OKRとは?Googleが採用する目標管理フレームワーク
組織の目標管理に課題を感じていませんか?「目標が形骸化している」「部署間で方向性がバラバラ」「チャレンジングな目標を設定できない」——こうした悩みを抱えるB2B企業の経営企画・人事担当者は少なくありません。
OKR(Objectives and Key Results)は、GoogleやFacebookなどのグローバル企業が採用し、日本でもメルカリやSansanなどが導入している目標管理フレームワークです。この記事では、OKRの基本から、KPIやMBOとの違い、導入ステップまで実務視点で解説します。
この記事のポイント:
- OKRは定性的な目標(Objectives)と定量的な成果指標(Key Results)で構成される
- KPIと異なり、達成率60〜70%を理想とするチャレンジングな目標設定が特徴
- 人事評価と切り離すことで、リスクを恐れず挑戦できる組織文化を醸成
- 1ヵ月〜四半期の短いサイクルで目標を見直し、柔軟に調整可能
- 2024年時点で90%の組織がOKRを戦略的目標設定フレームワークとして採用
OKRとは?Googleが採用する目標管理フレームワーク
(1) OKR(Objectives and Key Results)の基本定義
OKR(Objectives and Key Results)は、達成したい定性的な目標(Objectives)と、その達成度を測定する定量的な成果指標(Key Results)の2要素で構成される目標管理フレームワークです。
Objectives(目標):
- 達成したい定性的な目標
- シンプルで覚えやすい表現
- 例:「顧客満足度を業界トップクラスにする」
Key Results(主要な成果):
- 目標達成を測定する定量的な指標
- 各目標に3〜5個設定するのが一般的
- 例:「NPS(ネット・プロモーター・スコア)を70以上にする」「問い合わせ対応時間を平均24時間以内にする」
OKRの特徴は、60〜70%の達成率を理想とする点です。100%達成できる目標ではなく、チャレンジングで野心的な目標を設定することで、組織の成長を促します。
(2) IntelからGoogle、Facebookへの歴史
OKRは1970年代にIntelが採用し、その後Google、Facebook、Oracleなどのグローバル企業が導入したことで広まりました。
Googleは創業間もない1999年にOKRを導入し、急成長を支える目標管理手法として活用しました。現在では世界中の企業がOKRを採用し、2024年時点で90%の組織がOKRを戦略的目標設定フレームワークとして利用していると報告されています。
(出典: OKR International「2024 OKRs SOIR(State of Implementation Report)」)
(3) 日本企業の導入事例(メルカリ、Sansan、花王、freee)
日本でも、メルカリ、Sansan、花王、freeeなどの企業がOKRを導入しています。
メルカリ:
- 2015年に50〜100人規模で導入
- 日本におけるOKR導入の先駆者
- 週次ミーティングで毎回OKRを確認する運用
freee:
- 社内にOKR推進チームを組織
- 全社員への教育を徹底
- 部署・個人への展開を段階的に実施
(出典: Unipos「OKR導入事例から学ぶOKR成功のポイントと注意点」)
導入企業の事例は企業規模・業種により結果が異なるため、自社の状況に応じた設計が必要です。
OKRとKPI・MBOの違い:達成率の考え方と評価への結びつき
OKRは従来の目標管理手法であるKPIやMBOと混同されがちですが、達成率の考え方や評価への結びつき方が異なります。
(1) KPIとの違い:OKRは60〜70%達成が理想、KPIは100%達成を目指す
KPI(Key Performance Indicator):
- 重要業績評価指標
- 100%達成を目指す定量的な指標
- 現状の業績を測定する役割
OKR:
- 60〜70%の達成率を理想とする
- チャレンジングで野心的な目標設定
- 組織の成長を促す役割
(出典: カオナビ「OKRとは――Googleが使う目標管理ツール、KPI・MBOとの違い」)
KPIは「達成すべき目標」であるのに対し、OKRは「チャレンジすべき目標」という位置づけです。100%達成できる目標では簡単すぎるため、70%程度の達成率を目指すことで、組織の挑戦意欲を高めます。
(2) MBOとの違い:OKRは人事評価と結びつけない、MBOは報酬決定に用いる
