OKRとMBOの違いとは?目標管理手法の特徴と選び方を解説

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/17

目標管理手法、OKRとMBOのどちらを導入すればいい?

人事担当者や事業責任者の多くが、「OKRとMBOの違いが分からない」「自社にはどちらが適しているのか判断できない」「併用は可能なのか」といった疑問を抱えています。OKR(Objectives and Key Results)とMBO(Management by Objectives)は、どちらも目標管理手法ですが、評価サイクル、達成基準、人事評価との連動など、多くの点で異なります。

この記事では、OKRとMBOの基本概念から両者の違い、メリット・デメリット、自社に適した選び方まで実践的に解説します。

この記事のポイント:

  • OKRは四半期ごとに見直す目標管理手法で、達成率60〜70%を目標とします
  • MBOは半年〜1年の評価サイクルで、達成率100%以上を目指します
  • OKRは人事評価と切り離して運用し、MBOは人事評価に連動させます
  • OKRはチャレンジ志向の組織に、MBOは安定成長を目指す組織に適しています
  • OKRとMBOの併用も可能ですが、運用難易度が高くなります

1. OKRとは:目標(Objectives)と成果指標(Key Results)の基本

OKRは、目標と成果指標を組み合わせた目標管理手法です。

(1) OKRの定義と歴史(Intel・Google)

OKR(Objectives and Key Results)は、1つの目標(Objectives)に対して2〜5個の成果指標(Key Results)を設定する目標管理手法です。

OKRの歴史:

  • 1970年代: Intel社のAndy Grove(アンディ・グローブ)が開発
  • 1999年: John Doerr(ジョン・ドーア)がGoogleに紹介
  • 2000年代以降: GoogleやFacebook(現Meta)など、シリコンバレー企業で広く採用される

Googleが採用したことで、OKRは世界的に注目され、スタートアップから大企業まで幅広く導入されるようになりました(出典: リクルートMS OKR解説)。

(2) OKRの構造(1目標につき2〜5個のKey Results)

OKRは以下の2つの要素で構成されます。

Objectives(目標):

  • 定性的で、挑戦的な目標
  • チームが共感し、モチベーションを高める表現
  • 例: 「国内No.1のカスタマーサクセスチームになる」

Key Results(成果指標):

  • 目標達成度を測定する定量的な指標
  • 1つの目標に対して2〜5個設定
  • 例: 「NPS(顧客推奨度)を60以上にする」「解約率を3%以下に抑える」

OKR設定例:

Objective: 国内No.1のカスタマーサクセスチームになる
├── KR1: NPS(顧客推奨度)を60以上にする
├── KR2: 解約率を3%以下に抑える
└── KR3: 平均対応時間を24時間以内にする

(出典: Asana OKR解説

(3) OKRの運用サイクル(四半期ごとの見直し)

OKRは短期的なサイクルで評価・見直しを行います。

運用サイクル:

  • 設定: 四半期(3ヶ月)ごとにOKRを設定
  • 進捗確認: 週次または月次で進捗を確認
  • 評価・見直し: 四半期末に達成度を評価し、次の四半期のOKRを設定

達成率の目安:

  • 60〜70%達成: 適切なチャレンジングな目標
  • 100%達成: 目標が低すぎる可能性
  • 50%未満: 目標が高すぎる、または施策が不十分

OKRは「100%達成」ではなく「60〜70%達成」を目指すことで、チャレンジングな目標設定を促します(出典: SmartHR OKR・MBO比較)。

2. MBOとは:目標管理制度の原則と特徴

MBOは、個人目標と企業目標を連携させる目標管理制度です。

(1) MBOの定義とドラッカーの原則

MBO(Management by Objectives)は、経営学者のPeter Drucker(ピーター・ドラッカー)が1950年代に提唱した目標管理制度です。正式には「Management by Objectives and Self Control」と呼ばれ、**Self Control(自主性)**を重視します。

MBOの基本原則:

  • 企業の経営目標と従業員個人の目標を連携させる
  • 従業員が自ら目標を設定し、自主的に達成に取り組む
  • 上司と部下が協力して目標を設定・評価する
  • 目標達成度を人事評価・報酬に反映する

※「Management by Objectives」は「目標による管理」と訳されることが多いですが、ドラッカーの原則では「Self Control(自主性)」が重要な要素です(出典: グロービス MBO解説)。

(2) MBOの運用サイクル(半年〜1年)

MBOは中長期的な評価サイクルで運用されます。

運用サイクル:

  • 設定: 半年または1年ごとに目標を設定
  • 中間レビュー: 期中(3ヶ月または半年)に進捗を確認
  • 評価: 期末に達成度を評価し、人事評価・報酬に反映

達成率の目安:

  • 100%以上達成: 目標達成として評価
  • 80〜99%達成: 概ね達成(評価は企業により異なる)
  • 80%未満: 未達成

MBOは「100%達成」を目指すため、達成可能な現実的な目標を設定します。

(3) 日本企業におけるMBOの普及

日本では、1990年代のバブル崩壊後、成果主義の流れでMBOが多くの企業に導入されました。

日本でのMBO普及の背景:

  • 年功序列型の人事制度から成果主義への移行
  • 目標達成度を定量的に評価し、公平な人事評価を実現
  • 個人の目標と企業目標を連携させ、組織全体の生産性向上を目指す

現在でも多くの日本企業がMBOを基本とした人事評価制度を採用しています(出典: リクルートMS MBO解説)。

3. OKRとMBOの6つの違い:評価サイクル・達成基準・人事評価連動

OKRとMBOには、以下の6つの主要な違いがあります。

(1) 評価サイクルの違い(四半期 vs 半年〜1年)

OKR:

  • 評価サイクル: 四半期(1〜3ヶ月)
  • 見直し頻度: 高い(環境変化に素早く対応)

MBO:

  • 評価サイクル: 半年〜1年
  • 見直し頻度: 低い(中長期的な目標を重視)

OKRは短期的なサイクルで目標を見直すため、市場環境の変化に素早く対応できます。一方、MBOは中長期的な目標を重視します。

(2) 達成基準の違い(60〜70% vs 100%達成)

OKR:

  • 達成基準: 60〜70%達成を目標
  • 特徴: チャレンジングな目標設定を促す

MBO:

  • 達成基準: 100%以上達成を目標
  • 特徴: 達成可能な現実的な目標を設定

OKRは意図的に高い目標を設定し、「失敗を恐れず挑戦する文化」を促します。MBOは100%達成を目指すため、確実に達成できる目標を設定する傾向があります(出典: カオナビ OKR・MBO比較)。

(3) 人事評価との連動(切り離し vs 連動)

OKR:

  • 人事評価との連動: 切り離す
  • 理由: 人事評価と連動させると、保守的な目標設定になり、挑戦を阻害するため

MBO:

  • 人事評価との連動: 連動する
  • 理由: 目標達成度を評価・報酬に反映し、モチベーションを高めるため

OKRは「評価と切り離すことで、失敗を恐れずに挑戦できる環境を作る」ことを重視します。MBOは「目標達成度を評価に反映することで、確実な成果を促す」ことを重視します。

(4) 目標共有範囲の違い(全社公開 vs 上司・個人間)

OKR:

  • 目標共有範囲: 全社で公開・共有
  • 理由: 組織全体の連携を促し、透明性を高めるため

MBO:

  • 目標共有範囲: 上司と個人の間で共有
  • 理由: 個人目標は人事評価に直結するため、機密性を保つため

OKRでは、CEOから現場メンバーまで全員のOKRが公開され、「誰が何に取り組んでいるか」が可視化されます。これにより、部門間の連携が促進されます。

4. OKRとMBOのメリット・デメリット比較

OKRとMBOには、それぞれメリット・デメリットがあります。

(1) OKRのメリット・デメリット(挑戦促進 vs 運用難易度)

OKRのメリット:

  • 挑戦的な目標設定を促す: 60〜70%達成を目指すため、従業員が高い目標に挑戦できる
  • 組織の連携を強化: 全社でOKRを共有し、部門を超えた協力が促進される
  • 環境変化に素早く対応: 四半期ごとに見直すため、市場変化に柔軟に対応できる
  • 透明性が高い: 全員のOKRが公開されるため、誰が何に取り組んでいるかが明確

OKRのデメリット:

  • 運用難易度が高い: 四半期ごとの設定・評価が必要で、運用工数が大きい
  • 組織の成熟度が必要: 挑戦的な目標設定には、失敗を許容する文化が必要
  • 人事評価と切り離すため: 従業員が「OKRと評価の関係が不明確」と感じる可能性
  • 短期的な成果重視: 四半期単位のため、中長期的な取り組みが後回しになるリスク

(2) MBOのメリット・デメリット(評価連動 vs 保守的目標)

MBOのメリット:

  • 評価・報酬と直結: 目標達成度が評価に反映され、従業員のモチベーションが明確
  • 公平な評価: 定量的な目標達成度で評価するため、公平性が高い
  • 運用がシンプル: 半年〜1年の評価サイクルで、運用工数が小さい
  • 中長期的な目標: 1年単位の目標で、じっくり取り組める

MBOのデメリット:

  • 保守的な目標設定: 100%達成を目指すため、確実に達成できる目標を設定しがち
  • イノベーションを阻害: 挑戦的な取り組みが評価されにくく、新しいことに挑戦しにくい
  • 部門間の連携が弱い: 上司と個人の間で目標を共有するため、部門を超えた協力が生まれにくい
  • 環境変化への対応が遅い: 半年〜1年の評価サイクルのため、市場変化に素早く対応できない

(出典: ジンジャー MBO・OKR比較

5. 自社に適した目標管理手法の選び方

自社の組織風土や成長ステージに応じて、OKRとMBOを選びます。

(1) OKRが向いている組織(チャレンジ志向・スタートアップ)

以下のような組織には、OKRが適しています。

OKRが向いている組織:

