リード獲得から商談化までの歩留まりが悪い...どう改善すればいい?
BtoB SaaS企業のマーケティング・営業担当者の中には、「せっかくリードを獲得しても商談につながらない」「どこで離脱しているのか分からない」といった課題を抱えている方が多いのではないでしょうか。
この記事では、ファネル(マーケティングファネル)の基礎から、種類・特徴、分析手順、BtoBマーケティングでの設計方法、改善事例まで解説します。
この記事のポイント:
- ファネルは顧客が認知から購入に至るまでのプロセスを図式化したモデル(漏斗の形状)
- 3種類がある:パーチェスファネル(認知→購入)、インフルエンスファネル(継続→発信)、ダブルファネル(両者の組み合わせ)
- ファネル分析の3ステップ:①購買フェーズの各段階を集計、②離脱率を分析、③ボトルネックを特定して改善
- BtoBではMQL/SQL/商談/受注の各段階を可視化し、MA・SFA連携で管理
- ピクトケーキの事例ではUX改善でCVRが20%向上
- 「ファネルは古い」という議論があるが、BtoBでは依然有効で2024年も活用されている
1. ファネル(マーケティングファネル)とは何か?
ファネル(Funnel)とは、漏斗の形状に似た、顧客が認知から購入に至るまでのプロセスを図式化したモデルです。マーケティング分野では、見込み顧客が商品・サービスを認知してから購入・利用に至るまでの一連の流れを表した図式として活用されています。
(1) ファネルの定義と基本概念
ファネルの基本的な考え方は以下の通りです:
ファネルの特徴:
- 認知段階では多くの見込み顧客がいるが、検討・購入段階に進むにつれて減少する
- 逆三角形(漏斗)の形状で、各段階の人数を表現
- 各段階での離脱率やコンバージョン率を可視化
ファネルが表すプロセス:
- トップ(認知段階): 多くの潜在顧客が存在
- ミドル(興味・検討段階): 興味を持った一部の顧客が残る
- ボトム(購入段階): 最終的に購入に至る顧客はさらに少数
活用目的:
- 顧客の購買プロセスを可視化し、各段階での課題を特定
- 離脱ポイントを明確にし、改善施策を設計
- マーケティング・営業活動の効率化
ファネルは、マーケティング戦略の基本的なフレームワークとして広く活用されています。
(2) AIDMA等の購買行動モデルとの関係
ファネルは、古典的な購買行動モデル「AIDMA」と密接に関連しています。
AIDMA(アイドマ)とは:
- A (Attention): 注意・認知
- I (Interest): 興味・関心
- D (Desire): 欲求
- M (Memory): 記憶
- A (Action): 行動(購入)
AIDMAは購買プロセスを5段階で表したモデルで、ファネルはこれを図式化したものです。
ファネルとAIDMAの対応:
| ファネル段階 | AIDMA |
|---|---|
| 認知 | Attention(注意・認知) |
| 興味・関心 | Interest(興味)+ Desire(欲求) |
| 比較・検討 | Memory(記憶) |
| 購入 | Action(行動) |
現代のデジタルマーケティングでは、AIDMA以外にも「AISAS」「AISCEAS」など、検索やSNSを考慮した新しいモデルも登場していますが、基本的な構造は共通しています。
2. ファネルの種類と特徴
(1) パーチェスファネル(認知→興味→検討→購入)
パーチェスファネル(Purchase Funnel)は、最も基本的なファネルで、認知から購入までの4段階を逆三角形で表します。
パーチェスファネルの4段階:
① 認知(Awareness):
- 商品・サービスの存在を知る段階
- 施策例: 広告、SEO、SNS、展示会、ウェビナー
② 興味・関心(Interest):
- 商品・サービスに興味を持つ段階
- 施策例: ブログ記事、ホワイトペーパー、メールマーケティング
③ 比較・検討(Consideration):
- 競合と比較し、購入を検討する段階
- 施策例: 導入事例、製品比較ページ、無料トライアル
④ 購入(Conversion):
- 実際に購入・契約する段階
