顧客データがあるのに、うまく活用できていない...
B2B企業のマーケティング担当者や営業マネージャーの多くが、「顧客データはあるが、誰にどんな施策を打てばいいか分からない」「全員に同じメールを送っているが効果が薄い」「優良顧客とそうでない顧客の区別がついていない」といった課題を抱えています。
この記事では、顧客セグメントの基本概念から4つの分類軸、具体的な作成方法(RFM分析・デシル分析・バスケット分析)、B2B企業での活用戦略まで、実務担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。
この記事のポイント:
- 顧客セグメントとは、顧客を属性や行動傾向で分類したグループ
- 地理的、人口動態、心理的、行動の4つの変数を組み合わせて作成
- RFM分析(直近購入日・頻度・金額)が基本手法、デシル分析・バスケット分析も有効
- B2B企業ではマーケ・営業・CSの各部門で一貫してセグメントを活用することが重要
- CRMとMAツールを連携させることで、データ収集→分析→施策実行を効率化できる
顧客セグメントとは:ターゲティングの基礎となる顧客分類
顧客セグメントの導入を検討する前に、まず基本的な概念を整理しましょう。
(1) 顧客セグメントの基本定義
顧客セグメントとは、顧客を属性や行動傾向などで分類したグループのことです。顧客セグメンテーションは、この顧客セグメントを作成するプロセスを指します。
日立ソリューションズによると、顧客セグメントは以下の4つの変数を組み合わせて作成されます:
- 地理的変数: 地域・気候・都市規模
- 人口動態変数: 年齢・性別・所得・職業
- 心理的変数: 価値観・ライフスタイル・購買動機
- 行動変数: 購買履歴・サイト閲覧行動・メール開封率
(2) STP分析におけるセグメンテーションの位置づけ
顧客セグメンテーションは、STP分析の基礎となります。
STP分析とは:
- Segmentation(セグメンテーション): 顧客を分類する
- Targeting(ターゲティング): どのセグメントを狙うか決定
- Positioning(ポジショニング): 競合との差別化ポイントを明確化
プロフューチャーの調査によると、STP分析を適切に実施している企業は、マーケティング施策の費用対効果が平均30%向上すると言われています。
(3) なぜ顧客セグメントが重要か:パーソナライズと効率化
顧客セグメントを活用することで、以下のメリットが得られます。
メリット:
- 的確なターゲティング: 最も効果的なセグメントに集中投資
- パーソナライズされたマーケティング: セグメント別にメッセージ・コンテンツを最適化
- リソース配分の効率化: 優良顧客に営業リソースを集中
- 顧客満足度の向上: 顧客のニーズに合った提案が可能
ferret Oneの調査では、パーソナライズされたマーケティングを実施した企業は、CVRが平均20-40%向上したと言われています。
顧客セグメントの4つの分類軸:地理的・人口動態・心理的・行動
顧客セグメントを作成する際の4つの分類軸を詳しく解説します。
(1) 地理的変数:地域・気候・都市規模
地理的変数は、顧客の居住地や事業地域に基づく分類です。
B2B企業での活用例:
- 地域別: 関東・関西・九州など、拠点配置に応じた営業エリア分け
- 都市規模別: 大都市・地方都市で異なる商品ラインナップを提案
- 国内/海外: グローバル展開企業では、国内顧客と海外顧客で異なるサポート体制
地理的変数は、物流コストや営業効率に直結するため、B2B企業では重要な分類軸になります。
(2) 人口動態変数:年齢・性別・所得・職業
人口動態変数は、顧客の属性に基づく分類です。
B2B企業での活用例:
- 企業規模別: 従業員数(50人未満、50-500人、500人以上)で商品プランを分ける
- 業種別: 製造業・IT・金融・小売など、業種特有の課題に対応
- 役職別: 経営層・マネージャー・担当者で異なるコンテンツを提供
日立ソリューションズの調査によると、企業規模別セグメントは、B2B企業のマーケティングで最も活用されている分類軸です。
(3) 心理的変数:価値観・ライフスタイル・購買動機
心理的変数は、顧客の価値観や購買動機に基づく分類です。
B2B企業での活用例:
- 購買動機別: コスト削減重視 vs 品質重視 vs スピード重視
- リスク許容度別: 新技術を積極採用 vs 実績重視で慎重に判断
- 意思決定スタイル別: データ重視 vs 直感重視
心理的変数は定量化が難しいですが、顧客インタビューやアンケートで収集し、セグメント化することでパーソナライズの精度が高まります。
(4) 行動変数:購買履歴・サイト閲覧行動・メール開封率
