:
- 商談ステータスの条件を明確に設定(例: 「失注」かつ「過去90日以内」)
- 必要に応じて、商談タイプ(新規/既存)などの条件を追加
5. 商談データを活用した実践的マーケティング施策
(1) 失注後のリエンゲージメントプログラム
商談が失注した見込み客に対して、自動的にリエンゲージメント施策を実施できます。
施策例:
- Salesforceの商談ステータスを監視
- 失注ステータスに変更されたらPardotで自動検知
- オートメーションルールで「失注リスト」に追加
- 一定期間後にナーチャリングメールを配信
- 再度関心を示した場合は営業に通知
活用のポイント:
- 失注理由(予算、タイミング、競合など)に応じてコンテンツを変える
- 再アプローチまでの期間を適切に設定(例: 3ヶ月後)
- 押し売り感のない情報提供型のコンテンツを用意
(2) 受注後のアップセル・クロスセル提案
受注した顧客に対して、追加サービスや関連製品の提案を自動化できます。
施策例:
- 商談が受注ステータスに変更されたらPardotで検知
- 「受注顧客リスト」に自動追加
- オンボーディングコンテンツを配信
- 一定期間後にアップセル・クロスセルの提案メールを配信
- 反応があった場合は営業またはCSに通知
活用のポイント:
- 受注直後は導入支援コンテンツを優先
- 利用状況に応じた適切なタイミングで提案
- 顧客満足度を確認してからアップセル提案
(3) スコアリングの最適化(リセット機能活用)
スコアリングの精度を高めるために、リセット機能を活用します。
リセット活用の考え方: 長期間アクションがない見込み客のスコアをリセットすることで、実際の購買意欲を反映したスコアリングが可能になります。
設定例:
- 3ヶ月以上Webサイト訪問がない見込み客のスコアをゼロにリセット
- リセット後に再度アクションがあればスコアを再加算
注意点:
- スコアのリセットは元に戻すことができない
- リセット前にバックアップ用のカスタムフィールドに値を保存しておくことを推奨
- リセット対象の条件を慎重に設計する
6. まとめ:連携導入時の注意点と成功のコツ
PardotとSalesforceの商談連携により、リード獲得から商談化、受注までのプロセスを一元管理し、マーケティングと営業の連携を強化することができます。
成功のポイント:
- 取引先責任者ロールの設定を事前に確認し、運用フローに組み込む
- 商談連携は「参照のみ」であることを理解し、PardotとSalesforceの役割を明確化
- Prospect Lifecycle Reportで5段階のファネルを可視化し、ボトルネックを特定
- 失注後のリエンゲージメント、受注後のアップセル提案を自動化
- スコアリングはシンプルな設計を優先し、定期的にリセット機能で精度を維持
導入時の注意点:
- 複数商談が紐付いている場合の条件設定に注意
- スコアのリセットは元に戻せないため慎重に実行
- 連携設定や機能は変更される可能性があるため、最新情報を確認
次のアクション:
- 既存の商談に取引先責任者ロールが設定されているか確認
- 商談ステータスに応じたオートメーションルールを設計
- Prospect Lifecycle Reportを設定し、ファネルの現状を把握
- 失注リエンゲージメントプログラムを試験的に開始
※この記事は2024年時点の情報に基づいています。機能・設定方法の最新情報はSalesforce公式サイトでご確認ください。
よくある質問:
Q: PardotとSalesforceの商談連携はどういう仕組み? A: PardotはSalesforceのデータを「参照のみ」で利用する形式で、双方向同期ではありません。商談の作成・編集はSalesforceでのみ可能で、Pardotでは商談ステータスなどを条件にオートメーションルールを実行できます。
Q: 商談連携で具体的にどんなマーケティング施策ができる? A: 失注後の再エンゲージメント、受注後のアップセル・クロスセル提案、商談状況に応じたセグメント配信など、商談ステータスをトリガーにした自動化施策が実施可能です。また、スコアリングを活用して優先度の高いリードを営業に通知することもできます。
Q: Prospect Lifecycle Reportとは何? A: 訪問者→見込客→MQL→商談→受注まで5段階のファネルを統合レポートで可視化する機能です。各ステージ間のコンバージョン率を把握でき、マーケティングと営業のプロセス全体を俯瞰してボトルネックを特定できます。
Q: スコアリングはどう商談化に活用できる? A: 見込み度が高いリードを優先的にアプローチすることで、営業効率と商談率を向上できます。3ヶ月以上訪問がない見込み客のスコアをリセットすることで、実際の購買意欲を反映した精度の高いスコアリングが可能になります。