- 施策例: 営業フォロー、デモ、価格交渉
パーチェスファネルの特徴:
- 逆三角形(▼)の形状で、上から下に向かって人数が減少
- 購入までのプロセスに焦点を当てる
- BtoB・BtoCともに活用可能
(2) インフルエンスファネル(継続→紹介→発信)
インフルエンスファネル(Influence Funnel)は、購入後の顧客行動を三角形で表したファネルです。
インフルエンスファネルの3段階:
① 継続(Repeat):
- 商品・サービスを継続利用する段階
- 施策例: カスタマーサクセス、リテンション施策、サポート充実
② 紹介(Referral):
- 商品・サービスを知人や同僚に紹介する段階
- 施策例: 紹介プログラム、インセンティブ提供
③ 発信(Advocacy):
- SNSやレビューサイトで積極的に発信する段階
- 施策例: ロイヤルティプログラム、ユーザーコミュニティ運営
インフルエンスファネルの特徴:
- 三角形(▲)の形状で、下から上に向かって人数が増加(口コミで拡散)
- 購入後のロイヤルティ向上に焦点を当てる
- LTV(顧客生涯価値)の最大化に貢献
(3) ダブルファネルとその他の新しいモデル
ダブルファネル(Double Funnel)は、パーチェスファネルとインフルエンスファネルを組み合わせたモデルです。
ダブルファネルの構造:
認知
興味・関心
比較・検討
購入(接点)
継続
紹介
発信
逆三角形(▼)と三角形(▲)を縦に並べた形状で、購入を接点として、新規顧客獲得と既存顧客維持を同時に実現します。
ダブルファネルのメリット:
- 新規顧客獲得(パーチェス)と既存顧客維持(インフルエンス)を統合的に管理
- 購入後の行動も可視化し、LTV最大化を目指す
- 2024年現在、主流のファネルモデルとして活用されている
その他の新しいモデル:
- マイクロモーメントファネル: Googleが提唱した、スマートフォン時代の瞬間的な購買意思決定プロセスを表すモデル
- フライホイールモデル: HubSpotが提唱した、顧客を中心に回転し続ける成長モデル(従来のファネルに代わる概念)
これらの新モデルは、デジタル時代の多様な顧客行動に対応するために登場しています。
3. ファネル分析の手順と指標
(1) ファネル分析の3ステップ(数値集計→離脱率分析→改善実行)
ファネル分析は以下の3ステップで実施します:
Step 1: 購買フェーズの各段階の数字を集計
- 各段階の人数(または件数)を集計
- 例: 認知1,000人 → 興味200人 → 検討50人 → 購入10人
Step 2: 離脱率を分析
- 各段階での離脱率を計算
- 例: 認知→興味の離脱率 = (1,000 - 200) ÷ 1,000 = 80%
Step 3: ボトルネックを特定して改善施策を実行
- 離脱率が最も高い段階をボトルネックと特定
- ボトルネックに対して集中的に改善施策を実行
計算例:
| 段階 | 人数 | 前段階からの転換率 | 離脱率 |
|---|---|---|---|
| 認知 | 1,000人 | - | - |
| 興味・関心 | 200人 | 20% | 80% |
| 比較・検討 | 50人 | 25% | 75% |
| 購入 | 10人 | 20% | 80% |
この場合、「認知→興味」と「検討→購入」の離脱率が特に高く、ボトルネックと判断できます。
(2) 主要指標(コンバージョン率、離脱率、ボトルネック)
ファネル分析で使用する主要指標は以下の通りです:
コンバージョン率(CVR、Conversion Rate):
- 訪問者のうち、コンバージョン(購入や登録などの目標達成)に至った割合
- 計算式: CVR = コンバージョン数 ÷ 訪問者数 × 100%
離脱率:
- 各段階で次の段階に進まずに離脱した割合
- 計算式: 離脱率 = (現段階の人数 - 次段階の人数) ÷ 現段階の人数 × 100%
ボトルネック:
- 離脱率が最も高い段階、または改善効果が最も大きい段階
その他の指標:
- 遷移率: 各段階から次の段階に進む割合(= 1 - 離脱率)
