HubSpotからSalesforceへの移行を検討しているけれど、どう進めればいいか分からない...
事業拡大に伴いCRMの見直しを検討している企業の多くが、HubSpotからSalesforceへの移行を選択肢の一つとして考えています。しかし、「データ移行はどうすればいいの?」「移行期間はどれくらいかかるの?」「失敗するリスクは?」といった疑問は尽きません。
この記事では、HubSpotからSalesforceへの移行を検討している中堅〜大企業のマーケティング・営業部門マネージャーや情報システム部門担当者向けに、移行の手順・注意点・データ移行のポイントを詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 移行を検討すべきタイミングは事業拡大・カスタマイズ要件の増加・コスト構造の見直し時
- データ移行の方法はCSV手動移行・連携アプリ・API利用の3つがあり、データ量に応じて選択する
- 移行期間は通常1〜2ヶ月が目安だが、カスタマイズの複雑さにより6ヶ月以上かかる場合もある
- オブジェクトの命名規則やデータ構造の違いにより、マッピングミスのリスクがある
- 移行ではなくHubSpotとSalesforceの併用という選択肢も検討すべき
1. HubSpotからSalesforceへの移行を検討すべき背景とタイミング
HubSpotからSalesforceへの移行は、すべての企業に適しているわけではありません。移行を検討すべきタイミングと企業の特徴を理解することが重要です。
(1) 事業拡大に伴うCRMの見直し
事業拡大に伴い、以下のような課題が表面化した場合、CRMの見直しが必要になります:
従業員数の増加:
- HubSpotは中小企業向けに設計されている一方、Salesforceは大企業向けのスケーラビリティを持っています
- 従業員数が500人を超えると、Salesforceの高度な権限管理やカスタマイズ機能が有利になるケースが多いと言われています
取引データの急増:
- リード数・商談数が増加し、HubSpotの料金体系ではコストが割高になる場合があります
- Salesforceは大量データの管理に強みがあるとされています
(2) 移行を検討すべき企業の特徴
以下のような特徴を持つ企業は、HubSpotからSalesforceへの移行を検討する価値があるかもしれません:
カスタマイズ要件が高い企業:
- Salesforceは高度なカスタマイズ機能(フロー・Apex・Visualforce等)を提供しており、複雑な業務プロセスに対応できるとされています
- HubSpotは使いやすさを重視している一方、カスタマイズの自由度には限界があります
既存システムとの連携が必要な企業:
- SalesforceはAppExchangeで3,000以上のアプリ連携が可能と言われています
- ERPや会計システムとの連携が必須の場合、Salesforceの方が選択肢が広いケースが多いです
グローバル展開している企業:
- Salesforceは多言語・多通貨対応が標準機能として提供されています
- HubSpotも対応していますが、Salesforceの方が実績が豊富とされています
(3) 移行ではなく併用という選択肢
HubSpotとSalesforceは必ずしも「どちらか一方を選ぶ」必要はありません。以下のような併用パターンも検討できます:
マーケティングはHubSpot、営業はSalesforce:
- HubSpotのマーケティング機能(MA・コンテンツ管理)は評価が高く、Salesforceの営業管理機能と組み合わせる企業も多いと言われています
- HubSpotの公式ドキュメントでは、Salesforce連携のインストール手順が提供されています
段階的な移行:
- まず一部の部署だけSalesforceに移行し、効果を検証してから全社展開する方法も有効です
- リスクを分散できるメリットがあります
2. HubSpotとSalesforceの基本的な違いと移行の意義
HubSpotとSalesforceは、どちらもCRMプラットフォームですが、設計思想や機能に違いがあります。移行を検討する前に、両者の違いを理解することが重要です。
(1) オブジェクト構造の違い(Contact vs Lead/Contact)
HubSpotとSalesforceでは、顧客情報を管理する「オブジェクト」の命名規則や構造が異なります:
HubSpotのオブジェクト構造:
- Contact(コンタクト): 個人の顧客情報