行動変数は、顧客の実際の行動データに基づく分類です。
B2B企業での活用例:
- 購買履歴別: 過去1年間の購入回数・金額
- サイト閲覧行動別: 特定の製品ページを繰り返し閲覧
- メール開封率別: メール開封率が高い顧客 vs 低い顧客
- 解約リスク別: 最終購入日が6ヶ月以上前の休眠顧客
SATORIの調査によると、行動変数は最も正確にニーズを予測できる分類軸で、MAツールによるリアルタイム収集・分析が普及していると言われています。
顧客セグメントの作成方法:RFM分析・デシル分析・バスケット分析
具体的なセグメント作成手法を解説します。
(1) RFM分析:直近購入日・頻度・金額で分類
RFM分析は、最もよく使われるセグメント作成手法です。
RFMの3要素:
- Recency(直近購入日): 最後に購入した日からの経過日数
- Frequency(購入頻度): 過去一定期間の購入回数
- Monetary(購入金額): 過去一定期間の購入金額合計
セグメント例:
- 優良顧客: R・F・Mすべて高い(最近購入、頻繁に購入、高額購入)
- 休眠顧客: Rが低い、FとMは高い(かつては優良だが最近購入なし)
- 新規顧客: Rが高い、FとMは低い(最近初めて購入)
日立ソリューションズの調査によると、RFM分析により優良顧客を特定し、リソースを集中した企業は、営業効率が平均25%向上したと言われています。
(2) デシル分析:購入金額順に10等分して優良顧客を特定
デシル分析は、顧客を購入金額順に10等分(各10%)して分類する手法です。
分析手順:
- 顧客を購入金額の多い順に並べる
- 10等分し、上位10%を「デシル1」、次の10%を「デシル2」...と分類
- 各デシルの売上構成比・顧客数を分析
活用例:
- デシル1(上位10%)の顧客が売上の50%を占めている場合、この層に優先的にリソースを配分
- デシル9-10(下位20%)の顧客には自動化された施策のみを実施
ferret Oneの調査では、デシル分析により上位20%の顧客に集中投資した企業は、ROIが平均30%向上したと言われています。
(3) バスケット分析:同時購入商品からクロスセル機会を発見
バスケット分析は、同時に購入される商品の組み合わせを分析する手法です。
分析手順:
- 購買履歴から「商品Aと商品Bを同時購入した顧客」を抽出
- 同時購入される頻度が高い組み合わせを特定
- 商品Aを購入した顧客に商品Bをレコメンド
B2B企業での活用例:
- 「基幹システム導入企業」は「セキュリティソフト」も購入する傾向
- 「MAツール導入企業」は「コンサルティングサービス」も購入する傾向
Qualtricsの調査によると、バスケット分析に基づくクロスセル提案は、成約率が通常の2-3倍に向上すると言われています。
(4) リアルタイムデータ収集とセグメントの動的更新
2024年現在、顧客の行動データをリアルタイムで収集・分析し、セグメントを動的に更新することが主流になっています。
動的更新の利点:
- 顧客の行動変化に即座に対応(サイト閲覧→即座にセグメント反映)
- 購買タイミングを逃さない(カート追加→購入しなかった顧客にリマインド)
- セグメントの精度が継続的に向上
MAツールを活用することで、リアルタイムデータ収集とセグメントの自動更新が可能になります。
B2B企業における顧客セグメント活用戦略:マーケ・営業への落とし込み
顧客セグメントを「作るだけ」では意味がありません。マーケティング・営業・カスタマーサクセスの各部門で一貫して活用することが重要です。
(1) マーケティング:セグメント別コンテンツとメール配信
マーケティング部門では、セグメント別にコンテンツとメール配信を最適化します。
活用例:
- 新規顧客: 製品の基本的な使い方を解説するコンテンツ
- 優良顧客: 上位プランへのアップグレード提案
- 休眠顧客: 特別キャンペーンやリエンゲージメントメール
ferret Oneの調査では、セグメント別メール配信を実施した企業は、開封率が平均30%、クリック率が平均50%向上したと言われています。
(2) 営業:セグメント別アプローチとリソース配分
営業部門では、セグメント別にアプローチ方法とリソース配分を最適化します。
活用例:
- デシル1(上位10%): 専任担当者を配置、定期訪問・カスタム提案
- デシル2-3(次の20%): 定期的なメール・電話フォロー
- デシル4以下(下位70%): 自動化されたメールのみ、または営業対象外
プロフューチャーの調査によると、セグメント別リソース配分により、営業効率が平均35%向上したと言われています。
(3) カスタマーサクセス:セグメント別のオンボーディングと支援