MBO(Management by Objectives):
- 目標による管理
- 人事評価・報酬決定に用いる
- 100%達成を前提とした目標設定
OKR:
- 人事評価と切り離す
- 報酬決定には用いない
- チャレンジングな目標設定を促す
(出典: カオナビ「OKRとは――Googleが使う目標管理ツール、KPI・MBOとの違い」)
MBOは人事評価と結びついているため、達成しやすい目標を設定する傾向があります。一方、OKRは人事評価と切り離すことで、リスクを恐れずチャレンジングな目標に取り組める環境を作ります。
(3) チャレンジングな目標設定がもたらす効果
人事評価と切り離すことで、以下の効果が期待できます:
- 挑戦意欲の向上: リスクを恐れず野心的な目標に取り組める
- イノベーション促進: 従来の枠を超えた発想が生まれやすい
- 組織の成長加速: 高い目標を追求することで、結果的に大きな成果を生む
ただし、人事評価には別の仕組み(MBOなど)を併用する必要があります。
OKR導入のメリットとデメリット
OKRには組織の一体感醸成や柔軟な目標調整といったメリットがある一方で、目標設定の難しさや理解・定着に時間がかかるデメリットもあります。
(1) メリット:組織の一体感醸成、柔軟な目標調整、挑戦意欲の向上
組織の一体感醸成:
- 企業→部署→個人の順で目標を設定し、全社員が企業目標を意識できる
- アライメント(目標の整合性)により、全社で方向性を統一
柔軟な目標調整:
- 1ヵ月〜四半期の短いサイクルで見直し可能
- 市場環境の変化に応じて目標を柔軟に調整できる
挑戦意欲の向上:
- チャレンジングな目標設定により、組織全体の成長意欲が高まる
- 人事評価と切り離すことで、失敗を恐れず挑戦できる
(出典: Asana「OKR の始め方と具体例|成果につながる目標設定のすべて [2025]」)
(2) デメリット:目標設定の難しさ、理解・定着に時間がかかる、整合性確保の困難
目標設定の難しさ:
- 達成可能すぎると手を抜き、難しすぎるとモチベーション低下
- 適切な「60〜70%達成」のラインを見極めるのは経験が必要
理解・定着に時間がかかる:
- OKRの概念は従来の目標管理と異なるため、企業文化への定着に多くの時間と労力が必要
- 全社員への教育が不可欠
整合性確保の困難:
- 会社・チーム・個人の目標に整合性がないと、優先順位が食い違い効果が薄れる
- アライメントの維持には継続的なコミュニケーションが必要
(3) OKRに向いている企業・向いていない企業
向いている企業:
- 変化が激しく柔軟な対応が必要な企業
- イノベーションを重視する企業
- 組織の一体感を高めたい企業
向いていない企業:
- 安定した業績管理を重視する企業(KPIが適している)
- 人事評価と目標管理を強く結びつけたい企業(MBOが適している)
自社の文化や目標管理のニーズに応じて、OKRが適切かを判断することが重要です。
OKRの具体的な設定方法:Objectives と Key Results
OKRの設定では、定性的な目標(Objectives)と定量的な成果指標(Key Results)をどのように決めるかが重要です。
(1) Objectives(目標)の設定:定性的でシンプルな表現
Objectivesは、達成したい定性的な目標をシンプルで覚えやすい表現で記述します。
良い例:
- 「顧客満足度を業界トップクラスにする」
- 「製品の品質を圧倒的に向上させる」
- 「営業チームの生産性を劇的に改善する」
悪い例:
- 「売上を10%増やす」(定量的すぎる、Key Resultsで測定すべき)
- 「業務を頑張る」(抽象的すぎる、測定不可能)
Objectivesは野心的で、達成すれば組織に大きなインパクトを与える内容にすることが推奨されます。
(2) Key Results(主要な成果)の設定:定量的な指標、各目標に3〜5個
Key Resultsは、目標達成を測定する定量的な指標です。各Objectiveに対して3〜5個設定するのが一般的です。
設定のポイント:
- 測定可能な数値目標にする
- 多すぎると焦点がぼやけ、少なすぎると測定が不十分
- 達成率60〜70%を理想とするチャレンジングな水準にする
例: Objective: 「顧客満足度を業界トップクラスにする」
Key Results:
- NPS(ネット・プロモーター・スコア)を70以上にする
- 問い合わせ対応時間を平均24時間以内にする
- 顧客満足度調査で「非常に満足」の回答率を80%以上にする
- 解約率を5%以下に抑える