- Company(会社): 法人の顧客情報
- Deal(ディール): 商談情報
Salesforceのオブジェクト構造:
- Lead(リード): 見込み顧客(商談前)
- Contact(取引先責任者): 商談開始後の個人情報
- Account(取引先): 法人の顧客情報
- Opportunity(商談): 商談情報
HubSpotの「Contact」はSalesforceの「Lead」や「Contact」に対応する可能性があり、データマッピング(項目の対応付け)を慎重に設計する必要があります。
(2) カスタマイズ機能の違い(フロー・API)
Salesforceは高度なカスタマイズ機能を提供しています:
Salesforceのカスタマイズ機能:
- フロー(Flow): 業務プロセスの自動化機能
- Apex: Salesforce独自のプログラミング言語
- Visualforce: カスタムUIの作成機能
移行時の注意点:
- HubSpotで設定していたワークフロー(自動化)は、Salesforceのフローで再構築する必要がある場合があります
- すべての自動化設定をそのまま移行できるわけではなく、Salesforce側での再設定が必要になることが一般的です
(3) コスト構造の比較
HubSpotとSalesforceでは、料金体系が異なります:
HubSpotの料金体系(2024年時点の目安):
- Marketing Hub: 月額45,000円〜(Professional)
- Sales Hub: 月額45,000円〜(Professional)
- コンタクト数に応じて料金が変動する仕組みが一般的です
Salesforceの料金体系(2024年時点の目安):
- Sales Cloud: 月額3,000円〜(ユーザー単価)
- Service Cloud: 月額3,000円〜(ユーザー単価)
- ユーザー数に応じて料金が変動する仕組みが一般的です
※料金は変動する可能性があるため、最新情報は各社公式サイトをご確認ください。
コスト構造の考慮点:
- なお、参考情報として、逆方向(SalesforceからHubSpotへの移行)では年間2,000万円以上のコスト削減を実現した事例が報告されています(株式会社100の事例)
- HubSpotからSalesforceへの移行の場合、自社のユーザー数・データ量・必要機能によってコストが増減するため、事前にシミュレーションすることが重要です
3. 移行前に準備すべきこと(データマッピング・カスタマイズの確認)
データ移行を成功させるためには、事前準備が重要です。以下の4つのステップを確実に実施しましょう。
(1) データマッピングの設計
HubSpotとSalesforceでは、オブジェクトやフィールド(項目)の名称が異なるため、「どのデータをどこに移行するか」を設計する必要があります。
データマッピングの例:
| HubSpot | Salesforce |
|---|---|
| Contact(見込み客) | Lead |
| Contact(既存顧客) | Contact |
| Company | Account |
| Deal | Opportunity |
| カスタムプロパティ | カスタムフィールド |
マッピング設計時の注意点:
- HubSpotの「Contact」が見込み客か既存顧客かを区別する必要があります
- カスタムプロパティ(独自に作成した項目)がSalesforceでどのフィールドに対応するかを明確にします
- データ型(テキスト・数値・日付等)の互換性を確認します
(2) カスタムフィールドの棚卸し
HubSpotで作成したカスタムプロパティをすべてリストアップし、Salesforceに移行すべきものを選定します。
棚卸しのポイント:
- 現在使用中のカスタムプロパティ(直近3ヶ月で更新があるもの)を優先します
- 使用していないカスタムプロパティは移行対象から除外することで、移行作業を効率化できます
- Salesforceで標準フィールドとして提供されているものは、カスタムフィールドを作らず標準フィールドを使用する方が保守性が高いとされています
(3) ワークフローとフローの互換性確認
HubSpotのワークフロー(自動化設定)をSalesforceのフローで再現できるかを確認します。
確認すべきポイント:
- ワークフローのトリガー条件(例: 「Contactが作成されたら」)がSalesforceで再現可能か
- ワークフローのアクション(例: 「メール送信」「タスク作成」)がSalesforceで実現可能か
