CRMとファネル管理|営業プロセスを可視化する方法

著者: B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部公開日: 2025/12/15

CRMとファネル管理|なぜ営業プロセスの可視化が必要なのか

B2B企業の営業マネージャーやマーケティング担当者の多くが、「営業プロセスのどこで商談が停滞しているのか分からない」「リードから受注までの流れを可視化したい」といった課題を抱えています。CRMを活用したファネル管理は、こうした課題を解決する有力な手法です。

この記事では、CRMにおけるファネル管理の基本概念から、ステージ設計、KPI設定、最適化の実践方法まで、B2B企業の実務担当者が知っておくべき知識を解説します。

この記事のポイント:

  • CRMファネル管理により、営業プロセス全体を可視化し、ボトルネックを特定できる
  • パーチェスファネル・インフルエンスファネル・ダブルファネルの3種類があり、目的に応じて使い分ける
  • リードスコアリングとステージ管理により、営業効率が大幅に向上する
  • 主要指標(コンバージョン率・離脱率・滞在時間・リードスコア)をリアルタイムで追跡し、改善サイクルを回す
  • 適切な実装により、顧客維持率が最大53%向上した事例がある

ファネル管理の基礎知識とCRMの役割

(1) ファネルとは(逆三角形モデル)

ファネルとは、顧客が商品・サービスを認知してから購入に至るまでの行動をフェーズに分類し、逆三角形(漏斗)の図式でモデル化したものです。上段ほど見込み客の数が多く、下段に進むにつれて絞り込まれていく様子が視覚的に表現されます。

CRMシステムを活用すると、顧客の基本情報から購買履歴まで一元管理でき、大量の顧客情報を集約してファネル分析が可能になります。

(2) パーチェスファネル・インフルエンスファネル・ダブルファネル

ファネルには主に3つのモデルがあります:

パーチェスファネル:

  • 認知→興味・関心→比較・検討→購入という段階を表す基本的なモデル
  • 新規顧客獲得を目的とした営業・マーケティング活動に適用される

インフルエンスファネル:

  • 購入後の顧客が継続・紹介・発信する行動を表すモデル
  • CRMと相性が良く、顧客維持・ロイヤルティ向上に効果的

ダブルファネル:

  • パーチェスファネルとインフルエンスファネルを組み合わせたモデル
  • 購入前後の全体像を把握でき、顧客ライフサイクル全体の最適化が可能

どのモデルを使うべきかは、目的により異なります。基本はパーチェスファネルですが、顧客維持が重要ならインフルエンスファネル、全体像把握ならダブルファネルが適切です。

(3) マーケティングファネルと営業ファネルの違い(MQL→SQL)

マーケティングファネルと営業ファネルは、対象とするステージが異なります:

マーケティングファネル:

  • 認知→興味→比較・検討まで(リード獲得・育成フェーズ)
  • MQL(Marketing Qualified Lead:マーケティング部門が育成した見込み客)を創出

営業ファネル:

  • 比較・検討→商談→受注まで(営業活動フェーズ)
  • SQL(Sales Qualified Lead:営業部門が対応すべき見込み客)から受注へ転換

CRMを活用すると、MQLからSQLへの引き渡しがスムーズになり、マーケティングと営業の連携が強化されます。

(4) MA・SFA・CRMの使い分け

ファネル管理には、以下の3種類のツールが効果的です:

MA(マーケティングオートメーション):

  • 見込み客の獲得から育成までのマーケティング活動を自動化
  • 主にマーケティングファネルで活用

SFA(営業支援システム):

  • 営業活動の効率化、商談管理、予測分析などを支援
  • 主に営業ファネルで活用

CRM(顧客関係管理):

  • 顧客情報を一元管理し、営業・マーケティング・カスタマーサービスを効率化
  • ファネル全体をカバーし、データの分断化(サイロ化)を防ぐ

ファネル全体をカバーするには、3つのツールを連携させるのが理想です。

CRMを活用したファネル設計とステージ管理

(1) 全チャネルからのリード取得とタグ付け

CRMシステムを設定して全チャネル(Webサイト・SNS・展示会・ウェビナー等)からリードを取得し、ソースに基づいてタグ付けを行います。これにより、どのチャネルから有望なリードが獲得できているかを把握できます。

具体的な実装例:

