MAツール、結局どれを選べばいい?
マーケティングオートメーション(MA)ツールの導入を検討しているものの、「種類が多すぎてどれを選べばいいか分からない」「自社に合ったツールを選ぶ基準が分からない」という悩みを抱えているマーケティング担当者は少なくありません。
国内BtoB MA市場は2023年時点で約753億円に達し、前年比11.2%増と成長を続けています。一方で、全企業の導入率は1.5%程度にとどまり、上場企業でも14.6%と、まだ普及途上の段階です。
この記事では、MAツールの選び方について、比較ポイントと選定基準を整理し、企業規模・予算・目的別の選定フローを解説します。
この記事のポイント:
- MAツールは3タイプに分類される(安心導入型・シナリオ重視型・多機能連携型)
- 選定時は「ビジネスモデル」「機能」「操作性」「コスト」の4軸で評価
- 初期費用は数十万~数百万円、月額費用は数万~数十万円が相場
- 導入失敗の主因は「目的不明確」「人的リソース不足」「機能未活用」
- 小さく始めて高速でPDCAを回すアプローチが効果的
マーケティングオートメーションツールの基礎知識
MAツールとは
マーケティングオートメーション(MA)ツールとは、マーケティング活動を自動化し、リード(見込み顧客)の獲得から育成、商談化までを効率化するツールです。
主な機能として以下が挙げられます:
リード管理
- リード情報の一元管理
- スコアリング(興味関心度の数値化)
- セグメント分け
マーケティング自動化
- メール配信の自動化
- シナリオ設計(条件に応じた自動アクション)
- ランディングページ・フォーム作成
分析・レポート
- キャンペーン効果測定
- リードの行動追跡
- ROI分析
MA・CRM・SFAの違いと連携
混同されがちなMA・CRM・SFAの違いは以下の通りです:
| ツール | 主な目的 | 主な対象フェーズ |
|---|---|---|
| MA | マーケティング活動の自動化 | リード獲得~育成 |
| CRM | 顧客情報の一元管理・関係構築 | 全フェーズ(顧客情報管理) |
| SFA | 営業活動の支援・効率化 | 商談~受注 |
これらのツールは連携して使用することで、マーケティングから営業までのデータを一元管理し、顧客対応の質を向上させることができます。
2024年のトレンド
2024年のMAツールのトレンドとして、以下が報告されています:
- AI活用の進化: リードスコアリングの精度向上、最適なコンテンツ・タイミングの提案
- CRM統合: マーケティングと営業のデータ連携強化
- オムニチャネル対応: メール、Web、SNS、オフラインなど複数チャネルの統合
MAツール選定の4つの評価軸
MAツールを選定する際は、以下の4つの評価軸で比較することが一般的です。
(1) ビジネスモデルとの適合性
自社のビジネスモデル(BtoB / BtoC)に合ったツールを選ぶことが重要です。
BtoB向けツール
- リードナーチャリング(育成)機能が充実
- 商談化までの長いプロセスに対応
- SFA/CRM連携機能
BtoC向けツール
- 大量のリードへの一斉配信に対応
- EC連携機能
- 購買行動に基づくセグメント機能
多くのツールはBtoB・BtoC両対応ですが、得意分野が異なるため、自社のビジネスモデルに合致するかを確認することが推奨されます。
(2) 必要な機能の明確化
「あれもこれも」と機能を求めすぎると、結局使いこなせない「宝の持ち腐れ」状態になりがちです。自社の課題を明確にし、必要十分な機能を絞り込むことが重要です。
基本機能(ほぼ全ツールに搭載)
- メール配信
- フォーム作成
- リード管理
上位機能(ツールにより差がある)
- 高度なスコアリング
- 詳細なシナリオ設計
- AI機能
- 外部システム連携
(3) 操作性・サポート体制
導入後の運用を考えると、操作性とサポート体制は重要な評価ポイントです。
操作性の評価ポイント
- 直感的なUI(ユーザーインターフェース)
- 学習コスト(習得までの時間)
- 日本語対応
サポート体制の評価ポイント
- 日本語サポートの有無
- オンボーディング支援
- ヘルプドキュメントの充実度
- ユーザーコミュニティの有無
無料トライアルやデモを活用し、実際の操作感を確認することが推奨されます。
(4) コストとROI
MAツールの費用相場は以下の通りです:
初期費用
- 数十万~数百万円(ツールにより大きく異なる)
- 無料のツールもあり
月額費用
- 数万~数十万円が一般的
- 高機能ツールは月額数十万円以上
その他の費用
- 導入支援・コンサルティング費用(別途発生する場合あり)
- 追加ユーザー費用
- リード数超過時の追加費用
ROI(投資対効果)を試算する際は、「リード獲得数の増加」「商談化率の向上」「人的工数の削減」などの指標で効果を見積もることが一般的です。ただし、効果が出るまでには一定期間が必要なため、短期的な評価は避けるべきとされています。
タイプ別MAツール比較
MAツールは大きく3つのタイプに分類されます。自社の状況に合ったタイプから選ぶことで、選定の効率が上がります。
タイプ1: 安心導入型(初めてのMA導入向け)
特徴
- 無料プランや低価格プランあり
- シンプルな機能構成
- 学習コストが低い
- 小規模企業・スタートアップ向け
代表的なツール例
- BowNow(無料プランあり)
- List Finder
このタイプは、「まずはMAを試してみたい」「予算を抑えたい」という企業に適しています。国内シェア1位のBowNowは無料プランから始められるため、小規模企業でも導入しやすい点が特徴です。