カスタマーサクセス部門では、セグメント別にオンボーディングと支援を最適化します。
活用例:
- 大企業顧客: 専任CS担当者を配置、カスタマイズされたトレーニング
- 中小企業顧客: 標準オンボーディングプログラム、セルフサービスポータル
- 解約リスク顧客: 早期アラート、集中的なフォローアップ
シナジーマーケティングの調査では、セグメント別CS支援により、顧客満足度が平均20%、継続率が平均15%向上したと言われています。
(4) セグメント設定の失敗例と対策:不適切な分類がもたらすコスト増
セグメント設定が不適切だと、マーケティング効果が出ず、コストだけが増加するリスクがあります。
失敗例:
- 過度に細かいセグメント: セグメント数が多すぎて管理が煩雑化(30セグメント以上)
- 測定不可能な変数: 定量化できない変数での分類(「やる気がある顧客」など)
- ビジネス目標と無関係: 売上・LTVと相関のない分類軸
対策:
- セグメント数は5-10個程度に抑える
- 測定可能で、データに基づく変数のみを使用
- ビジネス目標(売上・LTV・継続率)と連動させる
- 定期的に見直し、効果のないセグメントは統合・削除
CRM・MAツールを活用した顧客セグメント運用
CRMとMAツールを活用することで、顧客セグメント運用を効率化できます。
(1) CRMシステムによる顧客データ一元管理
CRMシステムは、顧客データを一元管理する基盤です。
CRMで管理するデータ:
- 顧客基本情報(企業名、業種、規模、担当者)
- 購買履歴(購入日、商品、金額)
- 営業履歴(商談日、進捗、結果)
- カスタマーサポート履歴(問い合わせ内容、対応履歴)
CRMに蓄積されたデータをもとに、セグメント分類を行います。
(2) MAツールによる自動セグメンテーションとパーソナライズ
MAツールは、顧客行動データに基づき、自動的にセグメント化とパーソナライズされたマーケティングを実行します。
MAツールの主要機能:
- 自動セグメンテーション: 顧客行動(サイト閲覧、メール開封)に基づき自動分類
- パーソナライズメール: セグメント別に最適化されたメール自動配信
- リードスコアリング: セグメント別に見込み度を点数化
- ナーチャリング: セグメント別に育成プログラムを自動実行
Qualtricsの調査によると、CRMとMAツールを連携させることで、データ収集→分析→施策実行のサイクルが平均50%短縮されると言われています。
(3) ツール導入コストと運用コスト
CRMとMAツールの導入には、初期コストと運用コストがかかります。
コストの目安:
- CRM: 初期費用0円〜、月額数万円〜数十万円(ユーザー数・機能により変動)
- MAツール: 初期費用0円〜、月額10万円〜50万円(リード数・機能により変動)
- 導入支援: コンサルタント支援を受ける場合、数十万円〜数百万円
※ツール料金は変更の可能性があるため、公式サイトで最新情報を確認してください。(この記事は2025年12月時点の情報です)
(4) セグメント管理の複雑化への対応(2024年現在)
2024年現在、インターネットやSNSの浸透により消費者の嗜好がかつてないほど多様化し、セグメント管理が複雑化しています。
対応策:
- AIを活用した自動セグメンテーション(顧客行動パターンの自動検出)
- リアルタイムデータ収集とセグメントの動的更新
- セグメント数を適切に管理(5-10個程度に抑える)
- 定期的な見直し(四半期ごとに効果を検証)
シナジーマーケティングの調査では、AIを活用した自動セグメンテーションにより、セグメント精度が平均20%向上したと言われています。
まとめ:効果的な顧客セグメント活用のために
顧客セグメントは、顧客を属性や行動傾向で分類し、ターゲティングとパーソナライズを実現する基礎となります。効果的な活用のためには、以下のポイントを押さえましょう。
顧客セグメント活用のポイント:
- 地理的、人口動態、心理的、行動の4つの変数を組み合わせて作成
- RFM分析が基本手法、デシル分析・バスケット分析も併用
- マーケ・営業・CSの各部門で一貫してセグメントを活用
- CRMとMAツールを連携させることで、データ収集→分析→施策実行を効率化
- セグメント数は5-10個程度に抑え、定期的に見直す
次のアクション:
- 自社の顧客データを整理し、セグメント分類の変数を決定
- RFM分析で優良顧客・休眠顧客・新規顧客を特定
- セグメント別のマーケティング・営業施策を設計
- CRM・MAツールの導入を検討(見積もり取得)
- 四半期ごとにセグメント効果を検証し、必要に応じて修正
効果的な顧客セグメント活用で、ターゲティング精度とマーケティングROIを最大化しましょう。