  • Webフォーム経由のリードには「Webフォーム」タグ
  • 展示会で獲得したリードには「展示会_2024年11月」タグ
  • ウェビナー参加者には「ウェビナー_製品名」タグ

取得したリードは、地域・企業規模・リードスコアに基づいて営業担当者に割り当てます。

(2) リードスコアリングと営業担当者への割り当て

リードスコアリングとは、見込み客の購買可能性を数値化し、優先順位をつける手法です。CRMで自動化可能で、リードスコアリング機能を活用すると、最も有望なリードを自動的に優先順位付けして営業チームに配分できます。

スコアリングの基準例:

  • Webサイト訪問回数: +5点
  • 資料ダウンロード: +10点
  • 価格ページ閲覧: +15点
  • 問い合わせフォーム送信: +20点

リード選定(リードクオリフィケーション)が不適切だと営業チームの生産性が低下するため、スコアリング基準は定期的に見直すことが重要です。

(3) セールスファネルチャートによる進捗可視化

CRMのセールスファネルチャートを活用して営業活動を視覚化し、各ステージでの進捗をリアルタイムで追跡します。

主要なステージ例:

  1. リード獲得
  2. アポイント設定
  3. 初回商談
  4. 提案・見積提示
  5. 最終交渉
  6. 受注

ファネルチャートにより、どのステージで離脱が多いかを特定し、改善施策を打つことができます。

ファネル分析によるKPI設定と可視化

(1) 追跡すべき主要指標(コンバージョン率・離脱率・滞在時間)

ファネル分析で追跡すべき主要指標は以下の通りです:

コンバージョン率:

  • 各ステージから次のステージへ進む割合
  • 例: 初回商談→提案のコンバージョン率が30%なら、10件商談して3件が提案段階に進む

離脱率:

  • 各ステージで離脱する割合(100% - コンバージョン率)
  • 離脱率が高いステージがボトルネックとなる

各ステージの滞在時間:

  • リードが各ステージに留まる期間
  • 滞在時間が長すぎる場合、フォローアップが不足している可能性がある

リードスコア:

  • 見込み客の購買可能性を数値化した指標
  • スコアが高いリードに優先的にリソースを配分する

これらの指標をリアルタイムで追跡し、改善サイクルを回すことが重要です。

(2) 自動化システムによるリアルタイム追跡

自動化システムを実装し、各ファネルステージの状況を視覚的に把握し、重要なアクションのリマインダーを設定します。

自動化の例:

  • リードスコアが一定以上になったら営業担当者に通知
  • 商談が一定期間停滞したらフォローアップのリマインダー
  • 受注見込み日が近づいたらアラート通知

これにより、営業チームは常に最新の状況を把握し、タイムリーなアクションを取ることができます。

(3) データ視覚化とダッシュボード活用

データ視覚化とオムニチャネルアプローチにより、より効率的なマーケティングが実現します。CRMシステムによっては、ファネル分析データの視覚化機能を搭載しており、ダッシュボードで一目で状況を把握できます。

ダッシュボードで確認すべき項目:

  • ファネル全体のコンバージョン率推移
  • ステージ別のリード数とコンバージョン率
  • 営業担当者別の実績
  • チャネル別のリード獲得数とコンバージョン率

ファネル最適化の実践とツール選定

(1) AIとビッグデータによる予測分析(2025年トレンド)

2025年のCRMファネル最適化は、ビジネス目標に基づいてファネルを計画できるスマートなAIツールが主流になると言われています。機械学習とビッグデータを活用した予測分析により、リードの行動やコンバージョン可能性を事前に把握できるようになります。

AI活用の例:

  • 過去のデータから受注確度の高いリードを予測
  • 最適なフォローアップのタイミングを自動提案
  • 離脱リスクの高い顧客を事前に検知

構造化されたファネルステージにより、適切なタイミングで適切なメッセージを配信し、コンバージョン率が最大2倍に向上する事例が増加しています。

(2) データサイロ化の回避とオムニチャネル統合

データの分断化(サイロ化)はファネル最適化の妨げとなり、見えない問題を修正する反応的な対応になりがちです。オムニチャネル(複数のチャネルを統合し、一貫した顧客体験を提供する戦略)アプローチにより、すべてのチャネルのデータをCRMに集約することが重要です。

