Pardot(Account Engagement)とは?
B2B企業のマーケティング担当者にとって、見込み客の獲得から育成、商談化までのプロセスを効率化することは大きな課題です。リードが増えても手動での管理には限界があり、「どのリードが商談につながりやすいか」「いつ営業にパスすべきか」といった判断に悩むケースは少なくありません。
この記事では、Salesforceが提供するB2B向けマーケティングオートメーション(MA)ツール「Pardot(現:Marketing Cloud Account Engagement)」について、機能・料金・他MAツールとの比較を詳しく解説します。
この記事のポイント:
- Pardotは2022年4月にMarketing Cloud Account Engagementに名称変更されたが、Pardotの呼称も併用されている
- Salesforce CRMとシームレスに連携できるため、既にSalesforceを利用している企業に最適
- 料金はGrowthプラン月額15万円から。中堅〜大企業向けの価格帯
- HubSpot・Marketo・Eloqua等との比較では、Salesforce連携が最大の差別化ポイント
- 運用コストが高く、操作難易度も高いため、導入前の体制整備が重要
(1) 2022年の製品名変更の経緯
Pardot(パードット)は、Salesforceが提供するB2B向けMAツールとして2007年に登場しました。2012年にSalesforceが買収し、以降Salesforce製品群の一部として提供されています。
2022年4月、SalesforceはPardotの製品名を「Marketing Cloud Account Engagement」に変更しました。これは、Salesforce製品群の統一ブランド戦略の一環です。ただし、現在も「Pardot」という呼称は広く使われており、Salesforce公式サイトでも両方の名称が併記されています。
本記事では、混乱を避けるため「Pardot(Account Engagement)」と表記します。
(2) B2B向けMAツールとしての位置づけ
Pardotは、B2B企業の長期的なリード育成プロセスを前提に設計されています。一般的にB2Bビジネスでは、初回接触から商談成立まで数ヶ月〜数年かかるため、継続的な情報提供と関係構築が必要です。
Pardotは以下の機能でこのプロセスを支援します:
- リードの行動(Webサイト訪問、資料ダウンロード等)を自動追跡
- 行動データをスコア化し、商談確度の高いリードを可視化
- 顧客のステータスや興味分野に応じた自動メール配信
同じSalesforce製品でも、「Salesforce Marketing Cloud」はB2C向け(大量のメール配信・SNS連携重視)であり、Pardotとは対象市場が異なります。B2B企業にはPardotが推奨されます。
Pardotの主要機能
Pardotの中核となる機能を4つのカテゴリで解説します。
(1) リードトラッキングとスコアリング
トラッキング機能では、見込み客のWebサイト行動を詳細に記録できます:
- どのページを閲覧したか
- どの資料をダウンロードしたか
- メールのクリック・開封履歴
これらの行動データは、スコアリング機能で自動的に数値化されます。例えば:
- 料金ページ閲覧:+10点
- ホワイトペーパーダウンロード:+25点
- メール開封:+5点
スコアが一定基準(例:100点)を超えたリードを「Hot Lead」として営業に自動通知することで、商談化のタイミングを逃しません。
(2) Engagement Studio(シナリオメール)
Engagement Studioは、顧客の行動やステータスに応じて自動的にメールを送信するシナリオ設計機能です。
活用例:
- ホワイトペーパーダウンロード → 3日後に関連事例メール送信
- 事例メール開封 → 1週間後にウェビナー案内送信
- ウェビナー参加 → 翌日に営業担当から個別連絡
このように、顧客の関心度に応じたパーソナライズされたコミュニケーションを自動化できます。2024年夏のアップデートでは、Engagement StudioでOperational Email(取引完了通知等の重要メール)送信が可能になり、長年のユーザー要望が実現しました。
(3) フォーム機能とランディングページ作成
Pardotでは、リード獲得用のフォームとランディングページをノーコードで作成できます。
フォーム機能:
- 標準フォーム:Pardot内でフォームを作成し、自社サイトに埋め込み
- フォームハンドラー:既存の自社サイトフォームとPardotを連携
ランディングページ作成:
- ドラッグ&ドロップエディタで簡単にLPを作成
- A/Bテストで効果的なデザイン・文言を検証
これらの機能により、マーケティング担当者が技術的な知識なしでリード獲得施策を実行できます。
(4) Einstein AI Assistant(2024年新機能)