- 外部ツールとの連携(例: Slack通知・Zapier連携)がSalesforceでも対応可能か
移行できない機能の例:
- HubSpot独自の機能(例: HubSpot Ads連携の一部機能)はSalesforceで代替手段を検討する必要があります
- カスタムコードを使用したワークフローは、Salesforceで再実装が必要になることがあります
(4) 移行範囲の決定(全データ vs 部分移行)
移行するデータの範囲を決定します。
全データ移行:
- すべてのContact・Company・Dealを移行
- メリット: 過去の履歴をすべて保持できる
- デメリット: 移行期間が長くなる、データクレンジング(重複削除等)の負荷が高い
部分移行:
- 過去1年間のデータのみ移行、または「有効な商談」のみ移行
- メリット: 移行期間を短縮できる、データ品質を高められる
- デメリット: 過去の履歴が失われる
推奨される方法:
- まずは「直近1年間の有効データ」を移行し、必要に応じて過去データを追加移行する段階的なアプローチが一般的です
4. データ移行の具体的な手順と方法(CSV・連携アプリ・API)
データ移行の方法は大きく3つあります。データ量や予算、移行期間に応じて最適な方法を選択しましょう。
(1) CSV形式での手動移行
手順:
- HubSpotからデータをCSV形式でエクスポート
- Excelでデータをクレンジング(重複削除・不要データの削除)
- Salesforceのインポート機能でCSVをアップロード
メリット:
- コストがかからない(無料)
- 小規模なデータ移行に適している
デメリット:
- 手作業のため、ヒューマンエラーのリスクが高い
- データ量が多い場合(1万件以上)は非効率
- リレーション(関連付け)の移行が困難
適している企業:
- Contact数が1,000件未満の小規模企業
- 予算を抑えたい企業
(2) 連携アプリを使用した自動移行
HubSpotとSalesforceの連携アプリ(例: HubSpot-Salesforce Integration、サードパーティツール)を使用する方法です。
手順:
- 連携アプリをインストール
- データマッピング設定(HubSpotのフィールドとSalesforceのフィールドを対応付け)
- 移行範囲を指定(全データ or 条件指定)
- 移行実行
メリット:
- 自動化により、ヒューマンエラーのリスクが軽減される
- リレーション(関連付け)も自動的に移行できる
- 移行後も継続的にデータ同期が可能(リアルタイム同期)
デメリット:
- 連携アプリの利用料金がかかる場合がある
- アプリによっては、一部のカスタムフィールドに対応していない
適している企業:
- Contact数が1,000件以上の中〜大規模企業
- データの正確性を重視する企業
- 移行後もHubSpotとSalesforceを併用する企業
(3) API利用による移行
HubSpot APIとSalesforce APIを使用して、プログラムでデータを移行する方法です。
手順:
- HubSpot APIからデータを取得
- データ変換処理(オブジェクトのマッピング・フィールドの変換)
- Salesforce APIにデータを登録
メリット:
- 完全にカスタマイズ可能(複雑なデータ変換にも対応)
- 大量データの移行に適している
デメリット:
- 開発コストがかかる(エンジニアのリソースが必要)
- テスト・デバッグに時間がかかる
適している企業:
- Contact数が10万件以上の大規模企業
- 複雑なカスタマイズが必要な企業
- 社内にエンジニアリソースがある企業
(4) 移行期間の目安とスケジュール
移行期間は、データ量やカスタマイズの複雑さによって変動します。
一般的な移行期間:
- 小規模(Contact数 1,000件未満): 1〜2週間
- 中規模(Contact数 1,000〜10,000件): 1〜2ヶ月
- 大規模(Contact数 10,000件以上): 2〜6ヶ月
複雑なカスタマイズがある場合:
- フロー・Apexの再構築が必要な場合、さらに3〜6ヶ月かかるケースもあります
移行スケジュールの例(中規模企業の場合):
- 準備フェーズ(2週間): データマッピング設計、カスタムフィールド棚卸し
- テスト移行(2週間): サンプルデータで移行テスト、エラー修正
- 本番移行(1週間): 全データ移行、検証
- 並行運用(2週間): HubSpotとSalesforceを並行運用し、データの整合性を確認
