HubSpotで顧客管理が注目される理由
B2B企業の営業・マーケティング活動において、顧客情報の管理は成果を左右する重要な要素です。「顧客情報が複数のツールに散在している」「営業とマーケティングで情報共有ができていない」「導入コストが高くてCRMに踏み切れない」といった課題を抱えている企業も多いでしょう。
HubSpot CRMは、こうした課題に対する有力な解決策として注目されています。無料から始められ、営業・マーケティング・カスタマーサクセス(CS)の情報を一元管理できる点が大きな特徴です。
(1) 無料から始められ顧客情報100万件まで登録可能
HubSpot CRMの最大の特徴は、無料プランで顧客情報を100万件まで登録できることです。多くのCRMツールは初期費用や月額費用がかかりますが、HubSpotは無料でスモールスタートでき、導入リスクを抑えられます。
無料プランの主な機能:
- 顧客情報の登録・管理(100万件まで)
- 取引・パイプライン管理
- 基本的なレポート・分析機能
- メール送信(月2,000通まで)
- タスク管理とミーティングスケジュール
- 外部サービス連携(Gmail、Outlook、Zoom、Slack等)
制限事項:
- 高度な自動化機能に制限あり
- カスタムレポート作成は限定的
- サポートはコミュニティフォーラムのみ
まずは無料プランで試し、必要に応じて有料プランへアップグレードするのが一般的です。
(2) 営業・マーケティング・CSの情報を単一データベースで一元管理
HubSpotは単一のCRMデータベース上で全機能が接続されており、営業・マーケティング・カスタマーサクセスの各部門が同じ情報にアクセスできます。
従来の課題(情報の分散):
- 営業はExcel、マーケティングはMAツール、CSは別のツールで管理
- 部門間で顧客情報が同期されず、重複や漏れが発生
- 顧客とのやり取り履歴が見えず、適切なフォローができない
HubSpot CRMによる解決:
- 営業・マーケ・CS全員が同じCRMデータベースを参照
- メール送信、電話、タスク、ミーティングの履歴が自動記録
- 顧客の過去のやり取りを全員が把握でき、一貫したコミュニケーションが可能
この一元管理により、部門間の連携がスムーズになり、顧客体験の向上につながります。
HubSpot CRMの基礎知識と特徴
HubSpot CRMを導入する前に、基本的な概念と他のCRMツールとの違いを理解しましょう。
(1) CRM(顧客関係管理)とは何か
CRM(Customer Relationship Management)は、顧客情報を一元管理し、良好な関係を構築・維持するための手法およびシステムです。
CRMツールが管理する主な情報:
- 顧客の基本情報(会社名、担当者名、連絡先等)
- 過去のやり取り履歴(メール、電話、商談の記録)
- 営業プロセスの進捗状況(見込み客から成約までの段階)
- 購入履歴や契約内容
- 顧客のWebサイト訪問履歴やメール開封履歴
これらの情報を一元管理することで、営業活動の効率化、顧客満足度の向上、売上の最大化を実現します。
(2) HubSpotの無料プランと有料プランの違い
HubSpotには無料プランと複数の有料プラン(Starter、Professional、Enterprise)があります。
無料プラン:
- 顧客情報100万件まで登録可能
- 基本的なコンタクト管理・取引管理・レポート機能
- メール送信は月2,000通まで
有料プラン:
- メール送信数の制限緩和(または無制限)
- 高度な自動化機能(ワークフロー)
- カスタムレポート作成
- チャット・メールでのサポート
- より詳細な分析・予測機能
- AI機能の高度な活用
アップグレードのタイミングは、メール送信数が月2,000通を超える、高度な自動化が必要になる、専任サポートが必要になる、といった時点が目安です。
(3) SalesforceとHubSpotの比較
CRMツール選定時によく比較されるのがSalesforceとHubSpotです。
Salesforceの特徴:
- 大規模企業向けで高度なカスタマイズが可能
- 複雑な業務プロセスにも対応できる柔軟性
- 導入・運用コストが高い
- 操作が複雑で定着まで時間がかかることも
HubSpotの特徴:
- 中小企業・スタートアップ向けで使いやすさを重視
- 無料プランから始められ段階的にアップグレード可能