  • チャレンジ志向の組織: 失敗を許容し、挑戦的な目標に取り組む文化がある
  • スタートアップ・成長企業: 環境変化が速く、短期的なサイクルで目標を見直す必要がある
  • 組織連携が重要: 部門を超えた協力が必要なプロジェクトが多い
  • 透明性を重視: 全員のOKRを公開し、組織全体の方向性を共有したい

導入事例:

  • メルカリ: 2015年にOKRを導入、日本のOKR先駆者
  • freee: OKR推進チームを社内に設立し、全社展開
  • 日立: 一部部門でOKRを試験導入

(出典: Resily OKR導入事例

(2) MBOが向いている組織(安定成長・成熟企業)

以下のような組織には、MBOが適しています。

MBOが向いている組織:

  • 安定成長を目指す組織: 急激な変化は少なく、中長期的な目標を重視する
  • 成熟企業: 事業が安定しており、確実な目標達成が求められる
  • 評価制度との連携が重要: 目標達成度を人事評価・報酬に明確に反映したい
  • 運用工数を抑えたい: 四半期ごとの見直しは運用負荷が高いため、半年〜1年単位で管理したい

MBOが適した業種:

  • 製造業、金融業、インフラ業など、安定性が重視される業種

(3) OKRとMBOの併用は可能か

OKRとMBOは併用可能ですが、運用難易度が高くなります。

併用のパターン:

  • OKR: 挑戦的な組織目標・部門目標に使用(人事評価と切り離す)
  • MBO: 個人目標・評価に使用(人事評価に連動)

併用のメリット:

  • OKRで組織連携と挑戦を促しつつ、MBOで個人評価を明確にできる

併用のデメリット:

  • 運用が複雑になり、従業員が「どちらを優先すべきか」混乱する可能性
  • 運用工数が増加し、人事担当者の負担が大きい

推奨される導入順序: 目標管理の経験が少ない組織は、まずMBOから始めるのが無難です。組織が成熟し、挑戦的な文化が醸成されたら、OKRへの移行や併用を検討します。

6. まとめ:目標管理手法を導入する際のポイント

OKRとMBOは、評価サイクル、達成基準、人事評価との連動など、多くの点で異なる目標管理手法です。OKRは四半期ごとに見直し、60〜70%達成を目指す挑戦的な手法です。一方、MBOは半年〜1年の評価サイクルで、100%達成を目指す堅実な手法です。

次のアクション:

  • 自社の組織風土・成長ステージを把握する(チャレンジ志向 vs 安定志向)
  • 目標管理の経験が少ない場合は、MBOから始める
  • 組織が成熟し、挑戦的な文化が醸成されたら、OKRへの移行を検討
  • OKRとMBOを併用する場合は、明確な使い分けルールを設定する
  • 専用ツール(Resily、Asana等)または無料のExcel・スプレッドシートで運用を開始
  • 四半期または半年ごとに、目標管理手法の効果を評価し、継続的に改善する

目標管理手法は一度導入して終わりではなく、組織の成長に合わせて柔軟に見直すことが重要です。自社に最適な手法を選び、組織全体の生産性向上を実現しましょう。

よくある質問

Q1OKRとMBOは併用できますか?

A1可能ですが、運用難易度が高くなります。OKRを挑戦的な組織目標・部門目標に使用し、人事評価と切り離します。一方、MBOを個人目標・評価に使用し、人事評価に連動させるパターンが一般的です。併用する場合は、明確な使い分けルールを設定し、従業員が混乱しないようにすることが重要です。

Q2OKRを人事評価に連動させてはいけないのですか?

A2OKRを人事評価に連動させると、保守的な目標設定になりがちです。OKRは60〜70%達成を目指す挑戦的な手法であり、失敗を許容することが前提です。人事評価と連動させると、従業員は「評価が下がるリスク」を恐れて、確実に達成できる低い目標を設定してしまいます。OKRは評価と切り離し、挑戦を促す運用が推奨されます。

Q3OKRやMBOの導入コストはどれくらいですか?

A3専用ツール(Resily、Asana等)は月額数万円〜数十万円程度です。ただし、ExcelやGoogle スプレッドシートでの無料運用も可能です。無料運用の場合、運用工数が増加するため、人事担当者の負担が大きくなります。組織規模が大きい場合は、専用ツールの導入を検討することが推奨されます。

Q4どちらを先に導入すべきですか?

A4目標管理の経験が少ない組織は、MBOから始めるのが無難です。MBOは運用がシンプルで、半年〜1年の評価サイクルのため、導入しやすいです。組織が成熟し、挑戦的な文化が醸成されたら、OKRへの移行や併用を検討します。最初からOKRを導入すると、運用難易度が高く、失敗するリスクがあります。

B

B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

「B2Bデジタルプロダクト実践ガイド」は、デシセンス株式会社が運営する情報メディアです。B2Bデジタルプロダクト企業のマーケティング・営業・カスタマーサクセス・開発・経営に関する実践的な情報を、SaaS、AIプロダクト、ITサービス企業の実務担当者に向けて分かりやすく解説しています。