タイプ2: シナリオ重視型(高度なマーケティング自動化向け)
特徴
- 複雑なシナリオ設計が可能
- 行動トリガーに基づく自動化
- 匿名リードの可視化機能
- マーケティング施策を高度化したい中堅企業向け
代表的なツール例
- SATORI
- SHANON
このタイプは、「リードナーチャリングを本格化したい」「Webサイト訪問者の行動を詳細に追跡したい」という企業に適しています。
タイプ3: 多機能連携型(CRM完全統合・大企業向け)
特徴
- CRM/SFAとのネイティブ連携
- 高度なAI機能
- 豊富なカスタマイズ性
- 大企業・グローバル展開企業向け
代表的なツール例
- Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)
- HubSpot Marketing Hub
- Adobe Marketo Engage
このタイプは、「既存のCRM/SFAと連携したい」「高度な分析・予測機能を活用したい」という企業に適しています。Salesforceを利用している企業はAccount Engagement、Adobe製品を利用している企業はMarketoが選択肢として挙がることが多いとされています。
国内シェアランキング(2025年時点)
参考情報として、国内シェアランキング(BOXIL調べ、2025年時点)は以下の通りです:
- BowNow
- Marketing Cloud Account Engagement
- HubSpot
- Adobe Marketo Engage
- SATORI
※ランキングは調査時点・調査方法により異なる場合があります。
選定時の失敗事例と対策
MAツールの導入で失敗するケースには共通のパターンがあります。事前に把握しておくことで、同じ失敗を避けることができます。
失敗パターン1: 目的・KPIが不明確
「導入すること自体が目的化」してしまい、導入後の運用がおろそかになるケースです。
対策
- 導入前に「何を達成したいか」を明確化
- KPI(重要業績評価指標)を設定(例:リード獲得数、商談化率、メール開封率など)
- 定期的な効果測定と改善
失敗パターン2: 人的リソース不足
「MAツールを入れれば自動化できる」という誤解から、人的リソースを確保せずに導入するケースです。
対策
- メール配信は自動化できるが、戦略改善やコンテンツ制作には人的リソースが不可欠
- 運用担当者のアサイン
- 必要に応じて外部支援の活用
失敗パターン3: 機能の未活用(宝の持ち腐れ)
高機能なツールを導入したものの、複雑さゆえにメール配信機能しか使わない「宝の持ち腐れ」状態になるケースです。
対策
- 必要十分な機能から始める(機能過剰を避ける)
- 段階的に高度な機能を追加
- トレーニング・教育の実施
失敗パターン4: 営業との連携不足
マーケティング部門だけでMAを運用し、せっかく獲得したリードが営業に引き渡されず活用されないケースです。
対策
- 営業部門との連携体制の構築
- リード引き渡し基準の明確化
- 定期的な情報共有ミーティング
成功アプローチ: 小さく始めて高速PDCAを回す
失敗を避けるための推奨アプローチは、「小さく始めて高速でPDCAを回す」ことです。
- スモールスタート: 最低限の機能から始める
- 効果測定: 導入効果・問題点を早期に把握
- 改善: データに基づいて施策を調整
- 拡大: 効果が確認できたら機能・範囲を拡大
このアプローチにより、リスクを抑えながらMA活用のノウハウを蓄積できます。
まとめ:成功する選定プロセス
MAツールの選び方について、比較ポイントと選定基準を解説しました。
選定の4つの評価軸
- ビジネスモデル(BtoB/BtoC)との適合性
- 必要な機能の明確化(機能過剰を避ける)
- 操作性・サポート体制
- コストとROI
3つのツールタイプ
- 安心導入型:初めてのMA導入・小規模企業向け
- シナリオ重視型:高度なマーケティング自動化向け
- 多機能連携型:CRM統合・大企業向け
失敗を避けるポイント
- 目的・KPIを明確化
- 人的リソースを確保
- 小さく始めて高速PDCAを回す
次のアクション
- 自社の課題と目的を整理する
- 4つの評価軸で候補ツールを比較する
- 無料トライアルやデモで操作性を確認する
- 導入後の運用体制を検討する
※この記事の情報は2024年時点のものです。ツールの料金プランや機能は頻繁に更新されるため、導入検討時は各社公式サイトで最新情報をご確認ください。
よくある質問:
Q: どのMAツールが自社に最適? A: ビジネスモデル(BtoB/BtoC)、予算、必要機能、既存システムとの連携要件の4軸で評価することが推奨されます。まずは無料トライアルやデモで操作性を確認し、自社の運用体制に合うかを検証するのが効果的です。
Q: 無料プランでも効果は期待できる? A: BowNowなど無料プランから始められるツールがあり、小規模企業でも十分効果が期待できます。まずは小さく始めてPDCAを回し、効果が確認できたら有料プランへの移行を検討するアプローチが推奨されます。
Q: MAツール導入にどれくらいのリソースが必要? A: メール配信などは自動化できますが、戦略改善やコンテンツ制作には人的リソースが不可欠です。「MAを入れれば人手が不要になる」という期待は誤解であり、導入後の継続的な運用体制の構築が成功の鍵となります。
Q: 導入失敗を避けるには? A: 目的とKPIを明確化し、営業部門との連携体制を構築することが重要です。機能過多より必要十分な機能から始め、段階的に高度化していくアプローチが効果的とされています。また、導入後の効果測定と改善を継続することが成功につながります。
