Pardotエンゲージメントスタジオ完全ガイド|設定方法と活用事例

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/26

Pardotのエンゲージメントスタジオを使いこなしたいけれど、設定方法がわからない...

「Account Engagement(旧Pardot)のエンゲージメントスタジオを導入したが、効果的なシナリオ設計がわからない」「ドリッププログラムとの違いが理解できない」といった悩みを抱えるMA運用担当者は多いのではないでしょうか。

エンゲージメントスタジオは、Account Engagement(旧Pardot)の次世代ナーチャリングツールです。顧客のスコアや行動履歴に基づいて、適切なタイミングでのフォローアップを自動化できます。

この記事では、エンゲージメントスタジオの基本機能から設定手順、効果的なシナリオ設計パターンまで解説します。

この記事のポイント:

  • エンゲージメントスタジオは顧客行動に基づく分岐が可能な次世代ナーチャリングツール
  • Action・Rule・Triggerの3つの要素を組み合わせてシナリオを作成
  • ドリッププログラムとは異なり、メール開封・クリック等の行動による分岐設定が可能
  • 2023年9月にテスト機能が追加され、本番稼働前の検証が可能に
  • シナリオは複雑にしすぎず、目的を明確にした適度な設計が重要

1. Pardotエンゲージメントスタジオとは何か

エンゲージメントスタジオの概要と、他ツールとの位置づけを解説します。

(1) Account Engagement(旧Pardot)の次世代ナーチャリングツール

エンゲージメントスタジオは、Salesforceが提供するB2BマーケティングオートメーションツールであるAccount Engagement(旧Pardot)の主要機能です。

基本概要:

  • 2016年6月にSalesforceが発表
  • 2022年4月にPardotからMarketing Cloud Account Engagementへ改名
  • 現在も「Pardot」という旧称が広く使用されている

主な特徴:

  • 顧客のスコアや行動履歴に基づく自動フォローアップ
  • 1画面で1対1のカスタマージャーニーを構築
  • 効果検証機能も備わっている

(2) 2016年リリースから2024年までの進化

エンゲージメントスタジオは継続的に機能強化されています:

2016年:

  • Engagement Studioとしてリリース
  • ドリッププログラムに代わる次世代ツールとして登場

2022年:

  • PardotからMarketing Cloud Account Engagementへ名称変更
  • Salesforce Marketing Cloud製品群に統合

2023年9月:

  • テスト機能が追加
  • シナリオを本番稼働前にテストプロスペクトで検証可能に
  • 品質向上とリスク低減に貢献

(3) 1対1のカスタマージャーニー構築機能

エンゲージメントスタジオの最大の特徴は、見込み客ごとに最適化されたジャーニーを自動実行できる点です:

  • 行動に応じて異なるパスを辿らせる
  • スコアや属性に基づいて分岐させる
  • 適切なタイミングでの営業通知を自動化

例えば、「メールを開封した人には次のステップへ進ませる、開封しなかった人には別のメールを送る」といった分岐設定が可能です。

2. 基本機能と他ツールとの違い

エンゲージメントスタジオの構成要素と、類似ツールとの違いを解説します。

(1) Action・Rule・Triggerの3つの要素

エンゲージメントスタジオのシナリオは、以下の3つの要素を組み合わせて構築します:

Action(アクション):

  • 実行する処理を定義
  • メール送信、待機、営業担当者への通知、リスト追加など
  • シナリオ内で「何をするか」を決める要素

Rule(ルール):

  • 既存の情報に基づく条件分岐
  • リストへの所属、スコア、グレード、項目値など
  • 「今の状態がどうか」で分岐させる要素

Trigger(トリガー):

  • 顧客の行動に基づくシナリオ分岐
  • メール開封、リンククリック、フォーム送信、ファイルダウンロードなど
  • 「何をしたか」で分岐させる要素

これら3つを組み合わせることで、複雑な条件分岐を持つシナリオを構築できます。

(2) ドリッププログラムとの違い(行動分岐の有無)

Account Engagementには、エンゲージメントスタジオとは別にドリッププログラムという機能もあります。両者の違いを理解しておく必要があります:

項目 ドリッププログラム エンゲージメントスタジオ
配信方式 時系列で一律配信 行動に基づく分岐配信
分岐設定 不可 可能(開封・クリック等)
パーソナライズ 限定的 高度な個別対応が可能
適したケース シンプルな連続配信 複雑なナーチャリング

ドリッププログラムの例:

  • 登録から3日後にメールA、7日後にメールB、14日後にメールCを全員に送信

エンゲージメントスタジオの例:

  • 登録から3日後にメールAを送信
  • メールAを開封した人→メールA'を送信
  • メールAを開封しなかった人→メールBを送信

(3) オートメーションルールとの使い分け

Account Engagementには「オートメーションルール」という機能もあります:

オートメーションルール:

  • トリガーに対して単一アクションを実行
  • シンプルな自動化に適している
  • 「条件Xを満たしたらアクションYを実行」

エンゲージメントスタジオ:

  • 実行済みアクションに基づく分岐設定が可能
  • 複雑なシナリオに適している
  • 複数のアクション・条件を組み合わせ可能

単純な条件→アクションであればオートメーションルール、複雑な分岐を含むシナリオはエンゲージメントスタジオを使い分けることが推奨されます。

(4) 2023年9月追加のテスト機能

2023年9月に追加されたテスト機能により、シナリオの品質向上が図れるようになりました:

テスト機能の特徴:

  • テストプロスペクトを使ってシナリオの動作を確認
  • 本番稼働前にシナリオのロジックを検証可能
  • 意図しない動作を事前に発見できる

活用方法:

  • シナリオ作成後、テストモードで動作を確認
  • 各分岐パスが正しく機能するかを検証
  • 問題があれば修正してから本番化

3. エンゲージメントスタジオの設定手順

具体的な設定手順を解説します。

(1) 開始前の3つのチェックポイント

シナリオ作成を開始する前に、以下の3点を確認することが重要です:

1. 目的の明確化:

  • このシナリオで達成したいゴールは何か
  • どのようなアクション(問い合わせ、資料請求等)を促したいか
  • KPI(開封率、クリック率、商談化率等)は何か

2. 対象リストの精査:

  • シナリオに投入するプロスペクトのリストは適切か
  • リストの品質(データの正確性、重複等)は担保されているか
  • 除外すべき対象(既存顧客、オプトアウト済等)は除外されているか

3. シナリオ設計の検証:

  • 分岐が複雑すぎないか
  • 各パスの終着点は明確か
  • 必要なメール・コンテンツは準備できているか

(2) 基本的なシナリオ作成フロー

Step 1: 新規シナリオの作成

  • エンゲージメントスタジオにアクセス
  • 「新規作成」からシナリオを開始
  • シナリオ名と説明を設定

Step 2: 開始条件の設定

  • シナリオに投入するリストを選択
  • プロスペクトがシナリオに入る条件を設定

Step 3: シナリオの構築

  • Action、Rule、Triggerを配置してフローを設計
  • 各ステップ間の待機時間を設定
  • 分岐条件を設定

Step 4: テストと検証

  • テスト機能でシナリオの動作を確認
  • 問題があれば修正

Step 5: 本番稼働

  • シナリオを有効化
  • パフォーマンスをモニタリング

(3) Action・Rule・Triggerの設定方法

Actionの設定例:

アクション種別 用途
メール送信 ナーチャリングメールの配信
待機 次のアクションまでの間隔調整
営業担当者に通知 ホットリードの即時アラート
リスト追加/削除 セグメント変更
スコア調整 エンゲージメントに応じたスコア加算

Ruleの設定例:

  • 「スコアが50以上」→ホットリード向けパス
  • 「リストAに所属」→既存顧客向けパス
  • 「業種が製造業」→業種別パス

Triggerの設定例:

  • 「メールを開封した」→次のステップへ
  • 「リンクをクリックした」→特定コンテンツ配信
  • 「フォームを送信した」→営業通知

(4) テスト機能による事前検証

本番稼働前にテスト機能を活用することを強く推奨します:

  1. テストプロスペクトを作成(本番データとは別の検証用データ)
  2. テストモードでシナリオを実行
  3. 各分岐パスを実際に通過させて動作確認
  4. メール送信、通知、リスト追加等が正しく実行されるか確認
  5. 問題があれば修正し、再テスト