- 全体CVR: 最初の段階から最終段階までの総合的なコンバージョン率
これらの指標を定期的にモニタリングし、改善の効果を測定します。
(3) 分析ツールの活用(Mixpanel、Google Analytics、Adobe Analytics)
2024年現在、ファネル分析の自動化ツールが広く活用されています:
主要なファネル分析ツール:
① Mixpanel:
- ユーザー行動を詳細に追跡し、ファネル分析を自動化
- イベントベースのトラッキングで、Web・アプリ両方に対応
② Google Analytics(GA4):
- 無料で利用可能な代表的なアクセス解析ツール
- 「探索レポート」機能でファネル分析が可能
③ Adobe Analytics:
- エンタープライズ向けの高機能分析ツール
- ファネル可視化・セグメント分析に強み
④ その他のツール:
- HubSpot(MA機能に統合)
- Salesforce(SFAとの連携)
- Amplitude、Heap等
これらのツールを活用することで、手動集計の手間を省き、リアルタイムでファネル分析を実施できます。
4. BtoBマーケティングにおけるファネル設計
(1) BtoB特有のファネル構造(MQL/SQL/商談/受注)
BtoBマーケティングでは、以下のような特有のファネル構造が使われています:
BtoBファネルの主要段階:
① リード(Lead):
- 展示会、ウェビナー、資料ダウンロード等で獲得した見込み顧客
② MQL(Marketing Qualified Lead):
- マーケティング部門が育成し、営業に引き渡せると判断したリード
- スコアリング(行動履歴や属性に基づく評価)で判定
③ SQL(Sales Qualified Lead):
- 営業部門がヒアリングし、商談化できると判断したリード
- 予算・権限・ニーズ・導入時期(BANT条件)を確認
④ 商談(Opportunity):
- 提案・見積もりを行い、受注を目指す段階
⑤ 受注(Win):
- 契約締結、プロジェクト開始
BtoBファネルの特徴:
- 購買プロセスが長く複雑(数週間〜数ヶ月)
- 複数の担当者が関与(意思決定者、実務担当者、購買担当者など)
- リードの質が重要(量よりも質を重視)
(2) MA・SFA連携による可視化
BtoBマーケティングでは、MA(マーケティングオートメーション)とSFA(営業支援システム)を連携し、ファネルを可視化します。
MA・SFA連携のメリット:
- リードから受注までのプロセスを一元管理
- マーケティング部門と営業部門のデータ連携
- 各段階の転換率・離脱率をリアルタイムで把握
主要なMA・SFAツール:
| ツールカテゴリ | 代表的なツール |
|---|---|
| MA | HubSpot、Marketo、Pardot、SATORI |
| SFA | Salesforce、HubSpot CRM、Zoho CRM |
可視化の例:
- ダッシュボードで「リード → MQL → SQL → 商談 → 受注」の各段階の件数と転換率を表示
- ボトルネックを特定し、マーケティング・営業の改善施策を実行
(3) BtoCとの違いとBtoBでの有効性
BtoBとBtoCでは、ファネルの活用方法が異なります:
BtoBとBtoCの違い:
| 項目 | BtoB | BtoC |
|---|---|---|
| 購買プロセス | 長期・複雑(数週間〜数ヶ月) | 短期・単純(数分〜数日) |
| 関与者 | 複数(意思決定者・実務担当者等) | 個人 |
| 重視する指標 | リードの質、MQL/SQL転換率 | PV、セッション数、CVR |
| ファネルの有効性 | 高い(依然として有効) | 限定的(顧客行動が多様化) |
BtoBでのファネルの有効性:
- 2024年現在、BtoBマーケティングではファネルが依然として有効な行動モデルとされている
- 購買プロセスが直線的で、ファネルで可視化しやすい
- MA・SFA連携により、各段階を正確にトラッキング可能
BtoCでの課題:
- SNS時代の顧客行動は直線的でなく、従来ファネルの限界が顕著