- カスタマイズ性はSalesforceに劣るが標準機能で多くの業務をカバー
- 操作が直感的で定着までのハードルが低い
選定の目安:
- HubSpot向き: 中小企業、スタートアップ、使いやすさ重視
- Salesforce向き: 大企業、高度なカスタマイズが必要
(4) 1,000以上のアプリと連携可能
HubSpotは1,000以上の外部アプリと連携可能で、既存ツールとの統合により業務効率が向上します。
主な連携アプリ:
- メール: Gmail、Outlook(メール送受信履歴がCRMに自動記録)
- カレンダー: Googleカレンダー、Outlook
- ビデオ会議: Zoom、Microsoft Teams
- コミュニケーション: Slack
- その他: Zapier、Shopify、WordPress等
連携のメリット:
- 既存ツールを使い続けながらCRMを導入できる
- 手動でのデータ入力が減り営業活動に集中できる
- メール・電話・ミーティングの履歴が自動でCRMに蓄積
HubSpotの顧客管理機能一覧
HubSpot CRMで利用できる主要な顧客管理機能を見ていきます。
(1) コンタクト管理(顧客情報の一元管理と自動記録)
コンタクトとは、HubSpotにおける顧客・見込み客の個人情報レコードです。
管理できる情報:
- 基本情報(名前、メールアドレス、電話番号、会社名、役職等)
- やり取り履歴(メール、電話、ミーティングの記録)
- Webサイト訪問履歴
- メール開封・クリック履歴
- カスタムプロパティ(業界、従業員数、予算等)
自動記録機能:
- Gmail/Outlookと連携すれば送受信メールがコンタクトに自動紐付け
- Webフォームから送信された情報が自動登録
- Zoom等でのミーティング履歴も記録可能
コンタクト画面を開けば、顧客との過去のやり取りが一目で分かるため、適切なタイミングでフォローアップできます。
(2) 取引・パイプライン管理
取引(Deal)とは、営業プロセスの進捗を管理する機能です。パイプラインは、見込み客から成約までの各段階を可視化した管理手法です。
パイプラインの例:
- リード獲得
- 初回コンタクト
- 商談設定
- 提案・見積もり提出
- 契約締結
HubSpotでできること:
- 取引ごとに現在のステージを記録
- 取引金額、成約予定日、担当者を設定
- パイプライン全体の進捗を視覚的に把握
- 停滞している取引をアラートで通知
営業チーム全員が同じパイプラインを共有することで、進捗状況が可視化され、マネージャーによる適切な支援が可能になります。
(3) タスク管理とミーティングスケジュール
HubSpot CRMでは、顧客対応に関するタスクとミーティングを一元管理できます。
タスク管理:
- フォローアップメールや見積もり提出期限等のタスクを登録
- 期限とリマインダーを設定し漏れを防止
- タスク完了時にチェックを入れると履歴として残る
ミーティングスケジュール:
- カレンダー連携により空き時間を顧客に提示し予約を受け付け
- Zoom等のビデオ会議ツールと連携しミーティングURLを自動生成
- ミーティング後の議事録や次のアクションをCRMに記録
これにより、営業担当者は「次に何をすべきか」が明確になり、対応漏れを防げます。
(4) レポート・分析機能
HubSpotは標準で多様なレポート機能を提供しており、営業活動の効果を可視化できます。
主なレポート:
- 営業活動レポート(商談数、成約数、成約率)
- パイプラインレポート(各ステージの取引件数・金額)
- リード獲得元レポート
- 営業担当者別の成績レポート
- メール開封率・クリック率レポート
カスタムレポート(有料プラン):
- 自社独自の指標を設定してレポート作成
- ダッシュボードで重要指標をリアルタイム表示
データに基づく意思決定が可能になり、営業戦略の改善につながります。
(5) フォーム作成と顧客情報の自動登録
HubSpotでは、Webサイトに設置する問い合わせフォームや資料請求フォームを簡単に作成できます。
フォーム作成の特徴:
- ドラッグ&ドロップで直感的に作成(コーディング不要)
- 送信された顧客情報は自動的にCRMに登録
- モバイル最適化も自動対応
- フォーム送信者には自動返信メールを送信可能
活用例:
- 資料請求フォーム → 送信者をリードとして登録 → 営業担当者にアラート通知