4. 効果的なシナリオ設計パターン

実際に活用できるシナリオ設計パターンを紹介します。

(1) セミナー後フォローアップシナリオ

セミナー・ウェビナー参加者へのフォローアップに効果的なパターンです:

シナリオ概要:

  1. セミナー参加者リストに投入
  2. 参加お礼メールを送信(翌日)
  3. 関連資料のダウンロードを案内(3日後)
  4. 資料ダウンロードした人→営業担当者に通知
  5. ダウンロードしなかった人→リマインドメール送信
  6. 1週間後に事例紹介メールを送信

ポイント:

  • 参加直後のホットな状態を逃さない
  • 行動(ダウンロード有無)で分岐させる
  • 適切なタイミングで営業にバトンタッチ

(2) 資料ダウンロード後ナーチャリング

ホワイトペーパーや製品資料をダウンロードした見込み客向けのパターンです:

シナリオ概要:

  1. 資料ダウンロード後にシナリオ開始
  2. お礼メール+追加情報を送信(即時)
  3. 関連コンテンツを案内(3日後)
  4. コンテンツを閲覧した人→より詳細な情報を提供
  5. 反応がない人→別のアプローチ(事例紹介等)
  6. スコアが一定以上になったら営業通知

ポイント:

  • ダウンロードした資料に関連するコンテンツを提供
  • 反応に応じて配信内容を変える
  • スコアリングと連動させて商談化を促進

(3) スコアリング連動型アプローチ

リードスコアに基づいて配信内容を変えるパターンです:

シナリオ概要:

  1. Rule(スコアチェック)で分岐
  2. スコア70以上→「個別相談会」案内
  3. スコア40-69→「製品デモ」案内
  4. スコア40未満→「入門コンテンツ」案内
  5. 各パスでの反応に応じてさらに分岐
  6. 一定条件で営業通知

ポイント:

  • スコアに応じた適切なオファーを提示
  • 検討段階に合ったコンテンツを配信
  • ホットリードを逃さず営業に引き渡す

(4) インサイドセールス連携シナリオ

営業チームとの連携を重視したパターンです:

シナリオ概要:

  1. 特定条件(高スコア、特定行動等)を満たしたらシナリオ開始
  2. 即座に営業担当者に通知
  3. 営業アプローチ中はメール配信を停止
  4. 一定期間商談化しなかった場合→ナーチャリング継続
  5. 商談化した場合→シナリオ終了

ポイント:

  • 営業活動との重複を防ぐ
  • リードの状態に応じて自動で制御
  • 営業とマーケティングの連携を自動化

5. 活用事例と効果測定のポイント

実際の活用事例と、効果測定の方法を解説します。

(1) リードエンゲージメント向上事例

事例概要:

  • 課題: メール配信後の反応率が低い
  • 施策: エンゲージメントスタジオで行動分岐を導入
  • 結果: 開封した人・しなかった人で配信を変えることで、全体の反応率が向上

ポイント:

  • 一律配信から個別対応へシフト
  • 反応がない人には別アプローチを自動実行
  • 継続的なA/Bテストで改善

(2) 営業連携による商談化率改善

事例概要:

  • 課題: マーケティングから営業への引き渡しタイミングが不適切
  • 施策: スコアと行動を組み合わせた通知ルールを設定
  • 結果: 適切なタイミングでの営業アプローチにより商談化率が改善

ポイント:

  • 「ホット」な状態を見逃さない通知設定
  • 営業が対応しやすい情報(行動履歴等)を通知に含める
  • 営業からのフィードバックを設定に反映

(3) KPI設定と効果測定方法

エンゲージメントスタジオの効果を測定するためのKPI例:

配信関連KPI:

  • メール開封率
  • クリック率(CTR)
  • 配信成功率

エンゲージメント関連KPI:

  • シナリオ完了率
  • 各分岐パスの通過率
  • スコア上昇数

ビジネス成果KPI:

  • 商談化数/率
  • 営業への通知数
  • 最終的な受注への貢献度

(4) シナリオ改善のベストプラクティス

定期的なレビュー:

  • 月次でパフォーマンスを確認
  • 期待した効果が出ていない分岐を特定
  • 改善策を検討・実施

A/Bテストの活用:

  • メールの件名、配信タイミング等をテスト
  • データに基づいて最適化

シンプルさの維持:

  • 分岐が複雑になりすぎていないか定期確認
  • 効果のないパスは削除・統合
  • 管理可能な範囲に抑える

6. まとめ:エンゲージメントスタジオ活用の成功要因

エンゲージメントスタジオを効果的に活用するためのポイントを整理します。

成功のための3つの要因:

  1. 目的を明確にしたシナリオ設計

    • 達成したいゴールを明確に設定
    • 分岐は必要最小限に抑える
    • 各パスの終着点を意識
  2. テスト機能の積極活用

    • 本番稼働前に必ずテスト
    • 各分岐パスの動作を確認
    • 問題発見時は修正してから本番化
  3. 継続的な改善サイクル

    • パフォーマンスを定期的にモニタリング
    • データに基づいて最適化
    • 複雑化を避け、シンプルさを維持

次のアクション:

  • 最初に取り組むシナリオ(セミナーフォロー、資料DL後等)を決める
  • 開始前の3つのチェックポイント(目的・リスト・設計)を確認
  • シンプルなシナリオから始め、徐々に拡張する
  • テスト機能で動作確認後、本番稼働を開始する

エンゲージメントスタジオは強力なナーチャリングツールですが、複雑にしすぎるとかえって管理が困難になります。目的を明確にし、適度なシナリオ設計を心がけることが成功の鍵です。

よくある質問:

Q: ドリッププログラムとの違いは何? A: ドリッププログラムは時系列で一律配信するのに対し、エンゲージメントスタジオは顧客行動(開封・クリック等)による分岐が可能です。パーソナライズされたナーチャリングを実現したい場合はエンゲージメントスタジオを使用します。

Q: どのようなシナリオが作れる? A: セミナー後フォロー、資料DL後ナーチャリング、スコア連動アプローチ、営業通知など多様なシナリオに対応できます。Action・Rule・Triggerを組み合わせて設計します。

Q: 設定で注意すべき点は? A: 開始前に目的の明確化、対象リストの精査、シナリオ設計の検証を事前実施することが重要です。分岐が複雑すぎると管理困難になるため、適度な設計を心がけてください。

Q: テスト機能はどう活用する? A: 2023年9月追加の機能です。テストプロスペクトでシナリオ動作を本番前に検証できます。品質向上とリスク低減に貢献するため、本番稼働前に必ず実施することを推奨します。

Q: 効果測定はどうすればいい? A: メール開封率・クリック率などの配信関連KPI、シナリオ完了率などのエンゲージメント関連KPI、商談化数などのビジネス成果KPIを組み合わせて測定します。定期的なレビューと改善サイクルが重要です。

よくある質問

Q1ドリッププログラムとの違いは何?

A1ドリッププログラムは時系列で一律配信、エンゲージメントスタジオは顧客行動(開封・クリック等)による分岐が可能です。パーソナライズされたナーチャリングにはエンゲージメントスタジオを使用します。

Q2どのようなシナリオが作れる?

A2セミナー後フォロー、資料DL後ナーチャリング、スコア連動アプローチ、営業通知など多様なシナリオに対応。Action・Rule・Triggerを組み合わせて設計します。

Q3設定で注意すべき点は?

A3開始前に目的の明確化、対象リストの精査、シナリオ設計の検証を事前実施することが重要です。分岐が複雑すぎると管理困難になるため適度な設計を心がけてください。

Q4テスト機能はどう活用する?

A42023年9月追加の機能です。テストプロスペクトでシナリオ動作を本番前に検証可能。品質向上とリスク低減のため、本番稼働前に必ず実施することを推奨します。

Q5効果測定はどうすればいい?

A5メール開封率・クリック率、シナリオ完了率、商談化数などのKPIを組み合わせて測定します。定期的なレビューと改善サイクルが重要です。

B

B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

「B2Bデジタルプロダクト実践ガイド」は、デシセンス株式会社が運営する情報メディアです。B2Bデジタルプロダクト企業のマーケティング・営業・カスタマーサクセス・開発・経営に関する実践的な情報を、SaaS、AIプロダクト、ITサービス企業の実務担当者に向けて分かりやすく解説しています。