2024年春のリリースで、Einstein AI AssistantがPardotに追加されました。これは、生成AIを活用してフォーム・ランディングページ・メール文面を自動生成する機能です。
活用例:
- テキストプロンプトで「新製品ウェビナーの案内メール」を指示
- AIが件名・本文・CTAボタンを自動生成
- 担当者が微調整して送信
これにより、コンテンツ作成時間を大幅に短縮できます。ただし、生成されたコンテンツの品質は確認が必要で、自社ブランドに合わせた修正は必須です。
また、2024年春にはDKIM(DomainKeys Identified Mail)セキュリティ要件が必須化されました。これは、GmailやYahooのスパムフィルタ強化に対応するためで、Pardotから送信するメールの到達率向上に寄与します。
Pardotの料金プラン
Pardotの料金体系は、機能と利用規模に応じた3つのプランで構成されています(2024年時点)。
(1) Growthプラン(月額15万円)
対象企業: 中堅企業(従業員100〜500名程度)、MAツールを初めて導入する企業
主要機能:
- リードスコアリング・トラッキング
- メール配信(月10,000通まで)
- フォーム・LP作成
- Engagement Studio(5シナリオまで)
- Salesforce CRM連携
制約事項:
- ユーザー数:10名まで
- B2B Marketing Analytics(高度なレポート機能)は含まれない
(2) Plusプラン(月額30万円)
対象企業: 中堅〜大企業(従業員500名以上)、複数部門でMAツールを活用する企業
Growthプランとの主な差分:
- メール配信上限が大幅に増加
- B2B Marketing Analytics(詳細なレポート・ダッシュボード)利用可能
- Engagement Studioのシナリオ数上限が拡大
- ユーザー数上限が拡大
(3) Advancedプラン(月額48万円)
対象企業: 大企業、エンタープライズ向けの高度なカスタマイズが必要な企業
Plusプランとの主な差分:
- Einstein AI機能の高度な活用(予測スコアリング等)
- 高度なセグメンテーション機能
- 専任のカスタマーサクセスマネージャー
- APIコール上限の大幅増加
(4) 初期費用と契約期間
初期費用: 一律30万円(全プラン共通)
契約期間: 1年契約(年次更新)が基本。途中解約は基本的に不可のため、導入前のトライアルや要件確認が重要です。
注意事項:
- 上記料金は2024年時点の情報です。最新の料金はSalesforce公式サイトでご確認ください。
- 料金はユーザー数・メール配信数により変動する場合があります。
他のMAツールとの比較
Pardotと他の主要MAツールを比較し、それぞれの特徴と適した企業を整理します。
(1) Marketo・Eloquaとの比較
Marketo、Eloqua、Pardotは「エンタープライズ向け3大MAツール」と呼ばれます。
| ツール | 提供元 | 月額料金 | 強み | 適した企業 |
|---|---|---|---|---|
| Pardot | Salesforce | 15万円〜 | Salesforce CRMとの一体化 | Salesforce利用企業 |
| Marketo | Adobe | 20万円〜 | 高度なセグメンテーション・キャンペーン管理 | Adobe製品活用企業 |
| Eloqua | Oracle | 30万円〜 | 大規模データ処理・複雑なシナリオ設計 | Oracle製品活用企業 |
Pardotの差別化ポイント:
- Salesforce CRMとのデータ連携が最も強力(リアルタイム同期、双方向連携)
- Salesforce製品群(Sales Cloud、Service Cloud等)との統合により、営業・カスタマーサクセスまで一気通貫で管理可能
選定のポイント:
- 既にSalesforce CRMを利用している → Pardot
- Adobe Experience Cloudを活用している → Marketo
- Oracle製品群を活用している → Eloqua
(2) HubSpotとの比較
HubSpotは、中小企業向けに無料版から提供されているMAツールです。
| 項目 | Pardot | HubSpot |
|---|---|---|
| 月額料金 | 15万円〜 | 無料〜(有料版は6万円〜) |
| 対象企業 | 中堅〜大企業 | 中小〜中堅企業 |
| 操作難易度 | 高(ITリテラシー必要) | 低(初心者でも使いやすい) |
| Salesforce連携 | 非常に強力 | API連携のみ |
| 日本語サポート | あり | あり |
Pardotが向いている企業:
- 既にSalesforce CRMを導入済み
- 月間リード数が500件以上