- 完全移行(1週間): HubSpotの運用停止、Salesforce完全移行
5. 移行時の注意点とよくある失敗事例
データ移行では、いくつかの典型的な失敗パターンがあります。以下の注意点を押さえることで、リスクを軽減できます。
(1) データ不整合のリスクと対策
リスク:
- オブジェクトの命名規則やデータ構造の違いにより、マッピングミスが発生するリスクがあります
- 例: HubSpotの「Contact」をSalesforceの「Lead」に移行したつもりが、実際には「Contact」に登録されていた
対策:
- テスト移行を必ず実施: サンプルデータ(100〜1,000件)で移行テストを行い、データが正しくマッピングされているか確認します
- 連携アプリを活用: 手動移行よりも連携アプリを使用する方が、ヒューマンエラーのリスクを軽減できると言われています
- 移行後の検証: 移行完了後、ランダムに抽出したデータ(10〜20件)を目視で確認し、不整合がないかチェックします
(2) カスタマイズ機能の移行不可ケース
移行できない機能の例:
- HubSpotのワークフロー設定はSalesforceのフローで再構築が必要です
- HubSpot独自の機能(例: シーケンス機能の一部)はSalesforceで代替手段を検討する必要があります
- カスタムコードを使用した高度な自動化は、Salesforceで再実装が必要になることがあります
対策:
- 移行前にカスタマイズ機能の棚卸しを実施: HubSpotで使用中のワークフロー・カスタムコードをリストアップし、Salesforceで再現可能か確認します
- 移行支援サービスを活用: Salesforceの認定パートナーや移行支援企業に相談することで、代替手段の提案を受けられます
(3) 移行中の業務への影響を最小化する方法
データ移行中も営業・マーケティング活動は継続する必要があります。業務への影響を最小化するための方法を紹介します。
段階的な移行:
- まず一部の部署(例: マーケティング部門のみ)を先行して移行し、効果を検証してから全社展開する方法が推奨されます
- リスクを分散でき、問題が発生した場合も影響範囲を限定できます
並行運用期間の確保:
- 最低1〜2週間のテスト期間を確保し、HubSpotとSalesforceを並行運用することが一般的です
- 並行運用中は、新規データはSalesforceに登録し、過去データはHubSpotで参照する運用が多いと言われています
社内コミュニケーション:
- 移行スケジュールを全社に共有し、「いつからSalesforceを使い始めるか」を明確にします
- 営業担当者向けのトレーニングやマニュアル整備を事前に実施します
(4) 移行後の学習コストと定着支援
HubSpotとSalesforceは操作性やカスタマイズ方法が異なるため、社内トレーニングが必要です。
学習コストの目安:
- 基本操作の習得: 1〜2週間(営業担当者向け)
- 管理者向けトレーニング: 1〜2ヶ月(システム管理者向け)
定着支援の方法:
- Salesforceの公式トレーニング(Trailhead)を活用
- 社内マニュアルの整備
- 移行支援サービスによるオンボーディング支援
6. まとめ:移行判断のチェックポイントと次のアクション
HubSpotからSalesforceへの移行は、事業拡大やカスタマイズ要件の増加に伴い検討される選択肢の一つです。移行の成功には、事前準備・データマッピング設計・移行方法の選択が重要です。
移行判断のチェックポイント:
- 従業員数が500人以上、または今後の事業拡大でそれ以上になる見込みがあるか
- カスタマイズ要件が高く、HubSpotの機能では限界を感じているか
- コスト構造を見直し、Salesforceの方が適切か(ユーザー数・データ量でシミュレーション)
- 移行に必要なリソース(期間・コスト・人員)を確保できるか
- 移行ではなく、HubSpotとSalesforceの併用という選択肢も検討したか
次のアクション:
- HubSpotとSalesforceの料金を自社のユーザー数・データ量で比較する
- データマッピングの設計(サンプルデータで試作)
- Salesforceの認定パートナーや移行支援企業に相談する
- 無料トライアルでSalesforceの操作性を確認する
- 移行スケジュールを策定し、社内の合意形成を図る
移行は大規模なプロジェクトになるため、慎重に計画を立て、段階的に進めることが成功のカギです。