- セミナー申し込みフォーム → 参加者情報をCRMに蓄積 → フォローアップメール送信
フォームを活用することで、Webサイト訪問者を見込み客として効率的に獲得できます。
(6) AI機能による顧客インサイト抽出と自動化
2024年時点で、HubSpotにはAI機能が統合されており、顧客インサイトの抽出やルーティン作業の自動化が可能です。
AI機能の例:
- 顧客の行動パターンから関心度を自動算出
- 成約可能性の高い見込み客を優先表示
- メール文面の自動生成
- レポートの自動生成と異常値の検出
活用のメリット:
- 営業担当者が優先すべき顧客が明確になる
- データ入力や定型業務の時間を削減し顧客対応に集中できる
- データ分析の専門知識がなくても重要なインサイトを得られる
HubSpot CRMの導入手順と初期設定
HubSpot CRMを導入する際の基本的な手順を解説します。
(1) アカウント作成と基本設定
手順:
- HubSpot公式サイトにアクセス
- 「無料で始める」ボタンからアカウント作成
- メールアドレス、会社名、業種などの基本情報を入力
- ダッシュボードにアクセスし初期設定ウィザードに従って設定
初期設定項目:
- 会社情報(社名、業界、従業員数等)
- ユーザー招待(営業・マーケ・CSの担当者を追加)
- 通貨設定(日本円)
- タイムゾーン設定(日本標準時)
設定は後から変更可能なため、まずは最低限の情報を入力してスタートしましょう。
(2) 既存顧客データのインポート方法
既存の顧客管理システムからデータを移行する場合は、CSVファイルでインポートします。
手順:
- 既存システムから顧客データをCSV形式でエクスポート
- HubSpotの「コンタクト」メニューから「インポート」を選択
- CSVファイルをアップロード
- HubSpotのプロパティとCSVの列を紐付け
- インポート実行
注意点:
- メールアドレスは必須項目
- 大量データのインポートは時間がかかる場合があるため事前にテストデータで試すのが推奨
(3) 外部ツール連携の設定
GmailやOutlookと連携することで、メール送受信履歴が自動的にCRMに記録されます。
Gmail連携の手順:
- HubSpotダッシュボードの「設定」→「統合」→「メール統合」を選択
- Gmailを選択しGoogleアカウントで認証
- 連携完了後、Gmailで送受信したメールがコンタクトに自動紐付け
Outlook連携の手順:
- 同様に「統合」メニューからOutlookを選択
- Microsoftアカウントで認証
- メール履歴がCRMに反映される
その他の連携:
- Zoom、Microsoft Teams等のビデオ会議ツール
- Googleカレンダー、Outlookカレンダー
- Slack(通知・情報共有)
(4) パイプラインとコンタクトプロパティのカスタマイズ
自社の営業プロセスに合わせて、パイプラインとコンタクトプロパティをカスタマイズします。
パイプラインのカスタマイズ:
- 「設定」→「オブジェクト」→「取引」→「パイプライン」を選択
- デフォルトのステージを自社のプロセスに合わせて編集
- 各ステージの名称、順序、成約確率を設定
コンタクトプロパティのカスタマイズ:
- 「設定」→「プロパティ」→「コンタクトプロパティ」を選択
- デフォルトの項目に加え自社独自の項目を追加
- 例: 業界、従業員数、予算規模、導入予定時期等
カスタマイズにより、自社のビジネスに最適化されたCRMとして運用できます。
効果的な活用方法と導入成功のポイント
HubSpot CRMを導入しただけでは成果は出ません。効果的に活用するためのポイントを押さえましょう。
(1) 営業活動履歴の自動記録と情報共有の徹底
HubSpotの最大の強みは、営業活動履歴が自動記録される点です。
自動記録される情報:
- Gmail/Outlookで送受信したメール
- Zoomで実施したミーティング
- Webサイト訪問履歴
- フォーム送信履歴
徹底すべき運用ルール:
- メールはGmail/Outlook経由で送信しCRMに自動記録されるようにする
- 電話対応や訪問商談後は必ずCRMに記録を残す
- 商談の進捗状況をリアルタイムで更新する
情報共有のメリット:
- 担当者が不在でもチームメンバーが顧客対応できる
- マネージャーが営業活動を把握し適切なサポートができる
- マーケティング部門が営業の課題を理解し施策を改善できる