- 専任のマーケティングチーム(3名以上)がいる
HubSpotが向いている企業:
- MAツールを初めて導入する
- 予算が限られている(月10万円以下)
- 少人数チーム(1〜2名)で運用したい
(3) SATORIとの比較
SATORIは、国内企業が開発した純国産MAツールです。
| 項目 | Pardot | SATORI |
|---|---|---|
| 月額料金 | 15万円〜 | 14.8万円〜 |
| 対象企業 | 中堅〜大企業 | 中堅企業 |
| サポート | グローバル標準 | 国内企業特化の手厚いサポート |
| 匿名リード対応 | 弱い | 強い(IPアドレスから企業特定) |
Pardotが向いている企業:
- Salesforce CRMを利用している
- グローバル展開を視野に入れている
SATORIが向いている企業:
- 国内市場のみでビジネス展開
- 匿名リード(問い合わせ前の企業)へのアプローチを重視
- 日本語での手厚いサポートを求める
導入時の注意点とデメリット
Pardotは強力なツールですが、導入前に理解すべきデメリットや注意点があります。
(1) 運用コストの高さ
月額15万円(年間180万円)+ 初期費用30万円という料金は、中小企業には負担が大きい金額です。
コスト対効果の目安:
- 月間リード獲得数が500件以上
- リード1件あたりの獲得コストが3,000円以上(広告費等)
- 商談化率が10%以上
上記のような規模であれば、MAツールによる効率化でコストを回収できる可能性が高いです。一方、月間リード数が100件未満の企業では、Pardotの機能を活かしきれず、費用対効果が見合わない可能性があります。
(2) 操作の難しさとITリテラシー要件
Pardotは、HubSpotのような「初心者でも使いやすい」設計ではありません。導入支援企業の調査によると、「操作が難しく、マニュアルが不十分」という声が多く挙げられています。
必要なスキル:
- HTMLの基礎知識(メールテンプレートのカスタマイズ)
- Salesforceの理解(CRM連携設定)
- マーケティング施策の企画・実行経験
導入時は、専任のマーケティング担当者(ITリテラシー高)を最低1名確保することが推奨されます。また、導入初期は外部の支援サービス(toBeマーケティング等、導入実績1,700社以上)を活用することで、設定ミスやトラブルを回避できます。
(3) Salesforce連携前提の設計
Pardotは技術的には単体でも利用可能ですが、レポート機能や詳細な分析はSalesforce CRM連携が前提で設計されています。
Salesforce未使用の場合の制約:
- 商談データとの紐付けができない(リードから受注までのROI測定が困難)
- 高度なレポート機能(B2B Marketing Analytics)が十分に活用できない
- 営業チームとのデータ連携が手動作業になる
Salesforce CRMを導入していない企業は、Pardot導入前に「Salesforce導入も含めて検討すべきか」を判断する必要があります。CRM導入まで含めると、初期費用・月額費用がさらに増加します。
(4) 導入期間と体制整備
導入には最短で約1.5ヶ月かかります。ただし、これは技術的なセットアップのみで、実際に成果を出すには以下の準備が必要です:
導入前に準備すべきもの:
- リード獲得用コンテンツ(ホワイトペーパー、事例資料等)
- リードスコアリングの基準設計
- シナリオメール設計(顧客ジャーニーマップ)
- 営業チームとの連携フロー整備
これらを含めると、導入から本格稼働まで2〜3ヶ月が一般的です。導入を急ぐあまり準備不足で運用を開始すると、「ツールを入れたが使いこなせない」という事態になりかねません。
まとめ:Pardotに向いている企業
Pardot(Account Engagement)は、Salesforce CRMとの強力な連携を武器とする、B2B企業向けMAツールです。高度なリード管理・育成機能を備えていますが、運用コストと操作難易度が高いため、導入前の慎重な判断が必要です。
Pardotが向いている企業:
- 既にSalesforce CRMを導入済み
- 月間リード獲得数が500件以上
- 専任のマーケティング担当者(ITリテラシー高)がいる
- 年間180万円以上のMA予算を確保できる
Pardotが向いていない企業:
- Salesforce CRMを利用していない
- 月間リード数が100件未満
- 少人数チーム(1〜2名)で運用したい
- 予算が月10万円以下
次のアクション:
- 自社のリード獲得数・予算・既存システムを整理する
- Pardot・HubSpot・SATORI等の公式サイトで詳細を比較する
- 導入支援企業に相談し、自社に最適なMAツールを判断する
- 無料デモや導入事例を確認し、実際の操作性・効果を確認する
自社の状況に合ったMAツールを選定し、リード獲得・育成プロセスの効率化を実現しましょう。