- マイクロモーメントファネルなど新しいモデルが登場
5. ファネル分析による改善方法と事例
(1) 離脱ポイント特定と改善施策
ファネル分析により、離脱ポイントを特定し、以下のような改善施策を実行します:
認知→興味・関心の離脱が多い場合:
- 広告のターゲティング精度を向上(関心の高い層に絞る)
- ランディングページの訴求内容を改善(顧客の課題に寄り添う)
興味・関心→比較・検討の離脱が多い場合:
- 製品メリットやベネフィットを伝えるコンテンツ配信(ブログ、ホワイトペーパー)
- メールナーチャリングで定期的に接点を持つ
比較・検討→購入の離脱が多い場合:
- 導入事例やお客様の声を充実させる
- 無料トライアルやデモを提供し、体験機会を増やす
- 価格や契約条件の透明性を高める
ネットショッピングの例:
- 「商品一覧→商品詳細→カート→購入」の各段階で離脱率を測定
- カート離脱が多い場合は、送料無料や決済方法の追加を検討
(2) ピクトケーキの成功事例(CVR 20%向上)
具体的な改善事例として、ピクトケーキのUX改善があります:
背景:
- 写真入りケーキのECサイト「ピクトケーキ」
- ケーキ選択画面で離脱が多い
課題:
- ケーキの種類・味・サイズを1画面で選択させていた
- 選択肢が多すぎて、ユーザーが迷う
改善施策:
- ケーキの種類・味・サイズを別画面に分離
- ステップを分けることで、選択がしやすくなる
結果:
- コンバージョン率(CVR)が20%向上
この事例から、ファネル分析で離脱ポイントを特定し、UX改善を行うことで大きな成果が得られることが分かります。
(3) 「マーケティングファネルは古い」という議論への対応
2015年にGoogle社のアビナッシュ・コーシックが「マーケティングファネルは死んだ」と発言し、デジタル時代のカスタマージャーニー多様化により限界が指摘されています。
「ファネルは古い」と言われる理由:
- デジタル時代の顧客行動は直線的でなく、SNSや検索を通じて複雑化
- 購買プロセスが「認知→興味→検討→購入」の順に進むとは限らない
- 従来の単純なファネルでは、多様な顧客ジャーニーを捉えきれない
対応策:
- パーチェスファネルのみでなく、インフルエンスファネルを併用(ダブルファネル)
- マイクロモーメントファネル、フライホイールモデルなど新しいモデルを活用
- ファネルはあくまで可視化ツールとして割り切り、柔軟に運用
BtoBでは依然有効:
- BtoB購買プロセスは比較的直線的で、ファネルが有効
- 2024年現在もBtoBマーケティングで広く活用されている
ファネル分析は離脱ポイントを可視化するツールであり、分析だけでは意味がありません。改善施策の実行が必須です。
6. まとめ:ファネル活用の成功ポイント
ファネル(マーケティングファネル)は、顧客が認知から購入に至るまでのプロセスを図式化したモデルです。3種類のファネル(パーチェス、インフルエンス、ダブル)を目的に応じて使い分け、ファネル分析により離脱ポイントを特定し、改善施策を実行します。
ファネル活用の成功ポイント:
- ファネル分析の3ステップ:①購買フェーズ各段階を集計、②離脱率を分析、③ボトルネックを特定して改善
- BtoBではMQL/SQL/商談/受注の各段階を可視化し、MA・SFA連携で管理
- パーチェスファネルのみでなく、インフルエンスファネルと併用(ダブルファネル)
- ファネルは可視化ツールであり、分析だけでなく改善施策の実行が必須
- 「ファネルは古い」という議論があるが、BtoBでは依然有効(2024年も活用)
次のアクション:
- 自社のファネルを設計し、各段階の定義を明確化
- MA・SFAツールを活用してファネルを可視化
- 離脱率が高い段階をボトルネックとして特定
- ボトルネックに対して集中的に改善施策を実行
- 定期的にファネル分析を行い、継続的に改善
ファネルを活用し、リード獲得から商談化・受注までの歩留まりを改善しましょう。
※本記事は2024年11月時点の情報に基づいています。ファネルモデルや分析手法は市場環境により変化するため、最新情報は各種メディアや専門機関のレポートをご確認ください。