(2) 専任担当者を設けて定着までフォロー
HubSpotは多機能ゆえに、全機能を使いこなすには時間がかかります。
導入成功のポイント:
- 専任担当者を設ける: CRM運用のリーダーを1名決め設定・運用ルール策定・メンバーサポートを担当
- 段階的に機能を追加: 最初は基本的なコンタクト管理と取引管理のみで運用開始し慣れてきたら自動化やレポート機能を追加
- 定期的なフォローアップ: 週次・月次でチームミーティングを開き困っていることを共有して解決
- トレーニングの実施: HubSpotの公式ドキュメントや動画を活用しチームメンバーのスキルアップを図る
定着まで一定期間のフォローが必要であることを前提に、焦らず取り組むことが重要です。
(3) 目的を明確にして「入力するだけ」にならない運用
CRM導入の失敗パターンとして、「入力するだけで終わってしまう」ケースがあります。
失敗例:
- 顧客情報を入力するだけで分析やアクションに活用していない
- データが蓄積されても営業活動の改善につながっていない
成功のポイント:
- 目的を明確にする: 「営業プロセスの可視化」「リード獲得経路の分析」「成約率の向上」など具体的な目標を設定
- 週次・月次でレポートを確認: パイプラインの進捗、営業担当者別の成績、リード獲得経路を定期的にチェック
- データに基づくアクション: 成約率が低いステージがあれば営業プロセスを改善。リード獲得経路で効果が高い施策があれば予算を増やす
CRMは「入力するためのツール」ではなく「営業活動を改善するためのツール」です。
(4) 顧客情報の定期的な更新
顧客情報は時間とともに変化します。担当者が異動したり、連絡先が変わったりするため、定期的な更新が必要です。
更新すべき情報:
- 担当者名・役職(異動や退職)
- メールアドレス・電話番号(変更)
- 会社の状況(事業拡大、組織変更、M&A等)
更新の仕組み:
- 定期的に顧客にコンタクトを取り情報を確認
- メールがエラーで返ってきたらすぐに調査して更新
- 年1回程度、全顧客情報の見直しを実施
まとめ:HubSpot CRMの選定判断基準
HubSpot CRMは、無料から始められ、営業・マーケティング・CSの情報を一元管理できる優れたツールです。導入を検討する際は、以下の判断基準を参考にしてください。
(1) 無料でスモールスタートしたい中小企業・スタートアップ向き
HubSpot CRMは、以下のような企業に特に適しています:
向いている企業:
- 中小企業・スタートアップで初期費用を抑えたい
- まずは無料で試し効果を確認してからアップグレードしたい
- 営業・マーケティング・CSの情報を一元管理したい
- 既存ツールとの連携を重視したい
- 使いやすさを重視し短期間で定着させたい
(2) 大規模企業・高度なカスタマイズが必要ならSalesforceも検討
一方、以下のような企業にはSalesforceも選択肢に入ります:
Salesforceが向いている企業:
- 大規模企業(従業員1,000人以上)で複雑な業務プロセスがある
- 高度なカスタマイズが必要
- 既にSalesforceを導入済みでエコシステムを活用したい
- 予算に余裕があり専任のCRM管理者を置ける
(3) 導入前に公式サイトで最新の料金・機能を確認する
HubSpotの料金プランや機能は定期的にアップデートされるため、導入前に公式サイトで最新情報を確認することが重要です。
確認すべきポイント:
- 無料プランの制限(メール送信数、自動化機能、サポート内容)
- 有料プランの料金と機能
- 既存ツールとの連携対応状況
- サポート体制(日本語対応の有無)
次のアクション:
- HubSpot公式サイトで無料アカウントを作成し実際に操作してみる
- 自社の営業プロセスとパイプラインを整理しHubSpotでカバーできるか確認する
- 既存の顧客管理方法との違いを比較し移行の手間を見積もる
- 必要に応じて他のCRMツールとも比較検討する
HubSpot CRMは無料から始められるため、まずは試してみて自社に合うかを判断するのが最も確実です。導入後は専任担当者を設け、定着までフォローを徹底しましょう。効果的に活用することで、営業・マーケティング活動の効率化と顧客満足度の向上を実現できます。
※この記事は2024年11月時点の情報です。HubSpotの料金・機能は変更される可能性があるため、最新情報は公式サイトでご確認ください。