オムニチャネル統合のメリット:

  • 顧客の全行動履歴を一元管理
  • チャネル横断での効果測定が可能
  • 一貫したメッセージングにより顧客体験が向上

2024年のCRM市場ではDXとAIが変革をもたらし、従来のファネル型マーケティングから循環型マーケティングへの移行が進んでいます。

(3) 主要CRMツールの比較(Zoho、Zendesk、Knowledge Suite等)

ファネル管理に効果的な主要CRMツールを比較します:

Zoho CRM:

  • セールスファネルチャート作成機能を標準搭載
  • 営業活動を視覚化し、各ステージの進捗をリアルタイムで追跡可能
  • 中小企業から大企業まで幅広く対応

Zendesk Sell:

  • 全チャネルからのリード取得とタグ付けに強み
  • リードスコアリング機能により、最も有望なリードを優先順位付け
  • カスタマーサポートとの連携に優れる

Knowledge Suite:

  • CRM・SFA機能を統合し、ファネル全体をカバー
  • 日本企業向けに最適化されたインターフェース
  • マーケティングファネルと営業ファネルの連携が容易

選定のポイント:

  • 企業規模と予算: 小規模企業は月額数万円、大企業は月額数十万円が一般的
  • 必要な機能: リードスコアリング、AI分析、ダッシュボードなど
  • サポート体制: 日本語サポートの有無、オンボーディング支援

ツール選定時は、公式サイトで最新の料金・機能を確認してください。(この記事は2025年11月時点の情報です)

まとめ:CRMファネル管理の成功ポイント

CRMを活用したファネル管理は、営業プロセスを可視化し、ボトルネックを特定して改善サイクルを回す有力な手法です。適切な実装により、顧客維持率が最大53%向上した事例も報告されています。

成功のポイント:

  • 目的に応じたファネルモデルの選択(パーチェス・インフルエンス・ダブル)
  • リードスコアリングとステージ管理による営業効率化
  • 主要指標(コンバージョン率・離脱率・滞在時間・リードスコア)のリアルタイム追跡
  • データサイロ化の回避とオムニチャネル統合
  • AIとビッグデータを活用した予測分析(2025年トレンド)

次のアクション:

  • 自社の営業プロセスをファネルで図式化する
  • 主要指標(コンバージョン率・離脱率)を測定し、ボトルネックを特定する
  • CRMツールの無料トライアルで、ファネル管理機能を実際に試す
  • 営業チーム全体にCRMシステムの目的と使用方法を明確に伝達する

ファネルモデルは顧客の実際の購買行動と一致させる必要があり、画一的な適用は避けるべきです。自社の商材・業界に合わせてカスタマイズし、継続的に改善していきましょう。

よくある質問

Q1CRMとファネル管理はどのように連携するのか?

A1CRMで顧客の基本情報から購買履歴まで一元管理し、各ステージでの行動分析が可能になります。リードスコアリングやステージ管理により、営業プロセスを効率化し、最も有望なリードに優先的にリソースを配分できます。

Q2どのファネルモデルを使うべきか?

A2基本はパーチェスファネル(認知→購入)です。顧客維持が重要ならインフルエンスファネル、全体像把握ならダブルファネルが適切です。目的に応じて選択することが推奨されます。自社の商材・業界に合わせてカスタマイズしましょう。

Q3ファネル分析で追跡すべき主要指標は?

A3コンバージョン率(各ステージから次のステージへ進む割合)、離脱率、各ステージの滞在時間、リードスコアが主要指標です。自動化システムでリアルタイム追跡し、改善サイクルを回すことが重要です。

Q4MA・SFA・CRMの違いは?

A4MAは見込み客獲得・育成、SFAは営業活動効率化、CRMは顧客情報一元管理に特化しています。ファネル全体をカバーするには、3つのツールを連携させるのが理想です。データの分断化(サイロ化)を防ぐことが重要です。

Q5CRMファネル最適化でどの程度の効果が期待できるか?

A5適切な実装により、顧客維持率が最大53%向上した事例があります。構造化されたファネルステージで最大2倍のコンバージョン率向上も報告されています。ただし、効果は業界・商材により異なるため、無料トライアルで実際に試すのが推奨されます。

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B2Bデジタルプロダクト実践ガイド編集部

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