(出典: Asana「OKR の始め方と具体例|成果につながる目標設定のすべて [2025]」)
(3) 企業→部署→個人への展開とアライメント
OKRは企業→部署(チーム)→個人の順で設定し、全社員が企業目標を意識できるようにします。
設定の順序:
- 企業OKR: 経営層が決定(社員の意見も取り入れる)
- 部署OKR: 企業OKRに整合する形で各部署が設定
- 個人OKR: 部署OKRに整合する形で各個人が設定
(出典: 日本能率協会「OKRとは?組織力を高める目標設定の手順や運用方法、導入事例などを解説」)
アライメントの重要性:
会社・チーム・個人の目標に整合性がないと、優先順位が食い違い効果が薄れます。定期的なコミュニケーションで、目標の整合性を維持することが重要です。
(4) 目標サイクルの設定:1ヵ月〜四半期
OKRの目標サイクルは1ヵ月〜3ヵ月程度の短い期間で設定します。
短いサイクルのメリット:
- 市場環境の変化に応じて柔軟に調整できる
- 進捗を頻繁に確認できるため、軌道修正しやすい
- 達成感を頻繁に得られ、モチベーション維持につながる
年間目標ではなく、四半期や月次で目標を見直すことで、変化の激しいビジネス環境に対応できます。
OKR導入ステップと運用のコツ
OKRを導入する際は、全社員への教育から始め、段階的に企業・部署・個人OKRを設定していきます。
(1) 導入ステップ:全社員教育→企業OKR設定→部署・個人OKR設定
ステップ1: 全社員への教育
- OKRの概念、KPI・MBOとの違いを全社員に教育
- チャレンジングな目標設定の重要性を理解してもらう
- 人事評価と切り離すことを明確に伝える
ステップ2: 企業OKRの設定
- 経営層が企業OKRを決定(社員の意見も取り入れる)
- 全社で共有し、方向性を統一
ステップ3: 部署OKRの設定
- 企業OKRに整合する形で各部署が設定
- 部署間でアライメントを確認
ステップ4: 個人OKRの設定
- 部署OKRに整合する形で各個人が設定
- 上司と部下で対話しながら設定
(出典: 日本能率協会「OKRとは?組織力を高める目標設定の手順や運用方法、導入事例などを解説」)
(2) 運用のコツ:週次ミーティングでの確認、月次チェックインでの進捗評価
週次ミーティングでの確認:
- 毎週のミーティングでOKRの進捗を確認
- 課題があれば早期に対応
- メルカリなどの先進企業が実践
(出典: Unipos「OKR導入事例から学ぶOKR成功のポイントと注意点」)
月次チェックインでの進捗評価:
- 月次で進捗を評価し、必要に応じて目標を調整
- 2024年時点で60%の組織が月次チェックインを採用(週次レビューから移行傾向)
(出典: OKR International「2024 OKRs SOIR(State of Implementation Report)」)
OKR推進担当者の設置:
- 62%の組織でOKR推進担当者(Champions)が主導
- 専任担当者を設けることで、定着を促進
(3) 2024年のトレンド:シンプル化、月次チェックインの主流化
シンプル化の流れ:
- Key Resultsへの重み付けをやめる組織が増加(2022年59%→2024年27%)
- より直感的でシンプルな運用が主流に
月次チェックインの主流化:
- 週次レビューから月次チェックインへ移行(2024年60%)
- 過度な管理を避け、自律的な運用を促す
(出典: OKR International「2024 OKRs SOIR(State of Implementation Report)」)
最新トレンドは2024年時点の情報であり、今後変化する可能性があります。導入時は最新の情報を確認してください。
まとめ:OKRで実現する組織の目標達成力向上
OKRは、定性的な目標(Objectives)と定量的な成果指標(Key Results)で構成される目標管理フレームワークです。
KPIやMBOとは異なり、60〜70%の達成率を理想とするチャレンジングな目標設定が特徴で、人事評価と切り離すことでリスクを恐れず挑戦できる組織文化を醸成します。
次のアクション:
- 自社の目標管理の課題を整理する
- OKRが自社に適しているかを判断する(変化の激しい環境、イノベーション重視かどうか)
- 小規模なパイロット導入を検討する(1部署から試験的に導入)
- 全社員への教育計画を立てる
- OKR推進担当者を設置し、定着を促進する
OKRの導入には時間と労力がかかりますが、組織の目標達成力を高める有効な手法です。自社の状況に応じて、段階的な導入を検討してください。
